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10-6 ミッション:ろうそくでせめろ!

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 というわけで、次はさっき使わなかったものからやることになった。
 ここでまた鞭と言う選択肢もあったが、さっきやったのと、またやるのが面倒くさいということで、ろうそくを使うことにした。

 またまた適当に取ると、それの良さについて説明を始めたので、とりあえず無視して、手に持ったろうそくを眺める。
 ふむ……よくある白だけじゃなくて、赤とかカラフルな色もあるんだな。……なんのためだ? 垂らしたろうで、アートでも楽しむのか? もしそうなら、いい趣味してるな。
 しかし、ロウソクって、SM関係ではよく聞くけど……

「なぁ、これって熱くないのか?」
「で――……え?」

 俺が絵夢に声をかけると、意識がこちらに戻ってくる。それを確認して、もう一度たずねた。

「ろうそく、垂らされて熱くないのか?」
「ああ、それはそんなに熱くないよ? っていうか、ヌッキーってなにか勘違いしてない?」

 絵夢は呆れたように聞いてくる。俺は俺でよくわからないので、頭に「?」を浮かべる。

「ロウソクって言っても、普通のものじゃないんだよ。低温ロウソクとかって言って、通常よりも早く溶けてそこまで熱くもないの。……まぁ、普通と比べてだから、熱いことには熱いんだけどね」
「ふーん」

 知らなかった。まぁ、知る必要もなかったしな。でも、案外奥が深いものなんだな。道具だって使用者たちのこと考えているのだし。……だからって、知りたいとはそれでも思わないけど。

「まぁいいや。さっさと始めるか」
「うんうん、そうだよね! ヌッキーも、早く私をいじめたくてうずうずしてるんでしょ! 目覚めたね!」

 違う。面倒だから早く始めたいだけだ。全然乗り気ではない。
 だが、それを言って話を流することのほうが面倒くさい。なので、話を進める。

「それで? また自分に縄とか結ぶのか? するなら早くしてくれよ」
「んー……、今回はいいや。代わりに……」

 絵夢はおもむろに、並べてあった道具の中から手枷を掴むと、その身をベッドの上に投げる。
 そしてベッドのカーテンの支柱に、手枷を繋ぐと、自分の手に取り付けた。

「この状態かな?」

 絵夢はあおむけの状態で手は上に延ばされ、拘束されている。……異常な光景だ。
 これを見ていると、俺は何をしているんだって問いたくなる。どうして俺は友人相手にこんな休日の真昼間から、SMにつき合わされているのか。だが、考えたら負けだ。

 大体、今更だし、さっきの時のほうが状況的にはおかしかった。
 ただ、あの早業に気を取られ、失念していただけだ。

「さぁ、ヌッキー! こっちの準備はできたよ! ばっちこーい!」

 本当、あの状態のやつに命令されるって……異常だよ。
 俺はため息をついて、ライターを使い、火をつける。

「うわ……もう融けてきた」

 すると、予想以上の速さで解け始めた。
 俺は慌ててベッドに乗り、絵夢の真横に立ち膝になる。

「じゃあ、いくぞ」
「うん! 早く早く!」

 俺は絵夢に急かされて、早速ろうそくを傾ける。すると、一滴、絵夢の腕に落ちて行った。

「んっ……つぅっ……」

 絵夢は、ろうが触れると、少し苦し気に声を漏らす。

「お、おい。変な声出すなよ」

 いつもと違うその声に俺は驚く。というのも、通常絵夢はこういう刺激を受ければ、Mになるからだ。

 そうなったとき、絵夢は「ああん、ご主人様! もっと、もっとお願いします!」とか言ってくる。その後の刺激を受けた時の反応も、くぐもった我慢しているような声ではなく、快楽に打ちひしがれた声だ。
 それもまた変な声であることには変わらないが、それでも今回のような反応は、珍しい。

「ご、ごめん。ヌッキー。なんか刺激があんまり強くなくて、切り替わらないみたい」

 なるほど。小さい刺激で毎回M状態になんてなってたら大変だもんな。自制というか、ちゃんと一定のルールがそこにもあったか。

「じゃあ、とりあえず、もっと一気に落としてみるな?」
「うん。お願い」

 俺は絵夢の返事を聞いて、今度はさらに角度をつけ、ろうをぼたぼたと腕に落とす。

「んっ……っくぅ! あぁ……」

 体をびくっと震わせて、絵夢はまた苦し気な声を上げる。
 俺はその反応をみつつ、逆の腕や、足のほうに行き、落としていく。
 絵夢がはいていたのは、ホットパンツで太もももでていたため、そこなども中心にやっていった。そして――

「うぅ……あっ……はぁ」

 はぁはぁと、絵夢は息を荒げる。さらにそこはかとなく艶も混じっている。
 それに顔も赤く、目も潤んでいる。
 そんな状態で見つめられ、何だか変な気分になってきた。これは今までに味わったことのない空気だ。

「ヌッキー……ちょっと、服をまくって」
「え?」
「だって、そうしないと、腕と足しかできないし、こういうのってお腹とかもやらないと」
「それは……そうなのかもしれないけど……」

 流石の俺でも、女子の服をたくし上げるとか抵抗がある。
 普通に考えたらセクハラだぞ。というか、わざわざこのままろうそくプレイを続ける必要もない。やめてしまったほうがいいんじゃないか? いや、俺はさっさとやめたい。

 そんなことを考えていると、絵夢が俺を見上げて言った。

「お願い……ヌッキー……」
「うっ……」

 その不安そうな顔と潤んだ瞳はやめろよ。……断れないだろ。
 仕方ない。俺は覚悟を決めて、絵夢の服に手をかける。
 そうして、まくり上げようとしていったところで、不意に手がお腹に触れた。

「あっ……」
「! へ、変声出すなってば!」
「ご、ごめん……」

 思わず声を荒げる。俺は「たくっ……」と、ドキドキとする心を落ち着けつつ、お腹が出るまで服を上げた。

「…………」
「…………」

 そうして、無言で止まる。
 俺がさっき反応してしまったせいで、お互い変に意識をしてしまっているのがわかる。絵夢はこっちをちらちらと、顔をうかがうように見てきている。と、同時にそこには熱がこもっているようにも感じる。

「……始めないの?」
「あ、ああ……」

 曖昧な返事をして、絵夢のお腹に視線を向ける。
 ……何故だろう。ものすごくいやらしく見えてきた。あのウエストの曲線とか。
 それにさっき一瞬だけ触れたけど、結構柔らかかったし。それに、絵夢のへそなんてみたことなかったし……。

 ……いや、いる。普通にへそ出しているやつなんてごろごろいる。それに水着とかだって出てるし、普通だろ普通。
 けど、この状態にしたのが俺っていうのが、何だが背徳的に感じてくるというか。

(こんなこと考えているから変になるんだ)

 俺は振り切って無心になり、ろうそくを傾ける。

「あ、うううぅ……いっ……ぁあぁあ、ん!」

 ろうそくが落ちて触れるたびに、絵夢からは悩まし気な声が漏れ聞こえる。
 その普段聞いたことのない声に、やはり意識をしてしまう。

「やあぁ……んっ……ん、んうぁ、んんんあっ!」

 ていうか、これ……喘ぎ声だよな? 一応、既に絵夢なりに喜んでるよな? それなのに、絵夢は普通の状態なのか。
 なんつーか……エロい。特にいつもとノリが違うせいもある。そのせいでスルーできないものが。

(……ダメだ。無心になれない!)

 まさか絵夢相手に、こんな感情を持つことになるとは。やばい。
 いわゆる欲情とかは絶対にありないけど、ただただ気まずい感情が募っていく!
 ドキドキだけが加速していく!

「ヌッキー……もっ……と」
「っ!?」

 その耳に纏わりついてくるような扇情的な声に、思わず手を滑らせてしまう。

「いっ!? あっつうぅ……!?」

 そしてそれは絵夢のお腹の落ちてしまい、体全体をそらし悲鳴のような声を上げた。俺は慌てて、拾い上げ、危なくならないように一度火を消す。

「わ、悪い! 大丈夫か!?」

 絵夢にたずねるが返事がない。顔も後ろにそらされているせいで、ここからは見えない。不安に思って、覗き込んでみる。すると――

「ふぁわあああっ……!」

 狂気にさえ思うほどの笑顔で顔をとろけさせている絵夢がいた。

「今のいいです! もっと、もっとお願いします! 私をいたぶり、嬲ってください!」

 ああ……いつもの絵夢だ。その元通りな姿に実家のような安心感を得るとともに、俺は思った。

(めんどくせー……)

 さっきの変な空気よりはこっちのほうがマシだが、こっちはこっちで真面目に相手していたら疲れる。それにうるさいし。

「ああぁ……体が体が疼く……刺激を。早く、痛みを……」

 ……本当にうるせーな。ちょっとイラッと来た。

「黙れ。お前は、静かに待つこともできないのか。家畜でももっとマシだぞ。お前はそれ以下だな」
「その汚物を見るような表情……最高です!」

 ……やっぱダメだ。正直な気持ちを言ったところで喜ぶだけだ。
 だが、言わずにはいられない。さっきまでのことと、今のギャップのせいで、ストレスのようなものが溜まっている。
 そして、攻めているとそれが少しだけ発散できる。

(だったら、このままやり続けてやる!)

 少しだけSに目覚めている俺がいた。

「おら、鳴け! この家畜以下の雌豚が!」
「ひぎぃ!? いい……いいです~!」

 その後、めちゃくちゃろうそくプレイした。
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