上 下
38 / 60

第38話 税金がかかるのか

しおりを挟む
 領都の冒険者ギルドに戻ったルイスは、職員のフィネを呼び出す。

「あっ、ルイスさん! どうやらパーティに加入されたみたいですね!」

 リゼたちも一緒だったせいか、勘違いされてしまった。

「いや、別にパーティに入ったわけじゃない」
「そうなんですか? まだお試しってところですかね? 良いと思います! 相性もありますし、試しに一緒に活動してみてから決めるのが吉です! それで、今日は依頼を探されているわけですね!」
「依頼じゃなくて報告だ。これを見てくれ」

 そう言って、ルイスはカウンターの上に白菜を置いた。

「……白菜?」

 首を傾げるフィネ。

「これはただの袋だ」
「は、白菜の袋……初めて見ました! かわいいですね! そういえば、皆さんも白菜の服! どこに売ってるんですか?」

 どうやら彼女は白菜のデザインだと思っているようだ。

「本物の白菜だぞ? まぁそんなことより、ゴブリンを倒してきたんだ。報酬額を計算してくれないか?」

 ルイスが白菜を広げ、中に入った大量の角を見せる。

「ゴブリンを倒してこられたんですね! では確認させてええええええええええええええっ!? こここ、これ全部っ、ゴブリンの角ですかっ!?」

 そのあまりの量に仰天し、フィネは大声で叫んでしまう。
 それを聞きつけ、他の職員たちが何だ何だと集まってきた。

「おいおい、なんて量のゴブリンの角だ? この量は初めて見たぞ」
「これ、変異種の角も交ってないか?」
「本当だ! しかも結構あるぞ!」

 魔物の素材に詳しい彼らにとっても珍しいことだったらしく、一気に騒ぎになる。
 フィネが慌てて訊いてきた。

「る、ルイスさんっ、これ、一体どうしたんですかっ?」
「西の森でゴブリンの巣穴を見つけたんだ」
「まさか巣穴に入ったんですか!? いくらゴブリンでも、Cランク冒険者一人じゃ危険ですよ!?」

 叫ぶフィネだが、一方で他の職員が首を傾げながら、

「いや、仮に巣穴のゴブリンを殲滅したところで、こんな数は集まらない……ま、まさか、ゴブリンキングがっ!? だとしたら大変だ! ゴブリンキングが率いる群れは、凄まじい早さで拡大していく! 一刻も早く対応しなければ……っ!」
「ゴブリンキングなら倒したぞ」
「って、倒したああああああああああああああっ!?」
「見ろ、めちゃくちゃデカい角もあるぞ!? これってまさか、ゴブリンキングの角じゃないか!?」
「ほ、本当だ!? マジで倒したのか!?」

 ざわつく職員たちに、ルイスは経緯を説明した。

「ゴブリンキングのいる巣穴に一人で乗り込んで、ゴブリンを殲滅させた……?」
「しかも捕まっていた三人を助けて……」
「な、なるほど、見慣れない顔だが、もしかして上級冒険者なのか……」
「い、いえ、ルイスさんは、新人冒険者のはずです……」
「「「新人冒険者!?」」」

 フィネがおずおずと説明すると、先輩職員たちはあり得ないとばかりに叫んだ。

「そ、そうか……じゃあ君が、噂の……」
「サブギルドマスターが、まったく無名の男を、無理やり試験にねじ込んだっていう……」
「【農民】という天職で、戦士としての活動実績もないと聞いていたが……」

 その後、ゴブリンの角は数が多く、また特殊な角も含まれているということで、いったん預かられることになった。
 そうして三十分ほどの査定が終わり、

「お待たせしました! こちらが報酬になります! 税金の30%を引いた金額となっているので、確認をお願いします!」
「げっ、税金がかかるのか」
「そうです! 金額に関係なく、一律30%があらかじめ徴収される仕組みです!」

 30%……結構な金額だな……と思いつつ、恐る恐る確認してみると、

「217万ゴールド?」
「はい! 税引き前だと310万ゴールド! 新人冒険者の最初の報酬としては、歴代最高額みたいです!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

処理中です...