(酒に酔った勢いで)勇者と聖女を追放し(てしまっ)たが、二人が抜けた途端最弱パーティになりました。後悔してももう遅い(血涙)

河内三比呂

文字の大きさ
上 下
16 / 19

第十六話 覚悟を決めたよ、グシャート君

しおりを挟む
 数時間前。
 サイル達と別れた僕は、まっすぐに職業ギルドへと向かった。騎士ナイトの称号を返すためだ。
 受付を済ませ、対面した職業ギルド長の開口一番の言葉が胸に刺さった。

「グシャートよ、今日はよくきたな。だが、騎士の称号返上での件であるなら、お引き取り願おうか?」

「……え?」

 唖然とする僕の顔を、強面のギルド長が更に睨みつけるものだから心臓が縮みそうだ。そんな僕に、ギルド長は語りかけてきた。

「よいか! 騎士の誓いは何者にも破れず、また、一度誓ったからには! なにがあろうとその道をたがえることなかれ!!」

 その言葉にハッとした。確かに……そうだ。そう、だった……。
 騎士とは、仲間の盾となりえし者。
 故に、なにが起ころうとその手から盾を手放すことなど絶対あってはならず。
 また、"騎士の誓い"は死なない限り破ることなど赦されない。

 最初に説明を受けた時、言われた言葉だ。

「……あ、う……その、でも……」

 上手く返せない僕に、ギルド長が最後の一押しとばかりに声を張りあげ告げた。

「たとえ生き恥さらそうと! 死んでも騎士であり続けよ! 騎士、グシャートよ!」

 僕は気づけば目から涙を流していた。声を必死に絞りだして、なんとか答える。

「……うっ、あ……はい!」

 こうして、僕は称号を保持するというある意味でもっとも過酷な罰を……受け入れることにした。

 ****

 宿屋に戻ると、以外な人物が僕を待っていた。……スセだ。

 彼女は僕に軽く会釈し、屋外へと連れだした。しばらくしてたどり着いたのは……小高い丘だった。

 そこまできて、ようやく彼女は口を開いた。ゆっくりと静かに。

「グシャート? 貴方様は騎士の称号を返上されようとなさったようですが……率直にお訊き致しましょう。何故です?」

「それは……。僕に騎士を名乗る資格がないと……でも、ダメ、だったよ……」

 僕がそう答えるとスセはあっさりと言った。

「そうでございましょうね。それでこそ、筋というものです」

「……え?」

「良いですか? 貴方様は愚者な面もおありではありましたが……根本的に、騎士です。いえ、騎士として誇りをもって頂きたいくらいです。ですから……ギルド長、わたくし……そしてテルス様やレナジェ様にサイルさん。貴方様の周りにいる者達からの想いをお背負い下さい」

 そう言い切ると、スセは一礼して僕をおいて丘から降りて行った。その背が小さくなっていくのを見つめながら……僕はようやく覚悟が決まった。

 ――僕は、騎士グシャートであり続けると。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...