東海道品川宿あやめ屋

五十鈴りく

文字の大きさ
上 下
51 / 51
小噺

ある日のつぐみ屋

しおりを挟む
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

まあく
2020.11.01 まあく

※ネタバレありです。

 あやめ屋の”それから”。堪能させていただきました。

 高弥があやめ屋に戻って最初に起きる出来事、政吉と由宇の恋のお話。互いの思い違いで進展しない二人に、高弥がきっかけを作り、ていや元助が背中を押す。
 恋には疎い高弥が、恋心を抱く志津に相談したときに、志津がこう言っています。

「そんなの、いくらだって不安になるわよ」

 志津の気持ちを表すかのようなこの言葉が、とても印象に残りました。

 新加入の浜。人懐こくて好奇心旺盛で、大雑把でうるさい娘。
 あやめ屋に波風を立てるやっかい者かと思いきや、随所でいい味を出しています。あやめ屋を明るく照らす太陽ですね。

 料理が結ぶ、人の縁。健気な姉弟と団扇問屋。
 どこまで本気か分からない浜のプロポーズ(?)。
 藪入りでの微笑ましい親子の会話。
 物語は、このまま穏やかに幸せ街道を進んでいくのかと思ったら……。

 彦佐の登場は、それまでのほんわか路線を打ち砕くものでした。
 もの凄く正直に申し上げると、このエピソード、早く解決してスッキリ爽やかにならないかなぁと、進行中は思っていました。
 何ともツライ。何ともじれったい。

 こら、平次! お前は浮かれすぎだ!
 こら、元助! なぜお前はあやめ屋を去ってしまうのだ!

 登場人物に文句を言っても仕方がないのですが、私の気持ちとしては、そんな感じだったわけです。
 そんな中でも、高弥は頑張りました。地道に、粘り強く頑張りました。
 頑張れたのは、あの二人の子供だからでしょうか。
 それとも、志津に宣言をしたからでしょうか。
 何にせよ、最後は彦佐が去って問題解決。ただし、単純なスッキリ爽やかではなく、ちょっと余韻の残る解決。
 このあたりが、この物語のいいところですよね。と、私は思うのです。

 すったもんだの後の、高弥と志津のお話。これまた、ちょっとじれったい。でも、その先にはきっと……。

「そんなの、いくらだって不安になるわよ」

 いつか、志津がそのセリフを言うことがあるのだろうかと、勝手に想像してニヤニヤさせていただきました。

 番外編「ある日の~」シリーズを含めて、とても楽しい読書の時間を過ごすことができました。
 ありがとうございました!

五十鈴りく
2020.11.01 五十鈴りく

ご感想をありがとうございます!

志津は年頃の女の子なので、由宇の気持ちもなんとなくわかるのでした。
でもそれは、志津から見たら贅沢な不安でもあったかもしれません(笑)
傍目には政吉が由宇のことしか考えていないのがわかりやすですから。

新入りの浜は、仕事がデキる子ではありませんが、この年でいきなり入ったらこんなものだろうと思って書いていました。
失敗だらけなんですけど、どこまでが失敗なのかさえ本人は自覚できておりません。
ただ、時間さえ経てばいろいろと学んで身につく子ではあります。めげないのが一番の長所ですね(笑)
プロポーズはほぼ意識せずに言ってますので、大雑把な彼女はすぐ忘れます(おい)

彦佐が来てからのあやめ屋は、また微妙にずれ始めました。
平次とは面と向かって喋っているのに、何かが噛み合わない。こういうのってモヤモヤしますよね。
なんでこんなことになったんだろう? っていう。
でも、お互いに大事なものが違ったり、育った環境も違いますから、その溝はあるわけですので、高弥にはモヤモヤしてもらいました。

元助も出ていってしまうのは、自己肯定感が低いからですね。ラストにあった生い立ちですが、母親に邪魔者扱いされてましたので、自分を必要としてくれる人がいても、つい自分を低く見積もって、自分の代わりならいくらでもいると考えてしまうところがあります。
自分がどうしたいか、を後回しにする厄介な男ですから、高弥ほどの強引さで引っ張らないと戻ってこれません(笑)
高弥は諦めると、以前のように想念に「逃げた」と言われるから、それが嫌だと思って体当たりが身についております。

志津の中で高弥がちょっとずつ昇格しているというところですね。
志津を不安にさせられるほどのイイ男になってもらわねば(笑)
番外編にもお付き合い頂き、ありがとうございました!

このところ朝晩が冷え込みますので、まあくさんもお体にはお気をつけてお過ごしください!!

解除
sanpo
2020.10.22 sanpo

ええー!Σ(゚Д゚;
まさか。ここでお終い、ではないですよね? 素晴らしい短編をお書きになる五十鈴さまと承知していても、我儘をいってしまいます。あ? 大丈夫だ、確認して来ました。小噺シリーズ、他は<了>がついてた! この先をぜひ!
「もう少し落ち着いて感想を書け」と(また)叱られそうですが。
今年も、素晴らしい読書の時間をありがとうございました! 改めて御礼申し上げます。
そ・し・て 続きを……壮助の恋の行く末を見届けさせてください♥お願いします!

五十鈴りく
2020.10.22 五十鈴りく

ご感想をありがとうございます!

>小噺シリーズ、他は<了>がついてた!
…………(^-^;
(つけ忘れたとか今さら言えない)

ま、まあ、またそのうちということで(*´з`)
壮助の好みはあんな感じなので、相手はいつも、私なんか相手にされるわけないし、私に気があるなんて自意識過剰にもほどがある、と引き気味になるばかりなので、まず上手く行きません(笑)
今回はどうだろうか……

いつもお付き合い頂き、ありがとうございます!
機会があれば、またヽ(^。^)ノ

解除
まあく
2019.08.07 まあく

 ?前作「中山道板橋宿つばくろ屋」ファンの私としては、「たかや」という主人公の名前を見ただけで、様々なシーンを思い出して、ちょっとじーんとしてしまいました。
 強い意志をもって、荒波へと飛び込んでいく高弥。いきなり躓いて、流れ着いたその先に待っていたのは、荒波ならぬ、荒れた宿。そんな場所でも、やっぱり高弥はがんばってしまうのですね。やっぱり高弥は、あの二人の子供なんだと感じました。
 流行のライトノベルであれば、父に鍛えられた「腕」を使ってあっさりと現状を打開、高弥を中心に周囲が動き出すという展開になるのかもしれませんが、この物語はそうはなりません。
 登場人物の一人一人に背景があって、一人一人に想いがある。だから、簡単に何かが変わるなんてことはない。
 苦悩と葛藤と挫折を繰り返しながら、少しずつ高弥が前に進んでいく。高弥だけが頑張るのではなく、いろいろな人に支えられながら進んでいく。そんな高弥に影響されて、少しずつ周りが変わっていく。
 ご都合主義ではないストーリー。私の大好きなストーリーです。
 丁寧に描かれる人の心。鮮やかに彩られる料理や旬の素材。幕末という時代の風と、潮の香り。そして、さりげなく、だけど深く繋がる前作の世界。すべてが自然に溶け合って、物語に立体的な広がりを見せてくれています。自身がそこに立ち、そこで呼吸をしているかのように感じさせてくれます。
 社会人としての常識と状況が許してくれなかったのですが、それがなければ、確実に、徹夜で一気読みしていたと思います。本当に面白かったです。
 エンディングは、ちょっと意外でした。これは……次回作もあり? なのですか!?
 今作も、本当に楽しませていただきました。素敵な時間をありがとうございました!

五十鈴りく
2019.08.07 五十鈴りく

ご丁寧にありがとうございます!!

「たかや」という名前は、お察しの通り彼女から来ております。女の子だったらそのままだったと思いますが、息子なので「たかや」です。彼女のように優しく強い人になりますように、という意味が込められております。
前作は仲の良い職場で、皆が団結して困難を乗り越えましたので、今回は逆を行きました。
仲の悪いところから打ち解けていく……前半が仲悪くて、大丈夫かと思われたかと思いますが(笑)
高弥も世間知らずですが、前作主人公の佐久似の息子なので、後先考えるよりもまず動く子です。人間、変わるというのはとても難しいことですが、全力でぶつかっていればいつかはということで。

少しでも楽しんで頂けたのなら光栄です。
エンディングが意外と感じられたのは、さすがですね(´∀`*)
ここ、変更点でした(笑)
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!!
暑い日が続いていますが、まあくさんもどうぞご自愛ください!

解除

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

鄧禹

橘誠治
歴史・時代
再掲になります。 約二千年前、古代中国初の長期統一王朝・前漢を簒奪して誕生した新帝国。 だが新も短命に終わると、群雄割拠の乱世に突入。 挫折と成功を繰り返しながら後漢帝国を建国する光武帝・劉秀の若き軍師・鄧禹の物語。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 歴史小説家では宮城谷昌光さんや司馬遼太郎さんが好きです。 歴史上の人物のことを知るにはやっぱり物語がある方が覚えやすい。 上記のお二人の他にもいろんな作家さんや、大和和紀さんの「あさきゆめみし」に代表される漫画家さんにぼくもたくさんお世話になりました。 ぼくは特に古代中国史が好きなので題材はそこに求めることが多いですが、その恩返しの気持ちも込めて、自分もいろんな人に、あまり詳しく知られていない歴史上の人物について物語を通して伝えてゆきたい。 そんな風に思いながら書いています。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

御庭番のくノ一ちゃん ~華のお江戸で花より団子~

裏耕記
歴史・時代
御庭番衆には有能なくノ一がいた。 彼女は気ままに江戸を探索。 なぜか甘味巡りをすると事件に巡り合う? 将軍を狙った陰謀を防ぎ、夫婦喧嘩を仲裁する。 忍術の無駄遣いで興味を満たすうちに事件が解決してしまう。 いつの間にやら江戸の闇を暴く捕物帳?が開幕する。 ※※ 将軍となった徳川吉宗と共に江戸へと出てきた御庭番衆の宮地家。 その長女 日向は女の子ながらに忍びの技術を修めていた。 日向は家事をそっちのけで江戸の街を探索する日々。 面白そうなことを見つけると本来の目的であるお団子屋さん巡りすら忘れて事件に首を突っ込んでしまう。 天真爛漫な彼女が首を突っ込むことで、事件はより複雑に? 周囲が思わず手を貸してしまいたくなる愛嬌を武器に事件を解決? 次第に吉宗の失脚を狙う陰謀に巻き込まれていく日向。 くノ一ちゃんは、恩人の吉宗を守る事が出来るのでしょうか。 そんなお話です。 一つ目のエピソード「風邪と豆腐」は12話で完結します。27,000字くらいです。 エピソードが終わるとネタバレ含む登場人物紹介を挟む予定です。 ミステリー成分は薄めにしております。   作品は、第9回歴史・時代小説大賞の参加作です。 投票やお気に入り追加をして頂けますと幸いです。

出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。 大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。 戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。 潜水空母   伊号第400型潜水艦〜4隻。 広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。 一度書いてみたかったIF戦記物。 この機会に挑戦してみます。

三國志 on 世説新語

ヘツポツ斎
歴史・時代
三國志のオリジンと言えば「三国志演義」? あるいは正史の「三國志」? 確かに、その辺りが重要です。けど、他の所にもネタが転がっています。 それが「世説新語」。三國志のちょっと後の時代に書かれた人物エピソード集です。当作はそこに載る1130エピソードの中から、三國志に関わる人物(西晋の統一まで)をピックアップ。それらを原文と、その超訳とでお送りします! ※当作はカクヨムさんの「世説新語 on the Web」を起点に、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさん、エブリスタさんにも掲載しています。

7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。 歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。 【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】 ※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。 ※重複投稿しています。 カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。