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026 鉱物

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坑道の奥の扉を開けた先は、やはり広大な空洞になっており、その奥には真っ黒で、表面がヌラヌラと虹色に怪しく輝く巨大な鉱物の塊があった。

あれがピグナタイトだろう。

その塊はガリガリガリと巨石がこすり合う音を立てながら、ゆっくりと立ち上がる。それは人型で、まるでドワーフの体型をそのまま荒くかたどった岩の彫刻のようだった。

ピグナタイトの魔物が立ち上がりきるのを待たずに、せっかちな二人が動き出す。

魔光爆炎砲サイコバズーカ!」
重力衝撃グラビティインパクト!」

レミーの大砲から白く輝く炎が、シシリーの両手から空間の歪みが同時に放たれ、ピグナタイトの真っ黒な岩肌に向かう。

直撃するも、キュインッ!という音とともに弾かれ、岩肌は無傷。

ピグナタイトの魔物はその右腕を下から大きく振り抜き、地面から大量の岩石を弾いてこちらに飛ばす。

<効かぬわ>

バーグルーラが俺たちの前に結界を貼り、岩石の雨をパシパシパシッ!とかき消して砂に変えた。

「これならどう!?空間破断スペースストラッシュ!」

宙を舞うバーグルーラの下からシシリーが手刀を逆袈裟に振り抜くと、比喩ではなくその先の空間がズレた。
音もなく地面から壁面、天井にかけて斜めに一直線の深い溝ができたが、ピグナタイトの魔物には傷ひとつない。

「なんで!?」

ピグナタイトの魔物が今度は左腕を振り回して岩石の散弾を飛ばす。

<単調な攻撃だな>

バーグルーラが再び結界を張る。

岩石が次々にバーグルーラの結界にかき消されていく中、「おかしいな、アタシの空間破断スペースストラッシュは絶対斬撃なのに…」と戸惑うシシリーにレミーが叫ぶ。

「あいつに魔術の攻撃は効きません!あの岩石自体が魔力を吸収してしまうんです!」

それを聞いて、静かに戦況を観察していたシェリルが動く。

「それなら私の出番ね」

レイピアを下段に構え、地面を蹴って跳躍した。いや、跳躍した「はず」だ。
俺の目にはシェリルが突然消えたとしか思えなかった。

巨大なピグナタイトの塊の周囲にシェリルと思われる影が縦に横に斜めに飛び回り、絶え間なくギィン!ギギィン!ギィン!という金属音だけが響いてくる。

ピグナタイトの塊は両手を振り回して暴れているがシェリルは捕まらない。が、ピグナタイトの岩肌にも傷はまったくついていない。

シャッ!と音を立ててシェリルがこちらに戻る。

「ピグナタイト…私の剣でも斬れない鉱物があったのね」

その言葉に、レミーが左右に首を振る。

「いえ、あれはピグナタイトではありません」

全員が驚く。

「え!じゃあアレは一体何なの!?」
「情報の吸収と蓄積の特性を持つピグナタイトだから魔物化したという話だったわよね」

その疑問に頷いてからレミーが答える。

「はい。たぶん中身はピグナタイトですが、表面に別の鉱石を纏っているんです。あの表面の虹色に輝く黒い鉱石は、黒虹鉄鋼ラクラルライト

「ら、黒虹鉄鋼ラクラルライト!?」と俺とシシリーとシェリルが声を揃える。

レミーが答える。

「はい。あらゆる魔力を吸収し、あらゆる物理攻撃を弾き返す世界最強の鉱石です」

…じゃあ無理じゃん。

さっきから降り注ぐ岩石の雨はすべてバーグルーラの結界にかき消されているけど、こっちの攻撃も効かないんじゃ無理じゃん。
当然、何度か地味に発動させた俺の精神破壊マインドブレイクも届いてないし。

よし帰ろう。諦めてさっさと帰って酒でも飲もう。

俺がそう提案しようとした時にバーグルーラが結界を張ったままこちらを振り返らずに言う。

<シシリーよ。我を元の大きさに戻せるか?>

「え?うん、できるけど、どうするの?」と答えたシシリーにバーグルーラが続ける。

<最大出力の竜王滅殺砲ドラグニルゼロを放つ。世界最強の鉱石とやらが、大陸をも消し飛ばす我の咆哮に耐えられるか、試してやるわ>

すぐさま俺が止めに入る。

「いやダメでしょそれは!こんなとこでやったら俺たちも消し飛んじゃうでしょ!」
「確かに崩落する程度では済まないわね」

<むう…それもそうか>

よしダメだな。いよいよダメだ。
これはもう帰ろう。いいね、よくやったね俺たちは。帰って酒だ酒。

「よしみんな」と俺が言い始めたところで背後の扉が開いた。

振り返ると、そこには大きなハンマーと杭を持ったドラウグティフェリが立っていた。

「俺に、任せろ」
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