65 / 83
第五章 旅は続く
第六十五話 いざ、ヌンキ運河へ
しおりを挟む
しばらくして、リュドヴィックさんが私達の元へ戻ってきた。
「アンドレアス殿、お待たせ致しました。二人も待たせたな」
そう私達に声をかけると、チケットらしきものが手渡された。
「うむ、こちらこそ手続きを任せてしまってすまないのである」
「リュドヴィック卿、ありがとうございます!」
「ありがとうございます! ……あの、これでどうやって船に乗るんですか?」
アンドレアスさん、オクト君、私が順に反応する。私だけ最後質問でごめんなさい! だって『前世』じゃ船……それも運河を渡るほどのなんて乗ったことなかったし……。
リュドヴィックさんは慣れた感じで私に向き直り説明してくれた。
「これを受付で手渡して半分に切ってもらえば乗れる。出発はまだだが……乗り込んでおいた方がいいだろう」
リュドヴィックさんにアンドレアスさんが声をかける。
「そうであるな。船の構造を把握しておきたいであるしな?」
船の構造なんて知ってどうするんだろう? そう思っていると、オクト君が口を挟む。
「船の構造ってことは……それも敵襲に備えるためですか?」
アンドレアスさんとリュドヴィックさんを交互に見やると、二人は頷いた。
「あぁ、その通りだ。そういうわけだから、さっそく船に乗るとしよう」
リュドヴィックさんはオクト君にそう答えると、受付に向かって行く。私達も後を追った。
****
「うわぁ……ひっろ……」
船の大きさに思わず圧倒されてしまう。かなり広い。
『前世』の私はこんな大きな船に乗ったことはなかったし、リュドヴィックさんに助けられた時も客船ではあったけど、小さかったし。
つまり、人生でおそらく経験したことがないくらい大きいのだ。
色は白くて、でも船体の真ん中に銀色のラインが入っていて、なんだっけ……船首だ! そこには、美しい女性の像があり、そして、煙突からは煙が出ていた。
「おぉ~! これがあの、ゼナイド号か~! 聖女の名前が付いているだけあって綺麗だな!」
オクト君が私の近くでそう言った。なるほど、ゼナイド号なのね……。そういえば像の女性どっかで見たなと思ったらゼナイド様か! 説明ありがとう!
「ん? どした?」
「あ、いや~大きいな~って思ってさ!」
私がそう答えるとオクト君がフッと笑った後、真剣な表情に変わる。
「なぁ……。何もなければいいな……」
その真剣さに、私も深く頷き返す。うん、何も起きてほしくない。出来れば……ヌンキにもね……。
そう思いながら、私達は列に並んで船に乗り込んだ。
****
乗り込んですぐに、船員さんとリュドヴィックさん、アンドレアスさんがなにやら話し込みだしたので、私とオクト君は他のお客さんの邪魔にならない場所へ移動して待機する事にした。
しばらくして、二人が戻って来る。
「船内の地図と中を確認する許可を得た。ブリアック卿と合流次第、調べるぞ」
なるほど、そのために話してたのか。いや、それくらい察しろって話だよね……。うーん、どうしても鈍感になっちゃうな……。……平和な国に『前世の私』はいた。だからこその……現実逃避なのかもしれない。
そんなことを考えていると、ブリアック卿と合流できた。五人それぞれが船内の地図を持つ。
「この船は四層構造だ。上から順に、食堂とホール、一等客室、二等客室、最下層がボイラー室で、最下層は残念ながら立ち入り禁止だそうだ。よって、オレ達が視認できるのは二等客室までだな」
リュドヴィックさんの言葉に、ブリアック卿が反応する。
「了解。……全員で回るべきと判断するが?」
「ブリアック殿に賛成であるな。幾分目立つだろうが、仕方あるまい」
アンドレアスさんも賛同し、全員で船内を確認することにした。お客さんの視線を沢山浴びたけれど……仕方ないと割り切った。
――何事もない事を祈るばかりだ。
「アンドレアス殿、お待たせ致しました。二人も待たせたな」
そう私達に声をかけると、チケットらしきものが手渡された。
「うむ、こちらこそ手続きを任せてしまってすまないのである」
「リュドヴィック卿、ありがとうございます!」
「ありがとうございます! ……あの、これでどうやって船に乗るんですか?」
アンドレアスさん、オクト君、私が順に反応する。私だけ最後質問でごめんなさい! だって『前世』じゃ船……それも運河を渡るほどのなんて乗ったことなかったし……。
リュドヴィックさんは慣れた感じで私に向き直り説明してくれた。
「これを受付で手渡して半分に切ってもらえば乗れる。出発はまだだが……乗り込んでおいた方がいいだろう」
リュドヴィックさんにアンドレアスさんが声をかける。
「そうであるな。船の構造を把握しておきたいであるしな?」
船の構造なんて知ってどうするんだろう? そう思っていると、オクト君が口を挟む。
「船の構造ってことは……それも敵襲に備えるためですか?」
アンドレアスさんとリュドヴィックさんを交互に見やると、二人は頷いた。
「あぁ、その通りだ。そういうわけだから、さっそく船に乗るとしよう」
リュドヴィックさんはオクト君にそう答えると、受付に向かって行く。私達も後を追った。
****
「うわぁ……ひっろ……」
船の大きさに思わず圧倒されてしまう。かなり広い。
『前世』の私はこんな大きな船に乗ったことはなかったし、リュドヴィックさんに助けられた時も客船ではあったけど、小さかったし。
つまり、人生でおそらく経験したことがないくらい大きいのだ。
色は白くて、でも船体の真ん中に銀色のラインが入っていて、なんだっけ……船首だ! そこには、美しい女性の像があり、そして、煙突からは煙が出ていた。
「おぉ~! これがあの、ゼナイド号か~! 聖女の名前が付いているだけあって綺麗だな!」
オクト君が私の近くでそう言った。なるほど、ゼナイド号なのね……。そういえば像の女性どっかで見たなと思ったらゼナイド様か! 説明ありがとう!
「ん? どした?」
「あ、いや~大きいな~って思ってさ!」
私がそう答えるとオクト君がフッと笑った後、真剣な表情に変わる。
「なぁ……。何もなければいいな……」
その真剣さに、私も深く頷き返す。うん、何も起きてほしくない。出来れば……ヌンキにもね……。
そう思いながら、私達は列に並んで船に乗り込んだ。
****
乗り込んですぐに、船員さんとリュドヴィックさん、アンドレアスさんがなにやら話し込みだしたので、私とオクト君は他のお客さんの邪魔にならない場所へ移動して待機する事にした。
しばらくして、二人が戻って来る。
「船内の地図と中を確認する許可を得た。ブリアック卿と合流次第、調べるぞ」
なるほど、そのために話してたのか。いや、それくらい察しろって話だよね……。うーん、どうしても鈍感になっちゃうな……。……平和な国に『前世の私』はいた。だからこその……現実逃避なのかもしれない。
そんなことを考えていると、ブリアック卿と合流できた。五人それぞれが船内の地図を持つ。
「この船は四層構造だ。上から順に、食堂とホール、一等客室、二等客室、最下層がボイラー室で、最下層は残念ながら立ち入り禁止だそうだ。よって、オレ達が視認できるのは二等客室までだな」
リュドヴィックさんの言葉に、ブリアック卿が反応する。
「了解。……全員で回るべきと判断するが?」
「ブリアック殿に賛成であるな。幾分目立つだろうが、仕方あるまい」
アンドレアスさんも賛同し、全員で船内を確認することにした。お客さんの視線を沢山浴びたけれど……仕方ないと割り切った。
――何事もない事を祈るばかりだ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる