【短編集】ならわし

采女

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村の特産品

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 私の村は、出生率がとても高いです。
 女性は、とにかくたくさん子どもを産みます。
 子どもを産めない女性は、村ではとても生きていけません。
 村全体が、「とにかくたくさん子どもを作るのが良い」という空気だからです。

 私の村がそうなったのには、理由があります。
 といっても、もっとずっと昔のことなので、私が体験したわけではありませんが。

 どのくらい昔のことなのか、私には想像もできないくらい昔、この村には何もありませんでした。
 村というくらいなので、集落はもちろんありましたが、土地はすごく痩せていて、米どころか野菜や果樹もなかなか育たないところでした。
 自分たちが食べる分も足りないのに、国ができると「税」が徴収されるようになり、とても食べてはいけなくなってしまいました。
 かといって、代わりに納められるような特産品もありません。
 土器だの布だの塩だの、何かがあれば良かったのでしょうが、本当に何もなかったのです。

 しかたなく、労役で税を払うことになりました。
 しかし、労役ということは、村の働き手がいなくなるということです。
 それは、痩せた土地がより一層痩せていくということでもありました。
 子どもや年寄りだけでは、とても畑を維持できなかったのです。

 困った村は、まず、子どもを何人か売ることにしました。
 奴隷商に売ると、残った村人がしばらく食べていける食料が手に入りました。
 しかし、食料は食べればなくなります。
 子どもも、売れば減ります。
 子どもが減れば、やがて働き手となる若者も減ってしまうでしょう。

 そこで、残った村人は、とにかく子どもをたくさん作ることにしました。
 元気で丈夫な子は村に残し、見目の美しい子は高く売り、病弱な子は安く売ります。
 そうすることで、この村は有数の奴隷産出村となったのです。

 そうなると、女性はとにかく子どもを作らねばなりません。
 子どもが産める身体になると、すぐに村人らの洗礼を受けます。
 夫婦だの結婚だのなんて言っている余裕はありませんから、毎日毎日、誰でも受け入れて、妊娠がわかるまでそれがずっと続きます。
 子を産み落としても、また次の子を孕むために、すぐに村人に輪姦されます。
 それが、子を産めなくなるまでずっと続くのです。


 大きな声ではいえませんが、私の村では、まだその風習が残っています。

 時代が変わったので奴隷商に売ることはできませんが、さまざまな理由から子どもや若い人を欲しがっているお金持ちに売っているのです。
 もちろん、表向きは「養子縁組」だったり、「国内留学」だったり、「婚姻」や「住み込みの使用人」だったりします。

 普通に子どもに恵まれなくて養子を望む方ももちろんいらっしゃいますが、特殊な性癖をお持ちの方も多いと聞きます。
 中には、戸籍を持たない子どもを望まれる方も多いのですが、そういう場合は、たいてい大人になるまで生きてはいられないようです。
 まあ、生きていても、戸籍がなければ外では生きられないのですが。

 初潮が始まる年齢には個人差がありますが、小学生で始まってしまうとなかなか大変です。
 小学生のうちに妊娠することもあります。
 もちろん、生まれてくる子どもは戸籍を持てません。
 社会的にまずいですからね。

 ただ、今は「売らない子ども」を作ることができるようになりました。
 結婚して一年間だけは、夫以外としなくても良いことになって、その期間にできた子どもは、夫婦の間で大切に育てるのです。
 まあ、「大切に」といっても、女の子なら初潮が始まれば村で輪姦されるのは変わりませんが。

 なぜそんなことができるのか、ですか?
 それは、この村の「普通」だからです。
 村人のほとんどが、この村が異常だとは知りません。
 これが本当に「普通」だと信じているのです。

 それではこれを書いている私がなぜ外部のことを知っているのか。
 それは、私がこの村で数少ない「売る側」の人間だからです。
 だって、外のことを知って、橋渡しができる人間がいないと、商売にならないじゃないですか。

 秘密を聞いてしまったあなたも共犯です。
 ご購入しますか? 村の女の子をヤりますか? あなたが売られますか?
 ええ、三択です。
 これ以外は受け付けておりませんよ。
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