あなたの魅ている夢

柊 こなみ

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第1話 日常

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「うわぁあああああっ!遅刻するぅううう!!」

私、天海 みく14歳睦月乃中学2年生です!なんて言う暇ないーっっ!!
猛烈に遅刻しそうだああああああ!
ていうか、もうこれ遅刻決定パターン!?
そんなぁ…!

はぁはぁ、息を切らして走っていると、前に人がいるのが見えた。
あれ?あの髪色、あの身長…

「悠くーん!!」
「うわっ!?」
みくの大、大、大好きな彼氏!棚橋 悠里くんだ!
避けようと思ったけど、気が変わって、みくは悠くんの背中にダイブした。
「いった…。って、みく?」
「ふふっ、ごめんね!おはよう!」
「え…あ、おはよ…。」
悠くんは、女の子みたいに…とまではいかないけど、男の子にしては小さな身長、小柄な体型をしている。顔も童顔だから、実際よりかなり下に見られる。それがもう、たまらなく可愛いの!
勿論、外見だけじゃなくて、中見も大好きだけどねっ!

「って、悠くん!早く行かないと遅刻しちゃうよ!?何のんびり歩いてるのー!」
悠くんは、みくと違ってすごい真面目で成績良いから、遅刻なんてしたくないはずなのに…。
みくが慌てて手を引っ張ると、悠くんは、ちょっと待って、と私を止めた。

「え?もしかして学校行くつもり?今日祭日だけど。」

さいじ…つ…

「うそぉぉおおおおっっ!!」

…………

「う~…、悠くんがいなかったら、もっと恥ずかしい思いしてるとこだった…。」

『あはははっ!間違えて学校行くなんて、漫画かっ!ゴミ捨てに行く俺がいて、良かったね!』

家にて。
携帯はないから、家の電話機で、悠くんとお話中。
悠くんの家は、みくの後ろの後ろの、左の左の左と近いけど、朝っぱらから家にお邪魔するのも悪いし…ってことで、電話で話すことになった。
はい。聞いての通り、悠くんは爆笑。
少し笑いがおさまったと思えば、すぐ思い出してまた笑う。

「お母さんが、祭日も仕事だったなんて…っ!」
『ふ、ははっ…!はぁ、はぁ、いや、普通はそうじゃない?』
「…そうだね、うん。今までも何回か、間違えたことあるんだよねぇ…。」

学校かと思ったら休みだったから、ちょっぴりお得な気分になるし、良いとするかぁ。はあ~。
悠くんの笑いもおさまると、話は3週間後のことに。

『あ、そうそう。3週間後、記念日でしょ?どうする?』
実は、3週間後の月曜日、みくと悠くんが付き合い始めた記念日なんだ~!
月曜日、ちょうど1年になるの!

「んー、そうだなぁ~。せっかくだから、いつもとは違ったとこにデート行きたいよね!」
『違ったところ…。そうだ、近場の海でも行く?』
「わぁ~、海!いいねー!でも泳ぐの?もう秋だよ?」
『分かってる!泳ぐんじゃなくて、見に行くんだよ。あと、…鐘とか、鳴らせたらいいと思って…。』
…鐘?
海と鐘、なんの繋がりが?
近場の海…最近行かないけど、二駅行ったとこだよね。鐘…あったっけ?う~ん…。わかんないや。
「えーっと、なんで鐘?」
みくが聞くと、悠くんは電話越しでも分かるくらい大きなため息をついた。
『…なんでもないっ。』
「えー、何々?教えてよ~!」
『なんでもないって、言ってるだろっ。あー、もう恥ずかしい!』
「なにぃ~、おーしーえーてっ!」
『やだ!とにかく海ね!10時に駅前集合で、いい?』
あぁ、こうなったらもう教えてくれないな。
見た目によらず頑固なんだよね、悠くん。そこも可愛いけどっ!
「はぁい。楽しみにしてる!」
『…うん、俺も。じゃあ、切るね。』
「バイバイ、また明日!」
カチャン、ツー ツー ツー…
電話が切れ、すぐ無機質な電子音に替わる。
みくは受話器を置いて、カレンダーを見た。
「もう1年かぁ~…。」
早いなぁ。悠くんと付き合って365日経つんだ。
1年っていうと短く感じるけど、365日っていうと、すごく長く感じるのはなんでだろう。

3週間後の月曜日が、楽しみだな…。



____この時のみくは、何も知らなかった。

あんなことになるなんて…思ってもいなかったんだ。

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