33 / 78
第1章
第33話 慰めと良くない決意(R)
しおりを挟む
言葉少なに食事をとり、学生時代とは違って特に会話が弾むこともなく休みの挨拶をしてからお互いの寝室へと戻った。
レイは食堂から持ってきていたランタンの火を消して棚に置くとベッドに潜り込み、月明かりを見上げながらぼんやりと考える。
今は何を言ったって勘違いで、錯覚しているだけだと思われてしまう。
心に住まわせてしまったようだと伝えることすらできない。
エディが帰ってきて、ハグされると思っていた。見た目よりも逞しい腕で抱き締められ、またあの高い体温を全身で感じられると。
それなのに肩透かしを喰らった。色々と説教されたからだろうし忘れるために触れないことを選択したんだろうが、こちらの気持ちはどうなる。
撫でられるのが好きだと、あの場でも言ったのに。
「……我慢なんて」
しなくていいのに。
レイは昨夜のことを思い出しながら、そっと服の下へと指を滑らす。エディが触れたところをなぞるように、下腹部を、腿を撫でた。
「んっ……」
ぴくり、と身体を反応させ漏れる声は顔を枕に埋めて殺す。
いっそ声を聞かせてやったらエディは部屋まで来るだろうか。いや、あの騎士様は気を使って気付かないふりをするんだろう。
芯を持ち始めた昂りを布団の中で取り出し、きつく目を閉じながら緩く扱いた。
「ぁ……んん……」
エディの大きくて熱い手と、自分の冷たい手では感触が違う。同じような動きなのに、昨日より全然気持ち良くない。
くちゅくちゅという水音とレイの吐息だけが室内に響く。もっと気持ち良くなりたい。昨日のあれが自分でもできるならエディとしなくたって、これまで通り一緒にいるだけでいいと思えるかもしれない。
昂りを擦り、腹を触れ、胸を弄っても足りない。腿を爪で掻いても気持ち良いけれどそれだけだ。
時折する自慰はこれで満足できるのに、あれを知ってしまったから。
「エディ……っ」
触られたい。昨日みたいなことがしたい。
レイは早く達してしまいたいと扱きながら、エディの名を呼ぶ。どうせ聞こえていないし忘れると自分で言っていたんだ、幾ら呼んだって。
「は、っぁ……えでぃ……」
入って来たとして、絶対に触らせない。
だって、レイのこれは勘違いなんだろうから。またキスして、触れ合って、それで勘違いを加速させたら困るから。
枕を抱え込み、声を殺しながらレイは蹲るように体勢を変えてシーツに擦り付けるようにして刺激を求める。使用人のアンジーにこの汚れは知られたくないから、明日は室内でできる洗濯は自分でしよう。そう思いながら腰を振った。
「ぁ、あ、いく、いく……っ」
上擦った声が喉から漏れる。レイは枕に顔を埋め、甘い吐息を零しながら布団の中で絶頂を迎えた。下腹部がひくつき、欲が垂れ流されるそれを見下ろし深く溜め息を吐く。
男じゃなかったら、エディの対応はまた変わっただろうか。いや、女の時点で出会っても無視に決まっているか。
あの日学校の図書室で偶然隣の席にならなければ喋ることすらなかったはずの関係だ。相手は侯爵家、こちらは子爵家。それも騎士になれるような才能溢れる優等生のエディに比べ、自分は平凡ないち生徒。
もし女だったら、エディとは一生喋らなかった。仲良くなることもなく、ただの同学年でしかない自分にエディが好意を持つことなんてなくて、つまりはこの腕輪を贈ることだってなくて、自分が、恋をすることだって。
でも、男じゃなかったら。女になりたいと思いはしないけれど、寧ろ方法があるなんて言っていたのは絶対に拒みたいけれど、もし元々女として生まれていて、偶然でも親友になれていたのなら。
好き、と伝えるのは楽だったろうか。結婚や妊娠という次のステップがあるから、あんな状況でも無理に言えてしまっていただろうか。
どれだけ自問自答したって、望む答えは出ない。自分が望んでいる答えが何なのか、レイ本人もわかっていない。
自国や隣国の王女殿下達が羨ましい。エディが望めば、あの男を一生独り占めできるんだから。
「……一生言ってなんてやらねえ」
手の汚れをシーツで拭い、剥ぎ取りながら呟く。
こうなったら絶対言わない。好きなんて言わず、あいつを翻弄し続けてやるんだ。
恋愛感情を持っているなんて絶対に教えない。それでも、いつか他を見てやはり婚約をなんて言うことのないように、エディの好きな『親友としか思っていないレイ=ヴァンダム』を演じてやる。
一生、俺しか見れないようにしてやる。これまでずっと秘めて苦しみ続けてきたように、これからだってずっと見続けるだけにしてやる。
婚約も結婚も許さない。一生、親友に夢見て生き続ければいい。
身体の熱が冷め、冷静になってきたレイは一周回ってそんなことを考え始めた。
レイは食堂から持ってきていたランタンの火を消して棚に置くとベッドに潜り込み、月明かりを見上げながらぼんやりと考える。
今は何を言ったって勘違いで、錯覚しているだけだと思われてしまう。
心に住まわせてしまったようだと伝えることすらできない。
エディが帰ってきて、ハグされると思っていた。見た目よりも逞しい腕で抱き締められ、またあの高い体温を全身で感じられると。
それなのに肩透かしを喰らった。色々と説教されたからだろうし忘れるために触れないことを選択したんだろうが、こちらの気持ちはどうなる。
撫でられるのが好きだと、あの場でも言ったのに。
「……我慢なんて」
しなくていいのに。
レイは昨夜のことを思い出しながら、そっと服の下へと指を滑らす。エディが触れたところをなぞるように、下腹部を、腿を撫でた。
「んっ……」
ぴくり、と身体を反応させ漏れる声は顔を枕に埋めて殺す。
いっそ声を聞かせてやったらエディは部屋まで来るだろうか。いや、あの騎士様は気を使って気付かないふりをするんだろう。
芯を持ち始めた昂りを布団の中で取り出し、きつく目を閉じながら緩く扱いた。
「ぁ……んん……」
エディの大きくて熱い手と、自分の冷たい手では感触が違う。同じような動きなのに、昨日より全然気持ち良くない。
くちゅくちゅという水音とレイの吐息だけが室内に響く。もっと気持ち良くなりたい。昨日のあれが自分でもできるならエディとしなくたって、これまで通り一緒にいるだけでいいと思えるかもしれない。
昂りを擦り、腹を触れ、胸を弄っても足りない。腿を爪で掻いても気持ち良いけれどそれだけだ。
時折する自慰はこれで満足できるのに、あれを知ってしまったから。
「エディ……っ」
触られたい。昨日みたいなことがしたい。
レイは早く達してしまいたいと扱きながら、エディの名を呼ぶ。どうせ聞こえていないし忘れると自分で言っていたんだ、幾ら呼んだって。
「は、っぁ……えでぃ……」
入って来たとして、絶対に触らせない。
だって、レイのこれは勘違いなんだろうから。またキスして、触れ合って、それで勘違いを加速させたら困るから。
枕を抱え込み、声を殺しながらレイは蹲るように体勢を変えてシーツに擦り付けるようにして刺激を求める。使用人のアンジーにこの汚れは知られたくないから、明日は室内でできる洗濯は自分でしよう。そう思いながら腰を振った。
「ぁ、あ、いく、いく……っ」
上擦った声が喉から漏れる。レイは枕に顔を埋め、甘い吐息を零しながら布団の中で絶頂を迎えた。下腹部がひくつき、欲が垂れ流されるそれを見下ろし深く溜め息を吐く。
男じゃなかったら、エディの対応はまた変わっただろうか。いや、女の時点で出会っても無視に決まっているか。
あの日学校の図書室で偶然隣の席にならなければ喋ることすらなかったはずの関係だ。相手は侯爵家、こちらは子爵家。それも騎士になれるような才能溢れる優等生のエディに比べ、自分は平凡ないち生徒。
もし女だったら、エディとは一生喋らなかった。仲良くなることもなく、ただの同学年でしかない自分にエディが好意を持つことなんてなくて、つまりはこの腕輪を贈ることだってなくて、自分が、恋をすることだって。
でも、男じゃなかったら。女になりたいと思いはしないけれど、寧ろ方法があるなんて言っていたのは絶対に拒みたいけれど、もし元々女として生まれていて、偶然でも親友になれていたのなら。
好き、と伝えるのは楽だったろうか。結婚や妊娠という次のステップがあるから、あんな状況でも無理に言えてしまっていただろうか。
どれだけ自問自答したって、望む答えは出ない。自分が望んでいる答えが何なのか、レイ本人もわかっていない。
自国や隣国の王女殿下達が羨ましい。エディが望めば、あの男を一生独り占めできるんだから。
「……一生言ってなんてやらねえ」
手の汚れをシーツで拭い、剥ぎ取りながら呟く。
こうなったら絶対言わない。好きなんて言わず、あいつを翻弄し続けてやるんだ。
恋愛感情を持っているなんて絶対に教えない。それでも、いつか他を見てやはり婚約をなんて言うことのないように、エディの好きな『親友としか思っていないレイ=ヴァンダム』を演じてやる。
一生、俺しか見れないようにしてやる。これまでずっと秘めて苦しみ続けてきたように、これからだってずっと見続けるだけにしてやる。
婚約も結婚も許さない。一生、親友に夢見て生き続ければいい。
身体の熱が冷め、冷静になってきたレイは一周回ってそんなことを考え始めた。
27
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる