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誰が誰のあやつり人形
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ジュールはどこか上機嫌で学園長に話しかけていた。
「とにかくアリスの嫌らしい点は、本来は好戦的でないローズマリーを戦いの場に
引きずり出そうと煽りまくるところではないかとオットー先輩からの指摘がありまして。大義名分でもないと戦えない性格のローズマリーを無理に戦いに誘導しようとして失敗し、それがローズマリーが倒れた一因かもしれないという話に発展しました。
誘導と言えばロザリーも侮れないという話にもなりました。ソフィーが好戦的な性格だったとしても、物理的な暴力へと走ったのはケイトさんやカタリーナさんから見ても意外で、ロザリーに操られた部分が大きいと考えると、ロザリーへの厳しい追求もおろそかにするべきではないとの提案がありました。
それと、ウィリアムが言った『公爵家の当主や奥様までアリスに半ば攻略』ですが、僕を含む〈攻略対象〉たちも四分の一くらい攻略されてるのではという、主に女性陣からのご指摘は耳が痛かったです。アリスをチヤホヤなんて誰もしていないと反論したら、粗雑な応対は結果的にアリスの馴れ馴れしい態度を許していることになると。本来は親しい者同士にだけ許される遠慮のない態度を他人に見せつけ、『あたしは彼らと仲良しなのぉ』とアピールしていたそうです。
いやぁ、学習用のチャットを使うと、本当に勉強が捗りますね!」
学園長は複雑な表情でレイアに視線を移す。
「この『一定距離以内にアリスさんが近づけないように障壁を自動発動』は、レイアさんがローズマリーさんと行動を共にする、そのぉ、必要条件と考えてよろしいのでしょうか」
レイアは答える。
「はい。そして超能力による自動発動の設定は、法的機関に正規の接近禁止命令を出してもらえること、わたし自身による執行を認めてもらえることが前提です。
それら抜きで障壁を自動発動させることはしませんし、その場合、ローズマリーさんと仲良くする案については、ローズマリーさんには知らせることなく没にするのが良いかと考えています」
ジュールは言う。
「ローズマリーへの打診はそれからで良いとして、アリスの反応はすぐにでも見たい気がしますね。まあ接近禁止命令はもうじき来るはずですけど。細かい発動条件は全部レイアさんにお任せという形で……ええと学園長にイザーク、どうしてそういう目で僕を?」
「『王族特権など存在しない!』とおっしゃった、かの日の殿下を懐かしんでいたところです」と遠い目をした学園長。
「まあアリスがローズマリー嬢を最強の駒扱いして利用していたのと同じ轍を踏まないよう、ほどほどにな」とイザーク。
ジュールは真剣な顔で言う。
「わかっているつもりだ……これでも僕より偉い人たちが『レイアさん最強』と浮かれて負担を押し付けようとするのを抑えているつもり。
僕が学園に入学する少し前からずっと、偉い人たちはアリスのことを厄介だなと思っていたんです。断罪だの冤罪だの〈ざまぁ〉で王子は廃嫡だの、アリスが発信源の〈シナリオ〉は殺伐とした要素が多く、洒落にならない感じのものですので。
正面から規制するのは難しいし下手をすると余計な燃料投下にもなりかねない——不平不満を溜めていたところに、現れたレイアさんに皆が大いに期待してしまっているんです」
レイアは多少困惑した様子で言う。
「わたしに〈ヒロイン〉ひいては〈ヒドイン〉の疑いあり、とは思われなかったのでしょうか。
わたしが危険人物であることを承知の上で受け入れてくれたベルヌ国には心から感謝していて裏切ることはありませんが……自分で言うのも変ですが期待よりも警戒が先にこないものでしょうか」
「レイアさんが、自分は危険であると真摯に説明したことが、上層部には能力の高さを効果的に知らしめることになりましたのです」と学園長。
「とにかくアリスの嫌らしい点は、本来は好戦的でないローズマリーを戦いの場に
引きずり出そうと煽りまくるところではないかとオットー先輩からの指摘がありまして。大義名分でもないと戦えない性格のローズマリーを無理に戦いに誘導しようとして失敗し、それがローズマリーが倒れた一因かもしれないという話に発展しました。
誘導と言えばロザリーも侮れないという話にもなりました。ソフィーが好戦的な性格だったとしても、物理的な暴力へと走ったのはケイトさんやカタリーナさんから見ても意外で、ロザリーに操られた部分が大きいと考えると、ロザリーへの厳しい追求もおろそかにするべきではないとの提案がありました。
それと、ウィリアムが言った『公爵家の当主や奥様までアリスに半ば攻略』ですが、僕を含む〈攻略対象〉たちも四分の一くらい攻略されてるのではという、主に女性陣からのご指摘は耳が痛かったです。アリスをチヤホヤなんて誰もしていないと反論したら、粗雑な応対は結果的にアリスの馴れ馴れしい態度を許していることになると。本来は親しい者同士にだけ許される遠慮のない態度を他人に見せつけ、『あたしは彼らと仲良しなのぉ』とアピールしていたそうです。
いやぁ、学習用のチャットを使うと、本当に勉強が捗りますね!」
学園長は複雑な表情でレイアに視線を移す。
「この『一定距離以内にアリスさんが近づけないように障壁を自動発動』は、レイアさんがローズマリーさんと行動を共にする、そのぉ、必要条件と考えてよろしいのでしょうか」
レイアは答える。
「はい。そして超能力による自動発動の設定は、法的機関に正規の接近禁止命令を出してもらえること、わたし自身による執行を認めてもらえることが前提です。
それら抜きで障壁を自動発動させることはしませんし、その場合、ローズマリーさんと仲良くする案については、ローズマリーさんには知らせることなく没にするのが良いかと考えています」
ジュールは言う。
「ローズマリーへの打診はそれからで良いとして、アリスの反応はすぐにでも見たい気がしますね。まあ接近禁止命令はもうじき来るはずですけど。細かい発動条件は全部レイアさんにお任せという形で……ええと学園長にイザーク、どうしてそういう目で僕を?」
「『王族特権など存在しない!』とおっしゃった、かの日の殿下を懐かしんでいたところです」と遠い目をした学園長。
「まあアリスがローズマリー嬢を最強の駒扱いして利用していたのと同じ轍を踏まないよう、ほどほどにな」とイザーク。
ジュールは真剣な顔で言う。
「わかっているつもりだ……これでも僕より偉い人たちが『レイアさん最強』と浮かれて負担を押し付けようとするのを抑えているつもり。
僕が学園に入学する少し前からずっと、偉い人たちはアリスのことを厄介だなと思っていたんです。断罪だの冤罪だの〈ざまぁ〉で王子は廃嫡だの、アリスが発信源の〈シナリオ〉は殺伐とした要素が多く、洒落にならない感じのものですので。
正面から規制するのは難しいし下手をすると余計な燃料投下にもなりかねない——不平不満を溜めていたところに、現れたレイアさんに皆が大いに期待してしまっているんです」
レイアは多少困惑した様子で言う。
「わたしに〈ヒロイン〉ひいては〈ヒドイン〉の疑いあり、とは思われなかったのでしょうか。
わたしが危険人物であることを承知の上で受け入れてくれたベルヌ国には心から感謝していて裏切ることはありませんが……自分で言うのも変ですが期待よりも警戒が先にこないものでしょうか」
「レイアさんが、自分は危険であると真摯に説明したことが、上層部には能力の高さを効果的に知らしめることになりましたのです」と学園長。
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