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彼女が出ていくその前は
ユカリナの侍女は嘘を一つ、つきました
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この結婚は上手く行く。そう思った。それは私が仕えていた奥様、伯爵夫人のお心を知り尽くしている私の願望だったのかもしれない。
私は、ユカリナ様の侍女だ。シルベスター伯爵家で奥様の侍女として働いていたが、ユカリナ様がお生まれになって以降は専属侍女となり、幼少からお世話をさせて頂いていた。お輿入れするさい一人侍女を連れて行くと聞いたので、ぜひ私を連れて行って下さいと立候補した。もう少し若い者をと渋るご当主を説得し、ユカリナ様の推薦もあり私が選ばれた。
ディラン様と結婚されて以降。ユカリナ様は毎日とても幸せそうに過ごしておりました。戦争という悲劇により引き離されてしまいましたが、寂しさをごまかすように忙しくされ、立派に屋敷を守っておいででした。そして3年と言う月日を費やして、ディラン様の帰還日が伝えられました。それからの1か月、ユカリナ様は指折り数えて待っていらっしゃいました。
予定通りにディラン様は帰還されました。可愛らしい女性を連れて。軽く紹介をされただけで、二人はすぐにその場を離れて行ってしまいました。お連れ様が、長距離移動でお疲れになっているからと。おそらく第2夫人として迎えるつもりでいらしゃるのでしょう。そうは仰いませんでしたが、それ以外は考えられませんでした。
でも、まさかユカリナ様に告げることなく結婚式を挙げるとは…
なぜ言わなかったのかは分かりません。後ろめたい気持ちなんて持たなくていい。第2夫人は国が認めているのだから。いずれ誰かを娶る事はユカリナ様も私も分かっておりましたから。
ユカリナ様はショックは受けたご様子でしたけれども、伯爵夫人のアドバイスもあり、必死に受け入れようとされていました。第2夫人に積極的に話かけ、時に優しく、時に厳しく侯爵家の決まり事を伝えていったのです。「広すぎて落ち着かない」突然こんな事を言い出して、一人別邸に籠ってしまったシェリー様にディラン様が付きっきりになっても。
ディラン様はそれでも、ユカリナ様を蔑ろにされることはありませんでした。あの祝勝会までは…
そして、この屋敷はユカリナ様派と、シェリー様派に完全に分裂しました。
エルバード侯爵家のご当主か、シルベスター伯爵家のご当主が進言されたのでしょう。祝勝会の後、ディラン様は本邸で過ごされることが多くなりました。もちろんユカリナ様との夜の営みも。ユカリナ様は恥ずかしそうに、でも喜びを隠せないでいました。
そして、ついにユカリナ様は妊娠しました。
医師にそのことを伝えられると、お二人は手を取り合って喜んでいらっしゃいました。
しかし、いつの頃からでしょうか。ディラン様がシェリー様と過ごす時間を優先されるようになったのは。なんなのでしょうあの男は。あっちにフラフラこっちにフラフラと…
「きっと私が何かしてしまったのよ…」
ユカリナ様が求めているのは、ディラン様の愛情です。でも、もしディラン様の愛情が、シェリー様に独占される事があったのなら、ユカリナ様を心を守るのは、正妻と言う立場と、ユカリナ様の産んだお子様となる。
だから、私は嘘をつく。
「男の子でしょうか」
できれば男児を…
「女の子でしょうか」
奥様が無しえなかった悲願を、
「きっとどちらでも、お二人に似れば可愛いでしょう」
念願を…
「大丈夫です」
どうかユカリナ様が叶えられますように。
「きっとお子様が生まれれば」
子供が生まれれば、ディラン様もユカリナ様に目を向けて下さるかもしれない。
「旦那様の愛情も」
望みはきっと薄い。
「ユカリナ様と子供に戻るでしょう」
伯爵家の旦那様の愛情は、戦場での燃え上がる恋から冷めることはなかった…
「それまでの辛抱です」
ただ今はあなたと、その子供を守りたい。その一心だった。
嘘を付いた事は後悔していない。ただ、『二人の間に隠し事はなしよ?』ユカリナ様がまだ幼い頃に交わした、この約束を破ってしまったことだけは後悔している。
私は、ユカリナ様の侍女だ。シルベスター伯爵家で奥様の侍女として働いていたが、ユカリナ様がお生まれになって以降は専属侍女となり、幼少からお世話をさせて頂いていた。お輿入れするさい一人侍女を連れて行くと聞いたので、ぜひ私を連れて行って下さいと立候補した。もう少し若い者をと渋るご当主を説得し、ユカリナ様の推薦もあり私が選ばれた。
ディラン様と結婚されて以降。ユカリナ様は毎日とても幸せそうに過ごしておりました。戦争という悲劇により引き離されてしまいましたが、寂しさをごまかすように忙しくされ、立派に屋敷を守っておいででした。そして3年と言う月日を費やして、ディラン様の帰還日が伝えられました。それからの1か月、ユカリナ様は指折り数えて待っていらっしゃいました。
予定通りにディラン様は帰還されました。可愛らしい女性を連れて。軽く紹介をされただけで、二人はすぐにその場を離れて行ってしまいました。お連れ様が、長距離移動でお疲れになっているからと。おそらく第2夫人として迎えるつもりでいらしゃるのでしょう。そうは仰いませんでしたが、それ以外は考えられませんでした。
でも、まさかユカリナ様に告げることなく結婚式を挙げるとは…
なぜ言わなかったのかは分かりません。後ろめたい気持ちなんて持たなくていい。第2夫人は国が認めているのだから。いずれ誰かを娶る事はユカリナ様も私も分かっておりましたから。
ユカリナ様はショックは受けたご様子でしたけれども、伯爵夫人のアドバイスもあり、必死に受け入れようとされていました。第2夫人に積極的に話かけ、時に優しく、時に厳しく侯爵家の決まり事を伝えていったのです。「広すぎて落ち着かない」突然こんな事を言い出して、一人別邸に籠ってしまったシェリー様にディラン様が付きっきりになっても。
ディラン様はそれでも、ユカリナ様を蔑ろにされることはありませんでした。あの祝勝会までは…
そして、この屋敷はユカリナ様派と、シェリー様派に完全に分裂しました。
エルバード侯爵家のご当主か、シルベスター伯爵家のご当主が進言されたのでしょう。祝勝会の後、ディラン様は本邸で過ごされることが多くなりました。もちろんユカリナ様との夜の営みも。ユカリナ様は恥ずかしそうに、でも喜びを隠せないでいました。
そして、ついにユカリナ様は妊娠しました。
医師にそのことを伝えられると、お二人は手を取り合って喜んでいらっしゃいました。
しかし、いつの頃からでしょうか。ディラン様がシェリー様と過ごす時間を優先されるようになったのは。なんなのでしょうあの男は。あっちにフラフラこっちにフラフラと…
「きっと私が何かしてしまったのよ…」
ユカリナ様が求めているのは、ディラン様の愛情です。でも、もしディラン様の愛情が、シェリー様に独占される事があったのなら、ユカリナ様を心を守るのは、正妻と言う立場と、ユカリナ様の産んだお子様となる。
だから、私は嘘をつく。
「男の子でしょうか」
できれば男児を…
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奥様が無しえなかった悲願を、
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念願を…
「大丈夫です」
どうかユカリナ様が叶えられますように。
「きっとお子様が生まれれば」
子供が生まれれば、ディラン様もユカリナ様に目を向けて下さるかもしれない。
「旦那様の愛情も」
望みはきっと薄い。
「ユカリナ様と子供に戻るでしょう」
伯爵家の旦那様の愛情は、戦場での燃え上がる恋から冷めることはなかった…
「それまでの辛抱です」
ただ今はあなたと、その子供を守りたい。その一心だった。
嘘を付いた事は後悔していない。ただ、『二人の間に隠し事はなしよ?』ユカリナ様がまだ幼い頃に交わした、この約束を破ってしまったことだけは後悔している。
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