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王都騎士団
辞令
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この「好き」は、いったいどういう「好き」なのだろうか。
ダディエは、「俺はたぶん、おまえのことが好きだ」と言った後、まだ一言も発していない。
おそらく、ユリエルが整理するのを待っているのだろう。
(好きって、それは部下として? 知人として? 恋愛対象として?)
考えたところで、わかるわけもない。
ダディエはというと、相変わらず黙ってユリエルの方を見ていた。
(いや、身体がってことも……?)
直前に手を出したことも後悔していないと言っていたわけだし、それも十分にありえるだろう。
ユリエルは、ふぅーっと長い息を吐いて、ダディエに向き合った。
「あの……ダディエ殿」
「うん?」
「その……ダディエ殿の『好き』というのは、いったいどういう意味の『好き』なのでしょうか」
「そのままの意味だが」
「そのままって……いろいろあるじゃないですか。部下としてとか、知人としてとか、その……恋愛対象とか、身体、とか……」
最後は自分で恥ずかしくなって、ユリエルの声は小さくなる。
緊張で、また少し咳が出る。
「あまり深くは考えていないが、全部じゃないか?」
「全部?」
「だっておまえ、知人として好きになれないような奴を恋愛対象にできるか?」
「ええと……それは難しい気がしますが……」
ダディエはそうだろうという様子で一人で納得しているが、ユリエルはちっとも納得できない。
「それはそうだとしても、知人として好きだからって必ずしも恋愛対象にはならないじゃないですか」
反論するユリエルに、ダディエは少し考える。
小さく「ああ」とつぶやいて、ユリエルの手を取り、指にキスを落とした。
その優雅な仕草に、ユリエルはドキリとする。
少し落ち着いていたのに、また熱が上がったような気がする。
ダディエは片手でユリエルの手を取ったまま、もう片手でユリエルの腰を抱いて言った。
「部下としても知人としても、もちろんおまえとの夜の行為も好ましく思っているが、前提が間違っている。俺の『好き』は、恋愛も含めての『好き』だ」
そう言って、もう一度指にキスを落とす。
ユリエルは真っ赤だ。
「というわけで、俺はこれからおまえを全力で落とす」
真っ赤になったユリエルに、ダディエはにっと笑って宣言した。
はっとなったユリエルは、ぶんぶんと首を振って答える。
「いやいやいやいや! ダディエ殿、婚約したばかりですよね? しかも婚約した理由って、僕との噂のせいですよね? ダメでしょう!」
「そうだな。バレればまずい」
「まずいなんてもんじゃないですよ! 相手は公爵令嬢、しかも次期皇后様の妹君ですよ」
「うん、だからバレないようにするさ」
「すでに噂になったから婚約したんですよ……?」
「ああ。だから、おまえが『能力が高いから抜擢された』と貴族どもに信じさせればいい」
「は?」
「何の功績もない田舎男爵家出身の新人が、急に団長補佐見習いに抜擢されたってのが噂の根源だ。おまえの能力がその地位を得るに相応しいと上位貴族連中が納得すれば、噂は払拭されるし、おまえを俺の傍に置いておける。一石二鳥だろ」
「そんな無茶な……」
「無茶ではないさ。あとはおまえを落とせば完璧だ」
「ご令嬢がお気の毒すぎます」
「政略結婚の覚悟はしてるだろ」
「そういう問題では」
「そんな不誠実な男は好きになれないか?」
「そういう問題でもなくて!」
言いながら、ユリエルはまた赤くなる。
そんなユリエルを見て、ダディエはぎゅっとユリエルを抱きしめた。
耳元で、
「覚悟しとけよ?」
と囁く。
「さ、今日はそろそろ休め。まだ熱があるだろう?」
そういうと、ダディエは軽々とユリエルを抱き上げた。
お姫様抱っこだ。
「ちょっ、自分で歩けますから!」
「うん、俺が運びたいだけ」
言いながら、向かいのユリエルの自室へと歩いていく。
ふわりとベッドに寝かせて、おでこにチュッとキスをする。
「おやすみ。早く治せよ」
廊下側の扉にはガチャリと鍵をかけ、ダディエは内側のドアから自室へと消えていった。
(いまさらお姫様抱っこにデコチューって……)
妙な気恥ずかしさを感じながら、ユリエルは眠った。
ダディエとユリエルに辞令が下ったのは、そのわずか三日後だった。
ダディエは、「俺はたぶん、おまえのことが好きだ」と言った後、まだ一言も発していない。
おそらく、ユリエルが整理するのを待っているのだろう。
(好きって、それは部下として? 知人として? 恋愛対象として?)
考えたところで、わかるわけもない。
ダディエはというと、相変わらず黙ってユリエルの方を見ていた。
(いや、身体がってことも……?)
直前に手を出したことも後悔していないと言っていたわけだし、それも十分にありえるだろう。
ユリエルは、ふぅーっと長い息を吐いて、ダディエに向き合った。
「あの……ダディエ殿」
「うん?」
「その……ダディエ殿の『好き』というのは、いったいどういう意味の『好き』なのでしょうか」
「そのままの意味だが」
「そのままって……いろいろあるじゃないですか。部下としてとか、知人としてとか、その……恋愛対象とか、身体、とか……」
最後は自分で恥ずかしくなって、ユリエルの声は小さくなる。
緊張で、また少し咳が出る。
「あまり深くは考えていないが、全部じゃないか?」
「全部?」
「だっておまえ、知人として好きになれないような奴を恋愛対象にできるか?」
「ええと……それは難しい気がしますが……」
ダディエはそうだろうという様子で一人で納得しているが、ユリエルはちっとも納得できない。
「それはそうだとしても、知人として好きだからって必ずしも恋愛対象にはならないじゃないですか」
反論するユリエルに、ダディエは少し考える。
小さく「ああ」とつぶやいて、ユリエルの手を取り、指にキスを落とした。
その優雅な仕草に、ユリエルはドキリとする。
少し落ち着いていたのに、また熱が上がったような気がする。
ダディエは片手でユリエルの手を取ったまま、もう片手でユリエルの腰を抱いて言った。
「部下としても知人としても、もちろんおまえとの夜の行為も好ましく思っているが、前提が間違っている。俺の『好き』は、恋愛も含めての『好き』だ」
そう言って、もう一度指にキスを落とす。
ユリエルは真っ赤だ。
「というわけで、俺はこれからおまえを全力で落とす」
真っ赤になったユリエルに、ダディエはにっと笑って宣言した。
はっとなったユリエルは、ぶんぶんと首を振って答える。
「いやいやいやいや! ダディエ殿、婚約したばかりですよね? しかも婚約した理由って、僕との噂のせいですよね? ダメでしょう!」
「そうだな。バレればまずい」
「まずいなんてもんじゃないですよ! 相手は公爵令嬢、しかも次期皇后様の妹君ですよ」
「うん、だからバレないようにするさ」
「すでに噂になったから婚約したんですよ……?」
「ああ。だから、おまえが『能力が高いから抜擢された』と貴族どもに信じさせればいい」
「は?」
「何の功績もない田舎男爵家出身の新人が、急に団長補佐見習いに抜擢されたってのが噂の根源だ。おまえの能力がその地位を得るに相応しいと上位貴族連中が納得すれば、噂は払拭されるし、おまえを俺の傍に置いておける。一石二鳥だろ」
「そんな無茶な……」
「無茶ではないさ。あとはおまえを落とせば完璧だ」
「ご令嬢がお気の毒すぎます」
「政略結婚の覚悟はしてるだろ」
「そういう問題では」
「そんな不誠実な男は好きになれないか?」
「そういう問題でもなくて!」
言いながら、ユリエルはまた赤くなる。
そんなユリエルを見て、ダディエはぎゅっとユリエルを抱きしめた。
耳元で、
「覚悟しとけよ?」
と囁く。
「さ、今日はそろそろ休め。まだ熱があるだろう?」
そういうと、ダディエは軽々とユリエルを抱き上げた。
お姫様抱っこだ。
「ちょっ、自分で歩けますから!」
「うん、俺が運びたいだけ」
言いながら、向かいのユリエルの自室へと歩いていく。
ふわりとベッドに寝かせて、おでこにチュッとキスをする。
「おやすみ。早く治せよ」
廊下側の扉にはガチャリと鍵をかけ、ダディエは内側のドアから自室へと消えていった。
(いまさらお姫様抱っこにデコチューって……)
妙な気恥ずかしさを感じながら、ユリエルは眠った。
ダディエとユリエルに辞令が下ったのは、そのわずか三日後だった。
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