堕天の皇帝

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ロシア(アルファ部隊)編

幸せな時間

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 俺たち3人は無事にホテルに着いた。
その時には既にマリアとアノルフも着いていた。
未だに愛美は、姉さんは寝ている。
呼吸を確認する。
「すぅ。すぅ。すぅ。」
よかった。寝ているだけだ。
そして、俺は風呂に入った。

これでやっと普通の生活に戻れるんだ。
俺、裕太、姉さんの3人で。家族3人で。
あれ?俺ら3人は早くに母を亡くした。
だが、俺の親父はどこにいる?
そして何より誰かもう1人いたような。
まぁどうでもいいか。
俺はそんな雑念を振り払い、風呂から出た。

「ふんふふっ~ん。」なにか鼻歌が聞こえる。
それは陽気な声で俺をずっと支えてくれた声だ。
「姉さん。」
「お。翔太くん。久しぶり。」
姉さんはとびっきりの笑顔を見せてくれた。
「ありゃりゃ。なんで泣いちゃうのかな?」
俺の目には気づいたら涙が流れていた。
やっと努力が報われた。
何度も死にかけた。何度も怪我をした。
だが、その努力が今ついに報われた。
「うわぁぁん。」
「こらこら。男の子が泣かないの。」
そう言いながら姉さんは抱きしめてくれた。

「それで、FIRSTKING。どうして貴方が?」
「ははっ。薄らと察しているだろ?
 頭の回るお前ならな。
 俺の名前は西宮裕太だよ。
 お前ら2人のお兄ちゃんだ。」
「ふふっ。やっぱりそうだったのね。
 まぁいいわ。それで何があったの?」
「今お前の膝ですやすやと寝ている弟が
 お前を救うためだけに努力をして、
 俺たちはお前を取り戻しに来た。」
「ふぅーん。ならなんでマリアちゃんがいるの?」
「え?なんで私のことを?」
「まぁあの時のあなたはまだ幼かったから
 私のこと知らなくても仕方ないわね。」
「マリアと知り合いだったのか。
 まぁ簡単に言うとロシアの特殊部隊。
 アルファ部隊に俺らが入ったからだ。」
「なるほどね~。」
「ちなみにかほちゃんが総司令官だ。」
「えぇ!!それは見てみたいわね。」
ほんの少しの静寂が襲う。
「すまない。マリア。少し席を外してくれないか。」
「えぇ。わかったわ。」
そうして、マリアは別室に行った。

「おい。翔太。起きろ。」バチンっ。
「いってぇぇぇ。叩くことないだろ。」
「翔太はそれくらいしなきゃ起きないだろ。」
「まぁ確かにな。」
「それで1つ話しておきたいことがある。」
「なんだ?」
「俺らの力。カイザーアイについてだ。」
「それなら私から教えてあげましょう。」
「知ってるのか?」
「まぁ私も実際使ったからね。」
「じゃあ。頼んだ。」
「任されたわ。それで一つ質問。
 翔太くんはカイザーアイについて知ってることは?」
「単なるリミッターの解除ができるってだけしか。」
「やっぱりそれくらいか。
 じゃあひとつずつ説明するわね。
 カイザーアイってのは遺伝によって引き継がれるの。
 だから兄さんであるFIRSTKINGも持ってるし、
 私だって持っていたわ。
 それでね。
 カイザーアイにはそれぞれの人に特殊能力がある。
 私の場合はインハータンス。
 まぁ簡単に言うと能力の継承よ。
 だから私は翔太くんに全部継承したわ。」
「なるほどな。」
「だけどこれには1つデメリットがある。」
「ふむ。やっぱりか。」
「は?なんだよ。そのデメリットって。」
「能力を使う度に寿命が縮むわ。」
「それって前にも裕太が言ってたよな?」
「あぁ。そうだな。」
「本来カイザーアイはその人が
 能力のデメリットを打ち消す体質が
 ついてくるはずなの。
 だから、FIRSTKINGは能力を使っても
 寿命を消費することは無い。
 けどインハータンスで受け継がれたカイザーアイは
 その人にデメリットを打ち消す体質までは
 継承はされないのよ。
 だから翔太くんは能力を使うと、
 寿命が短くなってしまうわ。」
「だからな。翔太。その能力を
 今すぐに愛美に返すんだ。」
「いえ。それをしてもいいのだけど、
 私は昔の体じゃないわ。
 だからもう既にその体質はないのよ。」
「なら、翔太は能力を使わないようにしないとな。
 そのためにも兄ちゃんが全部護ってやるからな。」
「ははっ。ありがとうな。
 色々教えてくれて。
 俺がもうこの能力を使うことがないだろうが、
 今までお世話になった能力だ。
 知れてよかったよ。」
「あぁ。そうだな。
 もう夜も遅い。早く寝よう。」
「えぇ。そうね。」
「いやそのに、兄さん、姉さん。
 もう少しだけ話さないか?」
裕太と愛美は顔を合わせる。
「あぁ。そうだね。もう少し喋ろうか。」
そして、俺たちは楽しく雑談をした。
マリアやアノルフも話に加わり、
よりいっそう盛り上がった。
俺は新しいこの生活を楽しもうと思った。
だが、俺のこの幸せの崩壊は、
音もなく、崩れていくのだった。

「翔太くん。起きて。」
「な、なんだ?マリア。」
「囲まれたわ。公安0課とSATに。」「え?」
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