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第1章
35 無限に許さない
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「はははっ!ずいぶんお怒りだね!」
魔力を爆発させた私はヘラヘラ笑うベリアルに向かって飛びかかる。
「ムダムダ!僕にはどんな攻撃も当たらな」
グシャアッ!!!
全身全霊を込めて握り締めた私の拳がベリアルの頬を撃ち抜く。
「な、なんで…」
顔面を歪ませて呟きながら猛スピードで吹っ飛ぶベリアルに私はそれ以上のスピードで飛びつき、空中で肩を掴んで地面に叩きつける。
私はベリアルに馬乗りになってギリギリギリと右拳を握り締めて振り上げる。
「な、殴れたところでこんな傷すぐに再生」
ズガァアッ!!!!
ベリアルの顔面を殴り抜けた衝撃で隕石が落ちたように地面が砕け散って大きくへこむ。
陥没する地面の中で今度は左拳を撃ち抜く。
ゴチャッ!!!
ベリアルの頭部がザクロを割ったように砕け、血や脳漿が激しく飛び散る。
しかしすぐにベリアルの頭部が再生され傷ひとつなく元通りになる。
「再生されるんだよ!無限に!」
ベリアルは聖歌隊の少年のような顔でにやにや笑う。
「ムダだって言ってるだろ!僕の前では何もかもム」
「やかましいっ!!!」グチャッ!!!
私はベリアルの頭部が再生されるたび何度も何度も拳を振り上げては殴り降ろす。
「お前は!」ゴシャッ!!!
「もう!」ドゴッ!!!
「喋るな!」グシャッ!!!
「無限に!」メキャッ!!!
「再生するなら!」ズギャッ!!!
「無限に!」ドガッ!!!
そこで私は深呼吸をするようにもう一度魔力を燃え上がらせた。
「殴り殺し続けてやるっ!!!!!」
グシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャ………
身体中を走る電流が激しく光を放ち、私は稲妻そのもののようになり、両方の拳を何度も何度も何度も何度も振り抜いてベリアルの顔面を殴り砕き続けた。
一瞬のようにも無限のようにも感じられる時間の中で、ベリアルは私に頭部を破壊されるたびに再生し、また破壊された。何度も何度も。
破壊と再生が何万回繰り返されたあたりからかわからないが、ベリアルは再生した時に口を開いて何か言おうとし始めたが、発声する前に私に殴り砕かれた。
馬乗りになった私の下でベリアルの身体は手足をばたつかせてもがいたが、構わず私は殴り続ける。
頭部を破壊され続けながらも炎や精霊銀の刃とやらを私に放っていたようだが、爆散し続ける私の魔力にすべてかき消され続けた。
殴れば殴るほど私の怒りは収まるどころかさらに燃え上がり、世界を焼き尽くして無限の時間の先にも私はベリアルを殴り続けるだろうという確信が深まっていく。
「ゆ」グシャアッ!!!
ようやくベリアルが一音を発した。その後も一音発するたび私に殴り砕かれたが、繋げるとどうやらこう言っているようだった。
「許して、ください、もう、殴ら、ないで」
私はそこまで聞いて一度、手を止める。
ベリアルが早口に喋りだす。
「ごめんなさい!もう許してください!お願いします!」
私は静かに聞く。
「私が許すと思う?」
ベリアルは泣き出しそうな顔をする。
「…お願いします」
私は薄く微笑む。
「死ね」
再び魔力を爆発させて私は両腕を何度も何度も振り抜いた。
また一瞬のような無限のような時間の中でベリアルは顔面を殴り砕かれ続けた。
ベリアルはその中でまた一音ずつ「お願いします」「お願いします」と何度も言ったが私はただひたすらに殴り続けた。
「もうやめてやれ」
私の後ろで突然声が響いて肩に手がかけられた。
振り返ると、そこにはアルミラがいた。
死んだはずのアルミラが。
「僕が!僕が生き返らせたんだよ!死んだことをなかったことにしたんだ!」
ベリアルは私の下から早口で言った。
「だからもう許して!君たちにはもう何もしないから!お願いだから!」
私は馬乗りになったままベリアルを見下ろして言った。
「…生き返ったなら、もういいわ。でも次に私を怒らせたら」
ベリアルの顔が引きつった。
「もっと酷い目に合わせてやるから」
そう言って私が立ち上がると、ベリアルは「ごめんなさい!ごめんなさい!もう絶対に何もしません!」と何度も何度も頭を下げた。
でも私はもうそれを見ていない。
生き返ったアルミラの前に立って、上から下までじっくりと見る。
「本当に、生き返ったのね」
「ああ…お前のおかげだ」
「…よかった」
「……アタシもだ」
アルミラに抱きついた私を、アルミラはぎゅうっと抱きしめた。
抱きしめられながら思う。
―――血を飲んでしまった。
死ぬ間際の願いだったとはいえ、私はこのアルミラの血を飲んでしまった。
ローザとの約束を破って、欲望のままにゴクゴクと血を飲んでしまった。
二人で得も言われぬ快楽に興じ、肉欲にまみれながら抱き合って血を飲んでしまった。
そして血を通してアルミラの嘘偽ることのできない想いを知ってしまった。
言葉ではなく、心が深く通じ合うことで知ってしまった。
アルミラは私のことを愛している。
………じゃあ、私は?
魔力を爆発させた私はヘラヘラ笑うベリアルに向かって飛びかかる。
「ムダムダ!僕にはどんな攻撃も当たらな」
グシャアッ!!!
全身全霊を込めて握り締めた私の拳がベリアルの頬を撃ち抜く。
「な、なんで…」
顔面を歪ませて呟きながら猛スピードで吹っ飛ぶベリアルに私はそれ以上のスピードで飛びつき、空中で肩を掴んで地面に叩きつける。
私はベリアルに馬乗りになってギリギリギリと右拳を握り締めて振り上げる。
「な、殴れたところでこんな傷すぐに再生」
ズガァアッ!!!!
ベリアルの顔面を殴り抜けた衝撃で隕石が落ちたように地面が砕け散って大きくへこむ。
陥没する地面の中で今度は左拳を撃ち抜く。
ゴチャッ!!!
ベリアルの頭部がザクロを割ったように砕け、血や脳漿が激しく飛び散る。
しかしすぐにベリアルの頭部が再生され傷ひとつなく元通りになる。
「再生されるんだよ!無限に!」
ベリアルは聖歌隊の少年のような顔でにやにや笑う。
「ムダだって言ってるだろ!僕の前では何もかもム」
「やかましいっ!!!」グチャッ!!!
私はベリアルの頭部が再生されるたび何度も何度も拳を振り上げては殴り降ろす。
「お前は!」ゴシャッ!!!
「もう!」ドゴッ!!!
「喋るな!」グシャッ!!!
「無限に!」メキャッ!!!
「再生するなら!」ズギャッ!!!
「無限に!」ドガッ!!!
そこで私は深呼吸をするようにもう一度魔力を燃え上がらせた。
「殴り殺し続けてやるっ!!!!!」
グシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャ………
身体中を走る電流が激しく光を放ち、私は稲妻そのもののようになり、両方の拳を何度も何度も何度も何度も振り抜いてベリアルの顔面を殴り砕き続けた。
一瞬のようにも無限のようにも感じられる時間の中で、ベリアルは私に頭部を破壊されるたびに再生し、また破壊された。何度も何度も。
破壊と再生が何万回繰り返されたあたりからかわからないが、ベリアルは再生した時に口を開いて何か言おうとし始めたが、発声する前に私に殴り砕かれた。
馬乗りになった私の下でベリアルの身体は手足をばたつかせてもがいたが、構わず私は殴り続ける。
頭部を破壊され続けながらも炎や精霊銀の刃とやらを私に放っていたようだが、爆散し続ける私の魔力にすべてかき消され続けた。
殴れば殴るほど私の怒りは収まるどころかさらに燃え上がり、世界を焼き尽くして無限の時間の先にも私はベリアルを殴り続けるだろうという確信が深まっていく。
「ゆ」グシャアッ!!!
ようやくベリアルが一音を発した。その後も一音発するたび私に殴り砕かれたが、繋げるとどうやらこう言っているようだった。
「許して、ください、もう、殴ら、ないで」
私はそこまで聞いて一度、手を止める。
ベリアルが早口に喋りだす。
「ごめんなさい!もう許してください!お願いします!」
私は静かに聞く。
「私が許すと思う?」
ベリアルは泣き出しそうな顔をする。
「…お願いします」
私は薄く微笑む。
「死ね」
再び魔力を爆発させて私は両腕を何度も何度も振り抜いた。
また一瞬のような無限のような時間の中でベリアルは顔面を殴り砕かれ続けた。
ベリアルはその中でまた一音ずつ「お願いします」「お願いします」と何度も言ったが私はただひたすらに殴り続けた。
「もうやめてやれ」
私の後ろで突然声が響いて肩に手がかけられた。
振り返ると、そこにはアルミラがいた。
死んだはずのアルミラが。
「僕が!僕が生き返らせたんだよ!死んだことをなかったことにしたんだ!」
ベリアルは私の下から早口で言った。
「だからもう許して!君たちにはもう何もしないから!お願いだから!」
私は馬乗りになったままベリアルを見下ろして言った。
「…生き返ったなら、もういいわ。でも次に私を怒らせたら」
ベリアルの顔が引きつった。
「もっと酷い目に合わせてやるから」
そう言って私が立ち上がると、ベリアルは「ごめんなさい!ごめんなさい!もう絶対に何もしません!」と何度も何度も頭を下げた。
でも私はもうそれを見ていない。
生き返ったアルミラの前に立って、上から下までじっくりと見る。
「本当に、生き返ったのね」
「ああ…お前のおかげだ」
「…よかった」
「……アタシもだ」
アルミラに抱きついた私を、アルミラはぎゅうっと抱きしめた。
抱きしめられながら思う。
―――血を飲んでしまった。
死ぬ間際の願いだったとはいえ、私はこのアルミラの血を飲んでしまった。
ローザとの約束を破って、欲望のままにゴクゴクと血を飲んでしまった。
二人で得も言われぬ快楽に興じ、肉欲にまみれながら抱き合って血を飲んでしまった。
そして血を通してアルミラの嘘偽ることのできない想いを知ってしまった。
言葉ではなく、心が深く通じ合うことで知ってしまった。
アルミラは私のことを愛している。
………じゃあ、私は?
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