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第1章
23 侯爵令嬢は困惑する
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寄り道。
アルミラがそう言って開けた扉の先は、どうやら民家ではなく何かの店のようだった。
鼠や蝙蝠、鴉や狼といった様々な動物の死骸、色とりどりの果実や植物の根などが天井から吊るされ、様々な木箱やガラス瓶がところ狭しと並ぶ室内に設えられた大きな机の向こうで、何か小さな細工箱のようなものをいじっていた中年男性が振り返った。
「いらっしゃ…あ、アルミラ様!」
白髪混じりで小太りのオジサンは慌てた様子で小さな細工箱を引き出しに仕舞うと、机の向こうから棚の間を窮屈そうに通ってこちらに出てきた。
「まさか闇騎士様がこんな穴蔵のような店までわざわざお見えになられるとは…!お申し付け頂ければ城まで伺いましたものを…!」
アルミラは「構わん」と短く言うと顎でローザを示して言った。
「いくつか月影草の香水をもらえるか?この娘が人間であることを隠したいのだ」
「え…?ですがあれは」
「余計なことを言うな、早くしろ」
オジサンは「は、はい!かしこまりました!」と言うと、雑多に品物があふれかえる棚の森をかきわけて店の奥へと消えていった。
「ローザが人間だと何か困るの?」
私がそう聞くとアルミラは眉根を寄せて言った。
「…街にも城にもアンデッドがうようよしているんだぞ?」
確かに愚問だった。そんな中に聖女であるローザがそのまま入ったら「食べてくれ」と言っているようなものだ。
しかしローザは首をかしげる。
「あら、でもわたくしでしたら隠蔽か清浄の薄膜でアンデッドに気取られないことくらいできましたのに」
アルミラは小さく首を振る。
「お前の魔力にも限界があるだろう。月影草の香水なら効果は長時間かつ強力だ」
ローザは少し難しい顔をして「わたくしの魔力なら数日間くらいは問題ないのですが…」と呟いた。
「でも、お心遣いが嬉しいですわ。ありがたく頂戴いたします」
そう言ってローザがふわりとドレスの裾を持ち上げて礼をすると、奥からさっきのオジサンが戻ってきた。両手で抱えた箱には草が入った小瓶がぎっしり詰まっている。
「こちらが当店にあるだけの月影草の香水でございます…!」
アルミラは懐から革袋を取り出し「ひとつもらおう。いくらだ?」と聞くが、オジサンは「め、滅相もございません!お代は結構でございます!」と拒絶する。
「そうはいかん。貴様も娘を食わせていかねばならんだろう」
アルミラのその言葉に、突然オジサンは泣き出しそうな表情になってうつむいた。
「…それが、その、ライラがここ数日、家に戻ってきておりませんで…」
アルミラは「何!?」と叫んで革袋を床に落とした。
「どういうことだ!ライラは来年の献上姫候補だったはずだ!それも魔眼持ちだろう!」
オジサンは怯えた表情を見せて、その場に両膝をついて平伏した。
「も、ももも申し訳ございません!わたしも必死に探しているのですが、屍食鬼か死霊の慰み者にでもなってしまったのではないかと気が気ではありませんで…!」
アルミラは忌々しそうにオジサンを睨みつけて言った。
「く…!仕方ない…アタシも探しておいてやる!もし貴様のほうで娘を見つけられたら必ず城に連絡を入れるのだぞ!」
オジサンは床に頭をこすりつけたまま「か、かしこまりましたっ!」と言い、アルミラは床に落とした革袋を拾い上げて数枚の銀貨を机に叩きつけ、月影草の香水の小瓶をひとつ引っ掴んだ。
「行くぞ!」
急いで店の出口に向かおうとするアルミラを私が呼び止める。
「ちょっと待ってアルミラ、どういうこと?」
アルミラは振り返って答える。
「…この魔具店の主人、ヘンリク・サーリネンの娘、ライラは来年の第6の月に『あの方』に捧げる供物になるはずだったのだ。それがいなくなった。一刻も早く『あの方』のお耳に入れねばならん」
アルミラはすぐにでも店を出たいような様子だったが、私は気にしない。
「ふ~ん…そんなの、血を吸われるのが嫌で逃げただけなんじゃない?」
「ば、馬鹿なことを言うな!『あの方』に血を捧げることはファルナレークでも最大の栄誉なのだぞ!」
「そんなふうに思ってるのなんて、どうせ吸血鬼だけよ」
「な、何を…!」
「ねえオジサン、えっと…ヘンリクさん?ライラってどんな娘なの?」
私に話を振られてこの店の主人だというヘンリクは平伏したままビクッと身体を震わせ、恐る恐る顔を上げた。
「わ、わたしの一人娘のライラは、今年17歳になる愚鈍な娘でございます…。生まれついての魔眼の影響か、魔具店の娘に生まれながら草花ばかりに興味を持ち、たびたび『茨の街』の裏手の『嘆きの森』に出入りしておりまして…」
ローザが「あら」と声を上げる。
「でしたらライラ様が行方知れずなのも『嘆きの森』に行ってらっしゃるからではありませんの?」
ヘンリクは頭を振る。
「いえ…いつも森に行く時に持っていく鎌やスコップやカゴなどは部屋に置いたままでして…。それにいなくなったのも、いくつか夕食の食材を買ってくるよう頼んだ直後なのでございます。『すぐ戻る』と言っていたのに…」
床に両膝をついたまま目に涙を浮かべたヘンリクの前に、私はかがんで手を差し出す。
「ヘンリクさん、私もライラを探してみるわ。だからもう立ち上がって」
私が差し伸べた手を掴んでヘンリクはどうにか立ち上がる。
「ありがとうございます…。ところで、あなた様は…?」
私が名乗ろうとするのを制するようにアルミラが前に出て言う。
「恐れ多くも『あの方』の血を頂戴した新たな吸血鬼、リリアス・エル・エスパーダだ」
それを聞くとヘンリクは「ひぃぃぃぃっ!」と声を上げて再び平伏する。
「そ!そのような高貴なお方とは露知らず!大変なご無礼をお許しください!!」
そんなふうに恐縮されてしまって私は「え…いや…」と困惑してしまう。
もともと私は王国内でもそれなりの力を持つエスパーダ家の侯爵令嬢として、いろいろな人に恭しく礼を尽くされることもあるにはあったが、私の本性が山猿令嬢のせいかすぐに打ち解けてしまったり、場合によっては頭を撫でられてお菓子を与えられるなど子ども扱いされてしまったりして、いずれにせよこんなにも恐縮された経験はほとんどなかった。
「そんなに高貴とかじゃないわよ…私は」
そう言った私に対してアルミラは「いや」と首を振った。
「これから少しずつ教えてやるつもりだったが仕方ない。まずは自覚してもらおう。お前はこの球体世界の神の娘なのだ」
アルミラがそう言って開けた扉の先は、どうやら民家ではなく何かの店のようだった。
鼠や蝙蝠、鴉や狼といった様々な動物の死骸、色とりどりの果実や植物の根などが天井から吊るされ、様々な木箱やガラス瓶がところ狭しと並ぶ室内に設えられた大きな机の向こうで、何か小さな細工箱のようなものをいじっていた中年男性が振り返った。
「いらっしゃ…あ、アルミラ様!」
白髪混じりで小太りのオジサンは慌てた様子で小さな細工箱を引き出しに仕舞うと、机の向こうから棚の間を窮屈そうに通ってこちらに出てきた。
「まさか闇騎士様がこんな穴蔵のような店までわざわざお見えになられるとは…!お申し付け頂ければ城まで伺いましたものを…!」
アルミラは「構わん」と短く言うと顎でローザを示して言った。
「いくつか月影草の香水をもらえるか?この娘が人間であることを隠したいのだ」
「え…?ですがあれは」
「余計なことを言うな、早くしろ」
オジサンは「は、はい!かしこまりました!」と言うと、雑多に品物があふれかえる棚の森をかきわけて店の奥へと消えていった。
「ローザが人間だと何か困るの?」
私がそう聞くとアルミラは眉根を寄せて言った。
「…街にも城にもアンデッドがうようよしているんだぞ?」
確かに愚問だった。そんな中に聖女であるローザがそのまま入ったら「食べてくれ」と言っているようなものだ。
しかしローザは首をかしげる。
「あら、でもわたくしでしたら隠蔽か清浄の薄膜でアンデッドに気取られないことくらいできましたのに」
アルミラは小さく首を振る。
「お前の魔力にも限界があるだろう。月影草の香水なら効果は長時間かつ強力だ」
ローザは少し難しい顔をして「わたくしの魔力なら数日間くらいは問題ないのですが…」と呟いた。
「でも、お心遣いが嬉しいですわ。ありがたく頂戴いたします」
そう言ってローザがふわりとドレスの裾を持ち上げて礼をすると、奥からさっきのオジサンが戻ってきた。両手で抱えた箱には草が入った小瓶がぎっしり詰まっている。
「こちらが当店にあるだけの月影草の香水でございます…!」
アルミラは懐から革袋を取り出し「ひとつもらおう。いくらだ?」と聞くが、オジサンは「め、滅相もございません!お代は結構でございます!」と拒絶する。
「そうはいかん。貴様も娘を食わせていかねばならんだろう」
アルミラのその言葉に、突然オジサンは泣き出しそうな表情になってうつむいた。
「…それが、その、ライラがここ数日、家に戻ってきておりませんで…」
アルミラは「何!?」と叫んで革袋を床に落とした。
「どういうことだ!ライラは来年の献上姫候補だったはずだ!それも魔眼持ちだろう!」
オジサンは怯えた表情を見せて、その場に両膝をついて平伏した。
「も、ももも申し訳ございません!わたしも必死に探しているのですが、屍食鬼か死霊の慰み者にでもなってしまったのではないかと気が気ではありませんで…!」
アルミラは忌々しそうにオジサンを睨みつけて言った。
「く…!仕方ない…アタシも探しておいてやる!もし貴様のほうで娘を見つけられたら必ず城に連絡を入れるのだぞ!」
オジサンは床に頭をこすりつけたまま「か、かしこまりましたっ!」と言い、アルミラは床に落とした革袋を拾い上げて数枚の銀貨を机に叩きつけ、月影草の香水の小瓶をひとつ引っ掴んだ。
「行くぞ!」
急いで店の出口に向かおうとするアルミラを私が呼び止める。
「ちょっと待ってアルミラ、どういうこと?」
アルミラは振り返って答える。
「…この魔具店の主人、ヘンリク・サーリネンの娘、ライラは来年の第6の月に『あの方』に捧げる供物になるはずだったのだ。それがいなくなった。一刻も早く『あの方』のお耳に入れねばならん」
アルミラはすぐにでも店を出たいような様子だったが、私は気にしない。
「ふ~ん…そんなの、血を吸われるのが嫌で逃げただけなんじゃない?」
「ば、馬鹿なことを言うな!『あの方』に血を捧げることはファルナレークでも最大の栄誉なのだぞ!」
「そんなふうに思ってるのなんて、どうせ吸血鬼だけよ」
「な、何を…!」
「ねえオジサン、えっと…ヘンリクさん?ライラってどんな娘なの?」
私に話を振られてこの店の主人だというヘンリクは平伏したままビクッと身体を震わせ、恐る恐る顔を上げた。
「わ、わたしの一人娘のライラは、今年17歳になる愚鈍な娘でございます…。生まれついての魔眼の影響か、魔具店の娘に生まれながら草花ばかりに興味を持ち、たびたび『茨の街』の裏手の『嘆きの森』に出入りしておりまして…」
ローザが「あら」と声を上げる。
「でしたらライラ様が行方知れずなのも『嘆きの森』に行ってらっしゃるからではありませんの?」
ヘンリクは頭を振る。
「いえ…いつも森に行く時に持っていく鎌やスコップやカゴなどは部屋に置いたままでして…。それにいなくなったのも、いくつか夕食の食材を買ってくるよう頼んだ直後なのでございます。『すぐ戻る』と言っていたのに…」
床に両膝をついたまま目に涙を浮かべたヘンリクの前に、私はかがんで手を差し出す。
「ヘンリクさん、私もライラを探してみるわ。だからもう立ち上がって」
私が差し伸べた手を掴んでヘンリクはどうにか立ち上がる。
「ありがとうございます…。ところで、あなた様は…?」
私が名乗ろうとするのを制するようにアルミラが前に出て言う。
「恐れ多くも『あの方』の血を頂戴した新たな吸血鬼、リリアス・エル・エスパーダだ」
それを聞くとヘンリクは「ひぃぃぃぃっ!」と声を上げて再び平伏する。
「そ!そのような高貴なお方とは露知らず!大変なご無礼をお許しください!!」
そんなふうに恐縮されてしまって私は「え…いや…」と困惑してしまう。
もともと私は王国内でもそれなりの力を持つエスパーダ家の侯爵令嬢として、いろいろな人に恭しく礼を尽くされることもあるにはあったが、私の本性が山猿令嬢のせいかすぐに打ち解けてしまったり、場合によっては頭を撫でられてお菓子を与えられるなど子ども扱いされてしまったりして、いずれにせよこんなにも恐縮された経験はほとんどなかった。
「そんなに高貴とかじゃないわよ…私は」
そう言った私に対してアルミラは「いや」と首を振った。
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