東海道品川宿あやめ屋
時は文久二年。旅籠「つばくろ屋」の跡取りとして生まれた高弥は、生家を出て力試しをしたいと考えていた。母である佐久の後押しもあり、伝手を頼りに東海道品川宿の旅籠で修業を積むことになったのだが、道中、請状を失くし、道にも迷ってしまう。そしてどうにか辿り着いた修業先の「あやめ屋」は、薄汚れた活気のない宿で――美味しい料理と真心尽くしのもてなしが、人の心を変えていく。さびれたお宿の立て直し奮闘記。
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※ネタバレありです。
あやめ屋の”それから”。堪能させていただきました。
高弥があやめ屋に戻って最初に起きる出来事、政吉と由宇の恋のお話。互いの思い違いで進展しない二人に、高弥がきっかけを作り、ていや元助が背中を押す。
恋には疎い高弥が、恋心を抱く志津に相談したときに、志津がこう言っています。
「そんなの、いくらだって不安になるわよ」
志津の気持ちを表すかのようなこの言葉が、とても印象に残りました。
新加入の浜。人懐こくて好奇心旺盛で、大雑把でうるさい娘。
あやめ屋に波風を立てるやっかい者かと思いきや、随所でいい味を出しています。あやめ屋を明るく照らす太陽ですね。
料理が結ぶ、人の縁。健気な姉弟と団扇問屋。
どこまで本気か分からない浜のプロポーズ(?)。
藪入りでの微笑ましい親子の会話。
物語は、このまま穏やかに幸せ街道を進んでいくのかと思ったら……。
彦佐の登場は、それまでのほんわか路線を打ち砕くものでした。
もの凄く正直に申し上げると、このエピソード、早く解決してスッキリ爽やかにならないかなぁと、進行中は思っていました。
何ともツライ。何ともじれったい。
こら、平次! お前は浮かれすぎだ!
こら、元助! なぜお前はあやめ屋を去ってしまうのだ!
登場人物に文句を言っても仕方がないのですが、私の気持ちとしては、そんな感じだったわけです。
そんな中でも、高弥は頑張りました。地道に、粘り強く頑張りました。
頑張れたのは、あの二人の子供だからでしょうか。
それとも、志津に宣言をしたからでしょうか。
何にせよ、最後は彦佐が去って問題解決。ただし、単純なスッキリ爽やかではなく、ちょっと余韻の残る解決。
このあたりが、この物語のいいところですよね。と、私は思うのです。
すったもんだの後の、高弥と志津のお話。これまた、ちょっとじれったい。でも、その先にはきっと……。
「そんなの、いくらだって不安になるわよ」
いつか、志津がそのセリフを言うことがあるのだろうかと、勝手に想像してニヤニヤさせていただきました。
番外編「ある日の~」シリーズを含めて、とても楽しい読書の時間を過ごすことができました。
ありがとうございました!
ご感想をありがとうございます!
志津は年頃の女の子なので、由宇の気持ちもなんとなくわかるのでした。
でもそれは、志津から見たら贅沢な不安でもあったかもしれません(笑)
傍目には政吉が由宇のことしか考えていないのがわかりやすですから。
新入りの浜は、仕事がデキる子ではありませんが、この年でいきなり入ったらこんなものだろうと思って書いていました。
失敗だらけなんですけど、どこまでが失敗なのかさえ本人は自覚できておりません。
ただ、時間さえ経てばいろいろと学んで身につく子ではあります。めげないのが一番の長所ですね(笑)
プロポーズはほぼ意識せずに言ってますので、大雑把な彼女はすぐ忘れます(おい)
彦佐が来てからのあやめ屋は、また微妙にずれ始めました。
平次とは面と向かって喋っているのに、何かが噛み合わない。こういうのってモヤモヤしますよね。
なんでこんなことになったんだろう? っていう。
でも、お互いに大事なものが違ったり、育った環境も違いますから、その溝はあるわけですので、高弥にはモヤモヤしてもらいました。
元助も出ていってしまうのは、自己肯定感が低いからですね。ラストにあった生い立ちですが、母親に邪魔者扱いされてましたので、自分を必要としてくれる人がいても、つい自分を低く見積もって、自分の代わりならいくらでもいると考えてしまうところがあります。
自分がどうしたいか、を後回しにする厄介な男ですから、高弥ほどの強引さで引っ張らないと戻ってこれません(笑)
高弥は諦めると、以前のように想念に「逃げた」と言われるから、それが嫌だと思って体当たりが身についております。
志津の中で高弥がちょっとずつ昇格しているというところですね。
志津を不安にさせられるほどのイイ男になってもらわねば(笑)
番外編にもお付き合い頂き、ありがとうございました!
このところ朝晩が冷え込みますので、まあくさんもお体にはお気をつけてお過ごしください!!
ええー!Σ(゚Д゚;
まさか。ここでお終い、ではないですよね? 素晴らしい短編をお書きになる五十鈴さまと承知していても、我儘をいってしまいます。あ? 大丈夫だ、確認して来ました。小噺シリーズ、他は<了>がついてた! この先をぜひ!
「もう少し落ち着いて感想を書け」と(また)叱られそうですが。
今年も、素晴らしい読書の時間をありがとうございました! 改めて御礼申し上げます。
そ・し・て 続きを……壮助の恋の行く末を見届けさせてください♥お願いします!
ご感想をありがとうございます!
>小噺シリーズ、他は<了>がついてた!
…………(^-^;
(つけ忘れたとか今さら言えない)
ま、まあ、またそのうちということで(*´з`)
壮助の好みはあんな感じなので、相手はいつも、私なんか相手にされるわけないし、私に気があるなんて自意識過剰にもほどがある、と引き気味になるばかりなので、まず上手く行きません(笑)
今回はどうだろうか……
いつもお付き合い頂き、ありがとうございます!
機会があれば、またヽ(^。^)ノ
?前作「中山道板橋宿つばくろ屋」ファンの私としては、「たかや」という主人公の名前を見ただけで、様々なシーンを思い出して、ちょっとじーんとしてしまいました。
強い意志をもって、荒波へと飛び込んでいく高弥。いきなり躓いて、流れ着いたその先に待っていたのは、荒波ならぬ、荒れた宿。そんな場所でも、やっぱり高弥はがんばってしまうのですね。やっぱり高弥は、あの二人の子供なんだと感じました。
流行のライトノベルであれば、父に鍛えられた「腕」を使ってあっさりと現状を打開、高弥を中心に周囲が動き出すという展開になるのかもしれませんが、この物語はそうはなりません。
登場人物の一人一人に背景があって、一人一人に想いがある。だから、簡単に何かが変わるなんてことはない。
苦悩と葛藤と挫折を繰り返しながら、少しずつ高弥が前に進んでいく。高弥だけが頑張るのではなく、いろいろな人に支えられながら進んでいく。そんな高弥に影響されて、少しずつ周りが変わっていく。
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今作も、本当に楽しませていただきました。素敵な時間をありがとうございました!
ご丁寧にありがとうございます!!
「たかや」という名前は、お察しの通り彼女から来ております。女の子だったらそのままだったと思いますが、息子なので「たかや」です。彼女のように優しく強い人になりますように、という意味が込められております。
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高弥も世間知らずですが、前作主人公の佐久似の息子なので、後先考えるよりもまず動く子です。人間、変わるというのはとても難しいことですが、全力でぶつかっていればいつかはということで。
少しでも楽しんで頂けたのなら光栄です。
エンディングが意外と感じられたのは、さすがですね(´∀`*)
ここ、変更点でした(笑)
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!!
暑い日が続いていますが、まあくさんもどうぞご自愛ください!
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