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第46話「真紀の襲来」
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「あかねー!」
「久しぶり、お姉ちゃん」
「しばらく見ない間に大きくなった?」
「しばらくって、ちょっと前に会ったばっかりじゃん」
こうやって直接茜と話しているのを見ると、少しシスコン気味な気はしたが普通の人だな。
少し強めに茜を抱きしめるその表情はすごく幸せそうだった。
「あ、お姉ちゃん紹介するね。こちらが彼氏の桧山達也さん。でこっちがその妹の陽菜さん」
お姉さんは紹介されると一瞬ゴミやウジ虫でも見るような目をこちらに向けた後、陽菜と楽しそうに話し始めた。
茜と話しているときほど顔が緩んでいるわけではないが、少なくともその表情からは悪意などは読み取れなかった。
「この人が私のお姉ちゃんの――」
「初めまして、千島真紀と言います」
「陽菜です、いつも茜さんにはお世話になっていて」
陽菜とは楽しそうに話しているが、俺に視線が向くことはない。
「ねえ俺のこと見えてる?」
「私は達也のことしか見えてないけど」
「いや、そういう……。まあいっか」
陽菜との会話に夢中になってる間に茜に耳うちをしてみたがこちらに視線が向く事はなかった。
もしかしたら親しい人以外には姿が見えない魔法にでもかかったのかもしれない。
「じゃあ陽菜さんとも話せたしそろそろ帰ろうかな?」
「え、お姉ちゃんもう帰るの?」
「うん帰るよ、茜」
陽菜との話に蹴りが付いたのか、突然茜が倒れるぐらいの力で強く引っ張ると真紀さんはそう言った。
「行かないよ、やめてよ!」
助けを求めるように俺の方に伸ばしてきた手を何とか掴む。
恐怖のせいか茜の手は小動物のように小さく震えていた。
「茜その人から離れなさい」
「離れないよ、なんでお姉ちゃんそんなことするの」
「ずっと言ってるでしょ、茜の面倒はずっと私が見るって。あなたの人生に男はいらない」
こういう時なにか言えればいいのだろう。
ただ何を言えば相手に声が届くかわからない。
揚げ足を取られてさらにこちらの話を聞いてもらえなくなる可能性もある。
怯える茜を抱きしめることしかできない自分が憎かった。
「達也は私に必要なの!」
「茜の泣かすようなやつなんか必要ない!」
「私泣かされたことなんかないよ?」
「じゃあこれはなに?」
お姉さんが取り出したスマホから流してきた音声には、俺たちの別れ話の様子とその後延々と泣き続ける茜の声が入っていた。
それを聞いた直後、思わず茜と顔を見合わせることしかできなかった。
なんでこれを。
いつから。
まだあるのか?
疑問が洪水のように頭の中の思考をすべて巻き込み押し流していく。
「ねえこれどうしたの?」
口火を切ったのは茜だった。
いつもの少し心もとない印象は完全に消え、目が座っている。
今までこんな彼女を見たことはなかったが、一目見ただけでわかった。
多分過去一キレてる。
「泣かされてるでしょ? 私間違ったこと言ってる?」
「どうしたのか聞いてるんだけど」
「茜が心配だから見守ってるだけ」
「誰が見守ってほしいって頼んだ?」
こうなった茜の扱いを熟しているのだろう。
お姉さんはなんどか余裕そうに笑うとのらりくらりと茜の質問を躱す。
「姉が妹の心配をするのは当たり前のことでしょ」
「だからって限度ってものがあるでしょ!」
「けどほらそのおかげで彼氏の振りしてるあの男の本性がわかったでしょ」
突如そう言うと真紀さんは俺の鼻先に指を突き付けてきた。
「今の茜に引いてるよ。好きって言うくせに見たことない茜が出てきただけでこんな反応するんだよ」
「いや引いてないですけど」
「あんたは黙ってて。口だけならなんとでも言える」
お姉さんは茜にぶつかりそうなくらい距離を詰めると言った。
「男はいつもそうじゃん、そうやって茜の本性見せるとすぐに逃げていく。逃げないのはお姉ちゃんだけだよ」
「本性なんかじゃない! お姉ちゃんがいなきゃ怒ってないよ!」
「本当に? いいんだよあの男の前だからって気を使わなくて。あの男も所詮外行の偽りの茜が好きなだけなんだから」
「達也はそんな人なんかじゃない!」
それを聞いてもお姉さんは相変わらずにやにやと気味の悪い笑顔を浮かべているだけだった。
まるですべて自分の予定通りというように。
そんな中さっきまで部外者というふうにこちらを眺めていた陽菜が口を開いた。
「あの、連れて帰るかどうかは置いておいて、どこか座れるところで話しませんか?」
「あまり長居する予定はありませんが、それでも良ければ」
普段以上に落ち着いてた声の陽菜がそう言ったおかげで少し空気が緩んだ気がした。
「じゃあリビングで話しましょう。お茶出すので」
陽菜に連れられ、茜、お姉さんと入り、最後俺が入ろうとしたところ陽菜に言われた。
「お兄ちゃんいると話せないかもしれないから終わったら呼ぶね」
返事も待たずに目の前でゆっくりとドアが閉められた。
「久しぶり、お姉ちゃん」
「しばらく見ない間に大きくなった?」
「しばらくって、ちょっと前に会ったばっかりじゃん」
こうやって直接茜と話しているのを見ると、少しシスコン気味な気はしたが普通の人だな。
少し強めに茜を抱きしめるその表情はすごく幸せそうだった。
「あ、お姉ちゃん紹介するね。こちらが彼氏の桧山達也さん。でこっちがその妹の陽菜さん」
お姉さんは紹介されると一瞬ゴミやウジ虫でも見るような目をこちらに向けた後、陽菜と楽しそうに話し始めた。
茜と話しているときほど顔が緩んでいるわけではないが、少なくともその表情からは悪意などは読み取れなかった。
「この人が私のお姉ちゃんの――」
「初めまして、千島真紀と言います」
「陽菜です、いつも茜さんにはお世話になっていて」
陽菜とは楽しそうに話しているが、俺に視線が向くことはない。
「ねえ俺のこと見えてる?」
「私は達也のことしか見えてないけど」
「いや、そういう……。まあいっか」
陽菜との会話に夢中になってる間に茜に耳うちをしてみたがこちらに視線が向く事はなかった。
もしかしたら親しい人以外には姿が見えない魔法にでもかかったのかもしれない。
「じゃあ陽菜さんとも話せたしそろそろ帰ろうかな?」
「え、お姉ちゃんもう帰るの?」
「うん帰るよ、茜」
陽菜との話に蹴りが付いたのか、突然茜が倒れるぐらいの力で強く引っ張ると真紀さんはそう言った。
「行かないよ、やめてよ!」
助けを求めるように俺の方に伸ばしてきた手を何とか掴む。
恐怖のせいか茜の手は小動物のように小さく震えていた。
「茜その人から離れなさい」
「離れないよ、なんでお姉ちゃんそんなことするの」
「ずっと言ってるでしょ、茜の面倒はずっと私が見るって。あなたの人生に男はいらない」
こういう時なにか言えればいいのだろう。
ただ何を言えば相手に声が届くかわからない。
揚げ足を取られてさらにこちらの話を聞いてもらえなくなる可能性もある。
怯える茜を抱きしめることしかできない自分が憎かった。
「達也は私に必要なの!」
「茜の泣かすようなやつなんか必要ない!」
「私泣かされたことなんかないよ?」
「じゃあこれはなに?」
お姉さんが取り出したスマホから流してきた音声には、俺たちの別れ話の様子とその後延々と泣き続ける茜の声が入っていた。
それを聞いた直後、思わず茜と顔を見合わせることしかできなかった。
なんでこれを。
いつから。
まだあるのか?
疑問が洪水のように頭の中の思考をすべて巻き込み押し流していく。
「ねえこれどうしたの?」
口火を切ったのは茜だった。
いつもの少し心もとない印象は完全に消え、目が座っている。
今までこんな彼女を見たことはなかったが、一目見ただけでわかった。
多分過去一キレてる。
「泣かされてるでしょ? 私間違ったこと言ってる?」
「どうしたのか聞いてるんだけど」
「茜が心配だから見守ってるだけ」
「誰が見守ってほしいって頼んだ?」
こうなった茜の扱いを熟しているのだろう。
お姉さんはなんどか余裕そうに笑うとのらりくらりと茜の質問を躱す。
「姉が妹の心配をするのは当たり前のことでしょ」
「だからって限度ってものがあるでしょ!」
「けどほらそのおかげで彼氏の振りしてるあの男の本性がわかったでしょ」
突如そう言うと真紀さんは俺の鼻先に指を突き付けてきた。
「今の茜に引いてるよ。好きって言うくせに見たことない茜が出てきただけでこんな反応するんだよ」
「いや引いてないですけど」
「あんたは黙ってて。口だけならなんとでも言える」
お姉さんは茜にぶつかりそうなくらい距離を詰めると言った。
「男はいつもそうじゃん、そうやって茜の本性見せるとすぐに逃げていく。逃げないのはお姉ちゃんだけだよ」
「本性なんかじゃない! お姉ちゃんがいなきゃ怒ってないよ!」
「本当に? いいんだよあの男の前だからって気を使わなくて。あの男も所詮外行の偽りの茜が好きなだけなんだから」
「達也はそんな人なんかじゃない!」
それを聞いてもお姉さんは相変わらずにやにやと気味の悪い笑顔を浮かべているだけだった。
まるですべて自分の予定通りというように。
そんな中さっきまで部外者というふうにこちらを眺めていた陽菜が口を開いた。
「あの、連れて帰るかどうかは置いておいて、どこか座れるところで話しませんか?」
「あまり長居する予定はありませんが、それでも良ければ」
普段以上に落ち着いてた声の陽菜がそう言ったおかげで少し空気が緩んだ気がした。
「じゃあリビングで話しましょう。お茶出すので」
陽菜に連れられ、茜、お姉さんと入り、最後俺が入ろうとしたところ陽菜に言われた。
「お兄ちゃんいると話せないかもしれないから終わったら呼ぶね」
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