4 / 9
お酒のせい(後編)
しおりを挟む
少し前から、なんとなくふわふわするな、飲みすぎたかな、とは思っていた。
外で「館長」という役割を背負って飲むのと、自宅で「真白雪史」として飲むのとはちょっと違う。
いや、彼だって部下なのだから、本当は今だって「館長」だ。
でも、そういう感じがしない。
ふわふわしながら会話をしていたら、いつのまにか床に寝ていた。
覆うように、真上には黒嵜君がいる。
「黒嵜、君……?」
「『一鷹君』って呼んでくれるんじゃなかったんですか?」
そう言って、一鷹は唇にそっとキスを落とす。
「な……に……?」
「そういえば、先週は雪史さんの感想を聞いていませんでした。男に押し倒されて、どうですか?」
ふわふわした酔いが、少しだけ覚める。
顔が、アルコールとは別の理由で火照るのを感じた。
「ドキドキ、しますか?」
「そんなこと、」
一鷹は、雪史の胸に自分の耳を当てた。
ドキドキと鳴る心臓の音が、雪史の耳にも聞こえる。
「ドキドキ、してるみたいですけど?」
「それは、お酒の、せい……」
「そうですね。じゃあ、男にキスされて、どうですか? 気持ちいいと思えましたか?」
雪史は、言葉に詰まる。
気持ちいいだなんて思っていない。
違うと言えばいい。
なぜ言えない?
「僕は、雪史さんとのキスは気持ちいいです」
「なっ……!」
「少なくとも、先週して、もう一度してみたいと思うくらいには」
「…………一鷹君、今日も、酔ってます?」
「はい、酔っているせいです。だから……もうひとつ、試しましょう」
「もう、ひとつ……?」
「雪史さんが言ったんですよ。『身体を触られて興奮できるか』って」
雪史の脳の処理が追いつかないうちに、一鷹は雪史の身体に手を這わす。
「BLの王道だと、まずはココですよね」
そう言って触れるのは、胸の突起だ。
指の腹で、ゆっくりと円を描くように撫でられると、少しくすぐったい。
その感覚に身体をよじるようにしていたら、何か違うものが混ざり始める。
「んっ……や……一鷹、君……なんか……ゾワゾワ、する……」
「少し硬くなりましたね」
「や……め……」
「やめますか? じゃあやめて、こっちを触ってみます」
指は腹を撫でながら下へ下がり、股間へと向かう。
さすがにそれはと思うのに、優しく触れられると雪史の身体はピクリとはねた。
「半分くらい、ですかね」
「や……そっちは、ダメ……」
「やめてもいいですよ。ちゃんと検証はできました」
「……?」
「『身体を触られて興奮できるか』は、『できる』ですよね?」
かぁっと顔が熱くなる。
恥ずかしくてたまらない。
これはそうだ、お酒のせいだ。
さっきから一鷹君だってそう言っている。
「『酔っていれば』の条件付き、です」
外で「館長」という役割を背負って飲むのと、自宅で「真白雪史」として飲むのとはちょっと違う。
いや、彼だって部下なのだから、本当は今だって「館長」だ。
でも、そういう感じがしない。
ふわふわしながら会話をしていたら、いつのまにか床に寝ていた。
覆うように、真上には黒嵜君がいる。
「黒嵜、君……?」
「『一鷹君』って呼んでくれるんじゃなかったんですか?」
そう言って、一鷹は唇にそっとキスを落とす。
「な……に……?」
「そういえば、先週は雪史さんの感想を聞いていませんでした。男に押し倒されて、どうですか?」
ふわふわした酔いが、少しだけ覚める。
顔が、アルコールとは別の理由で火照るのを感じた。
「ドキドキ、しますか?」
「そんなこと、」
一鷹は、雪史の胸に自分の耳を当てた。
ドキドキと鳴る心臓の音が、雪史の耳にも聞こえる。
「ドキドキ、してるみたいですけど?」
「それは、お酒の、せい……」
「そうですね。じゃあ、男にキスされて、どうですか? 気持ちいいと思えましたか?」
雪史は、言葉に詰まる。
気持ちいいだなんて思っていない。
違うと言えばいい。
なぜ言えない?
「僕は、雪史さんとのキスは気持ちいいです」
「なっ……!」
「少なくとも、先週して、もう一度してみたいと思うくらいには」
「…………一鷹君、今日も、酔ってます?」
「はい、酔っているせいです。だから……もうひとつ、試しましょう」
「もう、ひとつ……?」
「雪史さんが言ったんですよ。『身体を触られて興奮できるか』って」
雪史の脳の処理が追いつかないうちに、一鷹は雪史の身体に手を這わす。
「BLの王道だと、まずはココですよね」
そう言って触れるのは、胸の突起だ。
指の腹で、ゆっくりと円を描くように撫でられると、少しくすぐったい。
その感覚に身体をよじるようにしていたら、何か違うものが混ざり始める。
「んっ……や……一鷹、君……なんか……ゾワゾワ、する……」
「少し硬くなりましたね」
「や……め……」
「やめますか? じゃあやめて、こっちを触ってみます」
指は腹を撫でながら下へ下がり、股間へと向かう。
さすがにそれはと思うのに、優しく触れられると雪史の身体はピクリとはねた。
「半分くらい、ですかね」
「や……そっちは、ダメ……」
「やめてもいいですよ。ちゃんと検証はできました」
「……?」
「『身体を触られて興奮できるか』は、『できる』ですよね?」
かぁっと顔が熱くなる。
恥ずかしくてたまらない。
これはそうだ、お酒のせいだ。
さっきから一鷹君だってそう言っている。
「『酔っていれば』の条件付き、です」
1
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

社畜サラリーマン、異世界で竜帝陛下のペットになる
ひよこ麺
BL
30歳の誕生日を深夜のオフィスで迎えた生粋の社畜サラリーマン、立花志鶴(たちばな しづる)。家庭の都合で誰かに助けを求めることが苦手な志鶴がひとり涙を流していた時、誰かの呼び声と共にパソコンが光り輝き、奇妙な世界に召喚されてしまう。
その世界は人類よりも高度な種族である竜人とそれに従うもの達が支配する世界でその世界で一番偉い竜帝陛下のラムセス様に『可愛い子ちゃん』と呼ばれて溺愛されることになった志鶴。
いままでの人生では想像もできないほどに甘やかされて溺愛される志鶴。
しかし、『異世界からきた人間が元の世界に戻れない』という事実ならくる責任感で可愛がられてるだけと思い竜帝陛下に心を開かないと誓うが……。
「余の大切な可愛い子ちゃん、ずっと大切にしたい」
「……その感情は恋愛ではなく、ペットに対してのものですよね」
溺愛系スパダリ竜帝陛下×傷だらけ猫系社畜リーマンのふたりの愛の行方は……??
ついでに志鶴の居ない世界でもいままでにない変化が??
第11回BL小説大賞に応募させて頂きます。今回も何卒宜しくお願いいたします。
※いつも通り竜帝陛下には変態みがありますのでご注意ください。また「※」付きの回は性的な要素を含みます
撮り残した幸せ
海棠 楓
BL
その男は、ただ恋がしたかった。生涯最後の恋を。
求められることも欲されることもなくなってしまったアラフィフが、最後の恋だと意気込んでマッチングアプリで出会ったのは、二回り以上年下の青年だった。
歳を重ねてしまった故に素直になれない、臆病になってしまう複雑な心情を抱えながらも、二人はある共通の趣味を通じて当初の目的とは異なる関係を築いていく。
グッバイ運命
星羽なま
BL
表紙イラストは【ぬか。】様に制作いただきました。
《あらすじ》
〜決意の弱さは幸か不幸か〜
社会人七年目の渚琉志(なぎさりゅうじ)には、同い年の相沢悠透(あいざわゆうと)という恋人がいる。
二人は大学で琉志が発情してしまったことをきっかけに距離を深めて行った。琉志はその出会いに"運命の人"だと感じ、二人が恋に落ちるには時間など必要なかった。
付き合って八年経つ二人は、お互いに不安なことも増えて行った。それは、お互いがオメガだったからである。
苦労することを分かっていて付き合ったはずなのに、社会に出ると現実を知っていく日々だった。
歳を重ねるにつれ、将来への心配ばかりが募る。二人はやがて、すれ違いばかりになり、関係は悪い方向へ向かっていった。
そんな中、琉志の"運命の番"が現れる。二人にとっては最悪の事態。それでも愛する気持ちは同じかと思ったが…
"運命の人"と"運命の番"。
お互いが幸せになるために、二人が選択した運命は──
《登場人物》
◯渚琉志(なぎさりゅうじ)…社会人七年目の28歳。10月16日生まれ。身長176cm。
自分がオメガであることで、他人に迷惑をかけないように生きてきた。
◯相沢悠透(あいざわゆうと)…同じく社会人七年目の28歳。10月29日生まれ。身長178cm。
アルファだと偽って生きてきた。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
華抹茶
BL
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる