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第1章
36 可哀想な欲望
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「それにしても怒った時のお前は本当に凄まじいな」
そう言ってニカッと笑ったアルミラの笑顔は、今までに見たことのない明るいものだった。まるで剣術の手合わせを終えた少年がお互いを称え合うような爽やかな笑顔。
私はそれに思わずドキッとして見ていられなくなる。
―――そんな顔、今まで見せたことなかったじゃない…。
「リリアス」
「えっ」
急に呼びかけられて私は驚いて顔を上げる。
アルミラはもう笑顔ではない。キリリとした真剣な顔だ。
「おそらく、あれがお前の固有能力なんじゃないかとアタシは思う」
「え、何が?」
「え、いや、怒ってさっきベリアルを殴っていただろう?」
「あ、ああ…うん」
「それがお前の固有能力なんじゃないかな」
固有能力。
そういえばそういう話だった。
この『地獄』と呼ばれる迷宮で吸血鬼としての基礎能力を試され、今も私たちの後ろでしょぼんと座ったまま動かないベリアルが固有能力を試す。
その試練に合格すればここを出られる、そんなような話だった、そういえば。
「確かに、すべての攻撃が通用しないはずの僕をあれだけ殴り続けるなんて、普通は考えられないことだね…」
その言葉に私が振り返ると、ベリアルはビクッと身体を震わせた。
「ちょっ、顔が怖いです…」
「なんか腹立つのよね、あんたの声と顔」
「そ、そんな…」
「まあいいわ。それで、あれが私の固有能力なわけ?」
「は、はい。そうだと思います」
「思いますって何よ」
「えっ」
「そんな曖昧な判定で決まるわけ?固有能力っていうのは」
「いや、えっと、その…」
モゴモゴ言い出したベリアルに「何よ、煮え切らない男ね」と私が歩み寄ろうとするとベリアルは「ひぃっ!」と身をすくめるし、アルミラも「もう勘弁してやれ、大悪魔のプライドもあるだろう」と言うし、失礼ね、まるで私のことを恐怖の象徴か何かみたいに。
「まあ、恐怖の象徴みたいなもんじゃろ」
突然しわがれた老人の声が響いて私は身構える。
誰!?ていうか今、私の心、読んだ!?
「まあそう警戒するな。お主にゃ何もせんわい」
私もアルミラも声がどこから聞こえてくるのかわからず周囲を見渡したが、声の主はベリアルの向こう側の地面の下からぬうっとあらわれた。
「すまんかったの、ベリアルの奴が」
その老人は全身に絵の具を塗ったように赤い肌でツルッとした頭から2本、山羊のような角を生やしていて、宙に浮いて黒いローブの裾を風になびかせながら長い顎髭を手で撫でている。
「サタン様!」
ベリアルがそう叫び、私とアルミラも声を揃えて「サタン!?」と言う。
「いかにも。儂が悪魔王サタンである」
サタン。
幼い頃から何度も何度も聞かされてきた名前だ。
『悪い子はサタンに連れて行かれますよ』とか『そんなことをしていたらサタンに取り憑かれていると思われますよ』とか、山猿令嬢と呼ばれていた私は叱られる時、特にイザベラを中心によくそんなことを言われていた。
え?
実在するの?
ていうことは神様も本当にいるってこと?
いや、嘘でしょサタンなんて。
そういう設定の高ランクの魔物ってだけじゃないの?
本当に、本物?なわけないわよね…?
なんか赤いだけで普通のお爺ちゃまみたいで、特に威圧感とかないし。
「なぜ、魔界の王がこんなところに…!」
震えながらそう聞いたアルミラに、サタンは手のひらをひらひらさせ「よいよい、そんなに恐れんでも」と言う。
「なに、ちょっと蝿の王とハルバラムの小僧に頼まれて来ただけよ。リリアス・エル・エスパーダ、お主を見極めてくれとのことでな」
え………私?
「そう、お主じゃよ。もしここでベリアルに固有能力を見せても、それで物足りぬ時は儂が下の層で見てやる手筈だったのじゃ。儂も興味があったしな。しかしベリアルとの先ほどの一件、しかと見せてもらったが素晴らしいな、お主は。儂もつい若い頃を思い出して血が沸き立ったぞ」
私は予想もしなかった事態に呆気にとられてただ立ち尽くしている。
アルミラもそのようで、ぽかんと口を開けている。
「見たところお主は、感情の昂りで真の力を発揮するようじゃな。先ほど見せたお主の力は、あらゆる防御を不能にして己の攻撃を叩き込む力。相手に備わった耐性や魔力障壁、幻術などはもちろん、概念上の絶対防御もすべて無視して貫き通すじゃろうな」
「そ、そんな力が私に…?」
「ほほ、何を言うか。先ほど散々やっておったじゃろうが」
サタンは愉快そうに長く伸びた顎髭を撫でる。
「その能力を悪魔王の憤怒と名付けてやろう」
「私の固有能力は、悪魔王の憤怒…」
「そうじゃ。能力に名前をつけるというのはただの戯れではないぞ。能力を発動させたい時、きちんと能力名を発することで発動は円滑になされるようになるものじゃ。ただしな」
サタンは手のひらを上に向け、そこに小さな玉のような何かを創り出した。
「それにしても今はまだ、あまりにコントロールが下手じゃ。そこでいいものをやろう」
サタンがその小さな玉を私に放ると、私の口が勝手に開いてその玉を飲み込んでしまった。
「んぐっ!!」
反射的に吐き出そうとするが玉は私のおなかの中に根付いて出てこない。
「そう心配するな、毒でも何でもないわい。今のはお主が悪魔王の憤怒を使うたびにその能力が身体に馴染んでコントロールしやすくなるためのきっかけに過ぎんよ」
……成長を手助けしてくれるものということだろうか。
「そうじゃそうじゃ。ただそれ以上に大切なことがあるぞ?」
サタンは腕を組み、眉をひそめて言う。
「お主はまず、もっと自分に素直になれ。正直な心の声を聞け。誰かに与えられた理性や道徳で偽るな。本当の心に蓋をすればするほど、お主の心の中の闇と怒りは制御できなくなり、最後はお主自身をも滅ぼすことになるぞ」
その言葉を聞いて私はギクリとする。
「よいか?悪魔王からの貴重な助言じゃ。お主はもう少し自分の欲望を認めてやれ。そのままではお主の欲望が可哀想じゃよ。あまり無視ばかりしてしまえば、欲望だって悲しんで歪んでしまうわい」
そう言ってニカッと笑ったアルミラの笑顔は、今までに見たことのない明るいものだった。まるで剣術の手合わせを終えた少年がお互いを称え合うような爽やかな笑顔。
私はそれに思わずドキッとして見ていられなくなる。
―――そんな顔、今まで見せたことなかったじゃない…。
「リリアス」
「えっ」
急に呼びかけられて私は驚いて顔を上げる。
アルミラはもう笑顔ではない。キリリとした真剣な顔だ。
「おそらく、あれがお前の固有能力なんじゃないかとアタシは思う」
「え、何が?」
「え、いや、怒ってさっきベリアルを殴っていただろう?」
「あ、ああ…うん」
「それがお前の固有能力なんじゃないかな」
固有能力。
そういえばそういう話だった。
この『地獄』と呼ばれる迷宮で吸血鬼としての基礎能力を試され、今も私たちの後ろでしょぼんと座ったまま動かないベリアルが固有能力を試す。
その試練に合格すればここを出られる、そんなような話だった、そういえば。
「確かに、すべての攻撃が通用しないはずの僕をあれだけ殴り続けるなんて、普通は考えられないことだね…」
その言葉に私が振り返ると、ベリアルはビクッと身体を震わせた。
「ちょっ、顔が怖いです…」
「なんか腹立つのよね、あんたの声と顔」
「そ、そんな…」
「まあいいわ。それで、あれが私の固有能力なわけ?」
「は、はい。そうだと思います」
「思いますって何よ」
「えっ」
「そんな曖昧な判定で決まるわけ?固有能力っていうのは」
「いや、えっと、その…」
モゴモゴ言い出したベリアルに「何よ、煮え切らない男ね」と私が歩み寄ろうとするとベリアルは「ひぃっ!」と身をすくめるし、アルミラも「もう勘弁してやれ、大悪魔のプライドもあるだろう」と言うし、失礼ね、まるで私のことを恐怖の象徴か何かみたいに。
「まあ、恐怖の象徴みたいなもんじゃろ」
突然しわがれた老人の声が響いて私は身構える。
誰!?ていうか今、私の心、読んだ!?
「まあそう警戒するな。お主にゃ何もせんわい」
私もアルミラも声がどこから聞こえてくるのかわからず周囲を見渡したが、声の主はベリアルの向こう側の地面の下からぬうっとあらわれた。
「すまんかったの、ベリアルの奴が」
その老人は全身に絵の具を塗ったように赤い肌でツルッとした頭から2本、山羊のような角を生やしていて、宙に浮いて黒いローブの裾を風になびかせながら長い顎髭を手で撫でている。
「サタン様!」
ベリアルがそう叫び、私とアルミラも声を揃えて「サタン!?」と言う。
「いかにも。儂が悪魔王サタンである」
サタン。
幼い頃から何度も何度も聞かされてきた名前だ。
『悪い子はサタンに連れて行かれますよ』とか『そんなことをしていたらサタンに取り憑かれていると思われますよ』とか、山猿令嬢と呼ばれていた私は叱られる時、特にイザベラを中心によくそんなことを言われていた。
え?
実在するの?
ていうことは神様も本当にいるってこと?
いや、嘘でしょサタンなんて。
そういう設定の高ランクの魔物ってだけじゃないの?
本当に、本物?なわけないわよね…?
なんか赤いだけで普通のお爺ちゃまみたいで、特に威圧感とかないし。
「なぜ、魔界の王がこんなところに…!」
震えながらそう聞いたアルミラに、サタンは手のひらをひらひらさせ「よいよい、そんなに恐れんでも」と言う。
「なに、ちょっと蝿の王とハルバラムの小僧に頼まれて来ただけよ。リリアス・エル・エスパーダ、お主を見極めてくれとのことでな」
え………私?
「そう、お主じゃよ。もしここでベリアルに固有能力を見せても、それで物足りぬ時は儂が下の層で見てやる手筈だったのじゃ。儂も興味があったしな。しかしベリアルとの先ほどの一件、しかと見せてもらったが素晴らしいな、お主は。儂もつい若い頃を思い出して血が沸き立ったぞ」
私は予想もしなかった事態に呆気にとられてただ立ち尽くしている。
アルミラもそのようで、ぽかんと口を開けている。
「見たところお主は、感情の昂りで真の力を発揮するようじゃな。先ほど見せたお主の力は、あらゆる防御を不能にして己の攻撃を叩き込む力。相手に備わった耐性や魔力障壁、幻術などはもちろん、概念上の絶対防御もすべて無視して貫き通すじゃろうな」
「そ、そんな力が私に…?」
「ほほ、何を言うか。先ほど散々やっておったじゃろうが」
サタンは愉快そうに長く伸びた顎髭を撫でる。
「その能力を悪魔王の憤怒と名付けてやろう」
「私の固有能力は、悪魔王の憤怒…」
「そうじゃ。能力に名前をつけるというのはただの戯れではないぞ。能力を発動させたい時、きちんと能力名を発することで発動は円滑になされるようになるものじゃ。ただしな」
サタンは手のひらを上に向け、そこに小さな玉のような何かを創り出した。
「それにしても今はまだ、あまりにコントロールが下手じゃ。そこでいいものをやろう」
サタンがその小さな玉を私に放ると、私の口が勝手に開いてその玉を飲み込んでしまった。
「んぐっ!!」
反射的に吐き出そうとするが玉は私のおなかの中に根付いて出てこない。
「そう心配するな、毒でも何でもないわい。今のはお主が悪魔王の憤怒を使うたびにその能力が身体に馴染んでコントロールしやすくなるためのきっかけに過ぎんよ」
……成長を手助けしてくれるものということだろうか。
「そうじゃそうじゃ。ただそれ以上に大切なことがあるぞ?」
サタンは腕を組み、眉をひそめて言う。
「お主はまず、もっと自分に素直になれ。正直な心の声を聞け。誰かに与えられた理性や道徳で偽るな。本当の心に蓋をすればするほど、お主の心の中の闇と怒りは制御できなくなり、最後はお主自身をも滅ぼすことになるぞ」
その言葉を聞いて私はギクリとする。
「よいか?悪魔王からの貴重な助言じゃ。お主はもう少し自分の欲望を認めてやれ。そのままではお主の欲望が可哀想じゃよ。あまり無視ばかりしてしまえば、欲望だって悲しんで歪んでしまうわい」
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作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
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