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第17話 あくまで自己申告だからな

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 ゲームのグラワルに登場したNPCたちのレベルは、総じてかなり低い。
 戦える天職を持ち、騎士や冒険者をしている者たちですら、なぜこんなにレベルが低いのかと思うことが多かった。

 まぁ当時はゲーム上の設定と考えて納得していたが……。

 しかしゲームが現実となった今、その理由が少し分かる気がした。
 格上の魔物を倒さなければレベルが上がりにくい上に、命が一つしかないのである。

 当然ながら魔物との戦闘は慎重になるし、加えてゲームのような攻略情報の共有といったこともやり辛い。
 何度死んでもやり直せる上に、ネットで簡単に攻略法が手に入るプレイヤーとは、根本的に違うのだ。

 ましてやハードモードの無職で、こんなにガンガン格上の魔物を撃破するなんて、もはや異常だろう。

「無職? おいおい、嘘はやめろ。無職がそこまでレベルを上げられるわけないだろう!」

 俺が天職を持たないということが、まったく信じられない様子である。

「いや、本当だ。これが俺のギルドカードだ」
「……確かにFランク……そして無職との記載があるな。登録時に天職を偽っていなければ、だが。あくまで自己申告だからな」

 他人の天職を確認する方法は存在していないので、確かに偽ろうと思えばできなくもないだろう。

「そんな真似はしていない。わざわざ嘘の記載をするやつがいるのか?」
「あまり聞いたことはないな。だが希少な上級職であれば、あえて話題になるのを避けるために偽るケースもあるだろう」
「……」
「ふははっ、まぁそう警戒するな! ワシはそう無粋な人間ではない! 言いふらしたりなどはせぬ!」

 バークはそう大声で笑って、バシバシと俺の背中を叩いた。

 ……本当に無職なのだがな。
 だが勘違いしてくれているなら、むしろ好都合かもしれない。

「ところで明日、騎士団と共にダンジョンに挑むのだろう? 冒険者側の参加者はどうやって選ぶんだ?」
「これからギルド長と話し合うつもりだが、Cランク冒険者が中心の構成となるだろう。さすがにFランク冒険者が入る余地などないぞ? 無論、今度は勝手についてくるなど許さん!」
「う……分かってるって」

 ううむ、ゲーム時代のイベントなら、ここでバークに認められて、ダンジョン突入メンバーの一人に選ばれるはずだったのだが。
 やはり少しだけゲームとズレてしまっている。

 どうしたものか……。
 このイベント、どうしても参加しなければならない理由があるのだ。

 しかし翌日、なぜか俺はバークたちと共に、都市の北門に集合していた。
 全部で十人ほど。装備を見るに、やはり大半がCランク冒険者のようだ。

「どういうことだ? 俺も参加していいのか?」
「詳しいことはワシにも分からん。だがどうやら騎士団の方から、直々にお前さんの参加を希望してこられたのだ」
「騎士団から……?」

 首を傾げていると、そこへセレスティア王女率いる騎士たちが現れた。
 こちらも選抜された者たちばかりのようで、十人程度である。

「お待たせして申し訳ありません。……準備はできているようですね」
「はい。ただ殿下、一つお聞きしても?」
「何でしょう?」

 バークがセレスティアに訪ねる。

「こちらの少年、ライズの参加を騎士団側から求められたと聞いております。将来性は認められますが、彼はまだ冒険者になったばかりの新人で……一体なぜ……?」
「昨日の戦いぶりに目を見張るものがあったからです。なので、わたくし自ら参加をお願いさせていただきました。まさか新人冒険者だったとは思いもしませんでしたが……」
「昨日の戦い……? た、確かに、他の若手冒険者の危機を救うなどの活躍はしたようですが……」
「それだけではありません。実はあの戦場で、最も多くの魔物を討伐したのが彼なのです」
「なっ!? Fランク冒険者が……」

 バークが目を丸くしながら俺の方を見てくる。

 ふむ、確かにかなりの数を倒したと思っていたが、まさか一番討伐数が多かったとはな。
 もちろん周囲の戦士たちを囮にしながら上手く立ち回った結果なので、単純に俺の実力とは言い難いが。

「で、殿下は自ら戦場に立たれ、戦っておられたはず。一体どうやって……?」
「わたくしの天職は【戦乙女】。戦場の様子を把握することなど、造作もないことです」

 そういえば【戦乙女】には〈戦場の女神〉というスキルがあった。
 NPC専用の天職だったのでプレイヤーには詳細な性能が分からないが、恐らく戦場を俯瞰的に眺めるような能力だろうと推測されていた。

 そのスキルを通せば、俺の〈気配隠蔽〉も無効化されてしまうのかもしれない。

「聞けば、単独であのレッドキャップを討伐されたこともあるとか」
「レッドキャップを!? 『岩窟迷宮』のユニークモンスターですぞ!?」

 冒険者ギルドには一応、報告しておいたからな。
 まぁ受付嬢には全然信じてもらえず、虚偽報告だと思われてしまったが。

 ともかくこれでゲームと同じ流れになった。
 ゲーム通りであれば、次に起こるのは……。

「そうです。実はあなた方の他にも、非常に強力な助っ人が参加していただくことになっているのです」
「強力な助っ人、ですか?」

 セレスティアの言葉に、バークが首を傾げたときだった。
 街道の方から、十人ほどの集団がこちらに向かってくるのが見えた。

 馬に跨り、先頭で集団を率いるのは、屈強な体格の厳ついおっさんで。

「え……?」

 その姿を見た瞬間、俺は愕然としてしまう。

「お、親父……?」
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