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第十四話 ダンジョン構築計画
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「うぅ……違うもん……美緒ちゃんは処女だもん……」
俺は壁際で両膝を抱えて座り、ふて腐れたように呟いていた。
そんな迷宮主の様子を、少し離れた場所でゴブリンやオーガたちが不思議そうに見ている。
「申し訳ありません、マスター。少々やり過ぎました」
謝ってきたのはミオだ。
そしてボソリと、
「狼狽えるマスターの様子が面白くて、つい」
こいつ、見た目は神宮寺なのに、中身はすげぇ腹黒いんだが……。
ちなみにどうやら今の俺では、ネームドモンスターは一体までしか生み出すことができないようだった。
魔力にはまだ余裕があるはずなのだが、+2だと一体までという制約でもあるのだろうか。
そんなこんなでダンジョンに新たな戦力を加わえた俺は、気を取り直して〈罠作成+5〉と〈宝箱作成+5〉を試した。
段階が上がったことで、様々な種類の罠を作り出すことができた。
踏むと槍が降ってくる床。
触れると鉄球が転がってくる壁。
すべての魔物を倒すまで扉が開かない部屋。
〈宝箱作成+5〉と併用することもできるようで、宝箱を開けると地面が抜けて落とし穴に落下するというトラップなども仕掛けた。
ちなみに〈宝箱作成+5〉というスキルは、本当にただ宝箱を作るだけのスキルらしい。
段階が上がるほど見た目が豪奢な宝箱が作れるようになるみたいだが、それに何の意味があるのか今のところよく分からない。
そして俺がダンジョン内に色々な罠や宝箱を設置していると、
「マスター、こんな誰が見ても行き止まりと分かる場所に罠を置いて、一体誰が引っ掛かるというのですか?」
「マスター、この部屋、あからさまに怪しいですね。警戒されないよう、もっと自然な配置を心がけるべきでしょう」
「マスター、宝箱が罠ばかりです。これではいずれ誰も開けてくれなくなるでしょう。罠はもう少し適度な割合で配置すべきではないでしょうか」
ミオからの辛辣なダメ出しの嵐である。
前世の女上司を思い出すぜ……。
「マスター、スキルを使うのにも魔力が必要です。そしてマスターの魔力量にも限りがあるのですから、行き当たりばったりではなく、もっと計画的にダンジョン構築を進めていくべきでしょう。罠や宝箱、あるいはモンスターの配置についても事前によくその効果を検討した上で行うべきです」
「う、うん……そうだね…………ちょっと試してただけなんだけど…………確かに、調子に乗って作り過ぎたみたいだね……」
ぼそぼそと言い訳する俺。
ミオの指摘を受けて、俺はダンジョンの構築計画を考えることにした。
その間、余力のある魔力で魔物を生成し、戦力増強に努めた。
「あの……ミオさん……ダンジョンの構築計画、こんな感じでいかかがな……?」
なぜか配下のお伺いを立てる情けない迷宮主である。
「そうですね……意外とよくできていますね」
「マジで!? やった!」
配下から褒められ、大喜びする迷宮主である。
それから彼女の意見も参考にしつつ、やがてダンジョンの構築計画が完成する。
ちなみにそのダンジョンとは俺自身のことなので、何だか奇妙な感覚だ。自己改革してるみたい。
オーガを六十体ほど量産(五体ほどアークオーガが生まれた)した辺りで戦力増強をいったん止め、ダンジョン構築に力を注ぐことにした。
〈迷宮拡張+8〉を使い、どんどんダンジョンを拡張させていく。
今までと違ってサクサク掘り進めることができるため、癖になりそうなくらい気持ちいい。
もっと掘れ。
もっと掘れ。
がんがん掘れ。
ずんずん掘れ。
ああこれ、ストレス解消になるわ~。
ダンジョンでも一応ストレスが溜まるのである。主にミオのせいで。
「あれ……?」
調子に乗って掘りまくっていた俺は、突然その手応えがなくなったことに気が付いた。
掘り進めていった先が空洞になっていたのである。
「なんだここ……?」
けっこう広い空洞だった。
しかも左右に道が続いている。
そのときその道の向こうから足音が聞こえてきた。
何かがいる。
俺は警戒して身構えた。
やがて幾つかの影が姿を現す。
「犬……?」
それは一見すると犬だった。
だがその手に武器らしきものを持っており、しかも二足歩行をしている。
「まさか、コボルド……?」
コボルドたちが棲息するダンジョンに連結してしまったらしいと気づいたのは、それからすぐのことだった。
俺は壁際で両膝を抱えて座り、ふて腐れたように呟いていた。
そんな迷宮主の様子を、少し離れた場所でゴブリンやオーガたちが不思議そうに見ている。
「申し訳ありません、マスター。少々やり過ぎました」
謝ってきたのはミオだ。
そしてボソリと、
「狼狽えるマスターの様子が面白くて、つい」
こいつ、見た目は神宮寺なのに、中身はすげぇ腹黒いんだが……。
ちなみにどうやら今の俺では、ネームドモンスターは一体までしか生み出すことができないようだった。
魔力にはまだ余裕があるはずなのだが、+2だと一体までという制約でもあるのだろうか。
そんなこんなでダンジョンに新たな戦力を加わえた俺は、気を取り直して〈罠作成+5〉と〈宝箱作成+5〉を試した。
段階が上がったことで、様々な種類の罠を作り出すことができた。
踏むと槍が降ってくる床。
触れると鉄球が転がってくる壁。
すべての魔物を倒すまで扉が開かない部屋。
〈宝箱作成+5〉と併用することもできるようで、宝箱を開けると地面が抜けて落とし穴に落下するというトラップなども仕掛けた。
ちなみに〈宝箱作成+5〉というスキルは、本当にただ宝箱を作るだけのスキルらしい。
段階が上がるほど見た目が豪奢な宝箱が作れるようになるみたいだが、それに何の意味があるのか今のところよく分からない。
そして俺がダンジョン内に色々な罠や宝箱を設置していると、
「マスター、こんな誰が見ても行き止まりと分かる場所に罠を置いて、一体誰が引っ掛かるというのですか?」
「マスター、この部屋、あからさまに怪しいですね。警戒されないよう、もっと自然な配置を心がけるべきでしょう」
「マスター、宝箱が罠ばかりです。これではいずれ誰も開けてくれなくなるでしょう。罠はもう少し適度な割合で配置すべきではないでしょうか」
ミオからの辛辣なダメ出しの嵐である。
前世の女上司を思い出すぜ……。
「マスター、スキルを使うのにも魔力が必要です。そしてマスターの魔力量にも限りがあるのですから、行き当たりばったりではなく、もっと計画的にダンジョン構築を進めていくべきでしょう。罠や宝箱、あるいはモンスターの配置についても事前によくその効果を検討した上で行うべきです」
「う、うん……そうだね…………ちょっと試してただけなんだけど…………確かに、調子に乗って作り過ぎたみたいだね……」
ぼそぼそと言い訳する俺。
ミオの指摘を受けて、俺はダンジョンの構築計画を考えることにした。
その間、余力のある魔力で魔物を生成し、戦力増強に努めた。
「あの……ミオさん……ダンジョンの構築計画、こんな感じでいかかがな……?」
なぜか配下のお伺いを立てる情けない迷宮主である。
「そうですね……意外とよくできていますね」
「マジで!? やった!」
配下から褒められ、大喜びする迷宮主である。
それから彼女の意見も参考にしつつ、やがてダンジョンの構築計画が完成する。
ちなみにそのダンジョンとは俺自身のことなので、何だか奇妙な感覚だ。自己改革してるみたい。
オーガを六十体ほど量産(五体ほどアークオーガが生まれた)した辺りで戦力増強をいったん止め、ダンジョン構築に力を注ぐことにした。
〈迷宮拡張+8〉を使い、どんどんダンジョンを拡張させていく。
今までと違ってサクサク掘り進めることができるため、癖になりそうなくらい気持ちいい。
もっと掘れ。
もっと掘れ。
がんがん掘れ。
ずんずん掘れ。
ああこれ、ストレス解消になるわ~。
ダンジョンでも一応ストレスが溜まるのである。主にミオのせいで。
「あれ……?」
調子に乗って掘りまくっていた俺は、突然その手応えがなくなったことに気が付いた。
掘り進めていった先が空洞になっていたのである。
「なんだここ……?」
けっこう広い空洞だった。
しかも左右に道が続いている。
そのときその道の向こうから足音が聞こえてきた。
何かがいる。
俺は警戒して身構えた。
やがて幾つかの影が姿を現す。
「犬……?」
それは一見すると犬だった。
だがその手に武器らしきものを持っており、しかも二足歩行をしている。
「まさか、コボルド……?」
コボルドたちが棲息するダンジョンに連結してしまったらしいと気づいたのは、それからすぐのことだった。
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