【短編集】ならわし

采女

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ひとりっ子

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 私たちの村には、「成人ひとりっ子」という不文律があります。

 基本的に自給自足の村なので、あまり人口が増えると食糧難に陥ってしまうので、各戸人数が増えないよう、「我が子一人とその配偶者」だけを残すのが暗黙の了解になっているのです。

 では、子どもを一人しか産まないのかというと、そうでもありません。
 病や事故で亡くなってしまう子どもは少なくありませんし、嫁にやってしまえば跡取りがいなくなります。

 そういう事情もあって、子どもはできるだけたくさんつくります。
 そうして、優秀な子を男女一名ずつ残して、残りは競売にかけるのです。

 競売は、村内でも行われますが、人気なのは上流階級用の競売です。
 うまくすれば大金を得ることができますからね。
 特に容姿の美しい女の子は、競売に出されることが多いです。

 実をいえば、私はその競売で買われた一人です。
 幼い頃から村一番の器量良しだと言われていたので、恐らく村にはいられないだろうと思ってはいました。
 両親に大金が入るのなら、それもいいと自分に言い聞かせてもいました。

 しかし、競売は思っていた以上に醜悪でした。

 まず、お風呂に入れられ、村では見たこともない上等な生地のワンピースを着せられました。
 といっても、ワンピースの生地はとても薄く、身体が透けて見えました。

 後ろ手に手枷を嵌められて、競売のステージに引き出されると、たくさんの人の視線が刺さるようでした。
 ステージ上でワンピースを捲くって胸を晒されたり、股を開いて見せられたりもしました。

 私を買ったのは、王族の分家筋の立派なお屋敷で、私は長男の誕生日プレゼントとして贈られました。
 この男は、毎年誕生日に競売奴隷をもらっていると聞きましたが、前年までの女性は見当たりませんでした。
 私を落札した御当主が、「今度は壊すなよ?」と言っていました。

 「壊す」の意味は、すぐにわかりました。

 まず、衣類の着用は一切禁止されました。
 全裸のまま、冷たい地下牢のようなところへ連れられて、石の床に転がされました。
 手には長い鎖の付いた枷が嵌められて、鎖は天井の滑車に伸び、さらに壁のハンドルへと繋がっています。
 そして乱暴に、硬く冷たい床の上で犯されました。
 性行為を強要されることは覚悟していましたが、まさかこんなに乱暴に、ベッドの上でさえないとは思ってもみませんでした。

 さらに、床に固定された枷に足首を固定され、仰向けに寝かされました。
 そして、壁にあった燭台を手に取って、私の身体の上にロウを落としました。
 熱くて熱くて、悲鳴をあげました。
 すると、燭台を鞭に持ち替えて打たれました。
 蝋燭の熱さに耐え、耐えられず声を上げると鞭で打たれ、の繰り返しです。
 やがて気を失ってしまいました。

 次に気がつくと、両手を上に、天井から吊られていました。
 足枷は外されていますが、手枷の鎖が巻き取られて、牢の真ん中に立つような形で吊られているのです。
 体中が痛みました。
 体重のかかっている手首も、何度も打たれた鞭の痕も、乱暴にねじ込まれた膣も、どこもかしこも痛くて、どこが痛いのかもよくわからないくらいです。

 近くに人はいないようでしたが、やがて、足音が近づいてきました。
 少し身構えましたが、足音の正体は女性でした。食事を持ってきてくれたようです。
 ただ、自分で食べることはできません。
 両手は天井から吊られていますからね。
 女性は私にゆっくり食べさせてくれました。

 食べ終わると、尿意を覚えました。
 お手洗いに行かせて欲しいと頼みましたが、女性は首を振りました。
 そうですよね、食事も吊られたままでしたもんね。
 女性がいなくなって、しばらくは我慢していましたが、どうにもなりませんでした。
 脚が尿まみれで気持ち悪いです。

 それからどれくらい経ったのか、長男がやってきました。
 私の足元を見て、「汚いので掃除しろ」と侍従に命令しました。
 侍従は私ごと水をかけ、牢の中をブラシで磨き、きれいに拭き上げます。
 私は、ただでさえ肌寒い地下牢で水をかけられたので、かなり寒かったのですが、もちろん我慢しました。

 床の掃除が終わると、「トイレも我慢できない奴隷はお仕置きが必要だな」と言われました。
 恐らくトイレに行かせる気はもともとなかったので、最初から決まっていたことなのでしょう。
 「ついでに洗ってやろう」と、手枷を外して牢の外へと連れ出されました。
 手枷の代わりに、首輪付きです。

 全裸でお屋敷の中を歩かされるのはかなり恥ずかしく、牢の方がマシな気がしました。
 さらに屋外へと連れられて、やってきたのは大きな水車のある用水路でした。

 そこで行われたお仕置きは、「水責め」でした。
 水車には縄を通せる仕掛けがあって、私は水車に磔になりました。
 水車は手動でも回せるようになっていて、水車を回せば私の顔が川の中に浸かるのです。
 当然、その間は息ができません。
 しかも、磔のために身体には幾重にも縄が食い込んでいます。

 何度も死ぬのかと思うくらい水に浸けられました。
 そして、そのびしょ濡れのまま、牢へと戻されます。
 濡れた身体に牢はとても寒いですが、毛布どころか拭くものも与えられませんでした。

 かと思えば、風呂に入れられて、髪もきれいに結われる日もありました。
 そういう日は、あの男が犯すやる日です。
 気分によって、牢の床だったり、外だったり、寝室だったりしましたが、だいたい乱暴に抱かれます。

 食事だけは毎日しっかり与えられました。
 きっと痩せ細った女は美しくないと知っているのでしょう。

 今日はどうやら「お仕置き」の日のようです。
 あの男が飽きてくると、身体をナイフで切られたりもするそうなので、気絶しないように頑張ります。
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