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第11話 シャーロットにしようとしたけどやめた
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「キィキィキィ」
哀しげな声で鳴きながら、よちよちと歩いてくる子猿。
まだ生まれて間もないようで、両手のひらに乗りそうなほど小さい。
だけどきっとあの狂暴猿の子供だ。
「キィキィキィ……」
何かを探すように必死に周囲を見回していて、もしかして先ほど死んだ猿たちの中に母猿がいたのかもしれない。
……ど、どうしよう?
ごめんね、君のお母さん、死んじゃったかもしれないの……。
と、そのとき子猿と目が合った。
「キィキィ!(ままーっ!)」
「ええっ?」
なんかいきなり懐かれました。
私のことを母親と勘違いしてしまったのか、くっ付いて離れない。
いやいや、顔が全然違うよねっ?
さすがにあの狂暴な猿と似ているとしたらショックだ。
たぶんこれも〈子育て〉スキルのせいだろう。そのはず。そうであってくれ。
あの好戦的な猿たちの子供だし、正直、殺してしまうか、森のどこかに捨ててきたいけど……さすがにそれは可哀相だ。
それに――
「キィ?」
……かわいい。
やっぱり赤ちゃんのときはどんな生き物でもかわいいものだね。
後のことは後で考えよう、うん。
すでにドラゴンのリューがいるし、今さらだ。
「なまえ付けないとね!」
「ウッキーがいい!」
「え~! ぜったいモンチーだよ!」
幸いレオナちゃんたちも飼う気まんまんだ。襲ってきた猿たちの子供だけど、どうやらその辺はあまり気にしないらしい。
放っておくと変な名前になりそうなので、私も案を出した。
「この子、メスみたいだし、シャルはどうかな?」
サルにYを入れただけだけど。サル(saru)→シャル(syaru)
「すごくいいと思う!」
「おねえちゃんさすが! 天さいだよ!」
……そんなに絶賛されると申し訳なくなる。
「君は今日からシャルだからね」
「キキィ?」
シャルはきょとんとした顔で首を傾げた。かわいい。
よしよしと指先で頭を撫でてやると、「キィィ~」と嬉しそうに鳴く。
「クルル~」
リューが「ズルい自分も!」といった感じで鼻先を寄せてきたので、こちらも撫でてあげた。
「「じ~」」
「はいはい、君たちもね」
「「えへへ~」」
そんなこんなで新たな仲間を加えた私たちのサバイバル生活。
正確な日数は分からないけど、たぶん三か月は経った気がする。
「今日で九十五日目だよ?」
レオナちゃんが数えていたみたい。偉いね。
ともかく、最初はこんなに長い間、森で生活するなんて思っていなかった。
頃合いを見てリューとお別れし、森を出るつもりだったしね……。
みんなの活躍の甲斐あって、生活環境はどんどん向上してきている。
今回のような魔物の襲撃に備えるため、塀が設けられた。
そして塀の向こう側には堀を作っている途中である。
もはや外から見ればちょっとした村だ。
家は一軒しかないけど。
さらにレオルくんが水路を整備してくれたことで、水の質もかなり良くなった。
見た目はほぼ透明だ。
これでわざわざ川まで水を汲みにいく手間がなくなった。
さすがに料理などには使えないので、そちらは今まで通りレオナちゃんの魔法で賄う。
「せっかく水が簡単に手に入るようになったんだし、お風呂が欲しいなぁ」
「おふろ?」
「え? お風呂知らないの?」
少なくとも彼らが知る限り、この世界にお風呂という文化はないらしい。当然、二人とも見たことも入ったこともないのだとか。
「それは人生の半分を損してるよ!」
私の強い希望もあって、早速レオルくんがリューと協力してお風呂を作ってくれた。
ざっくりした私の説明にもかかわらず、この森にある材料だけであっという間に形にしてしまうレオルくん、プライスレス。
石と粘土を固めて作った浴槽の下がかまどのようになっていて、そこで火を焚いてお湯を沸かす。いわゆる五右衛門風呂みたいな感じ。
「え? 最初にお姉ちゃんが入っていいの?」
「うん!」
お言葉に甘えて一番風呂をいただきました。
「あ~」
お湯に浸かると思わずおっさん臭い声が出てしまった。
「キィキィ~」
狭いので大人一人しか入れないけど、小さなシャルなら抱えて一緒に浸かれる。気持ちよさそうに鳴いているし、気に入ってくれたらしい。やっぱり猿ってお風呂が好きなのかな。
「気もちいい!」
「あったまる!」
続いて仲良く一緒に入ったレオナちゃんたちも、お風呂の魅力を知ったようだ。
「さすがサオリおねえちゃん!」
「やっぱり天さいだよ!」
ただ地球の知識をパクっただけだから……。
「クルル……」
皆がお風呂で心と身体を温める中、身体が大き過ぎて浴槽に入れないリューが残念そうに鳴いていた。
材料の強度的に大きな浴槽を作れなかったらしく……いつかもっと大きなお風呂ができたら真っ先に入ってもらおう。
レオナちゃんが始めた栽培も順調だった。
土壌がいいのか、それとも種を植える時期がよかったのか、早いものではそろそろ収穫できそうな勢いだ。
「レオナが思ってたより成長はやいの」
「そう? 何でだろうね?」
「わかんない」
特に種を植えてから芽が出るまでが異様に早かったというが、元からそういう種類の植物なのだろうか?
栽培と並行して、最近レオナちゃんは保存食作りに凝っていた。
肉や魚の燻製。
それに果物を乾燥させ、ドライフルーツにしていた。
「これから手に入らなくなるかも」
どうやらこれから季節は冬へと入っていくらしい。
道理で最近ちょっと寒くなってきてるな~って思ってた。
冬の間はどうしても食糧が手に入り辛くなる。なので今のうちに蓄えておきたいのだとか。
なんて計画的! 冬のことなんて私、何にも考えてなかった!
一人だったらきっと冬を越せなかったよね……。こらそこ、冬どころか初日に魔物にやられてただろうとか言わない!
冬のことを見越して動いていたのは、レオルくんやリューもだった。
ここのところ頻繁に狩りに出かけている。
「サオリおねーちゃーん!」
ちょうど戻ってきたらしい。外からレオルくんの元気な声が聞こえてきた。
外に出るみると、でかい獲物を担いでこっちに走ってくる。
最高級の豚肉、もといオーク肉じゃないの。
味を思い出しただけでじゅるりと唾液が出てくる。いやまだ加工前だから……。
「ぼくね、オーク一人でたおしたんだよ!」
「一人で倒した!? レオルくんが!?」
「うん! ね、リュー?」
「クルルル!(そだよ!)」
いやいや、あんなのどうやって子供が一人で倒すっていうの?
ついこの間、ホーンラビットを倒せるようになったばかりだよね?
「これで冬のあいだ、リューがいなくても大丈夫だよ!」
「え? リュー、どこか行ってしまうの?」
あまりに突然の話に動揺してしまう。
「ちがうよ、おねえちゃん! リューはドラゴンだから、冬みんするんだよ!」
レオナちゃんが教えてくれた。
なるほど、ドラゴンも冬眠するのね。
訊けば、食糧を十分に確保できるのならする必要はないそうだが、獲物の少ない冬ではなかなか難しいのだとか。
確かにいっぱい食べるもんね。レオナちゃんがたくさん保存食を作ってるけど、リューがいたら全然足りなさそうだ。
そうかー、じゃあ冬の間、リューとは会えなくなっちゃうんだね。
ん? それなら私たち、森にいる意味ないんじゃ……?
「クルルルルルル~!(ちかくにいてくれないとやだー!)」
私の内心を察したのか、リューが慌てて泣きついてきた。
「う、うん、そうだよね。一人じゃ寂しいもんね」
そんなふうに冬に向けて着々と備えを進めていたある日のことだった。
いつものように狩りに出ていたレオルくんが、見知らぬ子供たちを連れて帰ってきた。
三人いて、みんな双子より少し年下といったところだろうか。
ロクに食べていないのか、かなりやせ細っていて、酷く衰弱している様子だ。
何でこんな森に子供たちが……?
しかしそれよりも私を驚かせたのは、彼らの頭の上に耳が生えいて、お尻には尻尾があることだった。
「……獣人?」
哀しげな声で鳴きながら、よちよちと歩いてくる子猿。
まだ生まれて間もないようで、両手のひらに乗りそうなほど小さい。
だけどきっとあの狂暴猿の子供だ。
「キィキィキィ……」
何かを探すように必死に周囲を見回していて、もしかして先ほど死んだ猿たちの中に母猿がいたのかもしれない。
……ど、どうしよう?
ごめんね、君のお母さん、死んじゃったかもしれないの……。
と、そのとき子猿と目が合った。
「キィキィ!(ままーっ!)」
「ええっ?」
なんかいきなり懐かれました。
私のことを母親と勘違いしてしまったのか、くっ付いて離れない。
いやいや、顔が全然違うよねっ?
さすがにあの狂暴な猿と似ているとしたらショックだ。
たぶんこれも〈子育て〉スキルのせいだろう。そのはず。そうであってくれ。
あの好戦的な猿たちの子供だし、正直、殺してしまうか、森のどこかに捨ててきたいけど……さすがにそれは可哀相だ。
それに――
「キィ?」
……かわいい。
やっぱり赤ちゃんのときはどんな生き物でもかわいいものだね。
後のことは後で考えよう、うん。
すでにドラゴンのリューがいるし、今さらだ。
「なまえ付けないとね!」
「ウッキーがいい!」
「え~! ぜったいモンチーだよ!」
幸いレオナちゃんたちも飼う気まんまんだ。襲ってきた猿たちの子供だけど、どうやらその辺はあまり気にしないらしい。
放っておくと変な名前になりそうなので、私も案を出した。
「この子、メスみたいだし、シャルはどうかな?」
サルにYを入れただけだけど。サル(saru)→シャル(syaru)
「すごくいいと思う!」
「おねえちゃんさすが! 天さいだよ!」
……そんなに絶賛されると申し訳なくなる。
「君は今日からシャルだからね」
「キキィ?」
シャルはきょとんとした顔で首を傾げた。かわいい。
よしよしと指先で頭を撫でてやると、「キィィ~」と嬉しそうに鳴く。
「クルル~」
リューが「ズルい自分も!」といった感じで鼻先を寄せてきたので、こちらも撫でてあげた。
「「じ~」」
「はいはい、君たちもね」
「「えへへ~」」
そんなこんなで新たな仲間を加えた私たちのサバイバル生活。
正確な日数は分からないけど、たぶん三か月は経った気がする。
「今日で九十五日目だよ?」
レオナちゃんが数えていたみたい。偉いね。
ともかく、最初はこんなに長い間、森で生活するなんて思っていなかった。
頃合いを見てリューとお別れし、森を出るつもりだったしね……。
みんなの活躍の甲斐あって、生活環境はどんどん向上してきている。
今回のような魔物の襲撃に備えるため、塀が設けられた。
そして塀の向こう側には堀を作っている途中である。
もはや外から見ればちょっとした村だ。
家は一軒しかないけど。
さらにレオルくんが水路を整備してくれたことで、水の質もかなり良くなった。
見た目はほぼ透明だ。
これでわざわざ川まで水を汲みにいく手間がなくなった。
さすがに料理などには使えないので、そちらは今まで通りレオナちゃんの魔法で賄う。
「せっかく水が簡単に手に入るようになったんだし、お風呂が欲しいなぁ」
「おふろ?」
「え? お風呂知らないの?」
少なくとも彼らが知る限り、この世界にお風呂という文化はないらしい。当然、二人とも見たことも入ったこともないのだとか。
「それは人生の半分を損してるよ!」
私の強い希望もあって、早速レオルくんがリューと協力してお風呂を作ってくれた。
ざっくりした私の説明にもかかわらず、この森にある材料だけであっという間に形にしてしまうレオルくん、プライスレス。
石と粘土を固めて作った浴槽の下がかまどのようになっていて、そこで火を焚いてお湯を沸かす。いわゆる五右衛門風呂みたいな感じ。
「え? 最初にお姉ちゃんが入っていいの?」
「うん!」
お言葉に甘えて一番風呂をいただきました。
「あ~」
お湯に浸かると思わずおっさん臭い声が出てしまった。
「キィキィ~」
狭いので大人一人しか入れないけど、小さなシャルなら抱えて一緒に浸かれる。気持ちよさそうに鳴いているし、気に入ってくれたらしい。やっぱり猿ってお風呂が好きなのかな。
「気もちいい!」
「あったまる!」
続いて仲良く一緒に入ったレオナちゃんたちも、お風呂の魅力を知ったようだ。
「さすがサオリおねえちゃん!」
「やっぱり天さいだよ!」
ただ地球の知識をパクっただけだから……。
「クルル……」
皆がお風呂で心と身体を温める中、身体が大き過ぎて浴槽に入れないリューが残念そうに鳴いていた。
材料の強度的に大きな浴槽を作れなかったらしく……いつかもっと大きなお風呂ができたら真っ先に入ってもらおう。
レオナちゃんが始めた栽培も順調だった。
土壌がいいのか、それとも種を植える時期がよかったのか、早いものではそろそろ収穫できそうな勢いだ。
「レオナが思ってたより成長はやいの」
「そう? 何でだろうね?」
「わかんない」
特に種を植えてから芽が出るまでが異様に早かったというが、元からそういう種類の植物なのだろうか?
栽培と並行して、最近レオナちゃんは保存食作りに凝っていた。
肉や魚の燻製。
それに果物を乾燥させ、ドライフルーツにしていた。
「これから手に入らなくなるかも」
どうやらこれから季節は冬へと入っていくらしい。
道理で最近ちょっと寒くなってきてるな~って思ってた。
冬の間はどうしても食糧が手に入り辛くなる。なので今のうちに蓄えておきたいのだとか。
なんて計画的! 冬のことなんて私、何にも考えてなかった!
一人だったらきっと冬を越せなかったよね……。こらそこ、冬どころか初日に魔物にやられてただろうとか言わない!
冬のことを見越して動いていたのは、レオルくんやリューもだった。
ここのところ頻繁に狩りに出かけている。
「サオリおねーちゃーん!」
ちょうど戻ってきたらしい。外からレオルくんの元気な声が聞こえてきた。
外に出るみると、でかい獲物を担いでこっちに走ってくる。
最高級の豚肉、もといオーク肉じゃないの。
味を思い出しただけでじゅるりと唾液が出てくる。いやまだ加工前だから……。
「ぼくね、オーク一人でたおしたんだよ!」
「一人で倒した!? レオルくんが!?」
「うん! ね、リュー?」
「クルルル!(そだよ!)」
いやいや、あんなのどうやって子供が一人で倒すっていうの?
ついこの間、ホーンラビットを倒せるようになったばかりだよね?
「これで冬のあいだ、リューがいなくても大丈夫だよ!」
「え? リュー、どこか行ってしまうの?」
あまりに突然の話に動揺してしまう。
「ちがうよ、おねえちゃん! リューはドラゴンだから、冬みんするんだよ!」
レオナちゃんが教えてくれた。
なるほど、ドラゴンも冬眠するのね。
訊けば、食糧を十分に確保できるのならする必要はないそうだが、獲物の少ない冬ではなかなか難しいのだとか。
確かにいっぱい食べるもんね。レオナちゃんがたくさん保存食を作ってるけど、リューがいたら全然足りなさそうだ。
そうかー、じゃあ冬の間、リューとは会えなくなっちゃうんだね。
ん? それなら私たち、森にいる意味ないんじゃ……?
「クルルルルルル~!(ちかくにいてくれないとやだー!)」
私の内心を察したのか、リューが慌てて泣きついてきた。
「う、うん、そうだよね。一人じゃ寂しいもんね」
そんなふうに冬に向けて着々と備えを進めていたある日のことだった。
いつものように狩りに出ていたレオルくんが、見知らぬ子供たちを連れて帰ってきた。
三人いて、みんな双子より少し年下といったところだろうか。
ロクに食べていないのか、かなりやせ細っていて、酷く衰弱している様子だ。
何でこんな森に子供たちが……?
しかしそれよりも私を驚かせたのは、彼らの頭の上に耳が生えいて、お尻には尻尾があることだった。
「……獣人?」
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