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エッチな下着で
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「いらっしゃい」
「こんにちは。お邪魔します」
晴れた土曜の午後。
今日は姫の二度目の訪問だった。
一度目のあの体験から一週間経つが、あれ以降、特にそういう話はしていない。
もっとも、僕はといえばいろいろあった。
生まれて初めてSMについて検索してみたし、そういうジャンルの漫画も読んでみたし、さらに執事についても調べてみた。
なにせ、「私のS執事になって」だ。勉強しないわけにはいかないだろう。
その勉強の結果、僕は今、茶葉から紅茶を淹れている。
「わあ、これマリアージュフレールじゃないですか!」
さすがは姫。紅茶の缶を見ただけで紅茶の銘柄に嬉々としている。
マリアージュフレールは、紅茶好きなら知っているであろう紅茶の専門店だ。
これを買うのはなかなか大変だった。まず、外観がすでにお洒落だった。そこだけヨーロッパのようで、かなり勇気がいった。奥の壁にはぎっしりと紅茶の缶が並べられていて、さらにイケメンの店員さんがまるでホストのように接客している。店内は女性だらけだった。
まごまごしているとイケメン店員に話し掛けられ、とりあえず知っている紅茶をと思って「ダージリンを」と言うと、何種類ものダージリンが出てきた。ダージリンといっても、種類は一つではないのだそうだ。細かい説明はちっとも覚えられなかったが、ちょうど春なのでファーストフラッシュが入ったと勧めてもらった。僕にもわかるほど香りが良かったのでそれに決めたが、これが驚くほど高かった。
そんな苦労をして仕入れた紅茶なので、わかってもらえただけで嬉しい。
茶器のついでに購入しておいた二段のケーキスタンドにお菓子をのせて「アフタヌーンティーでございます」と彼女の前に置くと、彼女は目を輝かせて喜んでくれた。
まあ、茶器はディスカウントショップのものだし、ケーキスタンドに乗っているお菓子はドラッグストアで買った普通のお菓子だけれども。
「ふふふ、ソウさん、本当に執事みたい」
「まだ一週間の執事見習いですけどね」
「残念ながら、私は色気なくお酒とおつまみを持ってきちゃいました」
と、持ってきた大きなショッピングバッグを指す。
「後で冷蔵庫貸してくださいね」
「僕、今入れちゃいますよ」
「紅茶冷めちゃいません?」
「僕は猫舌なので」と立ち上がって、ショッピングバッグをキッチンへ持っていく。やけに大きいと思ったら、どうやら鍋の材料も入っているようだった。
とりあえず冷蔵庫に詰めていく。なにやら調味料のようなボトルまで数本入っていたが、全部冷蔵庫に突っ込んだ。
ソファに戻り、彼女の横に腰を下ろす。
僕の重みでソファが沈み、彼女の身体が少しこちらへ傾いた。この前よりも中央寄りに座っているのだろう。腕が触れ合って、彼女がぱっとこちらを向いた。
まだ別になにもしていないが、彼女が少し緊張しているのだとわかった。
それもそうか。なにせ彼女が僕に頼んだのは、紅茶を淹れてくれる執事ではなくて、彼女の性癖を満たすS執事になることなのだ。
そう思い至って、僕は彼女に切り出した。
「先週の、お話なんですけど」
「あ、はい」
「僕は具体的に、なにをすればいいのかなって」
えっと、と彼女は少し顔を赤らめて言葉を探している。
こんな春の陽気に、紅茶を飲みながらする話でもなかっただろうか。
「あの、えっと……私のしてもらいたいことを、お話しなくちゃいけないってこと、ですよね……」
「そうですね。して欲しいことと、逆にされたくないことを聞いておかないと、ちょっと難しいかなって」
これは、一週間SM関連の勉強をした結果だった。SMといっても、その内容は実に多岐にわたっていて、ぶっちゃけなにをすればいいのかはわからなかったのだ。
「この前したことは、全部『して欲しいこと』で大丈夫ですか?」
こくり、と頷く。
「えっと……じゃあ、まずは拘束について聞いても?」
またこくり、と頷く。
「この前は縛りませんでしたけど、縛られるのは好きなんですよね」
「好き……です。でも、縄とかだとちょっと痛いし、痕にもなるし、素人には難しいので、ちょっと幅のある柔らかいものの方が……」
「えっと、ネクタイとか、タオルとかですか?」
「そうですね。タオルは意外と結びにくいので、マフラーなんかでも。拘束するだけなら、革ベルトみたいな幅のある拘束具でもいいし、縛るのであれば、ビニールテープなんかでも……」
「ビニールテープ? ええと……」
立ち上がって、机の引き出しを開ける。たしかあったはずだ。
「こういうのでいいんですか?」
言われて、彼女が顔を上げる。
「あ、はい。そういうので。ビニールテープって、意外と伸びるし細くもないので、痛すぎないし、でも太すぎないので、その、けっこう食い込む、の、で……」
言いながら、また顔を真っ赤にしている。
そんな彼女を見ていると、僕はまた、先週と同じ気分になっていった。彼女をいじめたいという気持ちが湧いてくる。
「試してみても、いいですか?」
僕がそう言うと、彼女の身体がピクリと跳ねた。
「今、ですか……?」
「今日は僕に、されたいことを教えてくださるんでしょう?」
わざと執事っぽく言ってみると、彼女は小さく「はい」と答えた。
「どこをどう縛りましょうか。食い込むのが好き、ということなら……やっぱり胸ですかね」
「はい……好き、です……」
「服は……脱いだ方が食い込むかな……」
そういうと、彼女はごくりと唾を飲み込んで、自分で洋服に手を掛けた。今日の服は前ボタンのシャツワンピースで、ボタンを外していくだけで胸元があらわになった。腰から下はそのまま残して、袖から腕を抜く。
ブラジャーに手を掛けたところを制して、その姿を眺めた。
今日の彼女のブラジャーは、なんともエッチなデザインだった。突起の上辺りには細いリボンがあるが、どう見てもそのリボンは簡単に解ける仕様だ。つまり、リボンを解けば丸見えになるということ。そうでなくても総レースで、全体が透けて見えている。
腰を揺らして僕の視線に耐えている彼女を見ると、もっといじめたくなってくる。
「その下着で、家からここまで来たんですか? 電車で?」
「は……い……」
「こんな薄い、スケスケの下着で?」
「はい……」
片方のリボンを引っ張っると、かろうじて隠れていた先端が、ぱっと露わになった。すでに少し立っている。
「こんなに簡単に、乳首が出てしまうような下着で?」
「あ……ん……、は……い……あっ!」
指先でくるくると触った後、パチン、と弾いてやる。
もう一方のリボンも解いて、今度は両方を摘んで軽く引っ張ってやった。
「今日はずっと、こうしてもらおうと思ってたんですね。姫様は思った以上に淫乱だったんですね」
「ああ……や……ん……!」
ああ、やばい。めちゃくちゃかわいい。めちゃくちゃいじめたい。
僕は席を立って、ネクタイを取ってきた。
「こんな淫乱な姫様には、躾が必要ですね。ブラジャーを取って、腕を後ろに回しなさい」
言われたとおりにした彼女の腕を、ネクタイで縛る。一応、縛り方の勉強はした。ただ巻くだけでは腕が抜けてしまうので、腕と腕の間にも通す。最後にキュッと結ぶと、彼女はああ、と吐息を漏らした。
続いて、ビニールテープを手にする。
まずは、胸の下。胸を少し持ち上げて、アンダーギリギリくらいのところを、腕ごとぐるりと一周巻いてみる。手で切ろうとしたが、伸びるばかりでなかなか切れないので、ハサミを持ってきた。次は、胸の上。胸を少し潰すようにしながら、同じように腕ごとぐるりと巻いた。
なるほど、紐よりも楽に縛れるし、いい感じに食い込みも見られる。緊縛の方法も勉強してはみたが、スマートに縛れる自信はなかったので、これは嬉しい誤算だった。
縛られて形の歪んだ膨らみを手のひらで触ってみる。身じろぐ彼女に、
「痛くありませんか」
と訊くと、
「平気、です」
と熱く湿った声で答えた。
この前よりも、明らかに気持ち良さそうだ。
「ふうむ、これでは躾になりませんね」
そう言うと、彼女は潤んだ瞳で僕を見つめた。
「質問を続けましょう。この前、クリップも気に入ってくれていましたよね」
そう言いながら、木製のクリップを持ってくる。
「これ、洗濯ばさみよりは弱いですけど、それなりに痛いですよね。痛いのも好きなんですか」
意地悪く言うと、彼女は赤くなりながら答える。
「痛すぎるのは、無理、です……針とかは、ダメ、で、クリップも、あんまり先端だと痛すぎて長時間は……なので、」
「じゃあ、この辺りですか?」
胸でピンと立っている突起の根元をクリップで摘むと、「んんっ!」と身悶えてから、
「そう、です……その、辺りだと、少しくらい強くても、長時間でも、わりと耐えられ、ます……」
「てことは、洗濯ばさみでも平気?」
「あ……たぶん……」
そう言われれば、試してみたくなる。早速洗濯ばさみを持ってきて、反対の突起の根元を狙って挟んでみた。
「あああ!」
左右を比べてみると、木製クリップよりも洗濯ばさみの方がだいぶ強いことがわかる。肌の潰れ具合が違うのだ。
「これを引っ張ったりするのも、気持ちいいんですか?」
今度はこくり、と頷く。そうとう恥ずかしいらしい。
「じゃあ、たとえば……」
引き出しから、S字フックを取り出す。小首をかしげる彼女のクリップと洗濯ばさみに、S字フックをそれぞれぶら下げた。
重みで少し引っ張られる感触に、ん、と小さな声が聞こえた。
今度は、缶を持ってくる。缶の中身は、五円玉だ。財布に五円玉ができる度に貯めていて、もうずいぶんな量だ。
「これを、こうすると?」
S字フックに、五円玉を引っ掛ける。と、また少し胸が引っ張られているのがわかる。
「や、あああ、んん!」
これは予想していなかったのだろう。かかる負荷に身悶えしている。
「これなら躾になりそうですね。どのくらい耐えられるか試してみましょうか」
「あ、や……」
「本気で嫌なときは、『嫌です』と言ってくださいね。……で、どのくらい耐えられるか、試してもいいですか?」
「あ……は、い……んんっ!」
ニ枚、三枚、と五円玉の枚数を増やしていく。最初水平に止まっていた洗濯ばさみが、三枚もぶら下げればほぼ真下を向いていた。
さらに増やしていき、二十枚ずつになったところでS字フックの方に引っ掛けられるスペースがなくなってしまった。二十枚となると、一枚が三グラムだとしても六十グラム。実際には一枚三・七五グラムらしいので、もっと重い。
彼女はというと、口で息をし、少し苦しそうな表情を浮かべながらも、やはり気持ち良さそうにしている。
「次はもっと大きなS字フックが必要ですね」
と五円玉を揺らしてやると、「あああ!」とひときわ大きく哭く。
胸を見た感じはかなり辛そうなのだが、表情や反応を見るとまだもう少し耐えられそうなので、質問を続けることにする。
「あとは……そうそう、今日はソファは大丈夫ですか?」
「あ……ダメ、かも……」
「確認、しましょうか」
「や……あ……」
立たせると、上半身を脱いでいたワンピースは、あっさり床に落ちた。そして、見えたショーツがまた、ブラジャー以上にエロい。
まず、両サイドには細いリボンしかない。ブラジャーと同じく、引けば簡単に解けそうだ。前は辛うじて隠れているものの、肝心なIラインがやばい。布はもちろん、リボンですらなく、そこには大粒のパールが連なっているのだ。
「これは……」
思わずつぶやくと、彼女はぎゅっと脚を閉じて、もじもじと擦り合わせるように腰を揺らした。
胸の重りが一緒に揺れてぶつかり、五円玉の小気味よい金属音がした。彼女が、小さく喘ぐ。
「姫様は淫乱だと思っていましたが……変態、ですね」
そう言ってやると、彼女は恥ずかしそうに目を逸らしたが、腰は一層もじもじと揺れている。
「もっとよく見せてください。ソファを濡らしてしまうはしたない子かどうかを確認するんですから」
おずおずと股を開くと、パールがテラテラと光っているのが見えた。もうびしょびしょだ。
「ああ、これはひどいですね。では……異物挿入の質問をしましょうか」
「あんっ、い、ま、……?」
「ええ、だって、栓が必要なんでしょう?」
先週はボールペンサイズの指示棒でちっとも栓にはならなかったが、どのくらいのものを入れていいものかは確認しておかなければならない。
「これは入れていいんですよね。他には?」
先週入れた指示棒を手に取って見せながら訊ねた。
「ローターや、バイブ、ディルド、なんかの玩具、は、特にダメなものはない……です……。野菜とかは、意外と棘があったりするので、難しい、です……あとは、そういうツルツルしたものなら、たぶん……」
言われて、僕はテーブルの下から箱を取り出した。彼女の前で蓋を開けると、息を呑むのがわかった。
中身は、いわゆる大人の玩具だ。
どんな物が好きかはわからなかったが、嫌がることはないだろうといくつか買っておいたのだ。
「栓をするなら……とりあえずこの辺かな」
中から、小ぶりなバイブを取り出す。
「入れても、いいですか?」
訊ねれば、こくりと頷く。
僕は、ショーツのリボンを解いて脚を開かせ、秘部にあてがった。さすがにちょっと入れづらい。
「指で触るのは?」
「大丈夫、です……入れても、平気……」
そう答えをもらってから、僕は彼女の秘部に手を掛けた。指で両側に開くとテラテラと光る入り口が見えた。そこにバイブを当てがい、ゆっくりと挿入していく。頭が入れば、あとはスルリと飲み込んでいった。
「今日は落とさないでくださいね?」
再び脚を閉じた彼女は、また腰を揺らしながら、小さく喘いでいる。そろそろ重りは外してあげるべきだろうか。違う刺激が加わったために、表情では判断がつかない。
「こちらは、そろそろ限界ですか?」
胸で揺れる五円玉を指で揺らしてやると、「ああんっっ!」と声をあげる。
すぐに外して欲しいと言わない辺り、もう少し耐えられるのだろう。
「では、あと五分、バイブを落とさずにいられたら外してあげましょう」
そう告げると、僕はバイブのスイッチを入れた。ギュイギュイと小さな音が聞こえ、彼女はたまらずに声をあげた。
「や、あっ、動いてっ、あんっ」
「バイブは動かすものでしょう」
「んっ、ああっ」
「がんばって耐えてくださいね」
「んんっ、や、ああんっ」
そのまましばらく眺め、「はい、一分」と胸の重りを指で弾くと、彼女は大きく身をよじった。
そのまま眺めていてもいいが、五分はまあまあ長い。そこで、箱からローターを取り出す。
弱く電源を入れて彼女の目の前にぶら下げると、潤んだ瞳でそれを見つめた。
「はい、二分」
また重りを指で大きく揺らしてから、洗濯ばさみで大きく歪んでいる胸へと、ローターを当てた。
とはいえ、手で押さえたりはしていない。上からぶら下げているだけだ。
それでも新たに加わった刺激に、彼女は身悶えた。
「はい、三分」
また重りを大きく揺らし、今度はローターを中程度まで上げる。
さらに四分を告げると、僕はローターの出力を最大にして、なおかつ手でぎゅっと押し付けてみた。
「ああああ!」と、悲鳴にも似た喘ぎ声が聞こえたが、それでもバイブは懸命に咥えている。
残り十秒、というところで、僕は五円玉とS字フックを握り、カウントダウンを始めた。ジャスト五分のところで、それをぎゅっと引っ張り、パチンッとクリップと洗濯ばさみを外した。
瞬間、ゴトリ、とバイブが落ちた。
胸への強い刺激と、引っ張られて身体が前に出てしまったことで、脚を開いてしまったらしい。
「あーあ、落としちゃいましたね。……お仕置き、しますか?」
そう訊ねると、彼女は先週と同じように、僕の方へ尻を突き出した。ただし、後ろ手に縛っているため、机に手は付けない。代わりに胸を付く形になって、「ああ、」と声を上げる。あれだけ長く洗濯ばさみやら重りやらで刺激されていたのだ、今はジンジンと敏感になっているに違いない。
「痛いのも、好きなんですか?」
ゆっくり尻を撫でながら訊くと、
「痛すぎるのは、ダメ、です……痕が残るの、も……だから、鞭とかは、ダメ、です……けど、お尻を手で叩かれるのは、平気、です……」
「平気なんじゃなくて、好きなんですよね」
「あ……ごめん、なさ……ああん!」
パチン、と叩くと、気持ち良さそうに喘ぐ。
「今のは、好きなのに『平気』なんて嘘を言った罰です。で、」
再び尻を叩く。
「これが、バイブを落としちゃった分」
これで終わりだと身体を起こそうとした彼女の身体を片手で押し戻して、もう一度叩く。
「あんなエッチな下着で、勝手に感じていた分も、お仕置きが必要でしょう?」
すでに彼女のお尻は赤い。腫れない程度にしなければ。
「躾のために付けたクリップで、気持ちよくなっちゃった分も、必要ですね」
そういうと、彼女は息を荒くしながら、「お仕置き、してください……」とクッと尻を突き出した。
バチン、とさっきまでより強く叩くと、彼女は声を上げて机にもたれ掛かった。
「腕はまだ、平気ですか?」
「はい、痛くない、です」
「じゃあ……」と、僕は次の質問を切り出した。
「こんにちは。お邪魔します」
晴れた土曜の午後。
今日は姫の二度目の訪問だった。
一度目のあの体験から一週間経つが、あれ以降、特にそういう話はしていない。
もっとも、僕はといえばいろいろあった。
生まれて初めてSMについて検索してみたし、そういうジャンルの漫画も読んでみたし、さらに執事についても調べてみた。
なにせ、「私のS執事になって」だ。勉強しないわけにはいかないだろう。
その勉強の結果、僕は今、茶葉から紅茶を淹れている。
「わあ、これマリアージュフレールじゃないですか!」
さすがは姫。紅茶の缶を見ただけで紅茶の銘柄に嬉々としている。
マリアージュフレールは、紅茶好きなら知っているであろう紅茶の専門店だ。
これを買うのはなかなか大変だった。まず、外観がすでにお洒落だった。そこだけヨーロッパのようで、かなり勇気がいった。奥の壁にはぎっしりと紅茶の缶が並べられていて、さらにイケメンの店員さんがまるでホストのように接客している。店内は女性だらけだった。
まごまごしているとイケメン店員に話し掛けられ、とりあえず知っている紅茶をと思って「ダージリンを」と言うと、何種類ものダージリンが出てきた。ダージリンといっても、種類は一つではないのだそうだ。細かい説明はちっとも覚えられなかったが、ちょうど春なのでファーストフラッシュが入ったと勧めてもらった。僕にもわかるほど香りが良かったのでそれに決めたが、これが驚くほど高かった。
そんな苦労をして仕入れた紅茶なので、わかってもらえただけで嬉しい。
茶器のついでに購入しておいた二段のケーキスタンドにお菓子をのせて「アフタヌーンティーでございます」と彼女の前に置くと、彼女は目を輝かせて喜んでくれた。
まあ、茶器はディスカウントショップのものだし、ケーキスタンドに乗っているお菓子はドラッグストアで買った普通のお菓子だけれども。
「ふふふ、ソウさん、本当に執事みたい」
「まだ一週間の執事見習いですけどね」
「残念ながら、私は色気なくお酒とおつまみを持ってきちゃいました」
と、持ってきた大きなショッピングバッグを指す。
「後で冷蔵庫貸してくださいね」
「僕、今入れちゃいますよ」
「紅茶冷めちゃいません?」
「僕は猫舌なので」と立ち上がって、ショッピングバッグをキッチンへ持っていく。やけに大きいと思ったら、どうやら鍋の材料も入っているようだった。
とりあえず冷蔵庫に詰めていく。なにやら調味料のようなボトルまで数本入っていたが、全部冷蔵庫に突っ込んだ。
ソファに戻り、彼女の横に腰を下ろす。
僕の重みでソファが沈み、彼女の身体が少しこちらへ傾いた。この前よりも中央寄りに座っているのだろう。腕が触れ合って、彼女がぱっとこちらを向いた。
まだ別になにもしていないが、彼女が少し緊張しているのだとわかった。
それもそうか。なにせ彼女が僕に頼んだのは、紅茶を淹れてくれる執事ではなくて、彼女の性癖を満たすS執事になることなのだ。
そう思い至って、僕は彼女に切り出した。
「先週の、お話なんですけど」
「あ、はい」
「僕は具体的に、なにをすればいいのかなって」
えっと、と彼女は少し顔を赤らめて言葉を探している。
こんな春の陽気に、紅茶を飲みながらする話でもなかっただろうか。
「あの、えっと……私のしてもらいたいことを、お話しなくちゃいけないってこと、ですよね……」
「そうですね。して欲しいことと、逆にされたくないことを聞いておかないと、ちょっと難しいかなって」
これは、一週間SM関連の勉強をした結果だった。SMといっても、その内容は実に多岐にわたっていて、ぶっちゃけなにをすればいいのかはわからなかったのだ。
「この前したことは、全部『して欲しいこと』で大丈夫ですか?」
こくり、と頷く。
「えっと……じゃあ、まずは拘束について聞いても?」
またこくり、と頷く。
「この前は縛りませんでしたけど、縛られるのは好きなんですよね」
「好き……です。でも、縄とかだとちょっと痛いし、痕にもなるし、素人には難しいので、ちょっと幅のある柔らかいものの方が……」
「えっと、ネクタイとか、タオルとかですか?」
「そうですね。タオルは意外と結びにくいので、マフラーなんかでも。拘束するだけなら、革ベルトみたいな幅のある拘束具でもいいし、縛るのであれば、ビニールテープなんかでも……」
「ビニールテープ? ええと……」
立ち上がって、机の引き出しを開ける。たしかあったはずだ。
「こういうのでいいんですか?」
言われて、彼女が顔を上げる。
「あ、はい。そういうので。ビニールテープって、意外と伸びるし細くもないので、痛すぎないし、でも太すぎないので、その、けっこう食い込む、の、で……」
言いながら、また顔を真っ赤にしている。
そんな彼女を見ていると、僕はまた、先週と同じ気分になっていった。彼女をいじめたいという気持ちが湧いてくる。
「試してみても、いいですか?」
僕がそう言うと、彼女の身体がピクリと跳ねた。
「今、ですか……?」
「今日は僕に、されたいことを教えてくださるんでしょう?」
わざと執事っぽく言ってみると、彼女は小さく「はい」と答えた。
「どこをどう縛りましょうか。食い込むのが好き、ということなら……やっぱり胸ですかね」
「はい……好き、です……」
「服は……脱いだ方が食い込むかな……」
そういうと、彼女はごくりと唾を飲み込んで、自分で洋服に手を掛けた。今日の服は前ボタンのシャツワンピースで、ボタンを外していくだけで胸元があらわになった。腰から下はそのまま残して、袖から腕を抜く。
ブラジャーに手を掛けたところを制して、その姿を眺めた。
今日の彼女のブラジャーは、なんともエッチなデザインだった。突起の上辺りには細いリボンがあるが、どう見てもそのリボンは簡単に解ける仕様だ。つまり、リボンを解けば丸見えになるということ。そうでなくても総レースで、全体が透けて見えている。
腰を揺らして僕の視線に耐えている彼女を見ると、もっといじめたくなってくる。
「その下着で、家からここまで来たんですか? 電車で?」
「は……い……」
「こんな薄い、スケスケの下着で?」
「はい……」
片方のリボンを引っ張っると、かろうじて隠れていた先端が、ぱっと露わになった。すでに少し立っている。
「こんなに簡単に、乳首が出てしまうような下着で?」
「あ……ん……、は……い……あっ!」
指先でくるくると触った後、パチン、と弾いてやる。
もう一方のリボンも解いて、今度は両方を摘んで軽く引っ張ってやった。
「今日はずっと、こうしてもらおうと思ってたんですね。姫様は思った以上に淫乱だったんですね」
「ああ……や……ん……!」
ああ、やばい。めちゃくちゃかわいい。めちゃくちゃいじめたい。
僕は席を立って、ネクタイを取ってきた。
「こんな淫乱な姫様には、躾が必要ですね。ブラジャーを取って、腕を後ろに回しなさい」
言われたとおりにした彼女の腕を、ネクタイで縛る。一応、縛り方の勉強はした。ただ巻くだけでは腕が抜けてしまうので、腕と腕の間にも通す。最後にキュッと結ぶと、彼女はああ、と吐息を漏らした。
続いて、ビニールテープを手にする。
まずは、胸の下。胸を少し持ち上げて、アンダーギリギリくらいのところを、腕ごとぐるりと一周巻いてみる。手で切ろうとしたが、伸びるばかりでなかなか切れないので、ハサミを持ってきた。次は、胸の上。胸を少し潰すようにしながら、同じように腕ごとぐるりと巻いた。
なるほど、紐よりも楽に縛れるし、いい感じに食い込みも見られる。緊縛の方法も勉強してはみたが、スマートに縛れる自信はなかったので、これは嬉しい誤算だった。
縛られて形の歪んだ膨らみを手のひらで触ってみる。身じろぐ彼女に、
「痛くありませんか」
と訊くと、
「平気、です」
と熱く湿った声で答えた。
この前よりも、明らかに気持ち良さそうだ。
「ふうむ、これでは躾になりませんね」
そう言うと、彼女は潤んだ瞳で僕を見つめた。
「質問を続けましょう。この前、クリップも気に入ってくれていましたよね」
そう言いながら、木製のクリップを持ってくる。
「これ、洗濯ばさみよりは弱いですけど、それなりに痛いですよね。痛いのも好きなんですか」
意地悪く言うと、彼女は赤くなりながら答える。
「痛すぎるのは、無理、です……針とかは、ダメ、で、クリップも、あんまり先端だと痛すぎて長時間は……なので、」
「じゃあ、この辺りですか?」
胸でピンと立っている突起の根元をクリップで摘むと、「んんっ!」と身悶えてから、
「そう、です……その、辺りだと、少しくらい強くても、長時間でも、わりと耐えられ、ます……」
「てことは、洗濯ばさみでも平気?」
「あ……たぶん……」
そう言われれば、試してみたくなる。早速洗濯ばさみを持ってきて、反対の突起の根元を狙って挟んでみた。
「あああ!」
左右を比べてみると、木製クリップよりも洗濯ばさみの方がだいぶ強いことがわかる。肌の潰れ具合が違うのだ。
「これを引っ張ったりするのも、気持ちいいんですか?」
今度はこくり、と頷く。そうとう恥ずかしいらしい。
「じゃあ、たとえば……」
引き出しから、S字フックを取り出す。小首をかしげる彼女のクリップと洗濯ばさみに、S字フックをそれぞれぶら下げた。
重みで少し引っ張られる感触に、ん、と小さな声が聞こえた。
今度は、缶を持ってくる。缶の中身は、五円玉だ。財布に五円玉ができる度に貯めていて、もうずいぶんな量だ。
「これを、こうすると?」
S字フックに、五円玉を引っ掛ける。と、また少し胸が引っ張られているのがわかる。
「や、あああ、んん!」
これは予想していなかったのだろう。かかる負荷に身悶えしている。
「これなら躾になりそうですね。どのくらい耐えられるか試してみましょうか」
「あ、や……」
「本気で嫌なときは、『嫌です』と言ってくださいね。……で、どのくらい耐えられるか、試してもいいですか?」
「あ……は、い……んんっ!」
ニ枚、三枚、と五円玉の枚数を増やしていく。最初水平に止まっていた洗濯ばさみが、三枚もぶら下げればほぼ真下を向いていた。
さらに増やしていき、二十枚ずつになったところでS字フックの方に引っ掛けられるスペースがなくなってしまった。二十枚となると、一枚が三グラムだとしても六十グラム。実際には一枚三・七五グラムらしいので、もっと重い。
彼女はというと、口で息をし、少し苦しそうな表情を浮かべながらも、やはり気持ち良さそうにしている。
「次はもっと大きなS字フックが必要ですね」
と五円玉を揺らしてやると、「あああ!」とひときわ大きく哭く。
胸を見た感じはかなり辛そうなのだが、表情や反応を見るとまだもう少し耐えられそうなので、質問を続けることにする。
「あとは……そうそう、今日はソファは大丈夫ですか?」
「あ……ダメ、かも……」
「確認、しましょうか」
「や……あ……」
立たせると、上半身を脱いでいたワンピースは、あっさり床に落ちた。そして、見えたショーツがまた、ブラジャー以上にエロい。
まず、両サイドには細いリボンしかない。ブラジャーと同じく、引けば簡単に解けそうだ。前は辛うじて隠れているものの、肝心なIラインがやばい。布はもちろん、リボンですらなく、そこには大粒のパールが連なっているのだ。
「これは……」
思わずつぶやくと、彼女はぎゅっと脚を閉じて、もじもじと擦り合わせるように腰を揺らした。
胸の重りが一緒に揺れてぶつかり、五円玉の小気味よい金属音がした。彼女が、小さく喘ぐ。
「姫様は淫乱だと思っていましたが……変態、ですね」
そう言ってやると、彼女は恥ずかしそうに目を逸らしたが、腰は一層もじもじと揺れている。
「もっとよく見せてください。ソファを濡らしてしまうはしたない子かどうかを確認するんですから」
おずおずと股を開くと、パールがテラテラと光っているのが見えた。もうびしょびしょだ。
「ああ、これはひどいですね。では……異物挿入の質問をしましょうか」
「あんっ、い、ま、……?」
「ええ、だって、栓が必要なんでしょう?」
先週はボールペンサイズの指示棒でちっとも栓にはならなかったが、どのくらいのものを入れていいものかは確認しておかなければならない。
「これは入れていいんですよね。他には?」
先週入れた指示棒を手に取って見せながら訊ねた。
「ローターや、バイブ、ディルド、なんかの玩具、は、特にダメなものはない……です……。野菜とかは、意外と棘があったりするので、難しい、です……あとは、そういうツルツルしたものなら、たぶん……」
言われて、僕はテーブルの下から箱を取り出した。彼女の前で蓋を開けると、息を呑むのがわかった。
中身は、いわゆる大人の玩具だ。
どんな物が好きかはわからなかったが、嫌がることはないだろうといくつか買っておいたのだ。
「栓をするなら……とりあえずこの辺かな」
中から、小ぶりなバイブを取り出す。
「入れても、いいですか?」
訊ねれば、こくりと頷く。
僕は、ショーツのリボンを解いて脚を開かせ、秘部にあてがった。さすがにちょっと入れづらい。
「指で触るのは?」
「大丈夫、です……入れても、平気……」
そう答えをもらってから、僕は彼女の秘部に手を掛けた。指で両側に開くとテラテラと光る入り口が見えた。そこにバイブを当てがい、ゆっくりと挿入していく。頭が入れば、あとはスルリと飲み込んでいった。
「今日は落とさないでくださいね?」
再び脚を閉じた彼女は、また腰を揺らしながら、小さく喘いでいる。そろそろ重りは外してあげるべきだろうか。違う刺激が加わったために、表情では判断がつかない。
「こちらは、そろそろ限界ですか?」
胸で揺れる五円玉を指で揺らしてやると、「ああんっっ!」と声をあげる。
すぐに外して欲しいと言わない辺り、もう少し耐えられるのだろう。
「では、あと五分、バイブを落とさずにいられたら外してあげましょう」
そう告げると、僕はバイブのスイッチを入れた。ギュイギュイと小さな音が聞こえ、彼女はたまらずに声をあげた。
「や、あっ、動いてっ、あんっ」
「バイブは動かすものでしょう」
「んっ、ああっ」
「がんばって耐えてくださいね」
「んんっ、や、ああんっ」
そのまましばらく眺め、「はい、一分」と胸の重りを指で弾くと、彼女は大きく身をよじった。
そのまま眺めていてもいいが、五分はまあまあ長い。そこで、箱からローターを取り出す。
弱く電源を入れて彼女の目の前にぶら下げると、潤んだ瞳でそれを見つめた。
「はい、二分」
また重りを指で大きく揺らしてから、洗濯ばさみで大きく歪んでいる胸へと、ローターを当てた。
とはいえ、手で押さえたりはしていない。上からぶら下げているだけだ。
それでも新たに加わった刺激に、彼女は身悶えた。
「はい、三分」
また重りを大きく揺らし、今度はローターを中程度まで上げる。
さらに四分を告げると、僕はローターの出力を最大にして、なおかつ手でぎゅっと押し付けてみた。
「ああああ!」と、悲鳴にも似た喘ぎ声が聞こえたが、それでもバイブは懸命に咥えている。
残り十秒、というところで、僕は五円玉とS字フックを握り、カウントダウンを始めた。ジャスト五分のところで、それをぎゅっと引っ張り、パチンッとクリップと洗濯ばさみを外した。
瞬間、ゴトリ、とバイブが落ちた。
胸への強い刺激と、引っ張られて身体が前に出てしまったことで、脚を開いてしまったらしい。
「あーあ、落としちゃいましたね。……お仕置き、しますか?」
そう訊ねると、彼女は先週と同じように、僕の方へ尻を突き出した。ただし、後ろ手に縛っているため、机に手は付けない。代わりに胸を付く形になって、「ああ、」と声を上げる。あれだけ長く洗濯ばさみやら重りやらで刺激されていたのだ、今はジンジンと敏感になっているに違いない。
「痛いのも、好きなんですか?」
ゆっくり尻を撫でながら訊くと、
「痛すぎるのは、ダメ、です……痕が残るの、も……だから、鞭とかは、ダメ、です……けど、お尻を手で叩かれるのは、平気、です……」
「平気なんじゃなくて、好きなんですよね」
「あ……ごめん、なさ……ああん!」
パチン、と叩くと、気持ち良さそうに喘ぐ。
「今のは、好きなのに『平気』なんて嘘を言った罰です。で、」
再び尻を叩く。
「これが、バイブを落としちゃった分」
これで終わりだと身体を起こそうとした彼女の身体を片手で押し戻して、もう一度叩く。
「あんなエッチな下着で、勝手に感じていた分も、お仕置きが必要でしょう?」
すでに彼女のお尻は赤い。腫れない程度にしなければ。
「躾のために付けたクリップで、気持ちよくなっちゃった分も、必要ですね」
そういうと、彼女は息を荒くしながら、「お仕置き、してください……」とクッと尻を突き出した。
バチン、とさっきまでより強く叩くと、彼女は声を上げて机にもたれ掛かった。
「腕はまだ、平気ですか?」
「はい、痛くない、です」
「じゃあ……」と、僕は次の質問を切り出した。
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