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第五章 旅は続く
第七十二話 砂都メディア
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私達は後ろ髪を引かれながら、拠点を後にした。
別れ際の双子ちゃんの『バイバイ』の声が、耳に残る。
「イグナート。お前さ……その……その……俺達に出来ること、あれくらいしかなかったと思うか?」
歩きながら、オクト君が独り言のように訊いてくる。
「どうだろう……」
そうとしか言えなかった……。
こんな私が『勇者』になんてなれるのかな……? そんな不安と恐怖が襲ってくる。
俯きながら歩いていると、あっという間に魔方陣のあるところに着いた。
そこには、どれくらい? 表現が上手くできないけど大きな円形の魔方陣があった。
黒いその魔方陣の中心に、同じく黒い水晶が置かれていてそこに、おそらく陣番さんだろう、壮年のメディア軍隊の男の人がいた。
「お疲れ様です! 自分が責任を持って、皆様をメディアへと送ります! では、ご準備を!」
私達は荷物と武器をしっかりと確認し、陣番さんが指定した位置につく。
「では! 瞬間移動魔方陣、起動!」
その掛け声とともに、黒かった水晶が透明になり、おそらくメディアだろう街並みが映る。
不思議に思った時には、視界が白く染まっていた。
****
白から視界が戻ると、そこには少し霧かかった青い空が広がり、地面が砂に変わっていた。
ふと見れば、ヌンキで見たのと同じ水晶と、メディア軍隊の今度は中年の男の人がいた。
男の人はこちらも見ると口を開いた。
「あなた方がルクバト聖騎士団とアスケラ魔導士団の方々ですね? 失礼ながら、念のため確認をさせて頂きます」
「承知しています。自分がリュドヴィック・エアラです。代表して、通行証を」
そう言って、リュドヴィックさんが陣番さんのところへ向かう。いつの間に通行証もらってたんだろうか?
確認はすぐに終わり、陣番さんが道と町の事を少し教えてくれた。
なんでもメディアはドーム状に、この魔方陣を中心に五層まであるらしい。それも、地上に向かってで、この魔方陣が一番下層なんだとか。
そして、私達が目指すメディアの役所が南側にあるとのことで、私達は挨拶をして、魔方陣を後にした。
メディア軍隊の挨拶は右手を頭に、左手を腰に当てるようだった。
南方面に向かって歩く。砂だからちょっと歩きにくい。あと、霧で見えづらかったけど、よく見れば確かに地上? に向かって奥へと階層が段々になりながら広がっているのがわかる。
四角く砂でできた家々と南国っぽい木々を見ながら、私達は歩く。
すると、カラフルな鳥が両羽を広げ、中心には弓矢が描かれた垂れ幕のかかった、四階建てくらいの同じく砂でできた建物が見えた。
「ここがメディア軍隊の本拠地であるな。役所はその隣であろう。ほれ、『役所』と書いてあるでな」
アンドレアスさんが指さすと、確かに、垂れ幕に『役所』と書かれた建物が確認できた。
私達は馬車をブリアック卿に任せて中へ入って行った。
別れ際の双子ちゃんの『バイバイ』の声が、耳に残る。
「イグナート。お前さ……その……その……俺達に出来ること、あれくらいしかなかったと思うか?」
歩きながら、オクト君が独り言のように訊いてくる。
「どうだろう……」
そうとしか言えなかった……。
こんな私が『勇者』になんてなれるのかな……? そんな不安と恐怖が襲ってくる。
俯きながら歩いていると、あっという間に魔方陣のあるところに着いた。
そこには、どれくらい? 表現が上手くできないけど大きな円形の魔方陣があった。
黒いその魔方陣の中心に、同じく黒い水晶が置かれていてそこに、おそらく陣番さんだろう、壮年のメディア軍隊の男の人がいた。
「お疲れ様です! 自分が責任を持って、皆様をメディアへと送ります! では、ご準備を!」
私達は荷物と武器をしっかりと確認し、陣番さんが指定した位置につく。
「では! 瞬間移動魔方陣、起動!」
その掛け声とともに、黒かった水晶が透明になり、おそらくメディアだろう街並みが映る。
不思議に思った時には、視界が白く染まっていた。
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白から視界が戻ると、そこには少し霧かかった青い空が広がり、地面が砂に変わっていた。
ふと見れば、ヌンキで見たのと同じ水晶と、メディア軍隊の今度は中年の男の人がいた。
男の人はこちらも見ると口を開いた。
「あなた方がルクバト聖騎士団とアスケラ魔導士団の方々ですね? 失礼ながら、念のため確認をさせて頂きます」
「承知しています。自分がリュドヴィック・エアラです。代表して、通行証を」
そう言って、リュドヴィックさんが陣番さんのところへ向かう。いつの間に通行証もらってたんだろうか?
確認はすぐに終わり、陣番さんが道と町の事を少し教えてくれた。
なんでもメディアはドーム状に、この魔方陣を中心に五層まであるらしい。それも、地上に向かってで、この魔方陣が一番下層なんだとか。
そして、私達が目指すメディアの役所が南側にあるとのことで、私達は挨拶をして、魔方陣を後にした。
メディア軍隊の挨拶は右手を頭に、左手を腰に当てるようだった。
南方面に向かって歩く。砂だからちょっと歩きにくい。あと、霧で見えづらかったけど、よく見れば確かに地上? に向かって奥へと階層が段々になりながら広がっているのがわかる。
四角く砂でできた家々と南国っぽい木々を見ながら、私達は歩く。
すると、カラフルな鳥が両羽を広げ、中心には弓矢が描かれた垂れ幕のかかった、四階建てくらいの同じく砂でできた建物が見えた。
「ここがメディア軍隊の本拠地であるな。役所はその隣であろう。ほれ、『役所』と書いてあるでな」
アンドレアスさんが指さすと、確かに、垂れ幕に『役所』と書かれた建物が確認できた。
私達は馬車をブリアック卿に任せて中へ入って行った。
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