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第27話 胸糞悪い連中だな
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魔法を習得した俺は、都市ロンダルの北部にあるスラム街へとやってきていた。
路上で散乱するゴミと一緒に寝転ぶ人々。
ずっと悪臭が漂い、思わず顔を顰める。
「ゲーム時代じゃニオイは分からなかったからな……」
ゲーム世界が現実化したことを、こんなことで改めて実感しつつ、俺は街の奥へと進んでいく。
「それにマップの広さも違うな」
ここスラム街も何倍もの広さになっている。
ただ、大まかな構造は同じなので、迷うことはないだろう。
「ここだな」
やがて辿り着いたのは、ボロボロの家屋ばかり並ぶ中にあって、分厚い外壁に護られた威圧的な建物だった。
ぐるりと一周回ってみても、入り口は頑丈そうな鉄製の扉が一つあるだけ。
俺は〈気配隠蔽〉を使うと、その外壁を乗り越えて庭に侵入する。
「どうやら建物内のマップはゲームと変わらないようだな」
近くの入り口から建物内に突入すると、早速、一人目と出くわした。
漆黒のローブを身に纏い、禍々しい鎖を首から下げている。
「なっ? 何者だっ!?」
〈気配隠蔽〉を使っていても、さすがに正面から視認されると見つかってしまう。
だが気にせず一気に距離を詰め、〈鋼の剣〉を叩き込む。
「があああっ!? くっ」
すかさずナイフを取り出して反撃しようとするも、それより俺の二撃目の方が早かった。
「かはっ…………わ、我らが神に……栄光、あれ……」
そんな一言を残し、黒い靄と化して消えていく。
あとに残されたのは、首に下げていた禍々しい鎖だ。
「やっぱり死体ごと消滅するんだな……確かゲームでは、邪神に肉体ごと身を捧げる契約をしているから、っていう設定だったっけ」
ゲームのグラワルにも登場した、邪神を崇拝する危険なカルト教団『終焉の黙示録』。
ここはその拠点の一つだ。
先ほどのローブの男――声質からして男だろう――はその信者である。
「もうちょっと人を斬るのに抵抗あるかと思ったが、大丈夫だったな。ゲーム時代とまったく見た目が同じだったお陰か。……このアイテムも」
俺は地面に落ちた鎖を拾うと、〈アイテムボックス〉に突っ込んでおいた。
―――――――――
〈邪神の縛鎖〉『終焉の黙示録』構成員の証。複雑に絡み合った鎖が、邪神の支配を象徴している。身に着けると呪われる危険なアイテム。
―――――――――
随分と禍々しいアイテムだが、実はこいつを入手するために、わざわざこの拠点に乗り込んできたのである。
「おい、何があった?」
「叫び声が聞こえた気がしたが……」
とそこへ、同じローブを身に着けた二人組がやってくる。
部屋の隅に隠れていた俺は、そこで魔法を詠唱。
「〈フリージング〉」
「「っ!?」」
詠唱時間が必要な魔法は、〈気配隠蔽〉と非常に相性が良かった。
気づかれる前に詠唱することで、先制攻撃ができるからだ。
近い方が『凍結』状態となる。
俺はもう一人の構成員に襲い掛かった。
「き、貴様っ……がっ!?」
一人を仕留めてから、残った方の脳天に背後から斬撃をお見舞いする。
ダメージに合わせて『凍結』状態が解除されたが、すかさず二撃目を叩き込んでHPを削り切った。
そろって黒い靄と化して消えていく。
足元には二つの鎖が残された。
敵を『凍結』状態にできる〈フリージング〉という魔法は、今のように複数の敵と対峙したときにも非常に有効だ。
『凍結』状態になると、20秒もの間、身動きが取れなくできるので、一時的に敵の数を減らすことが可能なのである。
攻撃すると『凍結』は解けてしまうのだが、スタン状態よりもずっと長い。
鎖を〈アイテムボックス〉に仕舞った俺は、構成員を倒しつつさらに建物内を進んだ。
途中、四人を同時に相手する場面もあったが、〈フリージング〉と〈超集中〉を駆使して撃破した。
ここにいる構成員たちは末端ばかりの格下なので、経験値にはならない。
あくまで〈邪神の縛鎖〉が目当てだ。
「こいつで十一人目」
建物の一階と二階の構成員を殲滅した俺は、隠し階段から地下へ。
狭い通路の両側には、鉄格子で内外を隔てた小部屋が並んでいた。
まるで地下牢であるが、その中には様々な年齢の男女が捕らえられていた。
ロクに食べさせてもらえていないようで、目を背けたくなるほどやせ細っている。
地下牢の奥から何やら大勢の声が聞こえてきた。
「さあ、我らの主を讃えよ!」
「「「深淵より昇る、終末の黙示録っ! 我らの魂は狂気に包まれ、破滅の舞を踊るっ! 主のもとに我らが心を悔いなく捧げ、混沌の渦に身を委ねんっ! 鮮血と暗黒が我らを導き、新たな世界の創造を告げるっ!」」」
鞭を持つ構成員の男に応じ、一糸纏わぬ姿で冷たい床に平伏した男女が絶叫するように唱和している。
背中には鞭で打たれたような痛々しい傷跡があった。
未来の構成員にするため、人々を攫ってきてはここで洗脳しているのだ。
中にはまだ十歳くらいと思われる少年の姿もある。
肉体的にも精神的にも追い込めば、より狂信的な信者にできることから、反吐が出るほど凄惨な〝指導〟もしているらしい。
「ならばその決意を自らの血肉をもって示せ!」
ローブを身に纏う男の命令で、裸の男女が一斉に右手でナイフを振り上げる。
自らの左手にそれを振り下ろし、自傷しようというのだ。
「胸糞悪い連中だな」
まだこちらの存在に気づいていない男の背中に、俺は〈ファイアアロー〉をお見舞いしてやった。
「があああああああっ!?」
路上で散乱するゴミと一緒に寝転ぶ人々。
ずっと悪臭が漂い、思わず顔を顰める。
「ゲーム時代じゃニオイは分からなかったからな……」
ゲーム世界が現実化したことを、こんなことで改めて実感しつつ、俺は街の奥へと進んでいく。
「それにマップの広さも違うな」
ここスラム街も何倍もの広さになっている。
ただ、大まかな構造は同じなので、迷うことはないだろう。
「ここだな」
やがて辿り着いたのは、ボロボロの家屋ばかり並ぶ中にあって、分厚い外壁に護られた威圧的な建物だった。
ぐるりと一周回ってみても、入り口は頑丈そうな鉄製の扉が一つあるだけ。
俺は〈気配隠蔽〉を使うと、その外壁を乗り越えて庭に侵入する。
「どうやら建物内のマップはゲームと変わらないようだな」
近くの入り口から建物内に突入すると、早速、一人目と出くわした。
漆黒のローブを身に纏い、禍々しい鎖を首から下げている。
「なっ? 何者だっ!?」
〈気配隠蔽〉を使っていても、さすがに正面から視認されると見つかってしまう。
だが気にせず一気に距離を詰め、〈鋼の剣〉を叩き込む。
「があああっ!? くっ」
すかさずナイフを取り出して反撃しようとするも、それより俺の二撃目の方が早かった。
「かはっ…………わ、我らが神に……栄光、あれ……」
そんな一言を残し、黒い靄と化して消えていく。
あとに残されたのは、首に下げていた禍々しい鎖だ。
「やっぱり死体ごと消滅するんだな……確かゲームでは、邪神に肉体ごと身を捧げる契約をしているから、っていう設定だったっけ」
ゲームのグラワルにも登場した、邪神を崇拝する危険なカルト教団『終焉の黙示録』。
ここはその拠点の一つだ。
先ほどのローブの男――声質からして男だろう――はその信者である。
「もうちょっと人を斬るのに抵抗あるかと思ったが、大丈夫だったな。ゲーム時代とまったく見た目が同じだったお陰か。……このアイテムも」
俺は地面に落ちた鎖を拾うと、〈アイテムボックス〉に突っ込んでおいた。
―――――――――
〈邪神の縛鎖〉『終焉の黙示録』構成員の証。複雑に絡み合った鎖が、邪神の支配を象徴している。身に着けると呪われる危険なアイテム。
―――――――――
随分と禍々しいアイテムだが、実はこいつを入手するために、わざわざこの拠点に乗り込んできたのである。
「おい、何があった?」
「叫び声が聞こえた気がしたが……」
とそこへ、同じローブを身に着けた二人組がやってくる。
部屋の隅に隠れていた俺は、そこで魔法を詠唱。
「〈フリージング〉」
「「っ!?」」
詠唱時間が必要な魔法は、〈気配隠蔽〉と非常に相性が良かった。
気づかれる前に詠唱することで、先制攻撃ができるからだ。
近い方が『凍結』状態となる。
俺はもう一人の構成員に襲い掛かった。
「き、貴様っ……がっ!?」
一人を仕留めてから、残った方の脳天に背後から斬撃をお見舞いする。
ダメージに合わせて『凍結』状態が解除されたが、すかさず二撃目を叩き込んでHPを削り切った。
そろって黒い靄と化して消えていく。
足元には二つの鎖が残された。
敵を『凍結』状態にできる〈フリージング〉という魔法は、今のように複数の敵と対峙したときにも非常に有効だ。
『凍結』状態になると、20秒もの間、身動きが取れなくできるので、一時的に敵の数を減らすことが可能なのである。
攻撃すると『凍結』は解けてしまうのだが、スタン状態よりもずっと長い。
鎖を〈アイテムボックス〉に仕舞った俺は、構成員を倒しつつさらに建物内を進んだ。
途中、四人を同時に相手する場面もあったが、〈フリージング〉と〈超集中〉を駆使して撃破した。
ここにいる構成員たちは末端ばかりの格下なので、経験値にはならない。
あくまで〈邪神の縛鎖〉が目当てだ。
「こいつで十一人目」
建物の一階と二階の構成員を殲滅した俺は、隠し階段から地下へ。
狭い通路の両側には、鉄格子で内外を隔てた小部屋が並んでいた。
まるで地下牢であるが、その中には様々な年齢の男女が捕らえられていた。
ロクに食べさせてもらえていないようで、目を背けたくなるほどやせ細っている。
地下牢の奥から何やら大勢の声が聞こえてきた。
「さあ、我らの主を讃えよ!」
「「「深淵より昇る、終末の黙示録っ! 我らの魂は狂気に包まれ、破滅の舞を踊るっ! 主のもとに我らが心を悔いなく捧げ、混沌の渦に身を委ねんっ! 鮮血と暗黒が我らを導き、新たな世界の創造を告げるっ!」」」
鞭を持つ構成員の男に応じ、一糸纏わぬ姿で冷たい床に平伏した男女が絶叫するように唱和している。
背中には鞭で打たれたような痛々しい傷跡があった。
未来の構成員にするため、人々を攫ってきてはここで洗脳しているのだ。
中にはまだ十歳くらいと思われる少年の姿もある。
肉体的にも精神的にも追い込めば、より狂信的な信者にできることから、反吐が出るほど凄惨な〝指導〟もしているらしい。
「ならばその決意を自らの血肉をもって示せ!」
ローブを身に纏う男の命令で、裸の男女が一斉に右手でナイフを振り上げる。
自らの左手にそれを振り下ろし、自傷しようというのだ。
「胸糞悪い連中だな」
まだこちらの存在に気づいていない男の背中に、俺は〈ファイアアロー〉をお見舞いしてやった。
「があああああああっ!?」
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