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第五章 旅は続く
第七十一話 応援
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翌早朝。
ヌンキの町の中心部にある、瞬間移動魔方陣を使ってヌンキにやってくるメディア軍隊の方々を出迎えるべく、リュドヴィックさんとオクト君が拠点から出て行った。
なんでも平時は魔方陣を守る陣番って人達がいて、その人達が起動させるらしい。だけど、今は有事なの、メディア側からこういう時のための起動キーで動かすんだとか。
ちなみに魔方陣はこの公園のすぐ近くらしいが、私とブリアック卿、アンドレアスさんは公園に残る事へなった。
私は拠点の周囲を見て回る。何が起こってもいいように、武器を構えながらだ。……正直、今になって双剣にしたことを後悔している。だって、盾があれば守りが……守る、事が……!
後悔が渦巻く。その時、背後から気配がしたので振り向くと、そこには昨日助けた双子ちゃんがいた。少し安心したと同時に、この子達、お母さんのところいないと危なくないか? と気づいて慌てて近寄る。
「君達、ここは危ないからお母さんのところへ戻るんだよ? いい子だからさ!」
私がそう声をかけると、双子ちゃんは不安げな顔でこちらを見てくる。
「お兄さん……パパ知らない? ママだけだとかわいそうなの!」
「そうなの! ママ、辛そうなの!」
二人して泣きそうな声を出すから、こっちまで泣きそうになってくる。いけないいけない。
私はこらえながら答えた。
「わた……お兄さんはパパのことしらないけどね? もうじき、メディアから軍隊さん達が来てくれるから! そしたら、パパを探せるから! ね?」
そう言うほかなかった。そして、それ以外言えない自分が情けなかった。
「うん」
「わかった」
納得行かないのだろう。このままだと、街へ向かいかねないため、武器をしまい双子ちゃんの手を握って拠点まで戻る。
怪我で辛いだろうに、この子達のお母さんが泣きながら二人を叩いた。
「もう! 勝手にどこか行っちゃだめって言ったでしょ! お願いだから言うことを聞いて!」
泣き出す双子ちゃんを、お母さんが強く抱きしめる。その光景を見守りながら、私は巡回に戻った。
****
私が何事もないことを確認して拠点に戻ってくると、大勢のえんじ色の襟詰めの隊服を着た、メディア軍隊の人達総勢数百人がいた。
みんな表情は険しいけれど、目に強い光が宿っている。
「よいか! 一人でも多くを救え! 異常を感じたらすぐに伝えろ! いいな!」
力強い声が響く。その声に圧倒されていると、次々とメディア軍隊の人達がヌンキの中へと入っていく。
それを茫然と見ていると、何人かから声をかけられた。
「ありがとう」
「後はまかせろ!」
「ヌンキは我々が救う!」
「ごくろうさん」
だけど……違う。私は何もやっていない。『勇者』なのに、なにも救っていないんだよ……。
自責の念にかられながら、アンドレアスさん達がいるところに戻ると、昨日通信で見たアデルミラさんと数人のメディア軍隊の人がいた。
リュドヴィックさんが私を見て紹介を始めた。
「こちらが件のイグナート・アウストラリスです。先程も申し上げましたが『勇者』の素質を持っております」
どうやら、私の話もしていたようだ。アデルミラさんは私を見ると通る声で告げた。
「私がアデルミラだ。昨日の件は、姉妹都市を代表して感謝する。そして、この事態を受け、こう言わせてもらおう。『期待している』」
「は、はい!」
おそらく……いや間違いなく、『勇者』としての期待だろう。その重みを感じながら、私は挨拶を返すので精一杯だった。
「うむ。面通しは良いであるな? では、我々はメディアへと向かう。そこで、準備を整え次第、本命であるアウストラリス山を登るである」
アンドレアスさんが確認するように言う。正直……ここでメディアに行くのは、逃げるみたいで嫌だ。嫌だけど、私達が元凶をなんとかしなければ、この悲劇は続く。
――だから従うしかなかった。
ヌンキの町の中心部にある、瞬間移動魔方陣を使ってヌンキにやってくるメディア軍隊の方々を出迎えるべく、リュドヴィックさんとオクト君が拠点から出て行った。
なんでも平時は魔方陣を守る陣番って人達がいて、その人達が起動させるらしい。だけど、今は有事なの、メディア側からこういう時のための起動キーで動かすんだとか。
ちなみに魔方陣はこの公園のすぐ近くらしいが、私とブリアック卿、アンドレアスさんは公園に残る事へなった。
私は拠点の周囲を見て回る。何が起こってもいいように、武器を構えながらだ。……正直、今になって双剣にしたことを後悔している。だって、盾があれば守りが……守る、事が……!
後悔が渦巻く。その時、背後から気配がしたので振り向くと、そこには昨日助けた双子ちゃんがいた。少し安心したと同時に、この子達、お母さんのところいないと危なくないか? と気づいて慌てて近寄る。
「君達、ここは危ないからお母さんのところへ戻るんだよ? いい子だからさ!」
私がそう声をかけると、双子ちゃんは不安げな顔でこちらを見てくる。
「お兄さん……パパ知らない? ママだけだとかわいそうなの!」
「そうなの! ママ、辛そうなの!」
二人して泣きそうな声を出すから、こっちまで泣きそうになってくる。いけないいけない。
私はこらえながら答えた。
「わた……お兄さんはパパのことしらないけどね? もうじき、メディアから軍隊さん達が来てくれるから! そしたら、パパを探せるから! ね?」
そう言うほかなかった。そして、それ以外言えない自分が情けなかった。
「うん」
「わかった」
納得行かないのだろう。このままだと、街へ向かいかねないため、武器をしまい双子ちゃんの手を握って拠点まで戻る。
怪我で辛いだろうに、この子達のお母さんが泣きながら二人を叩いた。
「もう! 勝手にどこか行っちゃだめって言ったでしょ! お願いだから言うことを聞いて!」
泣き出す双子ちゃんを、お母さんが強く抱きしめる。その光景を見守りながら、私は巡回に戻った。
****
私が何事もないことを確認して拠点に戻ってくると、大勢のえんじ色の襟詰めの隊服を着た、メディア軍隊の人達総勢数百人がいた。
みんな表情は険しいけれど、目に強い光が宿っている。
「よいか! 一人でも多くを救え! 異常を感じたらすぐに伝えろ! いいな!」
力強い声が響く。その声に圧倒されていると、次々とメディア軍隊の人達がヌンキの中へと入っていく。
それを茫然と見ていると、何人かから声をかけられた。
「ありがとう」
「後はまかせろ!」
「ヌンキは我々が救う!」
「ごくろうさん」
だけど……違う。私は何もやっていない。『勇者』なのに、なにも救っていないんだよ……。
自責の念にかられながら、アンドレアスさん達がいるところに戻ると、昨日通信で見たアデルミラさんと数人のメディア軍隊の人がいた。
リュドヴィックさんが私を見て紹介を始めた。
「こちらが件のイグナート・アウストラリスです。先程も申し上げましたが『勇者』の素質を持っております」
どうやら、私の話もしていたようだ。アデルミラさんは私を見ると通る声で告げた。
「私がアデルミラだ。昨日の件は、姉妹都市を代表して感謝する。そして、この事態を受け、こう言わせてもらおう。『期待している』」
「は、はい!」
おそらく……いや間違いなく、『勇者』としての期待だろう。その重みを感じながら、私は挨拶を返すので精一杯だった。
「うむ。面通しは良いであるな? では、我々はメディアへと向かう。そこで、準備を整え次第、本命であるアウストラリス山を登るである」
アンドレアスさんが確認するように言う。正直……ここでメディアに行くのは、逃げるみたいで嫌だ。嫌だけど、私達が元凶をなんとかしなければ、この悲劇は続く。
――だから従うしかなかった。
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