52 / 83
第四章 新たな任務
第五十二話 戦果と魔法具と夢
しおりを挟む
「おぉーい! イグナート!」
私が馬車の所まで戻ると、既に倒し終えたらしいオクト君がこちらに手を振ってくれた。私も振り返しながら、オーガの角を見せる。
「おっ! お前も角か! やっぱそーなるよな!」
オクト君も切り取ったオーガの角を見せてくれた。……私が倒したのよりちょっと大きくない?
劣等感を少し感じながら、二人してリュドヴィックさんに角を提出する。
「二人共倒したか……。角の確認は完了だ。この袋に入れろ」
そう言われて、私とオクト君が袋を見る。それは革のような素材で出来た、両手で持てるくらいの大きさの袋だった。
「あの……これ、入らないんじゃ?」
私が訊くと、リュドヴィックさんが教えてくれた。
「これは『魔法具』という種類の道具の一種だ。この中に入れると、本部の『管理部』に転送される。……以前教えなかったか?」
圧が強いです……リュドヴィック先生。でも、教えられたっけ? 毎日が目まぐるしくて覚えてないです……。
「スミマセン……」
私が謝ると、リュドヴィックさんはため息を一つ吐く。
「まあいい。……今後はよく覚えておくようにな?」
『次はないぞ?』という圧を感じながら、私達は再び馬車に乗り込んだ。
****
それから私達は幾度となく、魔物達と遭遇するようになった。
その度に馬車を降りては戦い、戦果を袋に積めるというのを繰り返す。
さすがに慣れてきた。……きたけど……こんなに魔物が多いなんて……。
本当に活性化してるんだなぁ……と嫌でも体感させられる。
「魔物自体は雑魚ばっかだけどよー、こんなに多いんじゃアスケラまで後どれくらいかかんだよー! なぁ?」
オクト君に話を振られて、私も頷く。
「そうだね。予定してた日数より、遅れそうではあるかな……?」
そんな会話をしていると、リュドヴィックさんが口を挟んできた。
「間違いなく予定より遅れるだろう。……雑魚だからと抜かるなよ? 侮りが最悪の被害をもたらすこともある」
冷静に、だけどどこか悲しげに言われ、私とオクト君は口をつぐむ。
……確かに雑魚だから……そう思い始めていたかもしれない。その結果を……私は知ったはずだ。なのに……。
後悔と自分の浅はかさに落ち込んでいると、横に座っていたオクト君が私の左肩を軽く小突く。
「まぁ。俺も、お前もこれからつーことでさ! 頑張ろうぜ!」
こうやって、元気付けてくれるオクト君が眩しい。
「うん……。だね!」
そう返事を返すと、私達はまた静かに馬車に揺られるのだった。
****
……夢を見た。
焔を纏った俺が、数多の魔物達を焼き尽くしていく夢。
その焔はどんどん強く、熱くなっていく。
――そして、俺の身体は……燃え盛る――。
「はっ!!」
思わず声を上げてしまった。リュドヴィックさんとオクト君が驚いた顔でこちらを見てくる。
なんの夢だったかわからないけど、凄く……変な夢だった気がするな……。
「イグナート大丈夫か?」
オクト君が心配そうに声をかけてくれる。
「あ、うん……ありがとう」
そう答えると私は顔を伏せる。もう考えないようにしよう……。
……また夜を迎える。魔物に警戒しながらの夜が――。
私が馬車の所まで戻ると、既に倒し終えたらしいオクト君がこちらに手を振ってくれた。私も振り返しながら、オーガの角を見せる。
「おっ! お前も角か! やっぱそーなるよな!」
オクト君も切り取ったオーガの角を見せてくれた。……私が倒したのよりちょっと大きくない?
劣等感を少し感じながら、二人してリュドヴィックさんに角を提出する。
「二人共倒したか……。角の確認は完了だ。この袋に入れろ」
そう言われて、私とオクト君が袋を見る。それは革のような素材で出来た、両手で持てるくらいの大きさの袋だった。
「あの……これ、入らないんじゃ?」
私が訊くと、リュドヴィックさんが教えてくれた。
「これは『魔法具』という種類の道具の一種だ。この中に入れると、本部の『管理部』に転送される。……以前教えなかったか?」
圧が強いです……リュドヴィック先生。でも、教えられたっけ? 毎日が目まぐるしくて覚えてないです……。
「スミマセン……」
私が謝ると、リュドヴィックさんはため息を一つ吐く。
「まあいい。……今後はよく覚えておくようにな?」
『次はないぞ?』という圧を感じながら、私達は再び馬車に乗り込んだ。
****
それから私達は幾度となく、魔物達と遭遇するようになった。
その度に馬車を降りては戦い、戦果を袋に積めるというのを繰り返す。
さすがに慣れてきた。……きたけど……こんなに魔物が多いなんて……。
本当に活性化してるんだなぁ……と嫌でも体感させられる。
「魔物自体は雑魚ばっかだけどよー、こんなに多いんじゃアスケラまで後どれくらいかかんだよー! なぁ?」
オクト君に話を振られて、私も頷く。
「そうだね。予定してた日数より、遅れそうではあるかな……?」
そんな会話をしていると、リュドヴィックさんが口を挟んできた。
「間違いなく予定より遅れるだろう。……雑魚だからと抜かるなよ? 侮りが最悪の被害をもたらすこともある」
冷静に、だけどどこか悲しげに言われ、私とオクト君は口をつぐむ。
……確かに雑魚だから……そう思い始めていたかもしれない。その結果を……私は知ったはずだ。なのに……。
後悔と自分の浅はかさに落ち込んでいると、横に座っていたオクト君が私の左肩を軽く小突く。
「まぁ。俺も、お前もこれからつーことでさ! 頑張ろうぜ!」
こうやって、元気付けてくれるオクト君が眩しい。
「うん……。だね!」
そう返事を返すと、私達はまた静かに馬車に揺られるのだった。
****
……夢を見た。
焔を纏った俺が、数多の魔物達を焼き尽くしていく夢。
その焔はどんどん強く、熱くなっていく。
――そして、俺の身体は……燃え盛る――。
「はっ!!」
思わず声を上げてしまった。リュドヴィックさんとオクト君が驚いた顔でこちらを見てくる。
なんの夢だったかわからないけど、凄く……変な夢だった気がするな……。
「イグナート大丈夫か?」
オクト君が心配そうに声をかけてくれる。
「あ、うん……ありがとう」
そう答えると私は顔を伏せる。もう考えないようにしよう……。
……また夜を迎える。魔物に警戒しながらの夜が――。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる