M嬢のM嬢によるM嬢のためのS執事の育て方

采女

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キャンプ一日目

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 あの「お仕事」の後、博己ではなく奏輔さんから連絡があった。

「ごめん、明日も休日出勤で。七月のどこかで、その分平日に五連休やるから頼むって言われて」
(そっか、明日も仕事なんだ)
 奏輔さんには悪いけれど、なんとなくほっとしてしまった自分がいた。
 あれは「仕事」だと何度自分に言ってみても、奏輔さんへの後ろめたさは払拭できない。

「別件なんだけど、七月の三連休ってあいてる?」
「海の日のとこ? うん、特に予定はないけど」
「佑んとこの家族と、博己と一緒に、コテージ借りてキャンプしないかって」
 博己、という文字に、ぴくりと反応してしまう。
「たすくんさんのご家族って、小さい娘さんも?」
「そう。キャンプっていってもコテージだから、大丈夫だろうって。ただ、奥さんも気を遣うだろうから、コテージは二棟借りて、佑一家は別棟に泊まるって」
 キャンプか……
 アウトドアは得意ではないけれどコテージだし、博己にはちょっと会いたくないけれど、たすくんさんも奏輔さんもいるのなら問題はないだろう。
「わかった。空けておくね」


 そんな会話をして、しばらくは博己から連絡があるのではと身構えたりもしていたけれど、六月が終わり、七月が二週間ほど経っても連絡はなかった。
(もう、お客様も物珍しい新人さんには飽きたのかも)
 七月に入っても休日出勤をしている奏輔さんと同じように、単に忙しいせいかもしれないとは思いながらも、少しずつ忘れていった。

 ただ、自慰は少し変わった。
 以前よりももう少し痛いことをしたくて、ハンガーで乳首を挟んでみたり、紐で自分の手首を縛って、高いところにかけたフックに引っ掛けてみたり……
 前よりも、痛いのを欲しがっている自分がいた。


 そうして、いよいよキャンプの日。
 奏輔さんは先週まで休日出勤が続いていたので心配していたけれど、無事に三連休というか、三連休明けに代休四連休と次の土日の九連休らしい。
 七月なのにゴールデンウィークみたいだ。

 レンタカー一台に、私と奏輔さんと博己。
 たすくんさんの家族は、所有の車で向かった。

 車で三時間ちょっとかかったけれど、なかなかに素敵な場所だ。
 きれいでかわいいログハウスに、整備されたバーベキュー場。森の中を散策できる小道も、レンガタイルで舗装されている。
 幼稚園に今年入ったばかりだというたすくんさんの娘さんも、テンションが上がっているようだ。
「うるさくしてごめんなさいね」
 そう話し掛けてきたのは、たすくんさんの奥さんの花織さんだ。
 モデルさんかと思うくらいの美人さん。
「いえ、子どもが楽しそうなのっていいですよね。こっちも明るくなる感じで」
 たすくんさんは娘と一緒に走り回っていて、以前オフ会で会った時よりも子供っぽく見えた。

 お昼ごはんは途中ファミレスで食べてきたので、夕飯の支度まではまだ少し時間があった。
 とはいえ、ここまで運転してきた博己とたすくんさんはちょっと休憩してもらおうということで、残り四人で散策に出掛けてみることにした。
 たすくんさんの娘さんは、両親から一字ずつもらって「佑花」と書くらしい。これで「ゆか」と読む。
 佑花ちゃんは元気いっぱいで、走って行っては何かを見つけ、また走って行っては止まっての繰り返しだ。
 歩きやすい遊歩道とはいえ、当然疲れる。
 車で三時間も揺られてきた後だし、お昼寝の時間でもあるしで、途中からは奏輔さんが背負って帰ってきた。

「おう、寝ちゃったか」
 コテージに帰ると、男二人はすでに飲んでいた。
「うわ、お前らずるいな」
 背中の佑花ちゃんを花織さんに預けて、奏輔さんも混ざる。
 私はどうしようかと逡巡して、「何か手伝いましょうか」と花織さんに訊ねてみたけれど、夕飯まで佑花ちゃんとお昼寝をするから楽しんできてと言われてしまった。

「そうそう、こいつら付き合ってんだって」
「え、そうなの? 俺聞いてないよ?」
「ああ、すまん、言い忘れてた」
「前聞いた時は『絶対大丈夫』みたいに言ってなかったっけ?」
「嘘は言ってないって。あの時は付き合ってなかったもん」
 仲のいい男三人で盛り上がっているので、ちょっぴりついていけないテンションだ。
 少しだけおつまみをつまんで、「私もちょっとお昼寝してくるね」と抜け出した。

 騒がしい声を少し遠くに感じながら、寝室のベッドに横になる。
 寝室は二つあるので、こっちは私の貸し切りだ。付き合ってはいるけれど、一応男女でわかれることにした。
 口実だったはずが、目を閉じると眠くなってきた。

 奏輔さんが起こしに来てくれたのは、バーベキューの準備がととのってからだった。
「うわ、ごめんなさい!」
 準備を任せきりになってしまったことに謝ると、
「いやいや、むしろこいつら『朝ご飯頼もうぜ』って言ってたから気にしなくていいよ」
 なるほど、この二泊三日は基本自炊だから、当番制にしようということか。
「じゃあ、明日の朝食係は私で」
「別に聞かなくてもいいのに。どうせこいつら朝なんか起きないよ」
「ほんとほんと、パパ絶対起きてなんか来ないわよ」
「うっわ、ひでぇ」
 花織さんもいつの間にか馴染んでいて、奏輔さんと一緒に「起きてこない方に百円」なんて話をしている。

「瑞姫は何飲む?」
「んー、烏龍茶にしようかな」
「あれ? お酒飲まないの?」
 横からたすくんさんが声を掛けてくれる。
「誰か一人、車運転できた方がいいじゃない?」
「ああ、そうだね。買い足すものとか出ないとも限らないしね」
「ああ、じゃあ、明日は僕が禁酒するわ」
 奏輔さんがそう言ってくれる。
「おい、それだと俺が帰りも運転になるんじゃね?」
 聞いていた博己が口を挟む。
「おう、よろしく」
「うっわ、ひでぇ」
「だって、博己の方が運転上手いじゃん」

 そうやって楽しい時間は過ぎていって、それぞれのコテージへと戻っていった。
「瑞姫、先に風呂入ってくる? ここ、小さいけど露天風呂付きなんだよ」
「掃除するのも自分たちだけどね」
 ははは、と笑っている。
「僕らは後で入るから、先に入るといいよ」
「別にお前らが一緒に入ってきてもいいけど?」
 博己がソウをからかう。
「や、さすがにそれはここでは」
「俺がヒメちゃんと入るとかでもいいけど」
「それは絶対ダメ」
「じゃあ、三人で入る?」
「絶対イヤだ。ああもう、こいつはいいから瑞姫入っておいで」

「それで、出るとこうなってるのか……」
 お風呂から出てみると、二人してソファで寝ていた。
 でもまあ、お酒にかなり強い奏輔さんが、これだけハメを外せているのは珍しい。

 博己は放置することにして、奏輔さんに声を掛けた。
「お風呂はともかく、寝るならちゃんと寝室で寝なきゃダメですよ?」
「ん……ああ、瑞姫、おかえり」
 寝たまま、チュッとキスをする。
「ちょっ……奏輔さん、博己もいるのに、ダメですよ」
 首を伸ばして博己が寝ていることを確認すると、人差し指を立てて「静かに」の合図をする。
 胸元をくっと引っ張って胸をぽろりと出すと、音を立てずに乳首を吸う。
(奏輔、さん、ダメ、ですってば……)
 小声で訴えてみるけれど、やめる代わりに歯でカリッと噛まれた。
 博己に気づかれないように、息を飲み込む。
 奏輔さんはさらに片手でもう一方の乳首をぎゅっとつまんだ。
 久しぶりの愛撫だからなのか、このところ毎日のように自分で乳首をいじめていたからなのか、はたまた博己に気づかれるかもしれないというドキドキからなのか、気持ち良くて止められない。
(瑞姫、一緒に寝室へ行こうか)
 小声で囁かれると、頷くしかなかった。

 博己を起こさないように寝室へ行って、鍵をかける。
 そのままドアの前で裸にされて、手と口で激しく愛撫される。
(んっ……奏輔さん、いつもより激し……)
 声が出そうになるのを必死でこらえる。
 立ったままの愛撫が恥ずかしい。
 広い窓にはカーテンがないので、もしも外から覗けば、この痴態が丸見えだろう。
(んっ、ふう、……んんっ)
 抑えてはいるけれど、熱い息が漏れる。
 さらにくちゅくちゅと蜜の音も響く。
 窓の方を見ていると、奏輔さんに窓の方へ連れていかれる。
 窓に手をついて、お尻を突き出すような姿勢にされると、奏輔さんがバックで挿れてくる。
 腰を掴んで激しく突かれると、ガラス窓が微かに音を立てた。
 それがまた、誰かに気付かれそうで、ドキドキする。
(瑞姫、締めすぎ……!)
 お尻に温かいものがかかる。
 外に出したらしい。

 部屋にあったティッシュを持ってきて、丁寧に拭いてくれるのは、いつもの奏輔さんだ。
「もう……気付かれたらどうするんですか……」
「いや、むしろマーキング」
 部屋に戻るのかと思ったら、奏輔さんはそのまま同じベッドに横になる。
「このまま寝ちゃったら、一緒に寝たのバレますよ?」
「うん、だからマーキング。牽制。なんなら、音も聞かせてやる?」
 言って、深いキスをしながら身体を触る。
「んっ…ふぅ…ん、あっ……」
「声はダメ。瑞姫のかわいい声は聞かせてやらない」

 博己が起きて歩く音がした。
 心臓が跳ねる。
 隣の寝室が開いて、閉まって、足音が遠ざかる。
 恐らく、風呂にでも行ったのだろう。
「緊張してる瑞姫、かわいい」
 チュッと軽いキスをして、身体を密着させてくる。

 この人はこんなにイチャイチャしたがる人だっただろうか。
 こんなに独占欲を表に出す人だった?

 少しの違和感を残したまま、同じベッドで眠ってしまった。
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