9 / 83
第一章 女から男に転生!?
第九話 鍛錬とギフトについて
しおりを挟む
「うぅ……うっ」
あれから数時間。私の気力と体力は限界を超えていた。どうにも身体が思うように動かない。もしかしたら、女から男に変わったからかも? そんなことを思ったりもしたが、リュドヴィックさんにわかる訳もなんてなくて……。
「その程度でへばっていては、『勇者』など程遠いぞ? 立て!」
厳しすぎるリュドヴィックさんの言葉に、私は思わず涙ぐみそうになるが、今の私はもう『前世』の『私』じゃないんだ……。
重たい身体を無理矢理持ち上げ、双剣を構え直す。
それを見たリュドヴィックさんが、少しだけ口角を上げる。カッコいいなぁ。
こういうのが似合う、イケメンになりたいなぁ。
そんな不思議な憧れを抱きつつ、私は必死に鍛錬を行った。
****
もう無理。もう動けない。情けなくも、声にすらならないうめき声をあげて、私は倒れ込んだ。
「まぁ、最初に比べたら進歩しただろう。ほら、肩を貸してやるから、休憩室まで歩けよ?」
そう言って、リュドヴィックさんが私の左肩を持ち上げる。ありがたいけど、顔がめちゃくちゃ近い……。こんなに近くまでイケメンの顔なんて見た事ないよ~……。
「顔が赤くないか? お前、熱でも出たか?」
少し心配そうに眉を下げるイケメンもといリュドヴィックさんに見惚れつつ、私は適当に誤魔化す事にした。
「いやこんなに身体を動かしたのは、久しぶりなので? 疲れが出てしまったのかと……ありがとうございます」
「そうか? ならいいが」
リュドヴィックさん肩を貸してもらいながら、休憩室へと向かう。
思ったより休憩室は近くて、助かったと思った。
休憩室は結構広くて、三つの二段ベッドが壁にずらりと並び、真ん中にテーブルと椅子、窓際に長ソファが置かれていた。
私は長ソファの真ん中に座らせてもらった。リュドヴィックさんが離れていくのを見つめていると、リュドヴィックさんがオシャレなポットを手に取った。
「ほら、水を飲め」
コップに水を入れて、リュドヴィックさんが持って来てくれた。この人、めちゃくちゃ良い人だなぁ。イケメンだし……素敵だなぁ。
「あ、ありがとうございます……」
本当は元気よく答えたかったんだけど、出たのは今にも消えそうな声だった。
「お前は、身体と筋力の動かし方を理解していない。……これも記憶喪失の影響か?」
深刻な顔をされて、私は申し訳ない気持ちになって来る。だって、『記憶喪失』っていうのは、嘘だからね。
そんな私の心中を察した訳ではないだろうけど、リュドヴィックさんが話題を変えてくれた。
「ところでお前、『ギフト』について何か覚えていることはないか?」
一気に水を口に含み、大きく喉を鳴らして飲み込むと、私は少し回復した声で答えた。
「えと、いえ。そもそも『ギフト』ってなんなんです、かね?」
リュドヴィックさんは右手を顎につけると、しばらくして口を開いた。
「そうか。『ギフト』というのは、オレも詳しく知っているわけではない。なんでも、通常の者にはない、唯一神『サジタリウス』から授けられる特殊な力のことをそう呼ぶらしい。だが、オレも授かった者を見るのは初めてなのでな? あまり大層なことは言えん」
リュドヴィックさんは私から視線を逸らし、またしても考え込んでしまった。ちくしょう、そんな顔もかっこいいなんて……! さすがにちょっと悔しくなって来たな……。
だって、私は王子様とかに憧れているんだから!
ああいう風に、これからなりたいなぁ。
――せっかくの『転生』なのだから。
あれから数時間。私の気力と体力は限界を超えていた。どうにも身体が思うように動かない。もしかしたら、女から男に変わったからかも? そんなことを思ったりもしたが、リュドヴィックさんにわかる訳もなんてなくて……。
「その程度でへばっていては、『勇者』など程遠いぞ? 立て!」
厳しすぎるリュドヴィックさんの言葉に、私は思わず涙ぐみそうになるが、今の私はもう『前世』の『私』じゃないんだ……。
重たい身体を無理矢理持ち上げ、双剣を構え直す。
それを見たリュドヴィックさんが、少しだけ口角を上げる。カッコいいなぁ。
こういうのが似合う、イケメンになりたいなぁ。
そんな不思議な憧れを抱きつつ、私は必死に鍛錬を行った。
****
もう無理。もう動けない。情けなくも、声にすらならないうめき声をあげて、私は倒れ込んだ。
「まぁ、最初に比べたら進歩しただろう。ほら、肩を貸してやるから、休憩室まで歩けよ?」
そう言って、リュドヴィックさんが私の左肩を持ち上げる。ありがたいけど、顔がめちゃくちゃ近い……。こんなに近くまでイケメンの顔なんて見た事ないよ~……。
「顔が赤くないか? お前、熱でも出たか?」
少し心配そうに眉を下げるイケメンもといリュドヴィックさんに見惚れつつ、私は適当に誤魔化す事にした。
「いやこんなに身体を動かしたのは、久しぶりなので? 疲れが出てしまったのかと……ありがとうございます」
「そうか? ならいいが」
リュドヴィックさん肩を貸してもらいながら、休憩室へと向かう。
思ったより休憩室は近くて、助かったと思った。
休憩室は結構広くて、三つの二段ベッドが壁にずらりと並び、真ん中にテーブルと椅子、窓際に長ソファが置かれていた。
私は長ソファの真ん中に座らせてもらった。リュドヴィックさんが離れていくのを見つめていると、リュドヴィックさんがオシャレなポットを手に取った。
「ほら、水を飲め」
コップに水を入れて、リュドヴィックさんが持って来てくれた。この人、めちゃくちゃ良い人だなぁ。イケメンだし……素敵だなぁ。
「あ、ありがとうございます……」
本当は元気よく答えたかったんだけど、出たのは今にも消えそうな声だった。
「お前は、身体と筋力の動かし方を理解していない。……これも記憶喪失の影響か?」
深刻な顔をされて、私は申し訳ない気持ちになって来る。だって、『記憶喪失』っていうのは、嘘だからね。
そんな私の心中を察した訳ではないだろうけど、リュドヴィックさんが話題を変えてくれた。
「ところでお前、『ギフト』について何か覚えていることはないか?」
一気に水を口に含み、大きく喉を鳴らして飲み込むと、私は少し回復した声で答えた。
「えと、いえ。そもそも『ギフト』ってなんなんです、かね?」
リュドヴィックさんは右手を顎につけると、しばらくして口を開いた。
「そうか。『ギフト』というのは、オレも詳しく知っているわけではない。なんでも、通常の者にはない、唯一神『サジタリウス』から授けられる特殊な力のことをそう呼ぶらしい。だが、オレも授かった者を見るのは初めてなのでな? あまり大層なことは言えん」
リュドヴィックさんは私から視線を逸らし、またしても考え込んでしまった。ちくしょう、そんな顔もかっこいいなんて……! さすがにちょっと悔しくなって来たな……。
だって、私は王子様とかに憧れているんだから!
ああいう風に、これからなりたいなぁ。
――せっかくの『転生』なのだから。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる