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028 宴会
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「今まですまなかったな!礼を言うぞ!ドラウグティフェリよ!」
ドワーフの王は長い白ひげを揺らして頭を下げた。
「そして勇敢な人間たち!それにエルフに黒竜王よ!心から感謝する!!!」
俺たちはドワーフ城の宴会場に集められている。
王や王の側近たち、兵士たち、長老たち、どこから入ったのか街のドワーフたちもぎゅうぎゅうに集まっている。
「お主らがあのピグナタイトの魔物を倒してくれた姿が、奪われた記憶とともに流れ込んできたのじゃ!」
「ドラウグティフェリも昔はとんでもない悪ガキだったのにのぅ」
「お前はドワーフの誇りだ!ドラウグティフェリよ!」
「そして人間たち!お前たちにも本当に世話になった!」
「ありがとう!さあ盛大に飲め!!!」
長老たちが口々に叫び、次々と酒が注がれ大量の料理が運ばれてくる。
「でも本当に死んじゃうかと思ったんだよティモシー!」
シシリーがジョッキを持ったままプンスカ怒っている。
「もしそんなことになったら私…私…」
シェリルのジョッキを持つ手がブルブルと震え、その目から涙が流れた。
そんなに心配してくれるのか、ていうか氷の女帝も泣くのか。
いや、やっぱり氷の女帝なんかじゃないんだな。シシリーの言う通り優しい子だったんだ。
「もうほどほどにしてくださいよ!」
レミーもご立腹だ。
<ふん、我を倒すような者があの程度で死ぬわけがないだろう。なあティモシーよ>
バーグルーラがニヤリと笑ったように見えた。
「まあ、心配かけてごめんな。でもさ」
そう言って俺はジョッキの酒を飲み干す。
「あんなのより、ラノアールの10年間のほうがよっぽど死にそうだったよ」
俺がそう言って笑うと、シェリルが「ふふっ」と笑い、レミーは「あの国は最悪でしたからね!」と言って笑った。
シシリーも「ヤバいねその国!」と笑い、バーグルーラも<つまりお前は地獄から来たのだな!強いわけだ!>と笑った。
みんなの笑い声にあわせてドワーフたちも大笑いし、ドラウグティフェリも笑った。
宴会は朝まで続いた。
俺は2回吐いた。
胃がひっくり返って出てくるかと思った。
…………………………………………
翌日、俺は二日酔いで死んだ。
もう酒なんか飲まない。
…………………………………………
翌々日、俺たちは改めて城を訪れ、ドワーフ王に謁見をした。
ひざまずいたが王の「やめてくれ!お前たちは英雄なのだ!」という声に顔を上げる。
「して、頼みとは何だ?」
レミーが切り出す。
「はい!実は今後、定期的に直接ピグナタイトを仕入れさせて欲しいんです!」
ドワーフ王は「がはははは!」と豪快に笑う。
「なんだ、そんなことか!いくらでも持っていけ!ピグナタイトだけでなく、あの化け物が身に纏っていた黒虹鉄鋼も好きなだけ持っていっていいぞ!」
レミーの顔が輝く。
「ほ、ホントですか!世界最強の鉱石ですよ!?」
「構わん構わん!掘ればまだまだあるだろう!お前たちのおかげで力を取り戻したドワーフなら、これから先いくらでも産出できるわ!」
「あ、ありがとうございます!」
これでアレも作れるし、アレもああして、むふふふふ…と、レミーがよだれを垂らしそうな顔でニヤニヤ笑っている。
「ただな…」とドワーフ王は白ひげを撫でながら言った。
「本当は、人間たちの国とも正式に国交が結べればいいのだがな。そうすれば我々もさらに発展し、国が栄えるというものなのだが」
そうできない問題の根本は、人間たちによるエルフやドワーフたちへの差別か。
そもそもなんで差別なんかするのだろう。
過去に嫌なことをされた?
それならその個人にだけやり返して終わりでいいはずだ。
それとも、自分たちと何かちょっと違うから?
くだらない。
しょせんはみんな、この世に生まれ落ちてメシを食って出して寝て、最後は死ぬだけなのだ。
人間もエルフもドワーフも魔族も。
「差別する人間なんか、みんな消えてしまえばいいんですけどね」
思わず俺がそう漏らすと、バーグルーラが愉快そうに言った。
<ふ、お前なら、いつか本当に消してしまいそうだな>
買いかぶり過ぎだよ。
ドワーフの王は長い白ひげを揺らして頭を下げた。
「そして勇敢な人間たち!それにエルフに黒竜王よ!心から感謝する!!!」
俺たちはドワーフ城の宴会場に集められている。
王や王の側近たち、兵士たち、長老たち、どこから入ったのか街のドワーフたちもぎゅうぎゅうに集まっている。
「お主らがあのピグナタイトの魔物を倒してくれた姿が、奪われた記憶とともに流れ込んできたのじゃ!」
「ドラウグティフェリも昔はとんでもない悪ガキだったのにのぅ」
「お前はドワーフの誇りだ!ドラウグティフェリよ!」
「そして人間たち!お前たちにも本当に世話になった!」
「ありがとう!さあ盛大に飲め!!!」
長老たちが口々に叫び、次々と酒が注がれ大量の料理が運ばれてくる。
「でも本当に死んじゃうかと思ったんだよティモシー!」
シシリーがジョッキを持ったままプンスカ怒っている。
「もしそんなことになったら私…私…」
シェリルのジョッキを持つ手がブルブルと震え、その目から涙が流れた。
そんなに心配してくれるのか、ていうか氷の女帝も泣くのか。
いや、やっぱり氷の女帝なんかじゃないんだな。シシリーの言う通り優しい子だったんだ。
「もうほどほどにしてくださいよ!」
レミーもご立腹だ。
<ふん、我を倒すような者があの程度で死ぬわけがないだろう。なあティモシーよ>
バーグルーラがニヤリと笑ったように見えた。
「まあ、心配かけてごめんな。でもさ」
そう言って俺はジョッキの酒を飲み干す。
「あんなのより、ラノアールの10年間のほうがよっぽど死にそうだったよ」
俺がそう言って笑うと、シェリルが「ふふっ」と笑い、レミーは「あの国は最悪でしたからね!」と言って笑った。
シシリーも「ヤバいねその国!」と笑い、バーグルーラも<つまりお前は地獄から来たのだな!強いわけだ!>と笑った。
みんなの笑い声にあわせてドワーフたちも大笑いし、ドラウグティフェリも笑った。
宴会は朝まで続いた。
俺は2回吐いた。
胃がひっくり返って出てくるかと思った。
…………………………………………
翌日、俺は二日酔いで死んだ。
もう酒なんか飲まない。
…………………………………………
翌々日、俺たちは改めて城を訪れ、ドワーフ王に謁見をした。
ひざまずいたが王の「やめてくれ!お前たちは英雄なのだ!」という声に顔を上げる。
「して、頼みとは何だ?」
レミーが切り出す。
「はい!実は今後、定期的に直接ピグナタイトを仕入れさせて欲しいんです!」
ドワーフ王は「がはははは!」と豪快に笑う。
「なんだ、そんなことか!いくらでも持っていけ!ピグナタイトだけでなく、あの化け物が身に纏っていた黒虹鉄鋼も好きなだけ持っていっていいぞ!」
レミーの顔が輝く。
「ほ、ホントですか!世界最強の鉱石ですよ!?」
「構わん構わん!掘ればまだまだあるだろう!お前たちのおかげで力を取り戻したドワーフなら、これから先いくらでも産出できるわ!」
「あ、ありがとうございます!」
これでアレも作れるし、アレもああして、むふふふふ…と、レミーがよだれを垂らしそうな顔でニヤニヤ笑っている。
「ただな…」とドワーフ王は白ひげを撫でながら言った。
「本当は、人間たちの国とも正式に国交が結べればいいのだがな。そうすれば我々もさらに発展し、国が栄えるというものなのだが」
そうできない問題の根本は、人間たちによるエルフやドワーフたちへの差別か。
そもそもなんで差別なんかするのだろう。
過去に嫌なことをされた?
それならその個人にだけやり返して終わりでいいはずだ。
それとも、自分たちと何かちょっと違うから?
くだらない。
しょせんはみんな、この世に生まれ落ちてメシを食って出して寝て、最後は死ぬだけなのだ。
人間もエルフもドワーフも魔族も。
「差別する人間なんか、みんな消えてしまえばいいんですけどね」
思わず俺がそう漏らすと、バーグルーラが愉快そうに言った。
<ふ、お前なら、いつか本当に消してしまいそうだな>
買いかぶり過ぎだよ。
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