45 / 83
第三章 初任務と
第四十五話 謹慎とお茶
しおりを挟む
目覚めてから五日間で、私は退院出来た。
その間に、アンドレアスさん達が一足先にアスケラへ戻ったこと、人質にされていた人々が全員無事だったことなどを聞き、私は安心したのと同時に強い恐怖心を抱いた。……自分自身に対して。
オクト君とリュドヴィックさんから聞いた自分の所業が……恐ろしかったのだ。
私の『ギフト』……【怒焔の矢】。正直全然覚えてないけど……二人が言うからには間違いないんだろう。
それに……。
「これ……治らなかったな……」
私の両腕の前腕には、赤い矢印のような痣? 紋様? が浮かんでいるのだ。
私が寝ている間も、治療してくれたらしいのだけど、効果はなかったそうだ。
つまり、これから一生このわけのわからない痣だかなんだかと付き合わなければならないわけで。
「はぁ……」
私はため息を吐くと、寮の部屋で読んでいた本を綴じる。
退院してすぐにルクバトに戻った私は、始末書を書いて、謹慎処分で寮の部屋にいることへなった。
幸いにも、オクト君が筋トレ器具を貸してくれたため、身体はある程度動かせるし、寮内にいる限りは自由だから、ちょっとだけ気が楽ではある。
あるけど……。
「これからどうなるんだろう……?」
オクト君は『気にするな』と言ってくれた。リュドヴィックさんは『力を制御出来るようになればいいだけだ』と言ってくれた。
……二人は優しいからそうフォローしてくれるけど……正直、この謹慎が明けたらどうなるのか、全然予想がつかなくて怖い。騎士団を追い出されたり……なんかはないと思いたいけど……。
そんなことを考えていると、部屋の扉をノックする音がする。
「はい?」
私が返事をすると、外から以外な人の声がした。
「イグナート卿、ボクです。ランベールですよ~」
「ランベールさん?」
「はい。謹慎中との事ですので、せっかくですしお茶でもいかがでしょうか?」
ランベールさんなりの気遣いなのだろう。だけど……。
「……今、そういう気分じゃないので」
「案外気分転換になるかも知れませんよ?」
……それは、そうかもしれないけど……。
しばらく考えて、私はその申し出を受けることにした。
「わかりました。今準備しますので、待っていてください」
「わかりました。ゆっくりで構いませんのでね?」
「はい……」
こうして私はランベールさんとお茶をすることになった。
****
「いやぁ、こうしてイグナート卿とお話出来るのは久方ぶりですね」
「そうですね。任務に出ていたし、謹慎にもすぐになりましたから」
「そういえば、新しい服を買われたのですね? お似合いですよ」
今の私の服装は、青のワイシャツに白のパンツに藍色のブーツだ。
ランベールさんは優しく微笑みながら会話を続けてくれた。
「お身体のお加減はいかがですか? 任務中に倒れられたとお聞きしましたが」
「なんとか大丈夫です……ありがとうございます……」
申し訳なさそうに答える私に、ランベールさんが優しくフォローをいれてくれた。
「お茶菓子等用意いたしましたので、食べれば少しは気分が晴れるかもしれませんよ? 甘い物は癒し効果がありますのでね」
「は、はぁ……」
甘い物は好きだけれど、今はそんな気分になれなかった。でも、せっかくだからと口を付ける。……美味しい。
ゆっくりと食べていると、ランベールさんが話題を変えた。
「ところで、サジタリウスには『アウストラリス山』という山があるのはご存知ですか?」
そう言われ、私は思わず目を見開いてしまう。
「え、そんな山が?」
私の反応を見ながらランベールさんが続ける。
「ええ。一年中雪が振る山でしてね? そこにはなんでも『全てを見た魔女』が住んでいるらしいですよ?」
その声色には、どこか懐かしんでいるものが含まれている気がしたけれど……話の続きが気になって、気づけば私は続きを待っていた。
ランベールさんの語りの続きを――。
その間に、アンドレアスさん達が一足先にアスケラへ戻ったこと、人質にされていた人々が全員無事だったことなどを聞き、私は安心したのと同時に強い恐怖心を抱いた。……自分自身に対して。
オクト君とリュドヴィックさんから聞いた自分の所業が……恐ろしかったのだ。
私の『ギフト』……【怒焔の矢】。正直全然覚えてないけど……二人が言うからには間違いないんだろう。
それに……。
「これ……治らなかったな……」
私の両腕の前腕には、赤い矢印のような痣? 紋様? が浮かんでいるのだ。
私が寝ている間も、治療してくれたらしいのだけど、効果はなかったそうだ。
つまり、これから一生このわけのわからない痣だかなんだかと付き合わなければならないわけで。
「はぁ……」
私はため息を吐くと、寮の部屋で読んでいた本を綴じる。
退院してすぐにルクバトに戻った私は、始末書を書いて、謹慎処分で寮の部屋にいることへなった。
幸いにも、オクト君が筋トレ器具を貸してくれたため、身体はある程度動かせるし、寮内にいる限りは自由だから、ちょっとだけ気が楽ではある。
あるけど……。
「これからどうなるんだろう……?」
オクト君は『気にするな』と言ってくれた。リュドヴィックさんは『力を制御出来るようになればいいだけだ』と言ってくれた。
……二人は優しいからそうフォローしてくれるけど……正直、この謹慎が明けたらどうなるのか、全然予想がつかなくて怖い。騎士団を追い出されたり……なんかはないと思いたいけど……。
そんなことを考えていると、部屋の扉をノックする音がする。
「はい?」
私が返事をすると、外から以外な人の声がした。
「イグナート卿、ボクです。ランベールですよ~」
「ランベールさん?」
「はい。謹慎中との事ですので、せっかくですしお茶でもいかがでしょうか?」
ランベールさんなりの気遣いなのだろう。だけど……。
「……今、そういう気分じゃないので」
「案外気分転換になるかも知れませんよ?」
……それは、そうかもしれないけど……。
しばらく考えて、私はその申し出を受けることにした。
「わかりました。今準備しますので、待っていてください」
「わかりました。ゆっくりで構いませんのでね?」
「はい……」
こうして私はランベールさんとお茶をすることになった。
****
「いやぁ、こうしてイグナート卿とお話出来るのは久方ぶりですね」
「そうですね。任務に出ていたし、謹慎にもすぐになりましたから」
「そういえば、新しい服を買われたのですね? お似合いですよ」
今の私の服装は、青のワイシャツに白のパンツに藍色のブーツだ。
ランベールさんは優しく微笑みながら会話を続けてくれた。
「お身体のお加減はいかがですか? 任務中に倒れられたとお聞きしましたが」
「なんとか大丈夫です……ありがとうございます……」
申し訳なさそうに答える私に、ランベールさんが優しくフォローをいれてくれた。
「お茶菓子等用意いたしましたので、食べれば少しは気分が晴れるかもしれませんよ? 甘い物は癒し効果がありますのでね」
「は、はぁ……」
甘い物は好きだけれど、今はそんな気分になれなかった。でも、せっかくだからと口を付ける。……美味しい。
ゆっくりと食べていると、ランベールさんが話題を変えた。
「ところで、サジタリウスには『アウストラリス山』という山があるのはご存知ですか?」
そう言われ、私は思わず目を見開いてしまう。
「え、そんな山が?」
私の反応を見ながらランベールさんが続ける。
「ええ。一年中雪が振る山でしてね? そこにはなんでも『全てを見た魔女』が住んでいるらしいですよ?」
その声色には、どこか懐かしんでいるものが含まれている気がしたけれど……話の続きが気になって、気づけば私は続きを待っていた。
ランベールさんの語りの続きを――。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる