51 / 60
第51話 もう買い換えないとダメか
しおりを挟む
「こ、これが、ミスリル製の刃……」
銀色の輝きを放つ鍬の刃を手にし、ルイスは思わず感嘆の声を漏らす。
「ああ。手前みそだが、正直かなりいい出来だ。鍬なのが惜しいぐらいだぜ」
満足そうに頷くのは女鍛冶師のゼタだ。
ゼタから武器が完成したとの連絡を受けたルイスは、彼女の工房を訪れていた。
受け取った鍬の刃は、鍛冶に詳しくないルイスから見ても、これまでの鋼の刃とは性能が違うのが明らかだった。
「550万ゴールドも払ったかいがありそうだな」
「はっ、むしろ安いぐらいだ。大事に使えよな? ……ところで」
「ん?」
ルイスの身体を上から下までじっと見てから、ゼタは言った。
「武器はよくなったが、防具はそれでいいのかよ? いや、防具っていうか、ただの作業着だよな、それ?」
「ああ。これは動きやすくて、むしろちょうどいい」
「何の防御力もなさそうだが……。それに、あちこちボロボロだぞ?」
「言われてみれば」
村で農業をしていた頃から使っている、ごく普通の作業着だ。
ただの農作業だけなら、鍬と違ってそれなりにもつのだが、最近は冒険の際にも使っているため、あっという間にボロボロになってしまうのだ。
「この街に来る直前に新調したばかりだったのに……」
「お、おい、テメェ、よく見たらここの穴から、パンツが見えてるじゃねぇか!」
「ほんとだ。もう買い換えないとダメか」
「早く新しいのにしろ!」
ゼタはそう叫んでから、
「まずは緊急でこれと同じやつでいいが、もっと丈夫な服にすべきだと思うぞ? 思い防具を身に着けられねぇ魔法系の戦士なんかは、特殊な素材で作ったローブなんかを装備している。戦士専門の服飾店に行って、オーダーメイドで作業着を作ってもらえよ」
金属製の防具には及ばないが、軽くてある程度の防御力を持つ衣服を作ることができるらしい。
「なるほど、それはいいかもな(後でフィネにおススメの店を訊いてみるか)」
ゼタに礼を言って工房を後にしたルイスは冒険者ギルドへ。
「ん? なんかやけに騒がしいな? 建物が揺れてるし……」
「あ、ルイスさん、いらっしゃいです!」
「この音と揺れは何なんだ?」
「ええと、私も詳しいことは分からないんですが……なんか、ギルマスにお客様みたいで……」
「客?」
どう考えても客が来たからといって、こんな轟音が鳴り響くようなことはないと思うルイスだった。
……もちろんこの原因がルイスにあることなど、当の本人は知る由もない。
「実はさっき、鍛冶屋に頼んでいた武器ができあがって、取りに行ってきたんだ。その性能を確かめてみたいから、骨のありそうな魔物の討伐依頼とかないか?」
「そうなんですね! だったらこれなんかどうでしょう!」
フィネが提案してきた依頼は、ここ領都から南に二十キロほど行ったところにある、池に出没する魔物の討伐に関するものだった。
「サハギンロード?」
「はい! サハギンっていう、半魚人の魔物がいるんですけど、それの最上位種です! ゴブリンでいう、ゴブリンキングですね! ゴブリンほどの繁殖力ではないんですが、それでも最近この池でサハギンが大繁殖しているみたいで、周辺の村や街にまで被害が出ているみたいなです! それで調査したところ、サハギンロードらしき巨大な半魚人が確認できたそうです!」
「そいつを倒せばいいってわけだな」
「そうです! 普通はBランク冒険者が数人必要な難易度なんですが、ルイスさんの実力ならソロでも十分かと!」
Bランク冒険者であるルイスだが、その実力はAランク冒険者に匹敵すると、冒険者ギルドは考えていた。
本当は早くAランク冒険者に昇格させたいのだが、Aランク以上は様々な条件をクリアする必要があり、ギルドマスター権限でも難しい。
その代わり、Aランク相当の力があるとして、難易度の高い依頼も紹介していた。
「この池か。よし、じゃあ早速行ってくるとしよう」
地図で池の場所をしっかり確認して、ルイスは出発した。
銀色の輝きを放つ鍬の刃を手にし、ルイスは思わず感嘆の声を漏らす。
「ああ。手前みそだが、正直かなりいい出来だ。鍬なのが惜しいぐらいだぜ」
満足そうに頷くのは女鍛冶師のゼタだ。
ゼタから武器が完成したとの連絡を受けたルイスは、彼女の工房を訪れていた。
受け取った鍬の刃は、鍛冶に詳しくないルイスから見ても、これまでの鋼の刃とは性能が違うのが明らかだった。
「550万ゴールドも払ったかいがありそうだな」
「はっ、むしろ安いぐらいだ。大事に使えよな? ……ところで」
「ん?」
ルイスの身体を上から下までじっと見てから、ゼタは言った。
「武器はよくなったが、防具はそれでいいのかよ? いや、防具っていうか、ただの作業着だよな、それ?」
「ああ。これは動きやすくて、むしろちょうどいい」
「何の防御力もなさそうだが……。それに、あちこちボロボロだぞ?」
「言われてみれば」
村で農業をしていた頃から使っている、ごく普通の作業着だ。
ただの農作業だけなら、鍬と違ってそれなりにもつのだが、最近は冒険の際にも使っているため、あっという間にボロボロになってしまうのだ。
「この街に来る直前に新調したばかりだったのに……」
「お、おい、テメェ、よく見たらここの穴から、パンツが見えてるじゃねぇか!」
「ほんとだ。もう買い換えないとダメか」
「早く新しいのにしろ!」
ゼタはそう叫んでから、
「まずは緊急でこれと同じやつでいいが、もっと丈夫な服にすべきだと思うぞ? 思い防具を身に着けられねぇ魔法系の戦士なんかは、特殊な素材で作ったローブなんかを装備している。戦士専門の服飾店に行って、オーダーメイドで作業着を作ってもらえよ」
金属製の防具には及ばないが、軽くてある程度の防御力を持つ衣服を作ることができるらしい。
「なるほど、それはいいかもな(後でフィネにおススメの店を訊いてみるか)」
ゼタに礼を言って工房を後にしたルイスは冒険者ギルドへ。
「ん? なんかやけに騒がしいな? 建物が揺れてるし……」
「あ、ルイスさん、いらっしゃいです!」
「この音と揺れは何なんだ?」
「ええと、私も詳しいことは分からないんですが……なんか、ギルマスにお客様みたいで……」
「客?」
どう考えても客が来たからといって、こんな轟音が鳴り響くようなことはないと思うルイスだった。
……もちろんこの原因がルイスにあることなど、当の本人は知る由もない。
「実はさっき、鍛冶屋に頼んでいた武器ができあがって、取りに行ってきたんだ。その性能を確かめてみたいから、骨のありそうな魔物の討伐依頼とかないか?」
「そうなんですね! だったらこれなんかどうでしょう!」
フィネが提案してきた依頼は、ここ領都から南に二十キロほど行ったところにある、池に出没する魔物の討伐に関するものだった。
「サハギンロード?」
「はい! サハギンっていう、半魚人の魔物がいるんですけど、それの最上位種です! ゴブリンでいう、ゴブリンキングですね! ゴブリンほどの繁殖力ではないんですが、それでも最近この池でサハギンが大繁殖しているみたいで、周辺の村や街にまで被害が出ているみたいなです! それで調査したところ、サハギンロードらしき巨大な半魚人が確認できたそうです!」
「そいつを倒せばいいってわけだな」
「そうです! 普通はBランク冒険者が数人必要な難易度なんですが、ルイスさんの実力ならソロでも十分かと!」
Bランク冒険者であるルイスだが、その実力はAランク冒険者に匹敵すると、冒険者ギルドは考えていた。
本当は早くAランク冒険者に昇格させたいのだが、Aランク以上は様々な条件をクリアする必要があり、ギルドマスター権限でも難しい。
その代わり、Aランク相当の力があるとして、難易度の高い依頼も紹介していた。
「この池か。よし、じゃあ早速行ってくるとしよう」
地図で池の場所をしっかり確認して、ルイスは出発した。
0
お気に入りに追加
1,366
あなたにおすすめの小説
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる