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ヒロインたちは襲撃に備える
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「それは残念。
——それで皆様にお忙しいところ集まっていただいた理由の一つは、アリスが突撃してくるかもしれないから気をつけてください、という話もしたかったからです。
レイアさんの編入前に、アリスが校門の側で待ち伏せして僕たちとしれっと合流しようとしたことが何度かありました。ローズマリーに苦情を言ってやめさせたんですが、そのローズマリーが倒れてしまっているならばストッパーがいません。
今日のところは校門には来ないでウィリアムにだけ突撃してきましたけど、明日以降はそれでは埒が明かないとか考えて、校門に待ち伏せとか、誰かの行き帰りを狙って直談判とか、やらかしかねないんですよね……」
議長モードのジュールに続いて護衛的観点からイザークが発言する。
「物理的肉体的な危害に関しては、殿下、レイアさん、フェルゼン、俺についてはまあ過剰防衛に気をつけましょう、ですね。油断は禁物、不意打ちや運の悪さでしてやられることのないように警戒する必要はありますが。
ケイトさんにカタリーナさんは、レイアさんと一緒のときはまず大丈夫だと思いますが、校門を一歩でたら特に、一人にならないなど気をつけてください。学園の行き帰りの防犯対策は既になさっているでしょうけど、意味不明なことを言う不審者への対策をより重点的にお願いしたいです」
それにジュールが続ける。
「で、ナイフを振り回したり殴りかかったりしてくるよりは、まずは話し掛けてくるという方がありそうですが、その際には口論に持ち込ませることなく、即通報するようにしていただきたい。
まかり間違って学園内まで潜り込んできたら、校章の非常ボタンを押せば良いと思います。『貴方は誰?』『貴方なんか知らない。誰か助けて!』と周囲にアピールできれば尚良し。僕やイザークがやるのは無理がありますが」
「質問してよろしい?」
「はい、カタリーナさん」
「わたくしとケイト、フェルゼンも一応アリスと面識はあるんだけど、『貴方は誰?』設定を貫いた方が都合が良いのかしら?
学園の敷地内で、話し掛けられていないけど、顔を確認できたときはどうしようかというのも気になるわ——やたら元気なお嬢さんだったから記憶に残っているのよねえ。
それとウィリアムさんのお名前が挙がってないようですけど、『貴方は誰?』をやるのは一番無理があるのでは?」
ジュールが答える。
「恐れているのは、口論に持ち込まれて周囲に聞かれることなんです。不法侵入者が相手とはいえ、知り合い同士の口喧嘩で非常ボタンを押したのか、なんてね。
フェルゼンたちは直に会ったのはせいぜい数度と聞いた。『会ったことがある? 覚えていないぞ』で通しても周囲のご理解は得られると思います。
顔を確認できたが幸い話し掛けられていない場合は、後で説明する学園外での対応に準じて緊急連絡網で都度対応しましょう。あ、学園の敷地外であっても校門の近くなどで、校章の非常ボタンを使うのが良さそうと判断したら、敷地内に駆け込んでください。
そして問題のウィリアムですが……」
ジュールはウィリアムに目をやって発言を促した。
「はい。
アリスが私を目当てに近づいて、それに誰が巻き込まれるのかが問題です。
私は囮の役割を果たしたいと思います。殿下とイザークと常に一緒に行動するようにして、カタリーナさんとケイトさんには極力近づかない——巻き込むと申し訳ないので、お二人は私を見かけたら遠慮なく避けてください」
「私もウィリアムを見かけたら全力で回れ右するのが良いのかな?」
「フェルゼン単体の場合はどうでもいいです。好きにしてください」
「質問よいです?」
「はい、ケイトさん」
「殿下とウィリアムさんが常に一緒に行動する予定で、ウィリアムさんに近づくのは厳禁なら、殿下と一緒のときはレイアさんにも近づくの避けるべきなんです?
早朝のランニングとガゼボの猫撫では今もご一緒してしてないし、ローズマリーさんじゃないけど走り回るの無理!だから良いんですけど、バロックダンスの見学は眼福だったんですけどねー」
バロックダンスと言えば手紙には「殿下とレイアさんがメヌエットを踊るなんて酷い」と恨み節炸裂な感じで書かれていた。それを読んだジュールは「何が酷い? 僕は金に目がくらんでいるんだ! 絶対引かない!」と怒鳴っていたが。
現在のジュールは王族にふさわしい微笑みで答えることのできるほど冷静だ。
「気になさらないで良いですよ。警戒するあまり日常の楽しみを犠牲にするのは、何か違うと思うんです。
さて、次は学園外での対応についてですが、緊急連絡網の設定は——」
——それで皆様にお忙しいところ集まっていただいた理由の一つは、アリスが突撃してくるかもしれないから気をつけてください、という話もしたかったからです。
レイアさんの編入前に、アリスが校門の側で待ち伏せして僕たちとしれっと合流しようとしたことが何度かありました。ローズマリーに苦情を言ってやめさせたんですが、そのローズマリーが倒れてしまっているならばストッパーがいません。
今日のところは校門には来ないでウィリアムにだけ突撃してきましたけど、明日以降はそれでは埒が明かないとか考えて、校門に待ち伏せとか、誰かの行き帰りを狙って直談判とか、やらかしかねないんですよね……」
議長モードのジュールに続いて護衛的観点からイザークが発言する。
「物理的肉体的な危害に関しては、殿下、レイアさん、フェルゼン、俺についてはまあ過剰防衛に気をつけましょう、ですね。油断は禁物、不意打ちや運の悪さでしてやられることのないように警戒する必要はありますが。
ケイトさんにカタリーナさんは、レイアさんと一緒のときはまず大丈夫だと思いますが、校門を一歩でたら特に、一人にならないなど気をつけてください。学園の行き帰りの防犯対策は既になさっているでしょうけど、意味不明なことを言う不審者への対策をより重点的にお願いしたいです」
それにジュールが続ける。
「で、ナイフを振り回したり殴りかかったりしてくるよりは、まずは話し掛けてくるという方がありそうですが、その際には口論に持ち込ませることなく、即通報するようにしていただきたい。
まかり間違って学園内まで潜り込んできたら、校章の非常ボタンを押せば良いと思います。『貴方は誰?』『貴方なんか知らない。誰か助けて!』と周囲にアピールできれば尚良し。僕やイザークがやるのは無理がありますが」
「質問してよろしい?」
「はい、カタリーナさん」
「わたくしとケイト、フェルゼンも一応アリスと面識はあるんだけど、『貴方は誰?』設定を貫いた方が都合が良いのかしら?
学園の敷地内で、話し掛けられていないけど、顔を確認できたときはどうしようかというのも気になるわ——やたら元気なお嬢さんだったから記憶に残っているのよねえ。
それとウィリアムさんのお名前が挙がってないようですけど、『貴方は誰?』をやるのは一番無理があるのでは?」
ジュールが答える。
「恐れているのは、口論に持ち込まれて周囲に聞かれることなんです。不法侵入者が相手とはいえ、知り合い同士の口喧嘩で非常ボタンを押したのか、なんてね。
フェルゼンたちは直に会ったのはせいぜい数度と聞いた。『会ったことがある? 覚えていないぞ』で通しても周囲のご理解は得られると思います。
顔を確認できたが幸い話し掛けられていない場合は、後で説明する学園外での対応に準じて緊急連絡網で都度対応しましょう。あ、学園の敷地外であっても校門の近くなどで、校章の非常ボタンを使うのが良さそうと判断したら、敷地内に駆け込んでください。
そして問題のウィリアムですが……」
ジュールはウィリアムに目をやって発言を促した。
「はい。
アリスが私を目当てに近づいて、それに誰が巻き込まれるのかが問題です。
私は囮の役割を果たしたいと思います。殿下とイザークと常に一緒に行動するようにして、カタリーナさんとケイトさんには極力近づかない——巻き込むと申し訳ないので、お二人は私を見かけたら遠慮なく避けてください」
「私もウィリアムを見かけたら全力で回れ右するのが良いのかな?」
「フェルゼン単体の場合はどうでもいいです。好きにしてください」
「質問よいです?」
「はい、ケイトさん」
「殿下とウィリアムさんが常に一緒に行動する予定で、ウィリアムさんに近づくのは厳禁なら、殿下と一緒のときはレイアさんにも近づくの避けるべきなんです?
早朝のランニングとガゼボの猫撫では今もご一緒してしてないし、ローズマリーさんじゃないけど走り回るの無理!だから良いんですけど、バロックダンスの見学は眼福だったんですけどねー」
バロックダンスと言えば手紙には「殿下とレイアさんがメヌエットを踊るなんて酷い」と恨み節炸裂な感じで書かれていた。それを読んだジュールは「何が酷い? 僕は金に目がくらんでいるんだ! 絶対引かない!」と怒鳴っていたが。
現在のジュールは王族にふさわしい微笑みで答えることのできるほど冷静だ。
「気になさらないで良いですよ。警戒するあまり日常の楽しみを犠牲にするのは、何か違うと思うんです。
さて、次は学園外での対応についてですが、緊急連絡網の設定は——」
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