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第31話 何だ、その鍬は
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「やっぱり武器は重要だろう。替えの鍬を幾つも持ってるとはいえ、壊されて取り出すまでに隙ができてしまう。あのボスミノタウロスよりも強い魔物と戦うことになったとき、それが致命的な隙となってしまうかもしれない」
そう考えたルイスは、冒険者としての活動をスタートするにあたって、より強度の高い鍬を作ることにした。
そこで早朝の農作業の後、いったん冒険者ギルドを訪れて担当職員のフィネからおススメの鍛冶屋を何件か聞き出し、訪ねてみることにしたのだった。
だが……。
「なに? 鍬だと? おいおい、うちは武器専門だぞ? え? 鍬は武器? 馬鹿言ってんじゃねぇよ、冷やかしならとっとと帰りな!」
「は? 鍬の刃を打ってほしい? 前例がないから無理だな」
「ぎゃはははっ! 鍬が欲しいなら、農具店にでも行きな!」
どの鍛冶屋に行っても、ほとんど門前払いされてしまう。
鍬を武器として使っていると言っても、揶揄っているのだと思われて、まったく信じてもらえないのである。
「教えてもらった最後の一件……」
ついには一件を残すのみとなってしまった。
しかもその鍛冶屋というのが、
『腕は確かな方なんですが、かなり偏屈な職人さんらしいです! なんでも、自分の認めた戦士の武器じゃなければ、絶対に打ってくれないとか! 一応、お教えしておきますけど、ルイスさんはまだ新人ですし、もう少し経験を積んでからの方がいいかもしれません!』
そんな忠告を受けていたところだった。
「まぁダメならダメで仕方がない」
ダメ元でその最後の一件を訪ねるルイス。
「ええと、この辺のはずだが……」
「うるせぇ! とっとと帰りやがれ! オレはてめぇみてぇな野郎の武器を打つ気はねぇ!」
突然、そんな怒号が聞こえてきたかと思うと、年季の入った建物の入り口から、屈強そうな男が転がり出てきた。
「ひ、ひええええええっ!」
よほど怖い思いをしたのか、そんな悲鳴を上げて涙目で逃げるように去っていく。
「…………この建物だな」
どうやら男が飛び出してきた建物が、ルイスの目的地らしい。
確かによく見ると鍛冶工房らしき建物である。
回れ右して帰ろうかとも思ったが、せっかく冒険者として、十二年越しに歩み始めた戦士人生である。
その門出に際して、やはり強力な武器は欲しい。
「ごめんください」
意を決したルイスは、その鍛冶工房の門を叩いた。
「ああ、今度は何だよ?」
工房内から面倒そうに姿を現したのは、ルイスの予想に反して若い女性だった。
腕の良い鍛冶職人といえば、脂の乗った四十代や五十代といったイメージだ。
だが目の前の女性は恐らく、ルイスとあまり変わらない年齢だろう。
「武器を打ってほしい。こんな感じの鍬だ。柄の部分はこれでいいが、刃のところが弱くて困っている」
「帰れ」
冷たい一言だけ言い残すと、女性は踵を返して工房内に引っ込んでしまった。
……ドダドダドダッ!!
と思いきや、激しい足音と共に工房から飛び出してきた。
「ちょ、ちょっと待て!? 何だ、その鍬は!? おい、それはどこで手に入れた!?」
「え? 故郷の村の鍛冶師に作ってもらったんだが……」
ルイスの生まれ育った辺境の村には、村で唯一、鍛冶の技術を持っていた老人がいた。
若い頃にはかなり有名な鍛冶師だったとかなんとか聞いたことがあるが、本当かどうかは分からない。
寡黙な老人で、本人が何も語ろうとはしなかったからだ。
ルイスが使っている鍬は、その老人に打ってもらったものである。
それ以前に使っていた鍬はもっと壊れやすくて、下手すれば二、三回耕しただけで、刃が曲がってしまっていたのが、老人の鍬に変えてからは格段に壊れにくくなった。
「その爺さんが言うには、村で手に入るような素材じゃ、これが限界だって。だから何本もストックを作ってもらっていたんだ」
「いやいやいや、この鍬の刃が壊れる!? 確かにただの鋼製だがよ、そこらのミスリル製の武器よりよっぽど強固なはずだぜ!?」
そう考えたルイスは、冒険者としての活動をスタートするにあたって、より強度の高い鍬を作ることにした。
そこで早朝の農作業の後、いったん冒険者ギルドを訪れて担当職員のフィネからおススメの鍛冶屋を何件か聞き出し、訪ねてみることにしたのだった。
だが……。
「なに? 鍬だと? おいおい、うちは武器専門だぞ? え? 鍬は武器? 馬鹿言ってんじゃねぇよ、冷やかしならとっとと帰りな!」
「は? 鍬の刃を打ってほしい? 前例がないから無理だな」
「ぎゃはははっ! 鍬が欲しいなら、農具店にでも行きな!」
どの鍛冶屋に行っても、ほとんど門前払いされてしまう。
鍬を武器として使っていると言っても、揶揄っているのだと思われて、まったく信じてもらえないのである。
「教えてもらった最後の一件……」
ついには一件を残すのみとなってしまった。
しかもその鍛冶屋というのが、
『腕は確かな方なんですが、かなり偏屈な職人さんらしいです! なんでも、自分の認めた戦士の武器じゃなければ、絶対に打ってくれないとか! 一応、お教えしておきますけど、ルイスさんはまだ新人ですし、もう少し経験を積んでからの方がいいかもしれません!』
そんな忠告を受けていたところだった。
「まぁダメならダメで仕方がない」
ダメ元でその最後の一件を訪ねるルイス。
「ええと、この辺のはずだが……」
「うるせぇ! とっとと帰りやがれ! オレはてめぇみてぇな野郎の武器を打つ気はねぇ!」
突然、そんな怒号が聞こえてきたかと思うと、年季の入った建物の入り口から、屈強そうな男が転がり出てきた。
「ひ、ひええええええっ!」
よほど怖い思いをしたのか、そんな悲鳴を上げて涙目で逃げるように去っていく。
「…………この建物だな」
どうやら男が飛び出してきた建物が、ルイスの目的地らしい。
確かによく見ると鍛冶工房らしき建物である。
回れ右して帰ろうかとも思ったが、せっかく冒険者として、十二年越しに歩み始めた戦士人生である。
その門出に際して、やはり強力な武器は欲しい。
「ごめんください」
意を決したルイスは、その鍛冶工房の門を叩いた。
「ああ、今度は何だよ?」
工房内から面倒そうに姿を現したのは、ルイスの予想に反して若い女性だった。
腕の良い鍛冶職人といえば、脂の乗った四十代や五十代といったイメージだ。
だが目の前の女性は恐らく、ルイスとあまり変わらない年齢だろう。
「武器を打ってほしい。こんな感じの鍬だ。柄の部分はこれでいいが、刃のところが弱くて困っている」
「帰れ」
冷たい一言だけ言い残すと、女性は踵を返して工房内に引っ込んでしまった。
……ドダドダドダッ!!
と思いきや、激しい足音と共に工房から飛び出してきた。
「ちょ、ちょっと待て!? 何だ、その鍬は!? おい、それはどこで手に入れた!?」
「え? 故郷の村の鍛冶師に作ってもらったんだが……」
ルイスの生まれ育った辺境の村には、村で唯一、鍛冶の技術を持っていた老人がいた。
若い頃にはかなり有名な鍛冶師だったとかなんとか聞いたことがあるが、本当かどうかは分からない。
寡黙な老人で、本人が何も語ろうとはしなかったからだ。
ルイスが使っている鍬は、その老人に打ってもらったものである。
それ以前に使っていた鍬はもっと壊れやすくて、下手すれば二、三回耕しただけで、刃が曲がってしまっていたのが、老人の鍬に変えてからは格段に壊れにくくなった。
「その爺さんが言うには、村で手に入るような素材じゃ、これが限界だって。だから何本もストックを作ってもらっていたんだ」
「いやいやいや、この鍬の刃が壊れる!? 確かにただの鋼製だがよ、そこらのミスリル製の武器よりよっぽど強固なはずだぜ!?」
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