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第24話 まずは見習いからね
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翌日、僕とファンは連れ立って冒険者ギルドに向かっていた。
「セリウスも冒険者になるの?」
「うん、そのつもりでこの街にきたからね」
ファンもまだ冒険者登録をしていないらしく、これから一緒に窓口で登録をするつもりだ。
冒険者ギルドは街の中心街にあった。
かなり立派な建物だが、デザイン性の乏しい武骨な外観である。
そんな威圧感すらある建物を出入りしているのは、よくある冒険者ギルドのイメージ通り、屈強な冒険者たちばかり……というわけではなかった。
意外と若い女性の冒険者も少なくないし、まだ十代半ばくらいと思われる少年少女たちの姿もある。
もちろんここで働いている職員や業者、それに依頼者などもいるだろう。
さすがに僕たちのような十歳くらいの子供は珍しいようだが、別に注目を浴びることもなかった。
素行の悪い先輩冒険者に絡まれるイベントが発生するかも、と思っていたが、そんな気配はなさそうである。
「冒険者登録したいんだ」
「同じく」
「あら、随分と可愛らしい登録希望者ね」
受付窓口のお姉さんに声をかけると、微笑ましいものを見る目をされた。
「あなたたち、年齢は?」
「僕は十歳」
「十一よ」
どうやらファンは僕の一つ年上らしい。
「それならまずは見習いからね」
「「見習い?」」
「十二歳以下は、すぐ正規の冒険者になれるっていうわけじゃないのよ」
見習い冒険者としての経験を積んで、それから初めて正規の冒険者として認めてもらえるらしい。
「じゃあ、十二歳になるまで、冒険者になれないってこと?」
「そういうわけじゃないわ。もし試験に合格すれば、年齢にかかわらず冒険者になることができるの」
「試験はどうすれば受けれるの?」
「見習いとしての実績を判断し、ギルドが認めれば試験を受けることができるわ」
……なかなか面倒だな。
ファンもそう思ったのか、
「今すぐ試験でもいいわ。実力で認めさせるから」
相変わらず猪突猛進少女である。
受付嬢は苦笑して、
「そういうわけにはいかないのよ……。そもそもこの見習い制度は、あなたのような血気盛んな子が、無茶をしてあっさり命を失ってしまうのを避けるためにあるのだから」
確かにファンのような後先考えないタイプは早死にしそうだ。
「……むう」
本人も少しは自覚があったのか、何も言い返せず押し黙った。
「まぁでも安心していいわ。本当に実力があれば、試験までそうかからないわよ。過去には最短で一か月で見習いから正規冒険者になった人もいるから」
そんなわけで、僕とファンはひとまず見習い冒険者として登録することにした。
一応、見習い用の仮冒険者証であっても、身分証として機能するようだ。
「登録料は一人金貨五枚ね。もしくは、見習いの報酬をそれに当てることも可能よ。ただしその場合、最低でも金貨五枚分を稼ぎ切るまで正規冒険者にはなれないけれど」
金貨五枚はなかなかの大金だ。
金貨一枚あれば、普通の庶民が一か月暮らせるらしいし。
……王族だった僕にはこの辺りの金銭感覚がさっぱりだが。
ファンは堂々と応じた。
「支払うわ」
「いや、君そんなお金あった?」
「……貸してもらう」
勝手に人をあてにしないでもらいたい。
と思いつつも、仕方なく彼女の分を含め、金貨十枚を支払う。
「今ある見習いの依頼はこんなところね」
「ええと……土木工事のお手伝い、街のパトロール、迷子のペット探し、下水道の掃除、街の清掃、ベテラン冒険者の荷物持ち……」
冒険者というか、ほとんど街の便利屋である。
「まぁ一つ一つやっていくとしよう」
「おれの名はポッツ、Eランク冒険者だ! 二人とも見習いになったばかりで、今日が初めてだってな! おれは週に三回はこのパトロール仕事をしているから、分からないことがあれば何でも聞いてくれ!」
見習い冒険者になった翌日。
やけに威勢のいい冒険者と街のパトロールに来ていた。
ポッツと名乗った彼は、見た感じ三十代半ばくらいだろうか。
なお、Eランクというのは冒険者の中でも最低ランクに位置付けられている。
「「よろしくお願いします」」
都市の治安維持は、基本的に領主が組織する騎士団の役目だ。
だがここレーネの街は、領内でも辺境に位置するせいか、歴史的に派遣される騎士団の人員が少なく、慢性的に手が足りていないという。
そのため冒険者ギルドにその役割の一部を外注しているらしい。
幸いレーネは冒険者の多い街で、見習いなどを筆頭に、安く依頼を引き受けてくれる。
パトロール先は主に治安の悪い区域だ。
真昼に路上での刃傷沙汰も、決して珍しいことではないとか。
「街中だからといって舐めてはダメだぞ! 危険な目に遭うことも少なくない! 油断は禁物だ!」
ポッツは先輩らしくパトロールの心得を教えてくれる。
「むっ! 早速トラブル発見! 見ろ、あそこで二人組の男が何やら揉めているぞ!」
そう言ってポッツが指さした先には、確かに男二人が剣呑な雰囲気で睨み合っていた。
「トラブルは未然に解決するのが吉! さあ、手が出る前に割り込むぞ!」
意気揚々と現場に向かおうとするポッツに、暴力獣耳っ娘は問う。
「斬るの?」
「そう、斬って止める……いやいや、いきなりそんな物騒な手を取るわけないだろう!? って、何でもう剣を抜いている!? 早く鞘に戻すんだ!」
「残念ね」
……治安よりもむしろ、この女の脳筋思考をどうにかすべきかもしれない。
「セリウスも冒険者になるの?」
「うん、そのつもりでこの街にきたからね」
ファンもまだ冒険者登録をしていないらしく、これから一緒に窓口で登録をするつもりだ。
冒険者ギルドは街の中心街にあった。
かなり立派な建物だが、デザイン性の乏しい武骨な外観である。
そんな威圧感すらある建物を出入りしているのは、よくある冒険者ギルドのイメージ通り、屈強な冒険者たちばかり……というわけではなかった。
意外と若い女性の冒険者も少なくないし、まだ十代半ばくらいと思われる少年少女たちの姿もある。
もちろんここで働いている職員や業者、それに依頼者などもいるだろう。
さすがに僕たちのような十歳くらいの子供は珍しいようだが、別に注目を浴びることもなかった。
素行の悪い先輩冒険者に絡まれるイベントが発生するかも、と思っていたが、そんな気配はなさそうである。
「冒険者登録したいんだ」
「同じく」
「あら、随分と可愛らしい登録希望者ね」
受付窓口のお姉さんに声をかけると、微笑ましいものを見る目をされた。
「あなたたち、年齢は?」
「僕は十歳」
「十一よ」
どうやらファンは僕の一つ年上らしい。
「それならまずは見習いからね」
「「見習い?」」
「十二歳以下は、すぐ正規の冒険者になれるっていうわけじゃないのよ」
見習い冒険者としての経験を積んで、それから初めて正規の冒険者として認めてもらえるらしい。
「じゃあ、十二歳になるまで、冒険者になれないってこと?」
「そういうわけじゃないわ。もし試験に合格すれば、年齢にかかわらず冒険者になることができるの」
「試験はどうすれば受けれるの?」
「見習いとしての実績を判断し、ギルドが認めれば試験を受けることができるわ」
……なかなか面倒だな。
ファンもそう思ったのか、
「今すぐ試験でもいいわ。実力で認めさせるから」
相変わらず猪突猛進少女である。
受付嬢は苦笑して、
「そういうわけにはいかないのよ……。そもそもこの見習い制度は、あなたのような血気盛んな子が、無茶をしてあっさり命を失ってしまうのを避けるためにあるのだから」
確かにファンのような後先考えないタイプは早死にしそうだ。
「……むう」
本人も少しは自覚があったのか、何も言い返せず押し黙った。
「まぁでも安心していいわ。本当に実力があれば、試験までそうかからないわよ。過去には最短で一か月で見習いから正規冒険者になった人もいるから」
そんなわけで、僕とファンはひとまず見習い冒険者として登録することにした。
一応、見習い用の仮冒険者証であっても、身分証として機能するようだ。
「登録料は一人金貨五枚ね。もしくは、見習いの報酬をそれに当てることも可能よ。ただしその場合、最低でも金貨五枚分を稼ぎ切るまで正規冒険者にはなれないけれど」
金貨五枚はなかなかの大金だ。
金貨一枚あれば、普通の庶民が一か月暮らせるらしいし。
……王族だった僕にはこの辺りの金銭感覚がさっぱりだが。
ファンは堂々と応じた。
「支払うわ」
「いや、君そんなお金あった?」
「……貸してもらう」
勝手に人をあてにしないでもらいたい。
と思いつつも、仕方なく彼女の分を含め、金貨十枚を支払う。
「今ある見習いの依頼はこんなところね」
「ええと……土木工事のお手伝い、街のパトロール、迷子のペット探し、下水道の掃除、街の清掃、ベテラン冒険者の荷物持ち……」
冒険者というか、ほとんど街の便利屋である。
「まぁ一つ一つやっていくとしよう」
「おれの名はポッツ、Eランク冒険者だ! 二人とも見習いになったばかりで、今日が初めてだってな! おれは週に三回はこのパトロール仕事をしているから、分からないことがあれば何でも聞いてくれ!」
見習い冒険者になった翌日。
やけに威勢のいい冒険者と街のパトロールに来ていた。
ポッツと名乗った彼は、見た感じ三十代半ばくらいだろうか。
なお、Eランクというのは冒険者の中でも最低ランクに位置付けられている。
「「よろしくお願いします」」
都市の治安維持は、基本的に領主が組織する騎士団の役目だ。
だがここレーネの街は、領内でも辺境に位置するせいか、歴史的に派遣される騎士団の人員が少なく、慢性的に手が足りていないという。
そのため冒険者ギルドにその役割の一部を外注しているらしい。
幸いレーネは冒険者の多い街で、見習いなどを筆頭に、安く依頼を引き受けてくれる。
パトロール先は主に治安の悪い区域だ。
真昼に路上での刃傷沙汰も、決して珍しいことではないとか。
「街中だからといって舐めてはダメだぞ! 危険な目に遭うことも少なくない! 油断は禁物だ!」
ポッツは先輩らしくパトロールの心得を教えてくれる。
「むっ! 早速トラブル発見! 見ろ、あそこで二人組の男が何やら揉めているぞ!」
そう言ってポッツが指さした先には、確かに男二人が剣呑な雰囲気で睨み合っていた。
「トラブルは未然に解決するのが吉! さあ、手が出る前に割り込むぞ!」
意気揚々と現場に向かおうとするポッツに、暴力獣耳っ娘は問う。
「斬るの?」
「そう、斬って止める……いやいや、いきなりそんな物騒な手を取るわけないだろう!? って、何でもう剣を抜いている!? 早く鞘に戻すんだ!」
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