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第7話 アラサー女子、サバイバル始めました!
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アラサー女とかわいい双子、そして子供のドラゴンという奇妙な組み合わせで始まった、森でのサバイバル。
拠点としたのは最初に降り立った場所だ。
ちょうど開けているところで、危険かと思いきや、子竜が接近してきた魔物をすぐに見つけられるのでむしろ防衛面では利点の方が多い。
それに歩いていける距離に川が流れているのもありがたい。
そこそこ流れが速く、水も澄んでいるので、普通に飲むこともできそうだった。
ただ上流に動物の死骸などがあったりすると危険性なので、飲み水はレオナちゃんの魔法で確保し、川の水は身体や服を洗ったりするために使うことに。
川の中には魚がいた。
子竜が水の中に入り、前脚を使って器用に魚を獲ってくれる。ちょうと熊が鮭を獲るような感じで。
これならタンパク質の確保には困らなさそうだ。
「レオナも魚とるー」
「レオルも!」
子竜を追って、濡れるのも厭わず二人が川へと入っていった。元気だなぁ。でも危ないから深いところには入らないでよ?
「えいっ」
「このっ」
小さな手で懸命に魚を捕まえようとしているけど、なかなか苦戦している。
さすがに素手じゃ無理だよ。
「「うー」」
「うんうん、二人とも頑張ったね」
結局一匹も捕まえることができず、悔しそうな顔をする二人の頭を撫でて慰めてあげる。
「せめて釣り竿があればねー」
「「つりざお?」」
「お魚を釣る道具」
二人に釣竿について教えてあげた。
「べんり!」
「おねーちゃん、かしこい!」
水の中に入らなくても魚を捕まえられる方法があると知って、目を輝かせる二人。
私が考えたわけじゃないよ?
「ぼく作ってみる!」
「え? 作るの?」
「うん!」
竿も糸も針もないけど……本当に作れるの?
半信半疑な私を後目に、レオルくんは話で訊いただけの釣竿を作り始めた。
どこからかよくしなる枝を拾ってきて、糸の代わりに蔓草を取りつける。
さらにオークの骨を使って針を作ってしまった。
「おねーちゃん、こんな感じ?」
「すごい! ちゃんと釣竿だよ!」
地面を掘って魚の餌になりそうな蚯蚓を捕まえると、レオルくんは意気揚々と川に釣り糸(蔓だけど)を垂らした。
「きた!」
「つれた!」
そして本当に魚を釣ってしまったから驚きだ。
レオルくんは手先が器用なのか、こうした道具の製作が得意らしい。
釣竿の他にもナイフや槍を作ってしまった。
どちらも刃の部分を子竜の牙を使っている。
どうやらドラゴンは牙が定期的に抜け、そして何度でも生えてくるらしい。サメと一緒だ。
それを刃に転用したのだ。
強度も切れ味も抜群なので、木を切ったり、獲物を捌いたりと、サバイバルにおいて非常に役に立つ道具になった。
タンパク質と言えば、あるとき子竜がどこかからウサギを捕まえてきた。
正確にはホーンラビットという魔物らしく、名前の通り頭に一本の鋭い角が生えている。
身体も大きくて六十センチから七十センチほどあった。
あのオーク……豚肉には劣るものの、味も決して悪くない。
比較的よく見かけるので、これも貴重なタンパク源に……と思いきや、捕獲は簡単じゃなかった。
なにせ猛スピードで逃げていくのだ。子竜でもなかなか追いつけない。どうやら最初に捕えたのは、たまたま寝ているところだったかららしい。
じゃあ寝ているところを狙えばと思ったが、普通は穴の中に隠れて寝るのだとか。
捕まったのは随分と間抜けなウサギだったのだろう。
「わなをしかけてみる!」
そうレオルくんが言い出し、これまた自分で作ってしまった。
輪っかにした蔓草をウサギの首に引っかけて捕え、しかも吊り上げてしまうという優れものだった。
残念ながら上手くいかなかったのは、角で蔓草を切ってあっさり逃げてしまったからだ。
ただのウサギじゃなくて魔物だしね……。
悔しがったレオルくんは、別の方法を編み出した。
それは子竜がウサギを追い立て、待ち構えているレオルくんのところへと誘い込むという戦法だった。そして自作の槍で仕留めるという。
「いやいや、危険だって!」
「だいじょうぶ!」
勇ましく槍を構えたレオルくんは自信満々だ。
「クルルル!」
私がはらはらしながらレオナちゃんと一緒に見守る中、子竜がホーンラビットを発見して誘導してくる。
「きたっ!」
草木の向こうから巨大ウサギが飛び出してきた。
やっぱりでかい。遭遇したら大人の私でも怖くて逃げ出すだろう。子供のレオルくんからすればもっと大きく見えるはずだ。
それに凄い速さで突っ込んでくるのだ。
そんな相手に立ち向かうレオルくん、勇敢にも程があるでしょ。
だけどタイミングはばっちりだった。
「えいっ!」
レオルくんが突き出した槍が、ホーンラビットを捉える――
「ッ!」
咄嗟に角でそれを弾いてしまったその反射能力は、こちらの予想を大きく超えていた。
槍の一撃を回避したホーンラビットが、レオルくんの横を抜けて逃げていく。
「った……」
直後、レオルくんが足を抑えて蹲る。
「レオルくん、大丈夫!? って、血が出てるじゃない!」
「うん、角がちょっとかすめちゃった」
どどど、どうすれば!?
そうだ、救急車! 救急車を呼ばないと!
って、ここ異世界だし! 119番回しても出ないよ! いやそもそも電話がない!
一人あたふたとパニクる私を後目に、レオナちゃんが「軽いきりきずだねー」と呟きながら傷口に手を翳す。
するとあら不思議、あっという間に傷が塞がってしまった。
レオナちゃんったら、回復魔法も使えるの!?
「レオナありがとー。おねーちゃん、もうだいじょうぶだよ?」
「う、うん……」
なぜか逆に心配されてる私。
って、ここは大人としてしっかり言っておかないと!
「いくら回復魔法があるからって、無茶しちゃだめ。いい?」
「うん。むちゃしない」
真剣な気持ちが伝わったのか、レオルくんは素直に頷いてくれた。
「だから次はちゃんとたおせるように、ヤリのれん習するよ!」
いやそういう問題じゃ……。
「がんばる!」
「そ、そうだね……」
意気込むレオルくんに、頑張らないでとは言えなかった。ほんと無茶はやめてよ……?
そんなレオルくんは持ち前の器用さを活かし、あるものを作り始めた。
真っ直ぐ生えた細身の針葉樹を子竜が切り倒し、そこから枝葉を取って丸太に。
二本の細い丸太を交差するように組み合わせ、蔓草で固定。
さらにこれらと直角になるよう別の丸太(先の二本より長め)を取りつけると、三脚で地面の上に立つようになる。
この骨組みを基準に、長さを調整した他の丸太を重ねて屋根を作っていく。もちろん三角錐の一面だけは出入りできるように開けている。
最後は隙間を木の葉や枯れ枝などで埋めれば、あっという間に風雨を凌げるテントのできあがり。大きさはちょうど三人で横になれるくらい。
たぶん二時間くらいでできた気がする。しかも使ったのは森で手に入る材料だけだ。
「作ったことあるの?」
「ないよ? やってみたらできた」
凄いよ、レオルくん……。
「でももっと大きなのをつくりたいな~。リューも入れるくらいなやつ!」
「クルルル!」
まだ全然満足してないみたい。確かに子竜だけ外というのも可哀想だけど。
あ、そうそう。
子竜に名前を付けてあげたんだった。
「どらりんがいい!」
「とかげっちにしようよ!」
二人もアイデアを出してくれたけど、ネーミングセンスがアレだったこともあり、私の案が採用された。
リューだ。
「かっこいい!」
「さすがサオリおねーちゃん!」
「クルルル!」
すごく安直だけど、二人も子竜も気に入ってくれたので良しとしようじゃないか。
拠点としたのは最初に降り立った場所だ。
ちょうど開けているところで、危険かと思いきや、子竜が接近してきた魔物をすぐに見つけられるのでむしろ防衛面では利点の方が多い。
それに歩いていける距離に川が流れているのもありがたい。
そこそこ流れが速く、水も澄んでいるので、普通に飲むこともできそうだった。
ただ上流に動物の死骸などがあったりすると危険性なので、飲み水はレオナちゃんの魔法で確保し、川の水は身体や服を洗ったりするために使うことに。
川の中には魚がいた。
子竜が水の中に入り、前脚を使って器用に魚を獲ってくれる。ちょうと熊が鮭を獲るような感じで。
これならタンパク質の確保には困らなさそうだ。
「レオナも魚とるー」
「レオルも!」
子竜を追って、濡れるのも厭わず二人が川へと入っていった。元気だなぁ。でも危ないから深いところには入らないでよ?
「えいっ」
「このっ」
小さな手で懸命に魚を捕まえようとしているけど、なかなか苦戦している。
さすがに素手じゃ無理だよ。
「「うー」」
「うんうん、二人とも頑張ったね」
結局一匹も捕まえることができず、悔しそうな顔をする二人の頭を撫でて慰めてあげる。
「せめて釣り竿があればねー」
「「つりざお?」」
「お魚を釣る道具」
二人に釣竿について教えてあげた。
「べんり!」
「おねーちゃん、かしこい!」
水の中に入らなくても魚を捕まえられる方法があると知って、目を輝かせる二人。
私が考えたわけじゃないよ?
「ぼく作ってみる!」
「え? 作るの?」
「うん!」
竿も糸も針もないけど……本当に作れるの?
半信半疑な私を後目に、レオルくんは話で訊いただけの釣竿を作り始めた。
どこからかよくしなる枝を拾ってきて、糸の代わりに蔓草を取りつける。
さらにオークの骨を使って針を作ってしまった。
「おねーちゃん、こんな感じ?」
「すごい! ちゃんと釣竿だよ!」
地面を掘って魚の餌になりそうな蚯蚓を捕まえると、レオルくんは意気揚々と川に釣り糸(蔓だけど)を垂らした。
「きた!」
「つれた!」
そして本当に魚を釣ってしまったから驚きだ。
レオルくんは手先が器用なのか、こうした道具の製作が得意らしい。
釣竿の他にもナイフや槍を作ってしまった。
どちらも刃の部分を子竜の牙を使っている。
どうやらドラゴンは牙が定期的に抜け、そして何度でも生えてくるらしい。サメと一緒だ。
それを刃に転用したのだ。
強度も切れ味も抜群なので、木を切ったり、獲物を捌いたりと、サバイバルにおいて非常に役に立つ道具になった。
タンパク質と言えば、あるとき子竜がどこかからウサギを捕まえてきた。
正確にはホーンラビットという魔物らしく、名前の通り頭に一本の鋭い角が生えている。
身体も大きくて六十センチから七十センチほどあった。
あのオーク……豚肉には劣るものの、味も決して悪くない。
比較的よく見かけるので、これも貴重なタンパク源に……と思いきや、捕獲は簡単じゃなかった。
なにせ猛スピードで逃げていくのだ。子竜でもなかなか追いつけない。どうやら最初に捕えたのは、たまたま寝ているところだったかららしい。
じゃあ寝ているところを狙えばと思ったが、普通は穴の中に隠れて寝るのだとか。
捕まったのは随分と間抜けなウサギだったのだろう。
「わなをしかけてみる!」
そうレオルくんが言い出し、これまた自分で作ってしまった。
輪っかにした蔓草をウサギの首に引っかけて捕え、しかも吊り上げてしまうという優れものだった。
残念ながら上手くいかなかったのは、角で蔓草を切ってあっさり逃げてしまったからだ。
ただのウサギじゃなくて魔物だしね……。
悔しがったレオルくんは、別の方法を編み出した。
それは子竜がウサギを追い立て、待ち構えているレオルくんのところへと誘い込むという戦法だった。そして自作の槍で仕留めるという。
「いやいや、危険だって!」
「だいじょうぶ!」
勇ましく槍を構えたレオルくんは自信満々だ。
「クルルル!」
私がはらはらしながらレオナちゃんと一緒に見守る中、子竜がホーンラビットを発見して誘導してくる。
「きたっ!」
草木の向こうから巨大ウサギが飛び出してきた。
やっぱりでかい。遭遇したら大人の私でも怖くて逃げ出すだろう。子供のレオルくんからすればもっと大きく見えるはずだ。
それに凄い速さで突っ込んでくるのだ。
そんな相手に立ち向かうレオルくん、勇敢にも程があるでしょ。
だけどタイミングはばっちりだった。
「えいっ!」
レオルくんが突き出した槍が、ホーンラビットを捉える――
「ッ!」
咄嗟に角でそれを弾いてしまったその反射能力は、こちらの予想を大きく超えていた。
槍の一撃を回避したホーンラビットが、レオルくんの横を抜けて逃げていく。
「った……」
直後、レオルくんが足を抑えて蹲る。
「レオルくん、大丈夫!? って、血が出てるじゃない!」
「うん、角がちょっとかすめちゃった」
どどど、どうすれば!?
そうだ、救急車! 救急車を呼ばないと!
って、ここ異世界だし! 119番回しても出ないよ! いやそもそも電話がない!
一人あたふたとパニクる私を後目に、レオナちゃんが「軽いきりきずだねー」と呟きながら傷口に手を翳す。
するとあら不思議、あっという間に傷が塞がってしまった。
レオナちゃんったら、回復魔法も使えるの!?
「レオナありがとー。おねーちゃん、もうだいじょうぶだよ?」
「う、うん……」
なぜか逆に心配されてる私。
って、ここは大人としてしっかり言っておかないと!
「いくら回復魔法があるからって、無茶しちゃだめ。いい?」
「うん。むちゃしない」
真剣な気持ちが伝わったのか、レオルくんは素直に頷いてくれた。
「だから次はちゃんとたおせるように、ヤリのれん習するよ!」
いやそういう問題じゃ……。
「がんばる!」
「そ、そうだね……」
意気込むレオルくんに、頑張らないでとは言えなかった。ほんと無茶はやめてよ……?
そんなレオルくんは持ち前の器用さを活かし、あるものを作り始めた。
真っ直ぐ生えた細身の針葉樹を子竜が切り倒し、そこから枝葉を取って丸太に。
二本の細い丸太を交差するように組み合わせ、蔓草で固定。
さらにこれらと直角になるよう別の丸太(先の二本より長め)を取りつけると、三脚で地面の上に立つようになる。
この骨組みを基準に、長さを調整した他の丸太を重ねて屋根を作っていく。もちろん三角錐の一面だけは出入りできるように開けている。
最後は隙間を木の葉や枯れ枝などで埋めれば、あっという間に風雨を凌げるテントのできあがり。大きさはちょうど三人で横になれるくらい。
たぶん二時間くらいでできた気がする。しかも使ったのは森で手に入る材料だけだ。
「作ったことあるの?」
「ないよ? やってみたらできた」
凄いよ、レオルくん……。
「でももっと大きなのをつくりたいな~。リューも入れるくらいなやつ!」
「クルルル!」
まだ全然満足してないみたい。確かに子竜だけ外というのも可哀想だけど。
あ、そうそう。
子竜に名前を付けてあげたんだった。
「どらりんがいい!」
「とかげっちにしようよ!」
二人もアイデアを出してくれたけど、ネーミングセンスがアレだったこともあり、私の案が採用された。
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