14 / 19
第十四話 嘆いたよ、グシャート君
しおりを挟む
テルスとスセのパーティと別れた僕達は、改めて竜の元へと戻ることにした。
正直、気が重い。というか、気が進まない。
だってさ?
自分を助けたことで生前は賞賛されたのに、死後になって情勢的理由から不名誉極まりない扱いを受けたんだよ? それも恩人が。
……そんなの僕だったら……耐えられない……。
憂鬱な僕と珍しく静かなサイルの後ろを、いつも通りにしか見えないレナジェが着いてくる。
その距離が……また辛かった。
****
【……そうか】
僕達の報告を聞いた竜は、静かにそう呟くと目を閉じた。竜が何を考えているのか、僕にはわかりっこない。
だけど……いや、だからこそ。
サイルに対して、答えを出してやってほしいと思った。
しばらくの静寂が僕達を包む。焦る気持ちと不安がないまぜになって落ち着かない。そんな僕の傍らで、サイルはいつもの百倍も大人しかった。
【……理解した。だが、故にこそ……納得できるものではないな】
落ち着いた声の中に、確かな嘆きと怒りを感じられた。これは……やっぱり……。僕がそう諦めた時だった。ずっと静かに竜を見つめていたサイルが口を開いた。
「竜たん。ルルーシュタさんの名誉、取り戻さない? ウチと、いっしょに!!」
当の竜は、目を丸くした後静かに告げた。
【……それは悪くない。だが……見るにそこの盾の男は、まだ己を認識できていないな? そのような者が、ルルーシュタの名誉を取り戻すなど……どう信じられよう?】
「えっ。ぼ、僕ぅ!?」
まさかの名指しに、僕は思わず間抜けな声を上げてしまった。そこはサイルじゃないのか!?
動揺する僕に視線をやることなく、竜は告げた。はっきりと。
【そこの盾の男が、己を正しく認識し、また、娘が更なる成長を為した時、我は現れよう。必ずな?】
****
宿屋に戻った僕は、沈んだ気持ちで一直線にベッドへダイブする。その姿をみて、同室のレナジェが呆れた声を漏らす。
「はぁ~。アンタねぇ? そういうとこよぉ、そういう~」
グサッ。今日すでに竜に抉られた心の傷に更なる傷が与えられる。やめろよ……こっちはマジで落ち込んでるんだぞ!
あの後。
竜は僕達の前から飛び去り、サイルは「もっと成長するのん!」と意気込んでいたが、レナジェからの冷たい視線を浴びたのだ。
うっ……確かに、途中でサイルに嫉妬したり……いや、そもそもここまで堕ちたのも自業自得だけどさぁ……。それにしたって、あんまりじゃない?
半泣きになりながら枕に顔をうずめる僕に、再度レナジェが声をかけた。
……先程までとは違う優しい声で。
「……グシャート。本当のアンタを、思い出しなさいなぁ?」
正直、気が重い。というか、気が進まない。
だってさ?
自分を助けたことで生前は賞賛されたのに、死後になって情勢的理由から不名誉極まりない扱いを受けたんだよ? それも恩人が。
……そんなの僕だったら……耐えられない……。
憂鬱な僕と珍しく静かなサイルの後ろを、いつも通りにしか見えないレナジェが着いてくる。
その距離が……また辛かった。
****
【……そうか】
僕達の報告を聞いた竜は、静かにそう呟くと目を閉じた。竜が何を考えているのか、僕にはわかりっこない。
だけど……いや、だからこそ。
サイルに対して、答えを出してやってほしいと思った。
しばらくの静寂が僕達を包む。焦る気持ちと不安がないまぜになって落ち着かない。そんな僕の傍らで、サイルはいつもの百倍も大人しかった。
【……理解した。だが、故にこそ……納得できるものではないな】
落ち着いた声の中に、確かな嘆きと怒りを感じられた。これは……やっぱり……。僕がそう諦めた時だった。ずっと静かに竜を見つめていたサイルが口を開いた。
「竜たん。ルルーシュタさんの名誉、取り戻さない? ウチと、いっしょに!!」
当の竜は、目を丸くした後静かに告げた。
【……それは悪くない。だが……見るにそこの盾の男は、まだ己を認識できていないな? そのような者が、ルルーシュタの名誉を取り戻すなど……どう信じられよう?】
「えっ。ぼ、僕ぅ!?」
まさかの名指しに、僕は思わず間抜けな声を上げてしまった。そこはサイルじゃないのか!?
動揺する僕に視線をやることなく、竜は告げた。はっきりと。
【そこの盾の男が、己を正しく認識し、また、娘が更なる成長を為した時、我は現れよう。必ずな?】
****
宿屋に戻った僕は、沈んだ気持ちで一直線にベッドへダイブする。その姿をみて、同室のレナジェが呆れた声を漏らす。
「はぁ~。アンタねぇ? そういうとこよぉ、そういう~」
グサッ。今日すでに竜に抉られた心の傷に更なる傷が与えられる。やめろよ……こっちはマジで落ち込んでるんだぞ!
あの後。
竜は僕達の前から飛び去り、サイルは「もっと成長するのん!」と意気込んでいたが、レナジェからの冷たい視線を浴びたのだ。
うっ……確かに、途中でサイルに嫉妬したり……いや、そもそもここまで堕ちたのも自業自得だけどさぁ……。それにしたって、あんまりじゃない?
半泣きになりながら枕に顔をうずめる僕に、再度レナジェが声をかけた。
……先程までとは違う優しい声で。
「……グシャート。本当のアンタを、思い出しなさいなぁ?」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる