堕天の皇帝

復讐編

契約

『ミュラー。お前の復讐とはなんだ？』
出来るだけ楽なのがいいのだが。
『そうね。あいつさえ殺せればいいわ。』
『あいつとは？』
『GSG-9中佐ミュラー・リンゲル。私の父親よ。』
GSG-9とは中々にめんどくさいな。
『いったい何があったんだ？』
『あいつは私のことを道具として扱った。
　私は忠実に任務を遂行していたのだが、
　ある日。私はテロ犯制圧作戦にて。
　あのクソ野郎に裏切られたんだ。
　その裏切りで私は捕まり、奴隷になった。』
『なかなかめんどくさい要件なんだな。
　じゃあ。行くか。』
『行くってどこへ？』
『んなもん決まってるだろ？ドイツだよ。
　まぁ1度日本にこのまま戻って
　こいつを送ってからだがな。』
そういい俺はアリーシャに指を指す。
『このガキはなんなんだ？』
『俺の雇い主だと思ってていい。』

「おい。アリーシャ。帰るぞ。」
「帰るって。どうやってよ。」
「んなもんこの船動かすしかないだろ。」
「だれが？どうやって？」
『どっちか船動かせねぇか？』
『俺は多少知識があるぞ。』
『じゃあ旋回して日本に戻るぞ。』
『りょーかい。ブラザー。』
そうして俺はアリーシャを届けに日本に戻った。

「アリーシャ。あとは1人で帰れるか？」
「帰れないわよ。電話も取られたし。」
俺が電話すればいいんだな。
そして、俺はポケットからスマホを取り出す。
「シエスタ。」
「なんだい？こっちは忙しいんだが。」
「東京湾まで迎えを出してくれ。」
「アリーシャを確保したのかい？」
「あぁ。そうだ。あとは頼んだぞ。」
「ん？君はどこに行くんだい？」
「少し急用ができてな。
　ドイツまで殴り込みに行ってくる。」
「言ってることがむちゃくちゃだけどわかったよ。
　あとは私に任せて。
　でも念の為に車が来るまではアリーシャの
　隣に居てよね。」
「わかったよ。」俺は電話を切った。

「ねぇ。ドイツ行くってどういうことよ。」
「そのまんまの意味だよ。
　だから少しだけ休暇をもらうぜ。」
「休暇なんてあげるわけないでしょ。
　貴方は2日間休んだばっかじゃない。」
「それもそうだな。」
「だから、貴方はここまでよ。」
「なんだ？クビってことか？」
「違うわよ。契約満了よ。」
「は？まだヤクザ同士の内戦すらしてねぇだろ？」
「その内戦相手の予定だったのが、
　今全員殺したあいつらなのよ。」
なるほどな。つまり俺は内戦を終わらしたのか。
「だから、あなたの仕事はこれで終わりよ。
　でも、話くらい付き合いなさい。」
「まぁ。シエスタが来るまでならな。」
「ふふっ。それでいいわよ。」
そして、俺たちは他愛のない話をした。

「おい。迎えが来たぞ。」
そこには1台のリムジンが到着した。
「これで少しのお別れね。」
「まぁまた色々頼むことにはなるがな。」
「そういえば翔太。奴隷はどうするの？」
「それに関してだが。俺から交渉がある。」
「いいわよ。話しなさい。」
「俺は今から約3日間ほどドイツに向かう。
　その間この奴隷を預かって欲しい。」
「それで対価は何かしら。」
「お前やシエスタがまた何か困った時。
　この俺を頼っていい権利だ。」
「なるほどね。わかったわ。
　奴隷たちを3日間私が責任をもって預かるわ。」
「あぁ。頼んだ。」
「それでどうやってドイツへと行くの？
　不正入国になると厄介よ？」
「偽装パスポートで行くさ。」
「じゃあ私の方でも少し根回しでもしとくわね。」
「あぁ。頼んだ。」
そして、俺とアリーシャは握手を交わした。