【第2章開始】俺とお前は親友のはずだろ!? ~姉の代わりに見合いした子爵令息、親友の聖騎士に溺愛される~

田鹿結月

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第1章

第33話 慰めと良くない決意(R)

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 言葉少なに食事をとり、学生時代とは違って特に会話が弾むこともなく休みの挨拶をしてからお互いの寝室へと戻った。
 レイは食堂から持ってきていたランタンの火を消して棚に置くとベッドに潜り込み、月明かりを見上げながらぼんやりと考える。

 今は何を言ったって勘違いで、錯覚しているだけだと思われてしまう。
 心に住まわせてしまったようだと伝えることすらできない。

 エディが帰ってきて、ハグされると思っていた。見た目よりも逞しい腕で抱き締められ、またあの高い体温を全身で感じられると。
 それなのに肩透かしを喰らった。色々と説教されたからだろうし忘れるために触れないことを選択したんだろうが、こちらの気持ちはどうなる。
 撫でられるのが好きだと、あの場でも言ったのに。

「……我慢なんて」

 しなくていいのに。
 レイは昨夜のことを思い出しながら、そっと服の下へと指を滑らす。エディが触れたところをなぞるように、下腹部を、腿を撫でた。

「んっ……」

 ぴくり、と身体を反応させ漏れる声は顔を枕に埋めて殺す。
 いっそ声を聞かせてやったらエディは部屋まで来るだろうか。いや、あの騎士様は気を使って気付かないふりをするんだろう。
 芯を持ち始めた昂りを布団の中で取り出し、きつく目を閉じながら緩く扱いた。

「ぁ……んん……」

 エディの大きくて熱い手と、自分の冷たい手では感触が違う。同じような動きなのに、昨日より全然気持ち良くない。
 くちゅくちゅという水音とレイの吐息だけが室内に響く。もっと気持ち良くなりたい。昨日のあれが自分でもできるならエディとしなくたって、これまで通り一緒にいるだけでいいと思えるかもしれない。
 昂りを擦り、腹を触れ、胸を弄っても足りない。腿を爪で掻いても気持ち良いけれどそれだけだ。
 時折する自慰はこれで満足できるのに、あれを知ってしまったから。

「エディ……っ」

 触られたい。昨日みたいなことがしたい。
 レイは早く達してしまいたいと扱きながら、エディの名を呼ぶ。どうせ聞こえていないし忘れると自分で言っていたんだ、幾ら呼んだって。

「は、っぁ……えでぃ……」

 入って来たとして、絶対に触らせない。
 だって、レイのこれは勘違いなんだろうから。またキスして、触れ合って、それで勘違いを加速させたら困るから。
 枕を抱え込み、声を殺しながらレイは蹲るように体勢を変えてシーツに擦り付けるようにして刺激を求める。使用人のアンジーにこの汚れは知られたくないから、明日は室内でできる洗濯は自分でしよう。そう思いながら腰を振った。

「ぁ、あ、いく、いく……っ」

 上擦った声が喉から漏れる。レイは枕に顔を埋め、甘い吐息を零しながら布団の中で絶頂を迎えた。下腹部がひくつき、欲が垂れ流されるそれを見下ろし深く溜め息を吐く。

 男じゃなかったら、エディの対応はまた変わっただろうか。いや、女の時点で出会っても無視に決まっているか。
 あの日学校の図書室で偶然隣の席にならなければ喋ることすらなかったはずの関係だ。相手は侯爵家、こちらは子爵家。それも騎士になれるような才能溢れる優等生のエディに比べ、自分は平凡ないち生徒。
 もし女だったら、エディとは一生喋らなかった。仲良くなることもなく、ただの同学年でしかない自分にエディが好意を持つことなんてなくて、つまりはこの腕輪を贈ることだってなくて、自分が、恋をすることだって。
 でも、男じゃなかったら。女になりたいと思いはしないけれど、寧ろ方法があるなんて言っていたのは絶対に拒みたいけれど、もし元々女として生まれていて、偶然でも親友になれていたのなら。
 好き、と伝えるのは楽だったろうか。結婚や妊娠という次のステップがあるから、あんな状況でも無理に言えてしまっていただろうか。
 どれだけ自問自答したって、望む答えは出ない。自分が望んでいる答えが何なのか、レイ本人もわかっていない。
 自国や隣国の王女殿下達が羨ましい。エディが望めば、あの男を一生独り占めできるんだから。

「……一生言ってなんてやらねえ」

 手の汚れをシーツで拭い、剥ぎ取りながら呟く。
 こうなったら絶対言わない。好きなんて言わず、あいつを翻弄し続けてやるんだ。
 恋愛感情を持っているなんて絶対に教えない。それでも、いつか他を見てやはり婚約をなんて言うことのないように、エディの好きな『親友としか思っていないレイ=ヴァンダム』を演じてやる。
 一生、俺しか見れないようにしてやる。これまでずっと秘めて苦しみ続けてきたように、これからだってずっと見続けるだけにしてやる。
 婚約も結婚も許さない。一生、親友に夢見て生き続ければいい。
 身体の熱が冷め、冷静になってきたレイは一周回ってそんなことを考え始めた。
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