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第四話 レベルアップ

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 魔剣デストロイ(笑)は意外と強力だった。
 見た目はただの棒だが、それなりに強度があるようで、しかも先端が鋭く尖っていた。
 お陰で非力なゴブリンたちでも、全力で突き立てれば、硬い牙熊の筋肉さえも貫くことができるのだ。

 ゴブリンたちの奇襲を受けた牙熊は、最初こそ暴れてゴブリンの一匹がその剛腕に薙ぎ払われたりはしたが、存外あっさりと地面に倒れ込んだ。
 そこをゴブリンたちにめった刺しにされ、すぐに動かなくなってしまう牙熊。
 南無。

 それから不思議なことが起こった。
 牙熊の身体が、ダンジョンの地面に――つまり俺の中に、沈み込んでいったのだ。

 な、何だこれは……?
 突然、全身を駆け抜ける快感があった。
 俺の中に力が流れ込んでくる……?
 そうか、俺は今、この牙熊を喰っているのか。
 そしてその栄養を摂取している、と。

『レベルが2に上がりました』

 そのとき、脳内で再び声が響いた。
 ステータスを見たときに気づいていたが、どうやらレベルなんてものがあるらしい。
 さらに声は続く。

『〈迷宮拡張〉が〈迷宮拡張+1〉になりました。〈魔物生成〉が〈魔物生成+1〉になりました』






 どうやらダンジョンもとい俺の中で死んだ生き物は、俺の糧になるらしい。
 栄養としてではなく、ゲームで言うところの経験値的な意味で、だ。

 牙熊を倒してレベルアップした俺は、ステータスを改めて確認する。


ステータス
 名前:ヤマモトタケル
 種族:ダンジョン
 レベル:2
 腕力:0 体力:0 器用:0 敏捷:0 魔力:12 運:8
 スキル:〈迷宮拡張+1〉〈魔物生成+1〉〈武器生成〉


 腕力や体力は相変わらず0だ。まぁダンジョンだもんな。
 そこそこ上昇しているのは魔力だ。
 これでもう少しスキルの使用頻度を上げることができるかもしれない。

 で、そのスキルだ。
 +1になったので、きっと以前よりも効果が上がっているはず。
 まずは〈迷宮拡張+1〉を試してみる。

 おっ? おおおおっ!?
 ちょっとだけペース上がってる? いや、確実に上がってる!
 以前は一時間で一メートルほどだったけど、今はこのペースだと二メートルくらいはいきそうだ。
 え? 五十歩百歩?
 うん、そうだね……。

 と思ったが、ただペースが速くなっただけじゃなかった。
 横道を掘れるようになったのだ。
 今までは奥に伸ばしていくことしかできなかったのである。
 ただ一本道なだけのダンジョンって……と思っていたのだが、これを使えばダンジョンらしい複雑な構造にできそうだぜ!

 しかし、ぶっちゃけ、すげぇ地味な作業だ。
 目視しても分からないレベルで、じわじわと拡張されていくだけだから。
 まぁでも、時間は幾らでもあるし、地道に少しずつ広げていこう。


 続いて、〈魔物生成+1〉だ。
 ゴブリンを一日に三匹、合計で十匹まで増やすことができるようになった。
 これで一体一体に武器を持たせれば、牙熊くらいはそう苦もなく倒せそうだ。
 そう思っていたところへ、早速、別の牙熊がやってきた。
 ゴブリンたちは前回のように怯える様子もなく、数と武器の利を生かしてあっさりと牙熊を仕留めてくれた。

 どうやらこの近くには結構な数の牙熊が棲息しているらしい。
 一週間で五匹、ダンジョンにやってきて、徒党を組んだゴブリンによって返り討ちに遭った。
 いずれも単体だ。
 牙熊には群れを作る習性がないのかもしれない。

 お陰で、俺はそれからさらに十日ほどでレベル3に上がったのだった。
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