堕天の皇帝

ロシア(アルファ部隊)編

本番

「それで終わりだと思っているのか？」 
「人間誰しも風穴を空けられると動けない。
　それが人間なんだよ。」 
「こんなんで終わりと思われるとは心外だな。」
俺は身体を起こす。
またあいつ逃げやがったな。
魔術には対抗できるはずなんだけどな～。
「なぜすぐに起き上がれる。」
「そりゃまだ生きてるからな。」
「ほんとに人間か？」
「あぁ。人間さ。
　人間の限界に限りなく近づいているがな。
　そうだ。お前俺に触れよ。」
「は？」
「俺の能力を使ってみてくれよ。」
「あぁ。いいだろう。」
俺は小声でペインアウトとつぶやく。
「さぁ。ここからが本番だ。」

 翔太の右目は赤に光っている。
やはり昔の俺と同じだ。
そして、愛美と一緒である。
愛美の口から翔太が死ぬと聞いた時は驚いたが
愛美がシックザールコンバージョンを使うと
言った時はさすがに驚いたな。
かほちゃんと一緒に記憶を物質化させたのは
正解だったようだな。
翔太にカイザーアイを与えたのは愛美か。
力を渡さないと翔太が死んでいたのだろうが
めんどくさいことをしやがったな。

 俺の能力をコピーした相手はいきなり距離を詰める。
俺が殴ろうとするとそれをかわすか受け止められ
高速のカウンターが飛んでくる。
ちっ。速いな。40くらいか？
俺も30にするか。
俺らは見えない斬撃を繰り広げる。
だが、この身体はやはりいい。
左から銃弾が飛んできているのがわかる。
スナイパーまでいるのかよ。
俺は紙一重で銃弾をかわす。
相手も攻撃の手を止める。
は？なんで止める？
だが、俺はそんな隙を逃すわけなく、
相手に蹴りを入れ込み、みぞおちを更に蹴り飛ばす。
はぁはぁはぁ。魔術使われた方がしんどかったな。
ってかなんで手を止めたんだ？
まぁいいか。連携を取れなかったんだろう。
いってぇ。全身が痛い。
俺がこいつの身体を乗っ取る時間が
短くなった気がするな。まぁいいや。

 俺は意識を取り戻す。
あぁ。いってぇ。身体が壊れそうだ。
「なんで助けてくれなかったんだよ。」
「スナイパーの弾が飛んできた時は
　さすがに助けようと思ったが、
　かわしたからな。驚いた。」
「あれくらいならかわせるさ。」
「それであの犬はなんだ？」
「いや。俺に聞くなよ。」
「すげぇ目でこっち見てくるぞ。」
「俺もう動けないからなんも出来ないぞ。
　あれが襲ってきたら助けてくれよ。」
「襲ってきたらな。」
そうするとワンっと吠えられる。
「もう終わっちゃったの？」
最上階までマリアが飛んできた。
「ってなんで寝転がってるの？」
「いや、身体が痛いんだよ。」
「仕方ないな～。ペルフェットアスヴィジーニイ。」
そうマリアが唱えると俺の周りに緑の粒子が飛び、
俺の体は完全回復した。
「おぉ。ありがとう。」
「ふふっ。どういたしまして。」
「すごいな。完全回復か。」
「まぁ私は回復系を得意としますからね。」
そういうとマリアは目を細める。そして、
「何このわんちゃん！！」
マリアは犬に向かってダイブする。
犬もそれなりに大きく
ちょうど抱き枕のようになっていた。