私、男になっちゃった!?~ネナベしようと思ったら、イケメンエルフに転生&騎士団入りして英雄になります!?~【改題版】

河内三比呂

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第三章 初任務と

第四十二話 シカ村

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「それでは、シカ村の事件についてお話させて頂きます。……あれは数日前のこと、我々アイナラミの者とシカ村の者とで交流がありましてな? その日も、シカ村へ取引に行ったのですが……」

 町長さんがそこで言葉を切る。その目は悲しみに満ち溢れているように見えた。
 絞り出すような声で話を続ける。

「我々が着いた頃……村は既に壊滅状態でした。生き残りに関しては残念ながら……」

 ……そんな……。

 あまりのショックに、私は言葉を失った。
 えっ待ってよ……ゴブリンって雑魚魔物なんじゃないの? そんなに被害を出す存在なの?

 唐突な現実を突き付けられて、私は息を飲んだ。

「イグナート、大丈夫かよ?」

 心配そうなオクト君の声に、私は力なく頷くしかない。

「それで町長殿。ゴブリンの数や巣など、何かわかっていることはございませんか?」

 リュドヴィックさんが続きを促す。

「そうですね……おそらくゴブリンは群れ……それもかなりの数かと。それ以上は……」

「ふむ、かなりの数であるか。であるなら、巣穴の探索は現場に行った方が良いであるな」

 アンドレアスさんはそう言うと立ち上がり、リュドヴィックさんの方へ向き直る。

「リュドヴィック殿、共同任務であるからして……これよりシカ村に行こうと思うがよろしいであるか?」

「ええ、自分も同意見でしたので」

 リュドヴィックさんがそう答えると、アンドレアスさんは静かに告げた。

「では諸君、いざシカ村へ向かうのである!」

 ****

「な……!?」

 私はそれ以外の言葉が出てこず、思わずその場に立ち尽くしかなかった。

 のどかであっただろう風景は破壊しつくされていた。焼け焦げた屋根、壊された扉、荒らされた室内……そして、逃げ惑ったであろう村人達の血痕。

 そのあまりの衝撃さに、私は頭をガツンと殴られたような気がした。

 今まで何を見ていた? 呑気なことばかり考えて……!! ここで生きている人達のことなんて、なんにも考えてなくて!!

 今までの自分を殴りたくなると同時に、私の中で『何か』が溢れそうになる。

「イグナート!! おい!」

 ハッと我に帰ると、辛そうな顔をしたオクト君が私の右肩を掴んでいた。

「ご遺体の埋葬はアイナラミの人達がやってくれたらしいからよ、俺達はリュドヴィック卿やアンドレアス魔道士殿達と一緒に、ゴブリン共の巣穴の手がかりを探すぞ!」

「うん……了解」

 そう言うとオクト君は私から離れて行った。私は……溢れそうな『何か』を抑えながら手がかりを探すことにした。

 ……一軒一軒回る事に、その惨状を脳が刻み込んで行く。壊れた玩具、食べかけのご飯……人の血、血、血……。
 私が三人家族の家らしき中へ入り、探索していた時だった。

「ギャギャ!!」

 瞬間、私の背後から聞き慣れない声がした。振り向くとそこには、テレビやゲームで観たビジュアルよりもはるかに気味の悪いゴブリンがいた。

 ゴブリンは挑発するかのように飛び跳ねて……私に向けて短剣を振りかざして来た。

「こっの!」

 慌てて回避すると、ゴブリンは不敵な笑みを浮かべて更に攻撃を仕掛けてくる。私は双剣を構えゴブリンの斬撃を受け止めると、力任せにゴブリンを壁に叩きつけた。

「ギャ!?」

 耳障りな声に苛立ちながら、攻撃を加えようとした瞬間だった。

「ギャギャギャ!!」

「ギャギャ!! ギャギャ!!」

 二匹のゴブリンがどこからともなく現れた。

「くっ……そぉ!!」

 私一人じゃ分が悪い!!

「イグナー……ゴブリン!?」

 オクト君の声が聞こえて来た。

「オクト君!!」

「コイツら、まだいやがったのか!」

 オクト君も長剣を抜くと、ゴブリン達と睨み合う。
 私が壁に押し付けていたゴブリンが、懐から笛みたいな物を取り出して……吹いた。

「ギャギャギャ!!」

 その音を聴いて、ゴブリン達が踊り出す。

「なんだってんだ!?」

 私達に緊張が走る。近い位置からベニーさんかダニーさん、どっちかの声が響いて来た。

「皆様、大変です! ゴブリン達の群れが接近中!! 繰り返します! ゴブリン達の群れが接近中!! その数、およそ……ひゃ、百です!!」

 ……やられた。
 その事に気づいた私達は、異様な緊張感に包まれるのだった。
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