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第2章

4 rampage

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ズドドドドドドドッ!とけたたましい音を響かせ瓦礫をかき分け粉塵を撒き散らして、巨大な金属の塊が3体、地中からせり上がって私たちを取り囲むようにそびえ立つ。お城みたいに背が高くて見上げると私は思わずのけぞってしまう。

「ちょっと何よこれ!」
「大きすぎますわ!」
「1体って言ってたよね!?」

私とローザとライラが口々にそう叫ぶが、エーセブンもまた別の事柄について叫ぶ。

S-7エスセブン!何があった!」

私たちを取り囲む3つの巨大な金属の塊は歯車やら管やら他にもよくわからない様々な部品がごちゃごちゃ集まった人間の形になっていて、全身の色が個体ごとに赤・青・緑と違っている。
エーセブンが見上げた視線の先はその巨大な機械人間《赤》の肩のあたり。そこにはエーセブンにそっくりな白い女の子が引っかかっている。

「応答しろ!S-7エスセブン!」

よく見ればその白い女の子は右脚が根本からなくなっていて、左腕も肘から先がちぎれかけている。おなかもえぐれていて変な管とかが飛び出しているし、身体の至るところから真っ赤な血のような液体が流れている。ぐったりしていて目もつぶっていてエーセブンの呼びかけにも反応しない。

…あの子、もしかして、もう死んじゃってない?

私がそう思った瞬間、その巨大な機械人間《赤》が胸のあたりから強烈な炎を噴き出す。

聖なる光の盾ホーリーシールド!!」

ローザが瞬時に光の壁を展開し、私たちの頭上で炎は食い止められる。

ライラが「開け、解析眼…!」と呟く。

「こいつら…カタイけど頭部が弱点みたいだよ…!それか全身の関節を固めちゃうかだね…!とにかく手分けして戦おう!伸びろ!狂乱葛草クルイカズラ!!」

ライラが手のひらからツタを伸ばす。ツタは機械人間《青》の腕に絡まると一気に収縮してライラはその勢いで空中に飛び上がって機械人間《青》の肩に着地する。
機械人間《青》は蝿でも振り払うように自分の肩を叩こうとするが、ライラはそれより一瞬早く飛び降り、再びツタを伸ばして遠心力で宙を舞い今度は反対の肩に着地する。

「いい撹乱ですわ!太陽の光の矢サンライトアロー!!」

ローザが聖術の矢で機械人間《青》の膝あたりを撃ち抜く。
私が「ケルベロス!フェンリル!」と叫ぶと、黒い三ツ首の魔犬と白銀の狼が飛び出す。

「ローザとライラを手伝いなさい!」

2つの大きな影が「わうっ!」と吠えて体勢を崩した機械人間《青》に飛びかかる。

そしてエーセブンが「S-7エスセブン!」と叫びながら機械人間《赤》に向かって飛び立ったのを見て、私は機械人間《緑》に向き合う。
ギギギギギ…と音を立てながら機械人間《緑》は拳を振りかざしている。

「やるしかないわね…!悪魔王の憤怒サタニックイーラ…!!」

そう呟くとおなかの底からメラメラと魔力の炎が燃え上がってくる。
バチチチチチッ!と全身に電流が走り雷竜の翼と尻尾も生えてきて、そもそもどうしてこんな人類も滅亡しちゃったようなわけのわからない世界に飛ばされなきゃいけなかったのか、なんでローザは最近ライラにばっかりデレデレしているのか、さっさとお父様たちに会いにロドンゴに行きたいのにどうしてゲートを閉鎖なんかしているのか、その上どうしてこんな金属の塊のデカブツたちと戦ったりしなきゃいけないのか、次から次へと理不尽な状況に対する怒りもこみ上げてくる。

機械人間《緑》がグワァッと巨大な拳を振り下ろす。

「なんなのよアンタは!!!」

私は地面を強く蹴って飛び出し、緑色の巨大な拳の中心に自分の拳を振り抜く。
メキャッ!と音がして金属の拳が粉々に砕け、私はそのまま猛スピードで腕を駆け上がる。

緑色の機械人間の頭部の目のようなところがビカッと光って熱線で私の左腕が肩から吹き飛ばされるが、私は構わずスピードをさらに上げてジャンプして顎先を思い切り蹴り上げる。

グシャアッ!!!

緑色の巨大な頭部が爆散する。

高速で動いて濃縮された私の時間感覚の中で、金属の歯車やら管やら何やらが粉々に吹き飛んでいくのがゆっくりと見えて、それがとてもキレイで私の顔が自然とニヤけてしまう。

――――………ああ、気持ちいい。

ゴチャゴチャした歴史やら政治やらの話を聞いてるくらいなら、こうやって派手に暴れるほうが私の性に合ってるわ。

私は空中で腰のサーベルを右手で抜くと瞬時に再生した左手も添えて両手持ちで振りかぶる。

「鉄クズのくせに生意気よっ!!!」

魔力も電撃も込めて一気にズバァッ!と下まで振り抜くと、着地と同時にピシピシピシと機械人間の真ん中に切れ目が入って後ろ向きにぐらりと倒れ始めた。

ズドォォオォオォォォオオォォンッ!!!

真っ二つになった巨体が後ろに倒れ込んで激しい粉塵を巻き上げると、私の背後からライラの声が響く。

「解き放て!魔蒼麗樹マソウレイジュ!!!」

振り向くと巨大な機械人間《青》の身体中から太い樹の枝や根が生えている。
バチ…バチチ…!と突き破られた箇所から火花を散らして身動きできないようだ。

「すごい!やりましたわね!」
「えへへへ!飛び回りながら種を仕込んでたんだ!」

ローザとライラは飛び上がってハイタッチをする。
二人を見下ろしてキュイィィン…と機械人間《青》は目を光らせる。

「危ないっ!初級火炎球ファイヤーボール!!」

私は人差し指から火球を放って機械人間《青》の頭部をズガァァンッ!と吹き飛ばす。

「油断しちゃダメだよ!ローザ!ライラ!」

私が駆け寄ると二人は「ありがとうリリアス…」「さすがリリアス様ですわ…」と感心した様子を見せてくれたけど、私は「まだもう1体残ってるよ!」と二人の前に立ってサーベルを構える。

私たちが向き合った機械人間《赤》は左脚が膝から切断されていて、バランスを崩したそいつの肩からエーセブンが白い少女を助け出して飛び立ったところだった。

機械人間はエーセブンを捕まえようと手を伸ばす。そこに私が「フェンリル!」と叫ぶと、白銀の狼は口から強烈な冷気を放って機械人間の腕の動きを止めてしまう。

「礼を言う!リリアス・エル・エスパーダ!レーザーキャノン、起動!」

宙に浮いて右肩に少女を担いだエーセブンの左腕が巨大な機械の筒に変わっていく。

キュイィィィィィン…!

甲高い音を立てて砲口に眩い光の粒が集まる。

フェンリルの冷気で凍らされた腕をガギギギギギ…と何とか動かそうとしている機械人間《赤》に向かってエーセブンが叫ぶ。

「コズミックレーザー発射!!!」

エーセブンの大砲から光線が放たれ、私の視界は一瞬で真っ白になった。
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