上 下
11 / 34

第十一話 迷宮主生成

しおりを挟む
ステータス
 名前:ヤマモトタケル
 種族:ダンジョン
 レベル:16
 腕力:0 体力:0 器用:0 敏捷:0 魔力:106 運:42
 スキル:〈迷宮拡張+8〉〈魔物生成+7〉〈武器生成+6〉〈食糧生成+5〉〈罠作成+5〉〈宝箱作成+5〉〈鑑定+3〉〈念話+3〉〈NM生成+2〉〈戦場形成+1〉〈迷宮主生成〉


 ドラゴンの身体が俺の中に取り込まれたことで、俺は急激に成長した。

 しかし、レベルが一気に13も上がるって。
 ドラゴンさん、パネェ。
 不謹慎かもしれないが、俺の中で死んでくれてありがとうと言いたくなる。

 特に魔力の上昇値がすごい。
 これなら魔力の枯渇をきにすることもなく、がんがんスキルを使えるかもしれん。

 そう。スキルだ。
 既存のやつは大きく段階が上がったし、新しいものを三つも覚えた。
 早速、試してみることにする。

 どれから使うか。
 迷う。
 え~と……よし、決めた。
〈迷宮主生成〉だ。

 いや、前から思ってたんだよ。
 このダンジョン、ボスがいねぇなって。
 ボスがいないダンジョンなんて、ダンジョンじゃない。
 イチゴのないショートケーキみたいなもんだ。

 さて。
 例のごとく、強力なモンスターをイメージして……
 ……あれ?

 その瞬間、突如として俺の視界がブラックアウトしていた。







「……な、何が起こったんだ?」

 俺は目を覚ました。
 すぐに意識を失う前のことを思い出す。
 そうか。確か、新しく覚えたスキルを使おうとして……。

 周囲を見渡す。
 ごつごつとした岩肌に囲まれた、洞窟のような場所だ。

「うお!?」

 すぐ近くに醜い怪物の集団がいて、俺は思わず悲鳴を上げていた。
 てか、こいつらゴブリンか?
 醜悪な顔を心配そうに歪め、俺のことを見下ろしてきている。

「って、待て待て待て。何で俺、目が見えてるんだ……?」

 何とも暢気なことに、俺はようやくその異常に気が付いた。

「つか、え? 身体? 俺、身体があるっ?」

 さらに、自分の手足や胴体を確認し、俺は頓狂な声を上げた。
 しかもこの手の長さや足の太さは、明らかに見覚えがある。

「俺じゃん」

 どういう訳か、前世の俺の姿らしかった。




 なぜこんなことが起こったのか。
 直接的な原因は〈迷宮主生成〉を使ったことだろう。
 だがまさか、迷宮主が前世の俺の姿で現れ、しかも俺の意識までがこっちに移されるとは。
 いや――
 俺が意識を転じると、けっこう簡単に以前のダンジョンの方へとその意識を戻すことができた。
 俺の中に、人間の姿をした俺がいるのを認識することができる。
 すげぇ不思議な感覚だ。

 自分を自分で見下ろして気付いたが、俺の頭部に一本、角が生えていた。
 人間の姿だが、若干、変化しているらしい。
 そうだ。一応、こっちの身体のステータスを確認してみるか。


ステータス
 名前:ヤマモトタケル
 種族:ダンジョンの一部(迷宮主)
 レベル:16
 腕力:77 体力:78 器用:82 敏捷:83 魔力:106 運:42
 スキル:〈迷宮拡張+8〉〈魔物生成+7〉〈武器生成+6〉〈食糧生成+5〉〈罠作成+5〉〈宝箱作成+5〉〈鑑定+3〉〈念話+3〉〈NM生成+2〉〈戦場形成+1〉〈迷宮主生成〉


 お、ちゃんと腕力や体力があるぞ。
 てか、種族がダンジョンの一部になってる。
 一応、こっちは本体じゃないってことか。
 名前やレベル、魔力値なんかは本体と同じだけど。

 どうやら二つの身体を同時に操作することも可能なようだ。
 ただこれはもう少し慣れる必要があるだろう。
 情報量が多くなって、頭が疲れる。
 とりあえず俺は、人間の姿の方に意識を置いておくことにした。

「にしても、やっぱ人型の身体があると便利だな!」

 これでようやくしゃべれる。話す相手がいないけど。
 しかも前世と比べて、性能が凄い。
 片手で逆立ちができるし、足がめちゃくちゃ速い。
 今ならボルトより速く走れそうだ。

 ところで、この状態でもスキルを使えるんだろうか?
 やってみよう。
 まずは〈迷宮拡張+8〉だ。

 ぼん、と俺の目の前の岩肌が、一瞬にして一メートルくらい凹んだ。

 ええええっ?
 なに今の?
 すげぇ拡張速度!
 今までの地道な拡張が何だったのかと言いたくなるくらい、とんでもない速さだった。
 俺は楽しくなって、夢中で掘り進めた。
 魔力量が増えたお陰か、どんなに掘っても疲れない。
 おっと。だがこれくらいにしておこう。
 ダンジョンの拡張は、もう少し計画的に進めた方がいいだろう。

 しかし、これなら複層構造も夢じゃないな。
 やっぱダンジョンと言えば複数階層だ。
 そして階層ごとに階層主を設け、徐々に難易度を上げていく、と。
 別にダンジョンの核を護るだけならそんなことする必要はないんだろうけど、そっちの方が断然楽しいしな。

 とりあえずこれで、この姿でもスキルを使えることが分かった。
 けど一応、〈魔物生成+7〉の方も試してみるか。


 ――やたらゴツイ怪物が壁から生えてきた。


 いやまぁ、壁から生えてくるのは分かっていたことだけど、こうして人の姿で目の当たりにするとなかなか迫力がるというか、ぶっちゃけ不気味だ。

 てか、こいつアークゴブリンじゃないな?
 背丈は大差ないが、身体がずっと引き締まっていて、俊敏な印象を受ける。
 俺は〈鑑定+3〉を使ってステータスを確かめた。


ステータス
 種族:オーガ
 レベル:14
 腕力:68 体力:64 器用:57 敏捷:51 魔力:23 運:36
 スキル〈剣技+3〉


 おお、こいつ、オーガだったのか!
 しかもスキルがあるし。
 ステータスの数値もゴブリンとは比べ物にならないくらい高い。
 それから俺はどんどんオーガを生成していった。

 おっと、あんまりやり過ぎるとさすがに魔力がなくなってしまう。
 まだまだ今すぐに試したいスキルがあるんだ。

 さて、次はどれにしようか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。 突然足元に魔法陣が現れる。 そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――― ※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

処理中です...