私、男になっちゃった!?~ネナベしようと思ったら、イケメンエルフに転生&騎士団入りして英雄になります!?~【改題版】

河内三比呂

文字の大きさ
上 下
73 / 83
第五章 旅は続く

第七十三話 問いと決意

しおりを挟む
 無事に手続きを終え馬達も休ませられることになり、私達は用意されたホテルに辿りついた。

 船旅と人命救助、そして何より……山を登るための体力回復のため、四日間滞在するらしい。
 本当は今すぐにでも行きたいくらい、気持ちは焦っているけれど……。オクト君も同様だったしくて抗議したが、ブリアック卿の『判断を間違うことなかれ』の一言で、冷静になったようだった。

 今回は私とリュドヴィックさん、オクト君とブリアック卿、そしてアンドレアスさん一人の部屋割りだった。
 思えば、ポーリスではベルちゃんがいたし、ルクバトではオクト君と寮生活だったからなんだかんだでリュドヴィックさんと二人は初めてだな。

 ……色々あったな。最初は、まさかこんなことになるなんて思ってなくて、ただただはしゃいでたっけ……。

 あれからまだどれくらいだろう? 半年くらいかな? なんか、不思議だ。

 そんなことを思いながら、私はリュドヴィックさんとともに部屋に荷物を置く。

「イグナート。少し話せるか?」

 そうリュドヴィックさんに言われたので、私は返事をした。

「え、あ、はい?」

 本当は少し、休みたかったけれど、リュドヴィックさんの目は真剣だった。

 ****

 大きめなベッドが二つ、両サイドに置かれた広い部屋で、私達は向かい合うように中央のテーブルを挟んで座る。

 しばらくして、リュドヴィックが口を開いた。

「お前のことだが……」

「は、はい……」

 なんだろう? あまりの真剣さに思わず背筋が伸びる。

「もとは監視のため、騎士団に入れたんだがな……。正直に言え。お前は今後どうしたい?」

「へ?」

 いきなりすぎて思わず間抜けな声が出た。今まで訊かれたことなかったし……。

「その……考えてなかったと言いますか……今後って?」

「お前は確かに『勇者』の素質がある。あの『ギフト』といいな? ただ、オレ個人の意見を言わせてもらえば、お前にはお前の人生がある。だから――」

 『どう生きたいのか、考えろ』そう言われて、私は……言葉に詰まってしまった。
 だってそれは……。その言葉は……『前世』でお父さんに言われた言葉そのままだったからだ。

 ****

 それから。
 リュドヴィックさんはしつこく訊かず、自由時間ということで私は部屋で休ませてもらうことにした。騎士団服を脱ぎ、ラフなTシャツに黒いパンツを履き、ベッドに横向きで座る。

 そして……両手を交差させて、ため息を吐いた。

「……どう生きたいかか……」

 馴染むことに必死で考えてもなかったし、今だって『勇者』の素質があるから、命令だから、アウストラリス山を目指している。
 正直に言えば、私のやりたいことじゃない。
 流されるまま訓練して、戦って……そして、悲しいことが広がっていて。

 こんなこと望んでなんていなかった。私はただ……。

「でも……今はそうじゃないんだ。出会った人達、そして、少しでも私の『力』で悲しみが消えるなら……」

 戦おう。
 ――そう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...