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054 ダークエルフ
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「殺し合え!」
いきなりダークエルフがそう叫ぶと、一気に思念の波が押し寄せて苛立ち、怒り、憎悪、殺意の感情が掻き立てられていく。
マズイ。
俺は精神破壊の要領で自分の心に生まれた悪感情を消し飛ばし、思念共有でみんなを守ろうと精神感応を発動する。
その瞬間、横から俺の顔面が殴り飛ばされた。
ズシャアッ!と地面を転がって顔を上げると、シェリルが俺にレイピアを突き付けている。
「死ね!」
シェリルがレイピアを大きく振りかぶった隙に、俺は軽い精神破壊を放ってシェリルを失神させる。
糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちるシェリル。
俺が立ち上がろうと膝をついた次の瞬間、ダダダダダダダッ!と音がして足元が撃ち抜かれる。
レミーが魔光斉射砲の銃口をこちらに向けていた。
くそ、仕方ない。
レミーにも軽い精神破壊を放って失神させる。
ドサッと音を立ててその場に崩れるレミー。
その向こうからミミアと司祭が両手を前に出して俺に向かって飛びかかってくる。
この二人も精神破壊で失神させる。
前のめりに倒れ込む二人。その頭上でシシリーとバーグルーラが宙に浮いている。
「アタシは平気だよ!」
<我もだ>
俺は胸をひとなでしてダークエルフに向き直り、最大級の精神破壊を奴にぶっ放す。
「無駄だ!」
魔力が通らない。
だが魔力障壁のようなものに弾かれた感触ではなく、すり抜けていくような感触。
「ダークエルフに魔術は効かないよ!」
どういうことなんだ。
とりあえず俺はシェリル、レミー、ミミア、司祭が倒れ込む前で両手を広げ、ダークエルフから彼女たちを守る姿勢をとる。とったところで非力な俺には何もできないが。
せめてもの思いでシシリーとバーグルーラには思念共有で精神に薄い壁を作って守る。
バーグルーラが俺の斜め前に舞い上がり大きな口を開いて火炎の塊を吐き出した。
轟音とともに凶悪な熱量がダークエルフを襲う。
しかし奴はその場を動くことさえなく、炎の塊はその身体の向こうにすり抜けていき、共同墓地の壁を激しく焦がして消えた。
「物理攻撃も効かない!アイツに実体はないんだ!」
シシリーは宙に浮かびながら全身に淡い光を纏っている。
胸の中央で組んだ両手からは、さらに強い輝き。
「魔力を集中して消滅を放つよ!それまで時間を稼いで!」
と言っても残るは俺とバーグルーラだけ。
でもバーグルーラがいれば大丈夫かと宙を舞うバーグルーラを仰ぎ見ると、羽ばたきながら大きくその身をよじっている。
<ぐ、ぐうっ…!我の精神を…!>
ヤバい、俺の張った壁が薄かったか。
俺は精神感応を強く発動させ、思念共有でバーグルーラの精神にもっと分厚い壁を作る。
するとその壁を押し込む悪意、殺意。ダークエルフから押し寄せてくる。
「ぐっ!うぎぎぎぎ…っ!」
俺も全力で魔力を放出し心の壁を強く押し戻す。
他人の心に防御壁を作るのは初めてで勝手がわからず力が入りにくい。
ダークエルフは怒りの表情を浮かべて銀色の長い髪を振り乱している。
「ならばこれでどうだ!」
ダークエルフが両手を上げると、奴がいるすぐ横の土の盛り上がりがモコモコと動き出す。
それを見て俺はシシリーの言葉を思い返す。
『ダークエルフは死体に精神を宿らせて襲わせてくる』
盛り上がった土の中からボコッ!と朽ち果てた人間の手が出てくる。
そのままその手が地面を押し、大量の土を撒き散らしながら全身をあらわにする。
その身体はところどころ腐り落ち、骨が見えている。眼球もない。
抜け落ちて部分的に残った長い頭髪。尖った耳。エルフのゾンビだ。
身体に付着した泥を落とすようにゾンビは頭を大きく振り回し、口を大きく開けてこちらへ一歩一歩踏み出してくる。
どうする。俺は自分とシシリーの精神にも防御壁を展開している上、バーグルーラの精神を守るのに手一杯だ。いやそうだ、あれを忘れてた。
「す、兵装起動!」
俺が声を上げると、身体中に虹色に輝く真っ黒な黒虹鉄鋼の装甲が装着されていく。
<おはようございます、ティモシー様>
魔導兵装の人工知能、ハーヴェストに大急ぎで俺は伝える。
「俺は防御壁を張るので手が離せない!自動形態であのゾンビを倒してくれ!」
<了解いたしました。自動形態に移行します>
俺の右腕がハーヴェストの意思によって持ち上げられ、ゾンビに拳を向ける。前腕部から銃口が飛び出し、魔光斉射砲が放たれる。
ズガガガガガッ!
銃撃を受けたゾンビが踊るようにその身体に風穴を開けていくが、その歩みは止まらない。
俺に向かってゾンビが手を伸ばす。
<こざかしいわっ!>
バーグルーラが苦しみながら身をよじるその勢いで翼を大きく広げ衝撃波を放った。
ドン!と俺も吹き飛ばされそうになるが、前方のゾンビは猛烈な速度で弾き飛ばされ、そのまま壁に激突してグチャッ!と潰れる。
<ゾンビの行動不能を確認。自動形態を解除しますか?>
俺はハーヴェストへの返答を保留する。
「まだまだぁッ!」
ダークエルフがそう叫ぶとそこら中の土がボコボコと盛り上がり、土をかき分けて次々とゾンビが起き上がってくる。
<雑兵どもがっ!>
バーグルーラが再び衝撃波を放ち、前方3~4体のゾンビを吹き飛ばす。
だがゾンビは後方からも迫りくる。
「ハーヴェスト、自動形態で後ろのゾンビも頼む!」
<了解いたしました>
俺の身体が反転し、今度は左手の手のひらを向け魔光爆炎砲を放つ。
1体のゾンビの上半身が吹き飛び、下半身がその場に崩れ落ちる。
が、それを追い越して2体、3体とゾンビが飛びかかってくる。意外と素早い動きだ。
もう一発、魔光爆炎砲が放たれ1体のゾンビが吹き飛び、さらにもう一発、いやダメだ間に合わない。俺の鼻先にゾンビの腐った手のひらが迫る。
瞬間、目前に迫ったゾンビが左に吹き飛ぶ。
右からシェリルが躍り出る。失神から復活してゾンビを蹴り飛ばしてくれたようだ。
「後ろは任せて!」
シェリルがレイピアを構える。
俺はシェリルにも精神の壁を展開する。
「ありがとうシェリル!助かった!」
俺は自動形態を解除してシェリルと背中合わせでダークエルフに向き直る。
俺の背後からザンッ!ザザザザザンッ!と無数の斬撃音が響いてくる。
「言ったでしょう。守るって」
シェリルの顔は見えないがその声から微笑んでいるのがわかる。
「貴様ら~ッ!」
ダークエルフがさらに強く憎悪、殺意、悪意の波をこちらに飛ばす。
俺は魔力を開放して精神の壁を押し戻して耐える。
「許さん!許さんぞッ!」
長い銀髪を振り乱してダークエルフは両手の手のひらをこちらに向けた。
「重力爆弾!」
ダークエルフの手のひらを中心に空間が歪む。コイツも空間魔術で攻撃できるのか。
<があッ!>
バーグルーラが結界を張って空間の歪みを押し留める。
だがバーグルーラはまだ苦しそうに身をよじっており結界もいつもより弱々しい。
「くたばれぇっ!」
ダークエルフがさらに強い魔力を放出する。
空間の歪みが大きくなりバーグルーラの結界にヒビが入っていく。
「障壁護符!」
突然バーグルーラの結界に重なるように光の壁が立ち昇り、空間の歪みをかき消した。
俺の左隣にレミーが肩を並べる。
「すいません!ちょっと寝てました!」
俺はレミーの心にも壁を展開する。
「ごめんな!俺が寝かしたんだ!」
ダークエルフのほうに向き直ると、奴は怒りで身体を大きく震わせている。
すると突如その震えを止め、大きく目を見開いて叫んだ。
「なぜだ!なぜ殺し合わん!エルフなど全部死んでしまえばいいんだ!こんな狭い里に閉じ込められて監視しあっていつまでもいつまでもいつまでもいつまでも生きてどうするつもりだ!死ね!死ね死ね死ね死ね死ねッ!死ねぇッ!!!」
奴は絶叫しながら、重力爆弾の空間の歪みを次々とこちらへ投げて飛ばした。それをレミーとバーグルーラの障壁が弾き飛ばしていく。
その時、俺たちの横で宙を舞うシシリーの輝きが強くなった。
「アタシたちの幸せを邪魔するな!消滅!!!」
シシリーの両手から強烈な光の筋がダークエルフに向かって解き放たれる。
「イヤダアアァぁアぁあアアァぁァアァぁァァァぁァァァッ!!!!!」
ダークエルフは断末魔とともに消えてなくなった。
いきなりダークエルフがそう叫ぶと、一気に思念の波が押し寄せて苛立ち、怒り、憎悪、殺意の感情が掻き立てられていく。
マズイ。
俺は精神破壊の要領で自分の心に生まれた悪感情を消し飛ばし、思念共有でみんなを守ろうと精神感応を発動する。
その瞬間、横から俺の顔面が殴り飛ばされた。
ズシャアッ!と地面を転がって顔を上げると、シェリルが俺にレイピアを突き付けている。
「死ね!」
シェリルがレイピアを大きく振りかぶった隙に、俺は軽い精神破壊を放ってシェリルを失神させる。
糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちるシェリル。
俺が立ち上がろうと膝をついた次の瞬間、ダダダダダダダッ!と音がして足元が撃ち抜かれる。
レミーが魔光斉射砲の銃口をこちらに向けていた。
くそ、仕方ない。
レミーにも軽い精神破壊を放って失神させる。
ドサッと音を立ててその場に崩れるレミー。
その向こうからミミアと司祭が両手を前に出して俺に向かって飛びかかってくる。
この二人も精神破壊で失神させる。
前のめりに倒れ込む二人。その頭上でシシリーとバーグルーラが宙に浮いている。
「アタシは平気だよ!」
<我もだ>
俺は胸をひとなでしてダークエルフに向き直り、最大級の精神破壊を奴にぶっ放す。
「無駄だ!」
魔力が通らない。
だが魔力障壁のようなものに弾かれた感触ではなく、すり抜けていくような感触。
「ダークエルフに魔術は効かないよ!」
どういうことなんだ。
とりあえず俺はシェリル、レミー、ミミア、司祭が倒れ込む前で両手を広げ、ダークエルフから彼女たちを守る姿勢をとる。とったところで非力な俺には何もできないが。
せめてもの思いでシシリーとバーグルーラには思念共有で精神に薄い壁を作って守る。
バーグルーラが俺の斜め前に舞い上がり大きな口を開いて火炎の塊を吐き出した。
轟音とともに凶悪な熱量がダークエルフを襲う。
しかし奴はその場を動くことさえなく、炎の塊はその身体の向こうにすり抜けていき、共同墓地の壁を激しく焦がして消えた。
「物理攻撃も効かない!アイツに実体はないんだ!」
シシリーは宙に浮かびながら全身に淡い光を纏っている。
胸の中央で組んだ両手からは、さらに強い輝き。
「魔力を集中して消滅を放つよ!それまで時間を稼いで!」
と言っても残るは俺とバーグルーラだけ。
でもバーグルーラがいれば大丈夫かと宙を舞うバーグルーラを仰ぎ見ると、羽ばたきながら大きくその身をよじっている。
<ぐ、ぐうっ…!我の精神を…!>
ヤバい、俺の張った壁が薄かったか。
俺は精神感応を強く発動させ、思念共有でバーグルーラの精神にもっと分厚い壁を作る。
するとその壁を押し込む悪意、殺意。ダークエルフから押し寄せてくる。
「ぐっ!うぎぎぎぎ…っ!」
俺も全力で魔力を放出し心の壁を強く押し戻す。
他人の心に防御壁を作るのは初めてで勝手がわからず力が入りにくい。
ダークエルフは怒りの表情を浮かべて銀色の長い髪を振り乱している。
「ならばこれでどうだ!」
ダークエルフが両手を上げると、奴がいるすぐ横の土の盛り上がりがモコモコと動き出す。
それを見て俺はシシリーの言葉を思い返す。
『ダークエルフは死体に精神を宿らせて襲わせてくる』
盛り上がった土の中からボコッ!と朽ち果てた人間の手が出てくる。
そのままその手が地面を押し、大量の土を撒き散らしながら全身をあらわにする。
その身体はところどころ腐り落ち、骨が見えている。眼球もない。
抜け落ちて部分的に残った長い頭髪。尖った耳。エルフのゾンビだ。
身体に付着した泥を落とすようにゾンビは頭を大きく振り回し、口を大きく開けてこちらへ一歩一歩踏み出してくる。
どうする。俺は自分とシシリーの精神にも防御壁を展開している上、バーグルーラの精神を守るのに手一杯だ。いやそうだ、あれを忘れてた。
「す、兵装起動!」
俺が声を上げると、身体中に虹色に輝く真っ黒な黒虹鉄鋼の装甲が装着されていく。
<おはようございます、ティモシー様>
魔導兵装の人工知能、ハーヴェストに大急ぎで俺は伝える。
「俺は防御壁を張るので手が離せない!自動形態であのゾンビを倒してくれ!」
<了解いたしました。自動形態に移行します>
俺の右腕がハーヴェストの意思によって持ち上げられ、ゾンビに拳を向ける。前腕部から銃口が飛び出し、魔光斉射砲が放たれる。
ズガガガガガッ!
銃撃を受けたゾンビが踊るようにその身体に風穴を開けていくが、その歩みは止まらない。
俺に向かってゾンビが手を伸ばす。
<こざかしいわっ!>
バーグルーラが苦しみながら身をよじるその勢いで翼を大きく広げ衝撃波を放った。
ドン!と俺も吹き飛ばされそうになるが、前方のゾンビは猛烈な速度で弾き飛ばされ、そのまま壁に激突してグチャッ!と潰れる。
<ゾンビの行動不能を確認。自動形態を解除しますか?>
俺はハーヴェストへの返答を保留する。
「まだまだぁッ!」
ダークエルフがそう叫ぶとそこら中の土がボコボコと盛り上がり、土をかき分けて次々とゾンビが起き上がってくる。
<雑兵どもがっ!>
バーグルーラが再び衝撃波を放ち、前方3~4体のゾンビを吹き飛ばす。
だがゾンビは後方からも迫りくる。
「ハーヴェスト、自動形態で後ろのゾンビも頼む!」
<了解いたしました>
俺の身体が反転し、今度は左手の手のひらを向け魔光爆炎砲を放つ。
1体のゾンビの上半身が吹き飛び、下半身がその場に崩れ落ちる。
が、それを追い越して2体、3体とゾンビが飛びかかってくる。意外と素早い動きだ。
もう一発、魔光爆炎砲が放たれ1体のゾンビが吹き飛び、さらにもう一発、いやダメだ間に合わない。俺の鼻先にゾンビの腐った手のひらが迫る。
瞬間、目前に迫ったゾンビが左に吹き飛ぶ。
右からシェリルが躍り出る。失神から復活してゾンビを蹴り飛ばしてくれたようだ。
「後ろは任せて!」
シェリルがレイピアを構える。
俺はシェリルにも精神の壁を展開する。
「ありがとうシェリル!助かった!」
俺は自動形態を解除してシェリルと背中合わせでダークエルフに向き直る。
俺の背後からザンッ!ザザザザザンッ!と無数の斬撃音が響いてくる。
「言ったでしょう。守るって」
シェリルの顔は見えないがその声から微笑んでいるのがわかる。
「貴様ら~ッ!」
ダークエルフがさらに強く憎悪、殺意、悪意の波をこちらに飛ばす。
俺は魔力を開放して精神の壁を押し戻して耐える。
「許さん!許さんぞッ!」
長い銀髪を振り乱してダークエルフは両手の手のひらをこちらに向けた。
「重力爆弾!」
ダークエルフの手のひらを中心に空間が歪む。コイツも空間魔術で攻撃できるのか。
<があッ!>
バーグルーラが結界を張って空間の歪みを押し留める。
だがバーグルーラはまだ苦しそうに身をよじっており結界もいつもより弱々しい。
「くたばれぇっ!」
ダークエルフがさらに強い魔力を放出する。
空間の歪みが大きくなりバーグルーラの結界にヒビが入っていく。
「障壁護符!」
突然バーグルーラの結界に重なるように光の壁が立ち昇り、空間の歪みをかき消した。
俺の左隣にレミーが肩を並べる。
「すいません!ちょっと寝てました!」
俺はレミーの心にも壁を展開する。
「ごめんな!俺が寝かしたんだ!」
ダークエルフのほうに向き直ると、奴は怒りで身体を大きく震わせている。
すると突如その震えを止め、大きく目を見開いて叫んだ。
「なぜだ!なぜ殺し合わん!エルフなど全部死んでしまえばいいんだ!こんな狭い里に閉じ込められて監視しあっていつまでもいつまでもいつまでもいつまでも生きてどうするつもりだ!死ね!死ね死ね死ね死ね死ねッ!死ねぇッ!!!」
奴は絶叫しながら、重力爆弾の空間の歪みを次々とこちらへ投げて飛ばした。それをレミーとバーグルーラの障壁が弾き飛ばしていく。
その時、俺たちの横で宙を舞うシシリーの輝きが強くなった。
「アタシたちの幸せを邪魔するな!消滅!!!」
シシリーの両手から強烈な光の筋がダークエルフに向かって解き放たれる。
「イヤダアアァぁアぁあアアァぁァアァぁァァァぁァァァッ!!!!!」
ダークエルフは断末魔とともに消えてなくなった。
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