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不⑤
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「さて、我々を襲撃して来た男について何か少しでも判明しているといいのですがねぇ」
「そもそも、何故襲撃して来たのでしょうか? その、俺はともかく朝倉刑事には狙われる理由はないはずです」
「いえいえ? そうでもないのですよ。刑事が恨まれる事なんて、日常茶飯事ですから」
「そうなんですか……大変ですね」
「まぁ、仕事柄って奴ですからねぇ。お気になさらず」
朝倉とここまで会話をして、識はふとある事に気づいた。それは、襲撃者が洋壱関連なのか……それとも朝倉を狙っての別件なのかという事だ。
タイミングの問題でてっきり洋壱関連と思い込んでいたが、もしかしたら襲撃者は今回の事件とは無関係かもしれない。
その可能性に気づいた識は、思わず頭を抱える。これでは解決に程遠い気がしたからだ。そんな識の様子で察したのか、朝倉が声をかけて来た。
「進藤さん、心中お察ししますが今はそこは考えないでおきましょう?」
「ですが……襲撃者が俺か? 朝倉刑事か? どちらを狙っているかによって、話は大きく変わります」
「それも込みで、調べるしかないでしょう。ご安心を、そのために私がいるのですから」
「は、はぁ……」
(本当に、俺は役に立つのか? そもそも仇なんて取れるのか?)
一抹の不安が脳裏を過る。識は探偵だが、アニメや漫画、小説等のフィクションのような内容の仕事をしていない。現実とはそんなものだと割り切っていた。だが、現状はどうだろうか?
親友絡みとはいえ、実際の事件を追っている。
だが、ほとんど朝倉について回っているだけ。識は今の所なんの役にも立っていない。
(歯がゆい……これが、素人との差って奴なのか?)
「進藤さん」
「なんですか……」
「貴方にしか見えない物があると踏んだから、私は依頼をしたのですよ?」
「朝倉刑事……それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ」
朝倉の真意が読めない。だが、識に期待をしているのだけは伝わって来た。洋壱の件もある……識は気合を入れ直し朝倉に向かって告げた。
「朝倉刑事、襲撃者の男について調べましょう。まずは、狙いが誰なのかを特定したいです」
「そうですね。同感です」
「では……」
「行きましょう、進藤さん。全ては事件解決のために」
朝倉が資料を鞄に仕舞う。識は取っていたメモを胸ポケットに入れると、先に立ち上がり戸締りを確認する。大丈夫である事を確認すると、準備を終えた朝倉とともに事務所を出た。
警戒しながら、二人は階段を降りて行く。あの襲撃者の狙いがわからない以上、どういう手段を使ってくるかわからないからだ。
緊張感に包まれつつ、二人は無事に駐車場までたどり着いた。
識が一息吐いた瞬間だった。
あの男が……現れたのは。
「そもそも、何故襲撃して来たのでしょうか? その、俺はともかく朝倉刑事には狙われる理由はないはずです」
「いえいえ? そうでもないのですよ。刑事が恨まれる事なんて、日常茶飯事ですから」
「そうなんですか……大変ですね」
「まぁ、仕事柄って奴ですからねぇ。お気になさらず」
朝倉とここまで会話をして、識はふとある事に気づいた。それは、襲撃者が洋壱関連なのか……それとも朝倉を狙っての別件なのかという事だ。
タイミングの問題でてっきり洋壱関連と思い込んでいたが、もしかしたら襲撃者は今回の事件とは無関係かもしれない。
その可能性に気づいた識は、思わず頭を抱える。これでは解決に程遠い気がしたからだ。そんな識の様子で察したのか、朝倉が声をかけて来た。
「進藤さん、心中お察ししますが今はそこは考えないでおきましょう?」
「ですが……襲撃者が俺か? 朝倉刑事か? どちらを狙っているかによって、話は大きく変わります」
「それも込みで、調べるしかないでしょう。ご安心を、そのために私がいるのですから」
「は、はぁ……」
(本当に、俺は役に立つのか? そもそも仇なんて取れるのか?)
一抹の不安が脳裏を過る。識は探偵だが、アニメや漫画、小説等のフィクションのような内容の仕事をしていない。現実とはそんなものだと割り切っていた。だが、現状はどうだろうか?
親友絡みとはいえ、実際の事件を追っている。
だが、ほとんど朝倉について回っているだけ。識は今の所なんの役にも立っていない。
(歯がゆい……これが、素人との差って奴なのか?)
「進藤さん」
「なんですか……」
「貴方にしか見えない物があると踏んだから、私は依頼をしたのですよ?」
「朝倉刑事……それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ」
朝倉の真意が読めない。だが、識に期待をしているのだけは伝わって来た。洋壱の件もある……識は気合を入れ直し朝倉に向かって告げた。
「朝倉刑事、襲撃者の男について調べましょう。まずは、狙いが誰なのかを特定したいです」
「そうですね。同感です」
「では……」
「行きましょう、進藤さん。全ては事件解決のために」
朝倉が資料を鞄に仕舞う。識は取っていたメモを胸ポケットに入れると、先に立ち上がり戸締りを確認する。大丈夫である事を確認すると、準備を終えた朝倉とともに事務所を出た。
警戒しながら、二人は階段を降りて行く。あの襲撃者の狙いがわからない以上、どういう手段を使ってくるかわからないからだ。
緊張感に包まれつつ、二人は無事に駐車場までたどり着いた。
識が一息吐いた瞬間だった。
あの男が……現れたのは。
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