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第46話 いや意味が分からん
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ルイスは激怒していた。
普段は温厚な彼だが、唯一、許せないことがあった。
それは自分の農地を荒らされることだった。
すぐ足元には潰れたリンゴが転がっており、それを見て彼は涙を流す。
「ああ……すまない……俺がもっと早く戻ってきていれば……」
一方、騎士たちは突然現れた謎の男が、いきなり涙しているのを見て後退っている。
隊長格の一人が、恐る恐る訊ねた。
「お、お前の仕業か、この畑は?」
「……そうだ、俺が耕して、作物を育てていた」
震える声で応じるルイス。
「荒らしたことは確かにすまないと思うが、そもそもここは元々、我々騎士団が演習場として利用していた場所だ。そこで作物を育てていたお前にも問題があるだろう」
「それはそうかもしれない……だが、例えば誰かの子供が勝手にあんたの私有地に入ってきたとしよう。そのときあんたはどうする? その子供を殺すか? ここに入ってきた子供が悪いと言って殺すのか? お前が言っていることは、そういうことだっ!!」
「いや意味が分からん」
ルイスにとって、作物は我が子のようなものなのである。
……その割に投擲したり盾に使ったりしているが、それはそれだ。
「子供は言えば出ていくだろうに。だがこの畑はそうもいくまい」
「いいや、言ってくれれば別の場所に動かした!」
「動かす???」
と、そのとき。
言い合う彼らのところへ、ある人物が近づいてきた。
「おい、何してやがる? 演習はどうした?」
「「「っ……アンジュ騎士団長!?」」」
騎士たちが慌てて背筋を伸ばし、一斉に敬礼する。
「騎士団長?」
振り返ったルイスが見たのは、騎士団長というには随分と若い女性だった。
年齢はルイスとそう変わらないように思える。
かなり背が高く、すらりとした体型だ。
長い髪は燃え盛る炎のように赤く、鋭い瞳はそれよりさらに赤々としている。
その赤い目で、じろりとルイスを睨みつけてきた。
「誰だ、こいつは? 部外者を勝手に連れてくるんじゃねぇよ」
「い、いえっ……この男は……その、ここを畑にした張本人らしく、我らが演習をしていると、怒鳴り込んできたのであります!」
「ああん?」
騎士団長の女は、そこでようやくいつもの演習場所が農地にされていることに気づいた。
「おいおい、何だ、こいつはよ? うちの演習場を、何で野菜なんかを育ててやがる?」
「そ、それがこの男の仕業らしいのです! そして畑を荒らしたことに激怒しているようでして……」
「意味が分からねぇな。とにかく邪魔するってなら、とっとと排除しやがれ」
「「「はっ!」」」
女の指示を受けて、騎士たちがルイスを無理やりここから連れ出そうとする。
「ん、何だ……ビクともしない……?」
「こいつ、なんて力だ……?」
「まるで岩のような……うおっ!?」
騎士たちが宙を舞った。
ルイスが放り投げたのである。
「ちっ、そんなやつすら排除できねぇのかよ?」
「……謝れ」
「ああん?」
「謝れ。お前がこいつらの代表者なんだろう? だったら謝れ。潰された作物たちはもう元に戻らない。だがせめて誠心誠意、謝罪しろ、作物たちに! 申し訳ありませんでしたってなっ!!」
ルイスの訴えに、女騎士団長が叫んだ。
「うるせえええええええっ!!」
騎士たちが「ひっ」と悲鳴を漏らす。
「ギャアギャアとうるせぇやつだなぁ、おい! お前が誰だか知らねぇが、このオレ様になに、命令してやがんだよ、ああん? ぶち殺すぞ、こら!」
そう怒鳴る彼女の身体から、ゴウッ、と炎が燃え上がった。
「おおお、おい、お前っ……団長を怒らせたらやべぇぞ!?」
「むしろお前の方が謝れ!」
「マジで殺されるって!」
慌てて騎士たちがルイスを促すが、当然ルイスはまったく引かない。
「何で俺が謝らないといけないんだ? 謝るのは向こうの方だ!」
「はっ、良い度胸じゃねぇかよ! そんなにオレ様を謝らせてぇならっ……力づくで謝らせてみろっ!」
普段は温厚な彼だが、唯一、許せないことがあった。
それは自分の農地を荒らされることだった。
すぐ足元には潰れたリンゴが転がっており、それを見て彼は涙を流す。
「ああ……すまない……俺がもっと早く戻ってきていれば……」
一方、騎士たちは突然現れた謎の男が、いきなり涙しているのを見て後退っている。
隊長格の一人が、恐る恐る訊ねた。
「お、お前の仕業か、この畑は?」
「……そうだ、俺が耕して、作物を育てていた」
震える声で応じるルイス。
「荒らしたことは確かにすまないと思うが、そもそもここは元々、我々騎士団が演習場として利用していた場所だ。そこで作物を育てていたお前にも問題があるだろう」
「それはそうかもしれない……だが、例えば誰かの子供が勝手にあんたの私有地に入ってきたとしよう。そのときあんたはどうする? その子供を殺すか? ここに入ってきた子供が悪いと言って殺すのか? お前が言っていることは、そういうことだっ!!」
「いや意味が分からん」
ルイスにとって、作物は我が子のようなものなのである。
……その割に投擲したり盾に使ったりしているが、それはそれだ。
「子供は言えば出ていくだろうに。だがこの畑はそうもいくまい」
「いいや、言ってくれれば別の場所に動かした!」
「動かす???」
と、そのとき。
言い合う彼らのところへ、ある人物が近づいてきた。
「おい、何してやがる? 演習はどうした?」
「「「っ……アンジュ騎士団長!?」」」
騎士たちが慌てて背筋を伸ばし、一斉に敬礼する。
「騎士団長?」
振り返ったルイスが見たのは、騎士団長というには随分と若い女性だった。
年齢はルイスとそう変わらないように思える。
かなり背が高く、すらりとした体型だ。
長い髪は燃え盛る炎のように赤く、鋭い瞳はそれよりさらに赤々としている。
その赤い目で、じろりとルイスを睨みつけてきた。
「誰だ、こいつは? 部外者を勝手に連れてくるんじゃねぇよ」
「い、いえっ……この男は……その、ここを畑にした張本人らしく、我らが演習をしていると、怒鳴り込んできたのであります!」
「ああん?」
騎士団長の女は、そこでようやくいつもの演習場所が農地にされていることに気づいた。
「おいおい、何だ、こいつはよ? うちの演習場を、何で野菜なんかを育ててやがる?」
「そ、それがこの男の仕業らしいのです! そして畑を荒らしたことに激怒しているようでして……」
「意味が分からねぇな。とにかく邪魔するってなら、とっとと排除しやがれ」
「「「はっ!」」」
女の指示を受けて、騎士たちがルイスを無理やりここから連れ出そうとする。
「ん、何だ……ビクともしない……?」
「こいつ、なんて力だ……?」
「まるで岩のような……うおっ!?」
騎士たちが宙を舞った。
ルイスが放り投げたのである。
「ちっ、そんなやつすら排除できねぇのかよ?」
「……謝れ」
「ああん?」
「謝れ。お前がこいつらの代表者なんだろう? だったら謝れ。潰された作物たちはもう元に戻らない。だがせめて誠心誠意、謝罪しろ、作物たちに! 申し訳ありませんでしたってなっ!!」
ルイスの訴えに、女騎士団長が叫んだ。
「うるせえええええええっ!!」
騎士たちが「ひっ」と悲鳴を漏らす。
「ギャアギャアとうるせぇやつだなぁ、おい! お前が誰だか知らねぇが、このオレ様になに、命令してやがんだよ、ああん? ぶち殺すぞ、こら!」
そう怒鳴る彼女の身体から、ゴウッ、と炎が燃え上がった。
「おおお、おい、お前っ……団長を怒らせたらやべぇぞ!?」
「むしろお前の方が謝れ!」
「マジで殺されるって!」
慌てて騎士たちがルイスを促すが、当然ルイスはまったく引かない。
「何で俺が謝らないといけないんだ? 謝るのは向こうの方だ!」
「はっ、良い度胸じゃねぇかよ! そんなにオレ様を謝らせてぇならっ……力づくで謝らせてみろっ!」
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