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第十九話 終着点だよ、グシャート君

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 モンスター含めた敵達の集中攻撃が一気に、目前に迫って来る。
 一定時間無敵スキルを使用しても、いつまで持つかはわからない。
 それでも、耐えられるだけ耐えてみせるさ……!

 僕はスキルを発動できるだけ発動させていく。防御力強化、受け流しスキルアップ……Cランクの今のレベルで出せるだけ。
 そうしている間にも、僕に向かって来る攻撃が止むことはない。
 それで……いい。
 盾がボロボロになっていく。防具を貫通してくる攻撃で、両腕両足いや……全身に痛みが走る。身体から血がどんどん流れて行く。

 それでも僕は立ち続け、攻撃を受け続ける。目がかすんできた頃……銀色のなにかが誰かを乗せて僕の近くにやってきたのがわかった。

「グシャートたん! ねぇ! 死んじゃダメなのん! お願い、フレーズヴェル! このモンスター達を!」

【あぁ、承知した我が主よ。……そして認めよう、そこの男……いや騎士よ。見事であった】

 あの時の竜とサイルの声だと気づいた時には、周囲に竜の咆哮が響き渡り次々とモンスター達が倒れて行った。

 この竜、いやフレーズヴェル? 強すぎないか? そんなことを考えている内に僕の意識が遠のいていく。

 魔力の限界が来たのだ。

 そうして僕は――意識を失った。

 ****

「この愚か者ぉ……」

 レナジェのいつになく切なげな声が響く。
 ここは冒険者ギルドの治療室。そして、寝かされている僕。

 あの後、フレーズヴェルとサイル、そして他パーティ達の頑張りでなんとか混沌の覇者との戦いは痛み分けになったらしい。
 決着はつかなかったが……お互いに牽制はできたというところか。
 僕は……傍らで涙を流すサイルに謝り続けながら治療を受けている。どうやら一ヶ月意識不明だったらしい。

 全治もかなりかかる……うえに剣と盾を再び握るにはかなりダメージが深刻だそうだ。それを聞いても僕はあまりショックを受けなかった。
 それくらい覚悟していたからだ。

 しばらくして、テルスとスセがやって来て僕に謝ろうとしたのを遮った。
 そうして、彼らからの謝罪を受け取らなかった僕は……冒険者ギルドから引退することにした。サイルの世話はレナジェとテルス達が引き受けてくれた。
 引退の理由は……僕の身体だ。
 僕は……もう自由に歩くことができなくなった。軽い麻痺が残り、日常生活はともかくとして、僕は剣と盾を物理的に振るえないのだ。
 だから……身を引いた。見事竜騎士ドラゴンライダーとなったサイルが泣きながら、この冒険者ギルドを離れる僕を見送る。

「グシャート? この愚か者ぉ。冒険者ギルドに事務として残ることだってできたのよぉ? それすら棒に振って、どうするつもりぃ?」

 レナジェの言葉に、僕はまだ動かしづらい両足を杖で支えながら答える。

「故郷に帰るよ。それで……いい加減稼業を継ぐさ。まぁこの身体でどこまでやれるかわからないけれど」

「はぁ……。ま、辺境にあるアンタの村ぁ、たまには訪れてあげるわよぉ。覚悟なさい? 土産の本を読んでいたらぁ、あっという間に時間が経つわよぉ?」

「あ、僕が本好きだって覚えてたんだ? 女好きもたまには男のことも記憶しているんだね」

 軽くジョークを言えば、レナジェが呆れたため息を吐く。そうしているうちに、辺境にある僕の村までの馬車がやってきた。

「さて、じゃあ愚か者であり勇敢な騎士ナイトを、無事に故郷まで送り届けようか!」

「テルス!?」

「なぁに、元パーティのよしみと……恩人への恩返しさ! 道中の護衛は任せてくれ!」

 明るく笑うテルスと久々に感じる優しい目線の数々に僕は、涙を流しそうになる。……危ない。

 こうして、僕達は辺境の村まで向かう。

 ……騎士、グシャートの冒険はここで終わり。だけど、勇者達の冒険はこれからも続く。それを辺境から見守っているよ――友として。

 君達の冒険に、どうか幸運がありますように――。
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