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第五章 旅は続く
第七十八話 ようやくの再会と
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あれからどれくらい経っただろうか? 何日もいた気がするし、数時間の気もする。
とにかく、ようやく『ギフト』の制御をものにした私の耳に、『全てを見た魔女』の声が響いてきた。
〔どうやらよさそうね? お仲間達も大丈夫そうだから……会わせてあげる〕
その言葉を認識した直後、視界が歪む。少し気持ち悪いが我慢していると、気付けば広い洞窟のようなところに立っていた。
ふと周りを見れば、リュドヴィック卿、オクト、ブリアック卿、アンドレアス殿が等間隔にいる。
みんな、同じように困惑しながら周囲を見渡した後、再会できたことを認識し……オクトが私に駆け寄ってきた。
「イグナート! 無事だったかよ!」
心底心配したという表情のオクトに、私は困り顔で返す。
「あぁ、心配かけてすまない。大丈夫だ。オクト達はどうだったんだ?」
そう言った瞬間、みんなの表情が一瞬固まる。そして、代表してかリュドヴィック卿が私に向かって声をかけてきた。
「お前、なんか雰囲気やら口調やらがだいぶ変わったが……何があった?」
「そんなに変わりましたか? うーん……言うなら……『自分と向き合った』からでしょうか? あ、あと……イグナートとしての記憶を取り戻しましたので。おそらくそれらが原因か……と?」
私がそう説明すると、オクトが驚きの声をあげる。
「それにしたって変わりすぎだろ! 別人かって思う……いやそりゃ言い過ぎか……でもよぉ、だいぶ変わったぜ? マジで!」
……そんなに変わったのだろうか? 自分ではわからないな……。
すると、アンドレアス殿が冷静に口を開いた。
「ふむ。魔力の方もだいぶ変わられた様であるな。混在していたものが、融合? 統合? されたようである。……ということは『ギフト』の方も……?」
「はい。制御に成功しました」
私の答えに、みんなから声が漏れる。すると、ブリアック卿が静かに言う。
「重畳。『全てを見た魔女』に謝意を述べたい所存だが……」
そう言われて、そういえば『全てを見た魔女』の姿がないことに気づく。彼女はどこへ?
みんなが周囲を見渡すが、見当たらない。どこからともなく声が聴こえてきた。
〔わたしのお節介はここで終・わ・り。後は頑張りなさいな、後輩〕
それだけ聴こえた後、何もなく数分が経った。リュドヴィック卿が咳払いをする。
「どうやらオレ達の前に現れる気はないようだな。……仕方ない、先へ進むとしよう。アンドレアス殿、ここから先はどこへ向かえばいいでしょうか?」
そう訊かれ、アンドレアス殿が頷きながら答える。
「うむ。ここからそう遠くない所で、大量すぎるほどの魔力を感じるである。おそらく、そこに元凶がいるのであろうな」
その言葉に、オクトが反応する。
「じゃあ、いよいよ決戦ってことですね……!」
「そういうことだ。皆、覚悟はいいな? 行くぞ!」
リュドヴィック卿にそう言われ、全員で強い意志を持って頷き、アンドレアス殿の案内で先に進むことへした。馬達もいつの間にやらこの洞窟にいたのだが、帰りのことなどを考慮してここに置いていくことになった。
そう、生きて帰ることを目的として……。
****
最初は調査と『全てを見た魔女』と出会うことだった。だが、今は元凶を突き止めることだけが目的になった。そして……出来れば排除を……というのが私の個人的な願望だ。
「ちっきしょー! 魔物多すぎるんだって!」
オクトが愚痴りながら、斬撃を放っている。そうなのだ。ここに来て、一気に魔物の数が増えた。
大方の雑魚は、私の『ギフト』とアンドレアス殿の魔法で倒していくが、大物はどうしても、近接がメインのリュドヴィック卿、オクト、ブリアック卿の三人が担当することになる。
彼らの疲労も相当溜まる。目的地に辿り着いた頃には、消耗が激しかった。
「このまま突入するのは無謀というものだろう。体力とアンドレアス殿とイグナートには、それに加えて魔力回復も入った飲み薬を渡す。味の保証はできないが……」
リュドヴィック卿の言葉に私は少し笑いながら答える。
「この状況です。味のことなど些細なことですよ」
「うむ。……本当に変わられたな、イグナート殿よ。まぁ頼りがいもあるというもの。話がずれたであるな。遠慮なく飲ませて頂くである」
そう言って、リュドヴィック卿から飲み薬を受け取ると、私とアンドレアス殿は一気に飲み干した。……確かにまずいが、数々の薬を飲まされた『深南としての記憶』のおかげか、私にとっては平気な部類だった。
続いて、残りの三人も飲み干す。オクトは顔をしかめていたが。
うむ。確かに身体の疲労が回復したのを実感するな。魔力も。
「これから本拠地だ。いいか? オレ達の目的はあくまで元凶を突き止めることだ。倒せとまでは言わん! ……生きて帰るぞ!」
こうして私達は……敵地へと乗り込んだ。
とにかく、ようやく『ギフト』の制御をものにした私の耳に、『全てを見た魔女』の声が響いてきた。
〔どうやらよさそうね? お仲間達も大丈夫そうだから……会わせてあげる〕
その言葉を認識した直後、視界が歪む。少し気持ち悪いが我慢していると、気付けば広い洞窟のようなところに立っていた。
ふと周りを見れば、リュドヴィック卿、オクト、ブリアック卿、アンドレアス殿が等間隔にいる。
みんな、同じように困惑しながら周囲を見渡した後、再会できたことを認識し……オクトが私に駆け寄ってきた。
「イグナート! 無事だったかよ!」
心底心配したという表情のオクトに、私は困り顔で返す。
「あぁ、心配かけてすまない。大丈夫だ。オクト達はどうだったんだ?」
そう言った瞬間、みんなの表情が一瞬固まる。そして、代表してかリュドヴィック卿が私に向かって声をかけてきた。
「お前、なんか雰囲気やら口調やらがだいぶ変わったが……何があった?」
「そんなに変わりましたか? うーん……言うなら……『自分と向き合った』からでしょうか? あ、あと……イグナートとしての記憶を取り戻しましたので。おそらくそれらが原因か……と?」
私がそう説明すると、オクトが驚きの声をあげる。
「それにしたって変わりすぎだろ! 別人かって思う……いやそりゃ言い過ぎか……でもよぉ、だいぶ変わったぜ? マジで!」
……そんなに変わったのだろうか? 自分ではわからないな……。
すると、アンドレアス殿が冷静に口を開いた。
「ふむ。魔力の方もだいぶ変わられた様であるな。混在していたものが、融合? 統合? されたようである。……ということは『ギフト』の方も……?」
「はい。制御に成功しました」
私の答えに、みんなから声が漏れる。すると、ブリアック卿が静かに言う。
「重畳。『全てを見た魔女』に謝意を述べたい所存だが……」
そう言われて、そういえば『全てを見た魔女』の姿がないことに気づく。彼女はどこへ?
みんなが周囲を見渡すが、見当たらない。どこからともなく声が聴こえてきた。
〔わたしのお節介はここで終・わ・り。後は頑張りなさいな、後輩〕
それだけ聴こえた後、何もなく数分が経った。リュドヴィック卿が咳払いをする。
「どうやらオレ達の前に現れる気はないようだな。……仕方ない、先へ進むとしよう。アンドレアス殿、ここから先はどこへ向かえばいいでしょうか?」
そう訊かれ、アンドレアス殿が頷きながら答える。
「うむ。ここからそう遠くない所で、大量すぎるほどの魔力を感じるである。おそらく、そこに元凶がいるのであろうな」
その言葉に、オクトが反応する。
「じゃあ、いよいよ決戦ってことですね……!」
「そういうことだ。皆、覚悟はいいな? 行くぞ!」
リュドヴィック卿にそう言われ、全員で強い意志を持って頷き、アンドレアス殿の案内で先に進むことへした。馬達もいつの間にやらこの洞窟にいたのだが、帰りのことなどを考慮してここに置いていくことになった。
そう、生きて帰ることを目的として……。
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最初は調査と『全てを見た魔女』と出会うことだった。だが、今は元凶を突き止めることだけが目的になった。そして……出来れば排除を……というのが私の個人的な願望だ。
「ちっきしょー! 魔物多すぎるんだって!」
オクトが愚痴りながら、斬撃を放っている。そうなのだ。ここに来て、一気に魔物の数が増えた。
大方の雑魚は、私の『ギフト』とアンドレアス殿の魔法で倒していくが、大物はどうしても、近接がメインのリュドヴィック卿、オクト、ブリアック卿の三人が担当することになる。
彼らの疲労も相当溜まる。目的地に辿り着いた頃には、消耗が激しかった。
「このまま突入するのは無謀というものだろう。体力とアンドレアス殿とイグナートには、それに加えて魔力回復も入った飲み薬を渡す。味の保証はできないが……」
リュドヴィック卿の言葉に私は少し笑いながら答える。
「この状況です。味のことなど些細なことですよ」
「うむ。……本当に変わられたな、イグナート殿よ。まぁ頼りがいもあるというもの。話がずれたであるな。遠慮なく飲ませて頂くである」
そう言って、リュドヴィック卿から飲み薬を受け取ると、私とアンドレアス殿は一気に飲み干した。……確かにまずいが、数々の薬を飲まされた『深南としての記憶』のおかげか、私にとっては平気な部類だった。
続いて、残りの三人も飲み干す。オクトは顔をしかめていたが。
うむ。確かに身体の疲労が回復したのを実感するな。魔力も。
「これから本拠地だ。いいか? オレ達の目的はあくまで元凶を突き止めることだ。倒せとまでは言わん! ……生きて帰るぞ!」
こうして私達は……敵地へと乗り込んだ。
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