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お酒のせい(後編)

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 少し前から、なんとなくふわふわするな、飲みすぎたかな、とは思っていた。
 外で「館長」という役割を背負って飲むのと、自宅で「真白雪史」として飲むのとはちょっと違う。
 いや、彼だって部下なのだから、本当は今だって「館長」だ。
 でも、そういう感じがしない。

 ふわふわしながら会話をしていたら、いつのまにか床に寝ていた。
 覆うように、真上には黒嵜君がいる。
「黒嵜、君……?」
「『一鷹君』って呼んでくれるんじゃなかったんですか?」
 そう言って、一鷹は唇にそっとキスを落とす。
「な……に……?」
「そういえば、先週は雪史さんの感想を聞いていませんでした。男に押し倒されて、どうですか?」
 ふわふわした酔いが、少しだけ覚める。
 顔が、アルコールとは別の理由で火照るのを感じた。
「ドキドキ、しますか?」
「そんなこと、」
 一鷹は、雪史の胸に自分の耳を当てた。
 ドキドキと鳴る心臓の音が、雪史の耳にも聞こえる。
「ドキドキ、してるみたいですけど?」
「それは、お酒の、せい……」
「そうですね。じゃあ、男にキスされて、どうですか? 気持ちいいと思えましたか?」
 雪史は、言葉に詰まる。
 気持ちいいだなんて思っていない。
 違うと言えばいい。
 なぜ言えない?
「僕は、雪史さんとのキスは気持ちいいです」
「なっ……!」
「少なくとも、先週して、もう一度してみたいと思うくらいには」
「…………一鷹君、今日も、酔ってます?」
「はい、酔っているせいです。だから……もうひとつ、試しましょう」
「もう、ひとつ……?」
「雪史さんが言ったんですよ。『身体を触られて興奮できるか』って」
 雪史の脳の処理が追いつかないうちに、一鷹は雪史の身体に手を這わす。
「BLの王道だと、まずはココですよね」
 そう言って触れるのは、胸の突起だ。
 指の腹で、ゆっくりと円を描くように撫でられると、少しくすぐったい。
 その感覚に身体をよじるようにしていたら、何か違うものが混ざり始める。
「んっ……や……一鷹、君……なんか……ゾワゾワ、する……」
「少し硬くなりましたね」
「や……め……」
「やめますか? じゃあやめて、こっちを触ってみます」
 指は腹を撫でながら下へ下がり、股間へと向かう。
 さすがにそれはと思うのに、優しく触れられると雪史の身体はピクリとはねた。
「半分くらい、ですかね」
「や……そっちは、ダメ……」
「やめてもいいですよ。ちゃんと検証はできました」
「……?」
「『身体を触られて興奮できるか』は、『できる』ですよね?」
 かぁっと顔が熱くなる。
 恥ずかしくてたまらない。
 これはそうだ、お酒のせいだ。
 さっきから一鷹君だってそう言っている。

「『酔っていれば』の条件付き、です」
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